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『真夏の夜に輝く日々花 』
オリヴィエ・オドランaa0068hero001)&葛原 武継aa0008)&稍乃 チカaa0046hero001)&木陰 黎夜aa0061)&紫 征四郎aa0076)&桜寺りりあaa0092)&白虎丸aa0123hero001)&伊邪那美aa0127hero001)&ゼノビア オルコットaa0626)&御代 つくしaa0657)&ルーシャンaa0784)&十影夕aa0890)&シキaa0890hero001)&泉興京 桜子aa0936)&アルaa1730)&ナガル・クロッソニアaa3796

●楽しんでいきましょう!
「これで、皆揃ったでしょうか?」
「大体揃ったと思う。後は飲み放題だろうし」
 葛原 武継(aa0008)が、ぐるっと見回すと、十影夕(aa0890)が後方、賑わい始めた飲み放題会場を指し示す。
「ほう、チビもゆかたかね」
「へ、変、でしょうか」
 シキ(aa0890hero001)が武継をじっくり見ると、ママに着せてもらった白地に藍色のトンボが舞う浴衣を来た武継は自身の浴衣が着崩れてないかきょろきょろ確認してみる。
 が、シキは鷹揚に胸を張った。
「ふぜいがあっていいね。いろけはだいじだよ」
(色気を理解しているんだろうか)
 夕はツッコミ入れながら、サンバイザーを被り直す。
 そもそも日が暮れてるのに何故サンバイザー着用を言われなければならないのだと思ったが、こうして被っている。何だかんだでシキは可愛いから、甘いのだ。
 色気、という単語が出たからか、武継は首を傾げていた。
「シキさんは浴衣じゃないんです?」
「チビたちとあそぶのには、みがるなほうがいいからね」
 そう話すシキはマリンブルーのタンクトップに白のデニム素材のサルエル、動き易さ重視のサンダルに飾り気のない白のキャップとボーイッシュなものだ。
「シキさんと夕さんはお揃いみたいで可愛いの、ですね」
「それは──」
「それはそうだ。わたしが、みたてたからね」
 桜寺りりあ(aa0092)が会話に加わると、夕の言葉尻を被せるようにしてシキが仰った。
 夕の装いは黒のタンクトップにネイビーのデニム素材のサルエル、シキと同じく動き易さ重視のサンダルとほぼ色違い。最大の違いはキャップかサンバイザーかの違いだけだ。
 と、りりあは視線を感じ、顔を向けた。
『すみません。浴衣の上着が気になって…』
 ゼノビア オルコット(aa0626)がメモに文字を走らせ、りりあへ見せる。
 今日はりりあもゼノビアも浴衣だ。
 白に淡い寒色系の朝顔が咲く浴衣を紫苑色の帯で可愛らしく纏めたゼノビアは長く優しい印象の白金の髪を首の少し上辺りで編み込みとシニヨンに結い上げ、その色に良く映える蒼い磨りガラス玉が印象的な簪で彩らせている。
 対するりりあは、白こそ同じだが薄紅の桜が散りばめられた浴衣でこちらの帯の色は赤だけあり、同じ白い浴衣でありながら、その印象は全く異なる。また、その上に淡い桜色の衣が掛けられており、ゼノビアはこの上着は何なのかと気になったのだ。
「これはかつぎというの、ですよ」
『かつぎ?』
 りりあが教えてくれた名はゼノビアに馴染みがない。
 かつぎは日本舞踊では馴染み深いものである、とりりあが笑うと、ゼノビアよりも高い位置に結い上げられた黒の髪に彩られた簪の桜の造花が舞の余韻であるかのように静かに揺れた。
「おどるといえば、イザナミがおどるのですよ」
 紫 征四郎(aa0076)がそこで会話に加わる。
 隣にいる武継もその話は聞いているらしく、共に遊ぶこともある伊邪那美(aa0127hero001)が神楽を舞うという期待に少し目が輝いていた。
「あのチビはちゃんとおどれるのかね」
「花見の時に見せてくれたのは綺麗だったし、大丈夫だと思うけど」
 木陰 黎夜(aa0061)が、シキなりの気遣いに言い添える。
 今年の少し早い花見で伊邪那美が舞を見せてくれたのだが、自分達同士の身内と赤の他人とは違うだろうが、伊邪那美も神を名乗る英雄──舞の時はきっと別人のような表情を見せてくれるだろう。
「今日もきっと綺麗だよね。楽しみ」
「そんなにきれいなのか?」
「とーっても」
 ルーシャン(aa0784)が鈴を鳴らすように笑うと、泉興京 桜子(aa0936)が興味を持って尋ねる。
 当然のようにルーシャンが笑うので、桜子も「それはたのしみにしないといかんな」とそわっとした表情を浮かべた。
「結構な大所帯だよね。そこまで広い会場じゃないけど、逸れた時どうしようか」
「浴衣、だけだと、一杯いるよね……」
 ナガル・クロッソニア(aa3796)が皆を見回すと、御代 つくし(aa0657)も目印はどうしようかと皆を見る。
 つくしが言う通り、この中でも浴衣着用の者は多い。
 最初に言ったつくしも向日葵咲き乱れる青空色の浴衣を向日葵色の帯できゅっと締めていたりする。
「こうして見ると判るけど、人が沢山いると判らないかも」
 ナガルが周囲の人を見回す度、薄翠の中に咲く白桔梗とは異なる紫の桔梗の花飾りに下げられている鈴が共に揺れて軽やかに響いているようだが、雑踏に紛れている。
 下手に探すと行き違いが出そうな気がする程度には人がいるのだ。
「1番やばいのはうちかもしんねー」
 自己申告する黎夜。
 川を思わせる浅葱色の布に藍色のトンボが舞う浴衣に紺の市松模様の帯、と今日は女の子らしい装いだが、黎夜自身がそうした装いに慣れている訳ではない。歩き易い雪駄で歩いていたとしても逸れたら、慣れない男性に囲まれると黎夜は気分が悪くなってしまうかもしれないだろう。
「それに着崩れたらなおせねーし」
「それは私も、かな」
 ルーシャンがおずおずと挙手した。
 我が女王陛下に浴衣を──彼女の騎士は抜かりなくルーシャンに着付けを施し、今日も桜子との待ち合わせ場所へ笑って送り出してくれたが、自分で直せるかどうかは別の問題だ。
 ローズピンクの帯ひとつ満足に直せないのに、沢山の色の蝶が舞う真っ白い浴衣が着崩れたらもうおしまいだ。
「わしが手をつないでおる! あんずることはないぞ」
「手、離さないようにするね」
 桜の中を金魚が泳いでいるかのような柄をした白の浴衣を着た桜子は普段から和装に馴染んでおり、ルーシャンには心強い。
 実はも何も征四郎も着崩れると危険なのだが、征四郎は負けず嫌いだし、そもそも着付けてくれたあの優しい人に着崩れした浴衣姿を見せたいとは思わないので、白とピンクの蝶が舞う紅い浴衣の生命線とも言える白の帯を改めて見直した。
 その間も会話は続いていて──
「大丈夫! はぐれるときははぐれるけど……」
「意外に何とかなるよ!」
「大丈夫じゃないとおもうのですよ」
 つくしとナガルがどやっとするのを征四郎がぽそりとツッコミした。
 この夏、夏祭りに多く足を運んでいる者もこの中には少なくない。夕などは、今年で3回目、などと漏らしていたし。
 で、つくしとナガルに関しては、逸れた挙句探し回る英雄を他所に迷子の自覚などなく絶好の花火観覧スポットを偶然当てていたという前科(?)がある。
 浴衣変えたって前科は変わらないし。
「大丈……あれ、そういえば、アルは?」
 黎夜がアル(aa1730)の姿がないと首を傾げる。
 と、そこへ紺の甚平姿の稍乃 チカ(aa0046hero001)がすっと姿を現した。
「意識が逸れるのに時間掛かった……」
 チカは屋台の食べ歩きに行きたかったが、チカのパートナーであるハイスコアコミュ障な彼にはレベルが高過ぎる話だ。
 が、チカを野放しにも出来ないし、独りは怖い。
 そんなこんなで意識が逸れてからチカは食べ歩きの為に抜け出したのだ。
 まぁ、知り合いが皆無という訳でもないし、うん。
 頭に過ぎった顔が、あれは知り合いと定義していいのかどうか判断に迷うが、交流はいいことだ。うん。戻ってくるまで色々全力で守ればいいし。
「お疲れ様です。アルさんがまだみたいですけど……」
「そんなに広い会場じゃないなら見つかるだろ。それより早くここ離れないと、確保しに来る」
 チカが凄い真顔で促すので、凄く広い会場ではないというのは本当のことだし、移動することにした。
「神輿や神楽見る時間まで結構あるけど、どうする?」
「それなら、ビャッコマルとオリヴィエの様子を見にいきたいのですよ」
 雑踏を歩き出したナガルが楽しそうに聞くと、征四郎が希望を出した。
 白虎丸(aa0123hero001)は本日、露店出張がおぅ堂を出しており、その忙しさから、祭の雑用や力仕事を細々引き受けているオリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)が特に手伝ってくれているらしい。
 出店は始まったばかりだが、白虎丸が出しているのは駄菓子だけあり、食事時よりもこうした時間の方が混むのでは征四郎が案じたのだ。
「途中で差し入れも買えたらいいのですけど、お店結構奥の方なんですよね」
「なら、買いながら行けばいいじゃん。ってことで、まずはあれ買うのはどうだろ」
 武継が賛成の意を示して笑うと、チカがラムネの屋台を指し示す。
「まつりらしいのみものだね。じつによろしい」
 皆がラムネを買っていくのを見ていたシキは、やがて夕が2本のラムネを持ってりりあと共にやってきたので、実にシキらしい態度で受け取ったのだった。

●さて、その頃
「あれ」
 アルは背後から声を掛けられ、他人の振りをしようかどうしようか決める前に伊邪那美が回りこんでいた。
 伊邪那美とは、年末の『年末年始はWNL! HOPEしゃべくり能力者スペシャル』 という5時間ぶっ続けの特番で一緒に出演した縁がある。初対面ではない。
(数秒で目論見失敗!?)
 アルは、エージェントとして活動しながらもテクノポップアイドルとして活動している。
 最近では演技の面白さにも目覚め、今後も芸能界で活躍出来たら、というアルはアイドルになったからと言って今までを忘れた訳ではない。
 実は幼少からこの神社にはちょっとした縁があり、幼少からこうした祭事に限り、臨時の舞巫女として神楽も舞っていたのだ。
「ボクも今日は神楽舞うんだよ。ふっふっふ、普段のボクとは違う所を見せるのさっ」
「まさかの同士……!」
 伊邪那美がどやっと笑うと、アルがはしっと伊邪那美の手を取った。
 飄々としたボクっ娘のアル、舞巫女をしているなんて誰にも教えていなかったのは、驚かせたかったからで。
 流石に屋台方面で幹事を担う古本屋の主とその英雄の耳には入ってしまうのは避けられなかったが、驚かせたい面子への口止めは恙無く済んでいたというのに!
 と、声を掛けられてから、およそ1秒間でこれだけのことを考えていた訳だが、伊邪那美は伊邪那美で別人になるらしく、自分と似た方向に考えていたのだ。
「実は──」
 アルが伊邪那美の耳元でこそこそ。
 皆には神楽を舞うと言ってやって来た伊邪那美、アルのはなしを聞いていく内、段々にやーっとした笑みが浮かんでいた。伊邪那美曰く若さが足りない彼の能力者が見たら、女子がする表情ではないと額に手を当て嘆いたのは確定的だろう。
「どうかな」
「乗った! そんな楽しいことしない方が変だよね」
 怪しい笑いを交わし合う2人。
 まぁ、まだ神楽舞う時間じゃないからいいか。

「そういえば、神楽はいつ始まるでござる?」
「もう間もなくの筈だが」
 藍染の甚平姿の白虎丸が周囲を見回すと、オリヴィエが手伝いの手を止めてそう返した。
 白虎丸は上手いこと丸め込まれてしまって今日露店を行っている。
 本人としても普段と色々違って困惑している部分もあるが、それでも店をやっている辺り、国というか世界を超えた天然王であるだろう。
 他の店と違い種類も多いので1人では大変だろうとオリヴィエが重点的に手伝っているのだが、子供には優しい白虎丸の露店には子供は勿論、昔なつかしの駄菓子を除くかつての子供の姿もあった。
「そろそろオリヴィエ殿も祭りを楽しまれてはどうでござろう」
「さっき、こっちに来ると──」
 ライヴス通信機で連絡があったとオリヴィエが言う前に着ていた蒼い楊柳柄の甚平が引っ張られた。
 振り返ると、祭の実行委員会のおじさんが凄くイイ笑顔で立っていて──

「オリヴィエは、どうしたのです?」
「あそこに連れ去られてしまったでござるよ」
 征四郎の言葉に白虎丸はそう言って、あそこにいるとオリヴィエを指し示した。

●屋台には誘惑が多くて
 少し時間を巻き戻そう。
 オリヴィエ手伝う白虎丸の店に到着までに誘惑は結構ある。
「焼きそばとたこ焼きとラムネと……ありすぎて困ることはないですしね!」
「セイシローちゃん、少し持つよ」
 買い込む征四郎に武継が持ち過ぎと申し出る。
 武継が自分とオリヴィエと友達でなければ、征四郎も大丈夫だと言い張るのだが、武継もまたオリヴィエの為の差し入れがしたいとなればそれを突っぱねるような征四郎ではないので、「お願いするのですよ」と一緒には持ちにくいラムネを手渡した。
「見るのあるなら遊ぶのは後のがいいよなー。射的とか普通にやってみたいし」
 人ごみの流れをそれとなく見ていたチカが射的の屋台に目を留め、面白そうだと笑みを浮かべる。
 すると、征四郎が黙っていなかった。
「それなら、征四郎としょーぶするのですよ!」
「お、いいぜいいぜ! よーし、勝った方が後で好きな焼き鳥1本ご馳走な」
「望むところですよ!」
 そんなやり取りも微笑ましくて武継が笑みを零す。
「あ、セイシローちゃん、あれもどうかな」
 武継が指し示したのは、綿飴だ。
 オリヴィエへのお土産、ではなく、これは──
「……ザラメの形について何やら言いだしそうな気がするので……あ」
 征四郎は武継が何故勧めてくれたか気づいた。
 あの屋台の綿飴、白いのだけでなく、他の色(色に応じた味)もある。
 武継自身も気になったのだろうが、きっと、自分が買うきっかけとかそういった理由ではない理由で征四郎に声を掛けた。
「なら、タケツグも買うのですよ」
 シキが言うちびっこの中ではお兄さんかもしれないけど。
 でも、征四郎は一緒がいい。
「はい。お土産に」
 密かに甘い物が好きな彼の為に。
 あれもこれも欲しがるのはお行儀がいいことではないけど、喜んで欲しいから、お行儀には少しだけ見逃してもらおう。

「しっかし、見たことないのもあるよなー。家で食うようなのとかもあるけど」
「チカお兄ちゃん、お祭り初めてなの?」
 チカが林檎飴の屋台を見、それからお好み焼きの屋台を見ると、桜子とかき氷を買ったルーシャンがチカを見上げていた。
「おー、初めて。……自主的には来ないからな。それ、美味い?」
「キーンってするよ?」
「だが、つめたくてじつにおいしいぞ」
「俺もひとつ買うかな」
 チカがかき氷の屋台に顔を向けると、「あ!」とルーシャンの声が響いた。
「後で、勝負とは別に射的とか金魚すくいやろっ。初めてのお祭りなら、一緒に楽しまないと!」
「だよな。やっぱ楽しまないと損だよな!」
「ふっふっふ、なら、わしがおしえてやろう!」
 桜子がルーシャンとチカに自身の存在を示すように胸を張った。
 と、即座にチカが桜子に征四郎が見ている屋台の教えを請う。
「なーなー、じゃあ、あの征四郎が気づいた籤引きって何?」
「あれは──」
 桜子の説明にルーシャンの顔がぱっと輝く。
 当然、彼らも続いたのは言うまでもない。

 その少し後方、シキを挟み、夕とりりあが歩いていた。
「綿飴……甘くて美味しい、です。良ければ、どうぞ……」
「あ、ああ」
 齧っていないから、とりりあが綿飴を差し出すと、夕は少し躊躇った後、綿飴を少し千切り、口の中に入れる。
 実は今年3回目の夏祭り──2回はシキと一緒に行ったのだが、今回は子供成分多めの大所帯。それに、りりあもいる。
 りりあは病弱の身で馴染みがなかったらしく、見る物全てが新鮮らしい。
(新鮮と言えば……)
 りりあは、いつも新鮮だ。いや、会う度に印象が違うとも言うか。
 彼氏がいるかもしれないし、改めて聞くようなことでもないか、と何となくりりあを見るが、気遣ってくれたと思ったらしいりりあは「楽しい、です」と微笑んだ。
「それにしても、チビたちはおちつきがないね」
 それまで、ルーシャンからお裾分けされていたベビーカステラを食べていたシキが口を開いた。
(お前が言うか)
 夕がそう思ってもシキには伝わらなかったらしく、りりあに「だから、きょうのわたしはみがるなのだよ」とどやぁっとしている。
「あともう少しで……神楽の時間です、けど、それまで、色々楽しみたいです、ね」
「わたしがいるのだから、たのしいものになるよ。そうだろう、ユウ」
「……そうだな」
 シキが考えている意味とは違うだろうが、りりあが楽しく思うのは確かだと思うので、夕はその辺を省いてそう頷いた。
「よくわかっているね。いいこだ、ユウ」
「シキさんは、本当に夕さんがお好きです、ね」
「もちろんだよ!」
 りりあに胸を張るシキ、そのシキを微笑ましそうに見るりりあ。
 夕は一緒にいる友達の、そうした姿がちょっとだけ気になっている。

『日本のりんご飴って大きいですね』
「え、林檎飴、日本以外でもあるの!?」
 ゼノビアが林檎飴を見るやメモを走らせると、つくしが驚きの声を上げた。
 端的に言えば、林檎飴の発祥は日本ではなくアメリカで、また、日本、アメリカ以外の国でも林檎飴は存在する。が、林檎の品種などは異なるので、ゼノビアのような感想も珍しくはない。
『ハロウィンやガイ・フォークス・ナイトでは定番ですね』
 ゼノビアが少し考えた後に走らせた文字はそうしたものだ。
 きっと懐かしい思い出があるのだろう、ゼノビアの表情は少し寂しさも混じった遠い日を見つめるものになっている。
「夏に食べるって言うのも何か不思議だよね」
「あ、そういうのもあるのか」
 ナガルが購入した林檎飴をぱくりと齧ると、黎夜が色々違うと言いながらナガルに続いて林檎飴を齧る。
『花火が夏って言うのも実は不思議で……』
「確か冬が定番なんだよな」
 ゼノビアが説明するように文字を走らせると、黎夜が前に聞いたことがあると声を上げる。
「冬! あ、でも、確かにハッピーニューイヤー! って瞬間に花火が上がったら、何か華やかかも。日本だと除夜の鐘聞いて年越し蕎麦って感じだけど」
「うちも年越し番組見てって感じだなー」
 つくしと黎夜がそこで我が家の年越し事情で話を弾ませると、聞き慣れない単語にゼノビアもナガルも興味津々。
 そもそもニューイヤーの定番の料理すら、カルチャーショックだったのだ、この辺は詳しく聞きたいのだろう。
「あ、ベビーカステラ! お土産に買って行こう! おっと、カルメ焼きもある、忘れてはダメだよね!」
 ナガルがゼノビアが見た先に気づいて皆を促す。
 ベビーカステラに気を取られていたゼノビアはカルメ焼きを見て更に目を瞬かせる。
 と、黎夜もじっと見ていることに気づいた。
「うちも、カルメ焼きは見たことがなくて」
 地味に屋台の主が男性の時は買ってもらっている位男性恐怖症の黎夜、当然カルメ焼きを見る機会なんてなくて。
 皆と一緒だから見られる光景だ。
『なら、私と同じ、ですね』
「ああ。今日はうちも初体験だな」
 黎夜が少し顔を綻ばせたので、ゼノビアも自分だけが初めてじゃないことが嬉しくて小さく微笑んだ。
「って、あ! 籤引き! 皆籤引き引いてる!!」
「え、何々!」
 カルメ焼き確保したつくしが先の屋台をびしっと示すと、ナガルがすぐに応じた。
「早く! 綿飴確保したら、私達も籤引き!! いい景品がなくなっちゃうかも!!」
「それは大変!!」
 つくしとナガルが急ごうと促し、黎夜とゼノビアは顔を見合わせた後、慣れない雪駄で彼女達に続いた。

 そして、籤引きも終え、十分楽しみ、神輿と神楽を見る5分前に白虎丸の露店へ行き──時間は巻き戻る。

●神輿から神楽へ
 オリヴィエは、何だかよく解らない内に神輿を担ぐことになっていた。
 尽きぬ疑問は先程のやり取りを思い出させる。
 町内会の役員のおじさんが言うには、担ぎ手が1人お腹を壊してしまって出来なくなったので、オリヴィエに代理をお願いしたいとかで。

─俺は担いだことない。
─英雄だから大丈夫! それに、許可は取ってるよ。

 『許可発行元』は現在飲み放題会場にいる筈。
 オリヴィエの眉間に皺が深く刻まれた。
 白虎丸は「俺はもう大丈夫でござる。手伝う箇所があるでござるなら、オリヴィエ殿遠慮はいらぬでござるよ」と事態をあんまり理解してなさそうな感じでオリヴィエの退路潰した。
 相手は町内会のおじさん、突っぱねることも出来ない。
 オリヴィエはなし崩しに連行され、甚平ひん剥かれ、褌締められ法被着せられ、神輿担がされている。
(飲み放題会場から出てくるな)
 オリヴィエが気にしているのはその1点だ。
 この際、征四郎は、あんまり良くないが、見られても仕方ないとする。
 だが! 飲み放題会場にいる『許可発行元』及び『薬屋』はダメだ、嫌な結果にしかならない。
「声しっかり上げて!!」
「……………………わっしょい」
「声が小さい!!」
 オリヴィエ、苦手分野思いっきり攻撃されてる。
 どうにか……そう思った時には、白虎丸が指し示していて、征四郎がこちらを見ていた。
 驚いたような征四郎の隣にルーシャンがいて、「オリヴィエお兄ちゃん頑張って」と唇を動かしたのが見える。
 更にその隣には桜子がいて、よく判らないがうむうむ頷いている(何でそんな納得しているようなことしているのか不明)
 そこで、オリヴィエは思い至る。
 伊邪那美は神楽を舞うからあそこにはいないから問題ないとして──武継が頑張って、と拳ぎゅっと握り締めてくれてるのはいい、が!
「チビもなかなかまつりをたんとうしているようだね。なにより」
 オリヴィエ、声は聞こえてないけど、シキがそう言ったのを本能で聞いた。
 頼まれてやっているからだと眉間の皺がもっと深くなる。
 視線を巡らせれば、飲み放題からも一時会場を抜け出した何人かを見つけたが、肝心の相手がいないことを確認しきれない。
 いや、もう見られた時点で耳に入るから。
 オリヴィエ、自身へ冷静に指摘をし、諦めて神輿担ぎに専念する。
 けれど、やっぱり、声が小さいと怒られてしまうのだった。

 神楽をより見易い場所で見るらしく、征四郎達が差し入れを置いて白虎丸の店を離れていく。
 人々もちょうど神楽を見るつもりらしく、流れが移動していった。
「後は花火の少し前までに店を仕舞えば十分でござる」
 現役の子供からかつての子供まで駄菓子を選び、ここで食べると言うより、後で食べるらしく、お土産に買っていく。
 中には屋台から声を掛けてくる者もいた。
「俺からすればカルメ焼きなどは珍しいでござるが」
 ポン菓子は爆発と勘違いされてしまうと大変ということで、町内会の要望から見合わせたのだが、自分でも作ってみたいと思うものが幾つかあった。
 綿菓子などは機械をレンタルし、コツを掴むと案外簡単らしい。
 たこ焼きは大阪ではたこ焼き機なるものが家庭用として存在するらしく、専用の粉もあるということで、中々興味深かった。
 カルメ焼きは伊邪那美が言うには彼女のパートナーたる大人びた少年(意外も何も彼の見た目自体はまだ少年というに相応しい年齢だ)が作ることが出来るそうで、白虎丸は知らなかったが、生駒山に陣を展開した際、本拠で腕を披露したこともあったとか、それなら、後で聞いてもいいだろうと思う。
(千颯はこういうのを学んで来いと言いたかったのでござろう。こういう機会でもなければ、中々知ることも出来ぬでござる)
 うん、と納得する白虎丸、多分あっちの思惑と違うけど、彼は天然だから仕方ないのだ。
 祭の仕上げは、ほぼ確実にパージャーディストロイするだろうから、まだ平和な気持ちでいたっていいじゃない。白虎丸だもの。
「ここからでも神楽は絶好ではなくとも見えるでござるな」
 そう言う白虎丸の目線の先には、神楽を舞う舞巫女の姿が。
 先程まで賑やかだった新旧子供も静かに魅入っていて、白虎丸はどこか優しげな空気でそれを眺める。
 その舞巫女達の中にアルと伊邪那美がいるのだけど、果たして何人の者が気づけるだろう?

●捧げるのは───
 祭の喧騒が一切遮断されているかのように、巫女達が舞を披露している。
 その中で目を引くのは、陽光のような髪を持つ巫女とまだ幼い、けれど、幽玄な雰囲気を漂わせた巫女。
(……本番前にひとさし舞っただけ、なのに)
 飛び入りであった伊邪那美だが、神を名乗る英雄の舞は本番前に見た。
 普段の無邪気な様が嘘であるかのようにそこだけ世界が変わる。
 違う、世界を語っている。
 伊邪那美の舞を見たアルはそれに気づいたが、それはアルがそれだけの舞手である何よりもの証拠だ。
 この世界を語る舞を披露した英雄は、自分だけの呼吸を持っていない。
 本番前に合わせたそこで、巫女の呼吸、間合いを確認し、自分だけが突出するということはしない。独りで舞っている訳ではないと識っている。
 同時に───
(それに、次にどう動くか、解る)
 臨時の舞巫女として舞ってきたが、この感覚は初めてだ。
 世界から神楽鈴の音以外の音全てが消えたかのような感覚。
 その神楽鈴の音だけが、世界と自分を繋ぎとめているかのような──
(こんなの初めて)
 伊邪那美と目が合う。
 さっきは悪い笑顔を交わし合った彼の英雄は、今は静謐に微笑んだ。

(他の踊りの根本って言ってただけあるよね)
 伊邪那美もアルが自身の呼吸を理解して舞っていることに気づいていた。
(こういう言い方ヘンだけど、何か楽しいな)
 飛び入りしに行くというのを、若さが足りない能力者は誰かに迷惑を掛けないように、断られたら食い下がらないように、舞わせてもらえたら感謝するようにというのを、祭の注意と共に念を押してきたが、事前に口添えはしてくれたらしく、飛び入りでも参加出来た。
 ちなみに全部聞かないと、お小遣い(伊邪那美の要望金額の半分以下)くれないから、ちゃんと聞いたけど、あんなにくどくど言うなんてやっぱり若さがない。
(でも、今回は、ちょっとだけ感謝しないと。ホントにちょっとだけだから!)
 だって、アルと一緒に舞うの、世界が重なるみたいで楽しい。
 神楽鈴が凛と鳴り、扇が空気を感じさせぬ軽やかさで舞う。
 対でありながら、個々の世界を重ね合わせ、捧げているかのような舞は、そこだけ確かに世界も空気も違っていた。
 舞う中、共に来た皆の顔があちこちに見える。
(ねぇ、ボクがボクだって、判る? ボクと一緒に舞っているの、誰か判る?)

 ボクはアル。
 ボクは伊邪那美。

 世界は溶け合い──

 りん。

 最後の神楽鈴の音が鳴り響く。
 それまで静寂が舞い降りていた祭に、まるで世界が揺れるかのような爆発的な歓声と拍手が空間に轟いた。

「あれ、着替えないの?」
「え、ボクも着替えないよ。だって、さっき着替えないって言ってたじゃない。それなら、これはボクの手持ちだし、ボクも着替えないでいいかなって!」
 アルが伊邪那美に声を掛けると、伊邪那美は腰に手を当てた。
 2人は共に緋袴に千早を羽織る正統派巫女スタイルで、アルは自分が舞巫女であることを教えていないということの他、終わったら、この格好で皆に会いに行き、驚かせるのだと伊邪那美に耳打ちしていたのだ。
 で、耳打ちされた伊邪那美は舞が終わった後も自分も着替えないで皆の所へ行くと言う。
 理由は、その方が信憑性を増す──ぶっちゃければ面白そうだから、だ。
「今日は浴衣じゃなかったしね。それなら、一緒に行こう。気づいたかどうか知りたいしね。……おぬしも中々ワルよのぅ、いっひっひ」
「お代官様程じゃありませんよ、いっひっひっ」
 ニヤニヤ笑いを交わすその様は、さっきの巫女の姿しか知らない人には見せない方がいい。
 そんなことを思われているとも知らない彼女達は祭の雑踏へ踏み出していく。
「さっきのやり取りよく知ってたね」
「てれび、だっけ? 毎日それやってるんじゃないの?」
 伊邪那美から聞いたアルはお茶の間事情を察し、時代劇の演技の練習もしてみてもいいかとちょっとだけ思った。

 白虎丸が馴染みの声が「ええええっ」という驚愕に満ち溢れていることに気づき、顔を向けた。
 アルと伊邪那美が腰に手をあて、ダブルどやぁっしているのが見える。
「あの巫女はアル殿ご本人であったでござるか……。俺もまだまだ修行が足りぬでござるな」
 そう言いながらも、微笑ましいものを感じているのか、白虎丸の空気は柔らかい。
 素直に驚いている様子の征四郎、武継、ルーシャンや黎夜、(真偽はともかく)自分は知っていたとどやぁっ返ししている桜子とシキがいる。感想を言っているつくしとナガルの目は遠目から見ても輝いていて、チカは素直に感心していそうだ。
 と、アルと伊邪那美にゼノビアがメモを見せているのが見える。
 その後、サムズアップしているから、きっと何かいいことなのだろう。
 続くようにりりあが何か申し出て、やっぱりサムズアップしてるから、見せるか一緒に舞うかのどちらかだろう。
「オリヴィエ殿、どうかしたでござるか?」
「……いや、何でもない。花火前に店仕舞いすると聞いていたから、様子を見に」
 白虎丸はこちらへやってきたオリヴィエが何だか疲れているように見えたが、オリヴィエは緩く首を振った。
 着替え直したオリヴィエは、年少組にはしゃぎ過ぎたりしないことや花火になったらもっと混雑するから逸れたらどこに行けばいいか、食べ物の屋台で良さそうな所をそれとなく言ってきたのだが、褌でわっしょいが色々持って行かれていたのだ。
 だって、絶対、ねぇ。
 と、その時だ。
 飲み放題会場が騒がしい。

「オレちゃんもパージを捧げちゃうぜー!」

 オリヴィエは白虎丸を見た。すんごい見た。ものっそい見た。
「あ・の・痴れ者が……!!」
 やっぱり、白虎丸、弾丸の如く駆けていった。
 その向かっていく先からは──

「きゃー、素敵よぉ〜ちーちゃーん」

 オリヴィエも何か声作ってる酔っ払い声を聞き、眉間に皺を寄せて深い溜め息。
 が、まだ店仕舞いしてない店を放置は出来ないので、オリヴィエは白虎丸が座っていた椅子に腰を軽く掛けた。
「いらっしゃい」

 この後、飲み放題会場に粛清の拳が舞う声が聞こえてきたが、オリヴィエは知らない振りをした。

●楽しいことは尽きなくて
「オリヴィエにはお疲れさまを言えてよかったのですよ。お店あずかっているみたいですが、タケツグもいっしょですしね」
 神輿の後白虎丸の露店に戻った話を聞いてオリヴィエに労いと差し入れを渡した征四郎、ご満悦。
 1人では大変だろうと武継がお手伝いに残ったのが残念なようで、オリヴィエには良かったとも思えて、中々大変。
 と、唐突にナガルが足を止めた。
「あ、そろそろ探しに行かないと!」
「え、何の?」
「花火の絶好のポイント! どこかいい場所知ってる?」
 ナガルが昔なじみなら知っているのではと尋ねてきたアルに顔を向ける。
「打ち上げ場所はこの辺だから──」
 アルの話をふんふん聞くナガル。
「一応、ここがいい場所って言われてて」
「あれ、でも……」
 アルの話を聞いていたナガルが小首を傾げる。
 その拍子に桔梗の花飾りが揺れるが、本人はそれよりも気づいた何かに夢中のようだ。
「きっとこっちの方がいいと思うから、ちょっと見てくるね」
「あ!」
 黎夜が声を掛ける前にナガルは普段とは違う装いとは思えない身軽さで雑踏の中へ消えていく。
「早い……」
 飲み物持って行ったらとペットボトルのお茶で申し訳なくとも渡そうと思っていた黎夜はナガルの身軽さに驚くばかりだ。
『後でお疲れ様って渡すのはどうでしょう』
「だな」
 ゼノビアの提案に賛成する黎夜はもう1度ナガルが消えた雑踏を見る。
(猫みたいだった)
 彼女をマスターと呼ぶ彼の英雄なら、「それがマスターですから仕方ありません」で片付けるに違いなかった。

 コルク弾が命中したピンクのくじらのぬいぐるみが見事後ろへ倒れた。
「すごいのですよ! ゼノビアに教わったとおりにしたら、当たったのですよ!」
 征四郎がゼノビアに振り返ると、はにかむゼノビアが小さく拍手している。
 英雄直伝のゼノビアは射的のコツを征四郎に教えたのだが、征四郎が見事倒したので、何だか自分のことのように嬉しい。
 そのゼノビアはワンピースを着たうさぎのぬいぐるみを手に入れており、大切そうに抱えている。
「うちも、ぬいぐるみは欲しいな……」
「あ、ちょっとストップ!」
 次は自分がやると黎夜が射的銃をおばちゃんから受け取ると、つくしが黎夜を制止し、浴衣が動き易くなるようにしてあげる。
 黎夜が女物の浴衣で待ち合わせ場所に登場するまで、男の子だと思っていたつくしは、もしかしたら浴衣馴染みがないのではと思い、ぬいぐるい落とすならばと動いたのだ。
「ありがとう」
「ガッツリ狙ってきてね!」
 つくしのガッツポーズに軽く笑んだ黎夜が射的銃を構え、ゼノビアが征四郎に教えていた内容を頭の中で繰り返し、撃った。
 見事、栗毛の馬のぬいぐるみがこてんと横たわり、ぬいぐるみゲット!
「わ! 黎夜おねえちゃん、1回で当てたっ! ゼノビアおねえちゃんの教え凄いっ!」
「わしもすごいと思うぞ。ぜのびあどのの助言のおかげだろうな」
「うちもそう思う。……ありがとな」
 ルーシャンと桜子がゼノビアの横ではしゃぐと、ゼノビアは歩いてきた黎夜に征四郎と同じく、軽く手を上げる。
 意味を理解した黎夜がハイタッチ。
「レイヤのお馬さんはしっぽがふさふさしてるのですよっ! ゼノビアのうさぎさんはおしゃれさんなのです。征四郎のくじらもかわいいですが、やっぱりみんな可愛いのですよ」
 征四郎が楽しそうにしていると、ゼノビアがふと動いた。
 ルーシャンと桜子がタキシードを着た双子のような犬のぬいぐるみを見ていたことに気づいたのだ。
『お友達、連れて帰ってあげてくださいね。大きいぬいぐるみの注意は──』
「かんしゃするぞ!」
 ゼノビアの励ましを受け、桜子がアドバイスに笑顔を見せた。
「ありがとう、おねえちゃん!」
「こんどはわしの番だな! るーしゃん、わしが取ってくるぞ!」
 桜子が銃を構え、撃つ!
 ゼノビアの教えをしっかり守ったからか、おばちゃんが負けと苦笑する鮮やかさでミッションコンプリート!
「おめでとう」
 長く話すことは厳しいから、可能な限り筆談するようにし、どうしてもという場合だけ声を出すようにはしているゼノビアだったが、この祝辞は口に出して言いたかったのだ。
 と、その時、射的の隣の屋台で歓声が上がる。
 視線を移すと、りりあ、夕、アル、チカ、伊邪那美が金魚すくいしていた。
「これすぐに破れる、もう1枚!」
「お兄ちゃん、その辺で止めた方が」
「勝ち逃げすんなっ、絶対取ってやる!」
 チカがかなり使っているらしく、ポイの山が出来ている。
 この後、ルーシャンが隣にしゃがみ、指導の結果、何とか1匹ゲットに成功した。
「まぁ、うちじゃ飼えないから、戻すけどな」
「そうなの?」
「ま、うちは手間が掛かるのがいるから」
 チカが勝った余韻を味わってからおじさんへ声を掛けて金魚を戻すと、ルーシャンがチカを見上げてくる。
 手間が掛かると引き篭もりの相棒はイコールだが、ルーシャンの中でイコールにはならなかったらしく、泳いでいった金魚に「いい人のところにいけますように」なんて見送っている。
「ボク、もう下りる……。これ以上使ったら食べられなくなっちゃう。お小遣いが少なくて……」
「チビはこどもだね。わたしのようにたのめばいいというのに」
(さっきからキュウリが食べたいとかステーキ串が欲しいとか分けてくれとか無茶振りしまくってたくせに)
 伊邪那美も惨敗だったらしく、食べ物が買えなくなることより、続行断念。
 そんな伊邪那美にシキがドヤ決めているが、頼まれた夕は無言で金魚すくいしながら、心の中で呟く。
 金魚など世話しきれないことより、スーパーボールをすくわせ、気を逸らそうとしたが、シキは両方いいとご指名された。
 実際に夕の指し示したスーパーボールを取られてしまい、どうしようと言う所で、救世主りりあが自分が掬った金魚は飼うと申し出てくれたのだ。
(……初めてとは思えない位上手いよな)
 りりあは夏祭りもエージェントになるまで馴染みがなかったそうだが、1回ポイを失敗させた後はコツを掴んだのか、スピードこそないが確実に掬っている。
(金魚見たいってシキが言いそうだけど、遊びに行っていいのかな)
 夕はちょっと判らないと思いながら、金魚を1匹掬う。
「ホント上手だよね。やっぱり扇捌きに通じるのかなぁ」
「どう、なんでしょう? ただ、水で破れないように、注意して動かして、ます、ね」
 アルがえいやっと金魚を掬うのに答えながら、りりあも金魚を掬う。
 そこへ伊邪那美が乱入した。
「それ、掬えなかったボクの立場がなくなっちゃう!」
「チビだからだよ。おとなではないからね」
 当然、シキがフッと話に加わるが、伊邪那美も負けてない。
「ちっがーう! それ言うならシキだってチビだよ」
「わたしはいいのだよ」
(どういいんだろう)
 夕がそう思ったのは言うまでもない。
「わしもこういうのは得意であるぞ!」
 そこへ桜子が加わると、先程の歓声よりも大きな声が上がる。
 鮮やかな手並みで金魚が掬われていく。
「だが、このものたち以外はお返しするぞ」
 桜子が2匹の金魚を除いて取った金魚を返す。
 曰く、1匹でも良かったが、この2匹の仲が良さそうで、引き離すのは忍びないそうだ。

「あれ、そういや何人かいないな。もうそろそろ花火じゃなかったか」
 金魚すくい惨敗し、近くの食べ物の屋台を巡って食べまくっていたチカがきょろきょろ見回していると、雑踏の中から武継とオリヴィエがやってきた。
「白虎丸が店仕舞いするから手伝ってきた」
「少しお手伝いして、皆のお土産にって少しお菓子貰いました」
 オリヴィエと店番をしていた武継は白虎丸の店仕舞いも少しお手伝いしたらしく、白虎丸からお礼にと駄菓子を貰っていた。
 手伝っただけと最初は武継も断ったが、皆に配って欲しいと頼まれたし、貰ってくれると嬉しいと言われては断れない。
「その白虎丸は?」
「少ししたら、合流する」
 チカが首を傾げると、オリヴィエが簡素に返す。
 が、隣の武継がちょっと苦笑していて、『少し』『何か』しているのだろうというのは何となく判った。
 白虎丸が自ら出る案件となればひとつしかないので、チカは思う。
(大丈夫かな)
 自分にはハードルが高い場だったと家から出ない日が明日から続かないといいが。
 ……とりあえず、半分くらい泣いてそうな気はした。
 そのチカに気づいてか気づいていないかは判らないが、オリヴィエが皆を促し歩き出す。
「花火の絶好のポイントを見つけたらしい」
 8時から花火が上がることになっていたが、そんな大掛かりと呼べるものでもない為、絶好のポイントが必要だとナガルがポイント探しに行ったのだ。
 結果、先程つくしへ池のほとりが見やすいという連絡が入り、そこへ移動しないと8時に間に合わない。
「よく見つかったよね。人結構出てるのに」
「この前もね、絶好のポイント見つけてくれたんだよね」
 もしやという顔をする人が増えてきたので、ナガルに教えてもらったお面屋でお面を買い、顔につけたアルが感心すると、つくしが先日行った夏祭りについて話し出す。
「夏はお祭りシーズンだし、花火も沢山上がるから、皆色々見てるね」
「花火は何度上がってもいいよねっ」
「うんうん」
 アルとつくしの会話も弾む。
 手には沢山の戦利品があり、自身が持っていないつくしは別として幻想蝶の中に収納した方がと指摘する者がいるかもしれないが、指摘されてもここにいる誰もが断るだろう。
 だって、この重さも持ち難さも夏の思い出だから。
「あ、こっちだよー!」
 池のほとりではナガルがこっちだと手招きしていて、皆そちらへ足を運ぶ。
 ちょうど裏手に位置するからか、人も少なく、確かに絶好のポイントであるようだ。
「無事に間に合ったでござる」
 既に白虎丸も到着し、ナガルと一緒に皆が見やすいようセッティングに勤しんでいる。
「足元が少し暗いでござるゆえ、気をつけるでござるよ」
 白虎丸は年少組だけでなく、普段着ない浴衣を着る面々に声を掛け、転んだりしないよう配慮するのを忘れない。
「ありがとう!」
「助かります」
「礼には及ばぬでござるよ」
 しっかりした手に支えられたから転ばずに済んだと笑うルーシャンと武継に白虎丸も笑って応じる。
 でも、多分十分仕置きしたんだろうな、と一部に思われていたが、正解である。

「そろそろ8時! 始まるよ!」
 ナガルの弾む声が響く中、最初の花火が上がり、夜空には綺麗な華が描かれた。

●真夏の夜に輝く日々花
 夜空に次々と光の華が描かれていく。
「わぁ、きれい!」
「ホント! しかも、ボク達の特等席!」
「ここならきっと綺麗に見えると思って」
 ルーシャンが顔を輝かせると、ナガルがどやっと笑う。
「るーしゃん、花火のときは、たまやというのが作法だ」
「え、マジ?」
「馬路? よくわからぬが、本当だ!」
 ルーシャンへ声を掛ける桜子へチカが思わず聞くと、『マジ』をよく理解しなかったものの桜子は真顔でこくりと頷く。
「帰ったら、教えないと。……ビックリするかな」
 先日の夏祭りを思い返すナガルはルーシャンの嬉しそうな声を耳に拾い、ルーシャンに聞いてみた。
「ビックリ?」
「大きな掛け声、してるの見たことがないから」
「落ち着いた人なんだね」
 ビックリの理由を聞いたナガルは、何か納得した。
 でも、きっと、ルーシャンが望めば、やってくれるんじゃないかという気がするが、ルーシャンの口ぶりでしか判らない彼女の英雄は実際のところどうなのだろう。
「今度お願いしてみようかな」
「お願いしたら、どうしてくれたのか、教えてね」
「うん、ナガルおねえちゃん」
 ナガルはルーシャンと密約(?)を交わした後、疑問に思っていたことを聞いてみる。
「そういえば、たまや、かぎやってどういう意味?」
「あたし、聞いたこと、あります、ね……。花火師さんの、屋号らしい、です……」
「うちもそれは聞いたことあるな」
「あ、前に教えてもらった!」
 りりあに続いて黎夜がそう言うと、伊邪那美も加わり、玉屋、鍵屋とは何という話が花火の合間に短くされる。
「詳しい、ですね」
「そういうのやっけに詳しくてね。中身が若くないから詳しいんだよね」
「あー……なるほど」
 感心するりりあへ伊邪那美がそう言うと、黎夜は若さが足りないと伊邪那美が評する彼女の能力者が教えたのだと気づく。
(でも、それは本人の前で言わないほうがいいだろうな)
 黎夜がそう心の中で呟いている間も会話は賑やかに続いている。 
「なら、次から掛け声しないとな!」
「作法ならば、行うでござるよ」
 チカがぐっと気合を入れると、白虎丸も作法は守らなければと気合十分。
 ゼノビアのように事情がある者やオリヴィエのように色々ハードルが高い者などは無理に大声を出さなくていいとしながらも、花火が上がる度に声を上げる。
「いいタイミングで打ち上がると気持ちいいな、これ」
「だから、作法なのかもしれぬでござる」
 多分違うが、本人達が満足ならそれでいいだろう。
 大事なのは、楽しむ心だ。
「ですが、オウジとレイヤはものしりなのですね」
 花火の合間、征四郎が感心する横で花火を見上げるオリヴィエは、多分この後その話を聞きたいと頼み込むのだろうな、と近い未来を予想する。
 自分の近い未来は、神輿を担いだことをネタにされることなんだろうが……。
「オリヴィエ、本当にお疲れさまなのですよ」
「……あれは、予想してなかった」
「征四郎も、ちょっとおどろいたのです」
 オリヴィエにしか聞こえない位小さな笑い声が耳に響く。
 それとなく気に掛けていた年少組の中でも取り分け気にした征四郎が楽しく過ごしたようで、オリヴィエは安堵した。
 食べ物も遊びも堪能して、随分持っていても、きっと全部持つと譲らないだろうから、せめて雑踏歩く時には気を遣おうと思いながら。
「こんなに賑やかにゆっくりここの花火見るのって初めてかも」
「そうなの?」
「絶好のポイントなんて知らなかったしね」
 見上げたアルにつくしが反応すると、アルはそう言って笑った。
「いつも知ってると案外見落とすのかも」
「そっか、知ってるからってこともあるんだね」
 アルの言葉に目から鱗が落ちる気持ちのつくしは、ふと、『いつも知っている』存在のこと、自分はどこまで本当に知っているのかと思う。
(ずっと傍にいるけど、傍にいるから判らないってことあるのかな)
 どうか、この花火を見て、綺麗だと感じる心が一緒でありますよう。
 『いつも』が重なっていくことが出来ますよう。
 そう願わずにはいられないつくしは周囲を見回した。
「うむ、じつによきかな。はなびというものはおもむきがあっていいね。ユウ、らいねんはうちあげてくれたまえ」
「無理」
 夕はシキの言葉に即返した。
「ユ、ユウはよろこぶわたしがみたいとおもわないのかね」
「幾ら掛かると思ってるんだ」
 ふるふるとなるシキへ夕が花火を打ち上げるお金と十影家の経済事情について語り出す。
「ユウはわたしがおよめにもらうからとつげない……。どうすればユウにはなびをあげてもらえるというんだい」
「別に上げなくても、一緒に見られればいいと思うんだけど」
 夕は視線の端でつくしが笑っちゃいけないけど笑いたそうな顔をしていることに気づいたが、前半軽く流して、違う方向のシフトに掛かると、シキはすぐに鷹揚な笑みを浮かべた。
「なるほど。そうしておもいでをつくっていくということだね。ユウもなかなかわかっているじゃないか」
 夕が花火の合間にシキをでこピンしたのは言うまでもなく、涙目でふるふるしているシキの頭をりりあが撫でて慰めた。
 即復活のシキ、とてもポジティブ。
 何だかんだで夕が大切に思っていることは見ていれば判るものだ。
(そういえば、あの時も冬じゃなかった……)
 そうした光景を見ていたゼノビアはふと、冬以外に見た花火を思い出した。
 あの時はエージェントになったばかりで、初めての休日に皆で遊園地に行き、ジェットコースターに久々に乗ったりしたが、最後観覧車から花火を見たものだ。
(花火、ちゃんと見れてるかな)
 一緒に頑張ると言ってくれたのだから、お酒呑みつつでもいい、思いだしてくれるといいな。
 あの時よりは、成長していると思うし。……まだ、訓練で勝てたことないけど。
 と、武継と目が合う。
「今頃、一緒に見ているといいですね」
 彼の英雄も同じ会場にいるのだ。
 花火に纏わる思い出が彼らにあるかどうかは判らないが、同じ想いであるのは確かなのでゼノビアは頷く。
「後でお土産渡して、花火の話沢山しないと」
 傍に在ることを望む彼の英雄に自分が感じたことを伝えたい。
 武継は花火の見逃しがないよう空を見上げる。
 そして、夏祭りの終わりを告げる最後の光の華が描かれた。

 花火が終われば、祭の終わり。
 帰りの時間だ。

●思い出携えて
「片付け、手伝うから」
「征四郎も一緒にかえるので、また今度なのですよ!」
 オリヴィエと征四郎が皆を送り出す。
「今日は楽しかった! たっくさん笑ったし。舞も花火も綺麗だったし。お祭りって何度でも楽しいなって思った!」
 笑うナガルは雑踏の中に迎えに来た英雄の姿を見つけ、走ろうとしたが、制止され、からんころんと来た時と同じように歩いていき、迎えに来た英雄と共に帰っていく。

「お小遣いやっぱり少なかった! ケチ!」
 伊邪那美は迎えに来た彼女の能力者に頬を膨らませるが、それよりも着替えて来いと頭を抱えられ、ぷりぷりしながら、着替え場所を借りる為、同じく着替えるアルと共に社務所の中へ消えていく。
 その社務所に入る直前にチカが「わ、思ったより目が死んでる」と魂が抜け掛かっている己の能力者を引き戻しに掛かっているが、ちょっと時間がかかりそうだ。
 時間が掛かりそうと言えば、白虎丸か。
 既に白虎丸は帰っていったが、そこから先が長い。
 だって、帰り際に「今日という今日は許さぬでござるゆえ、しっかり報告させていただくでござるよ」と死刑宣告ちっくなこと言ってたし。
「今日は、花火の作法について桜子ちゃんから教わったの。ね?」
「わしがいったおかげで、みなで言ったぞ。びゃっこどのはすごかったが、おりびえどのは声がちいさかったな」
 ルーシャンと桜子もそれぞれ迎えに来た己のパートナーに花火のことを話しながらもお土産を手渡し、それから彼らと共に家路へ着いていく。
「僕からもお土産」
 武継も綿飴を差し出している。
 そのすぐ後に目の前で食べてもらい、感想を聞いて嬉しそうに笑う。
「楽しめてた、みたいですしね」
 武継がそう言うのは、自分達だけで帰宅する訳ではないからだろう。
 流石に目立つことも考えられ、武継の両親が近くまで車で迎えに来るらしく、彼らも待ち合わせ場所へ移動するとのことで、雑踏の中へ消えていく。
「途中まで送ってくよ。夜道危ないし」
「ありがとう、ございます。お祭りの話、しながら、帰りたかった、ですし」
「それはいいあんだね。わたしもたのしかったから、はなしたかったところでね」
 りりあが迎えに来てくれるらしい英雄との待ち合わせ場所に移動しようとするのをシキを連れた夕が呼び止め、りりあも嬉しそうに笑う。
 祭の話をしながら、3人が楽しそうに帰っていくのに続くようにつくしが別行動だった英雄と合流しての帰路についた。
「あと、花火大会はこの日なんだよね。この日は最大規模だから気合入れないと、ね!」
 つくしは笑って、空を見上げる。
(だって、今年は今年しかない。来年は違うかもしれない)
 心の中の呟きが心から決して出ないよう祈りを込めて、つくしは笑うのだ。

 時同じくして黎夜も帰路に着いている。
「ゼノビアのおかげだけどさ」
 射的で取れた戦利品を見せると、祝福されて、黎夜は改めてゼノビアに感謝する。
 それと、撃ち易いよう浴衣を調整してくれたつくしにも。
「浴衣、着崩れしないでよかった」
 着付けてくれた大家さんにも感謝しないと。
 あと……黎夜は新しく来た友達の頭を撫でた。
 うちの所に来てくれて、ありがとう。

「今年も……今年は特別いい夏になったよね」
「征四郎も今年はトクベツ楽しい夏でした」
 着替え終わったアルが片づけを手伝う征四郎へ声を掛けると、征四郎はそう笑った。
「また、今度ね」
「ええ、また今度ですよ」
 征四郎に見送られ、アルも勝手知ったる足取りで歩いていく。
 家に帰ったら、何から話すかという贅沢な悩みは解決しそうにないけど。

 帰宅したゼノビアは、祭の出来事を一生懸命書いている。
(今日は、楽しかった。イギリスのお祭りとは違ってた)
 目を閉じ、あの日々と思い馳せた花火をその心に蘇らせ、最後に一言添えた。
『いつも一緒に頑張ってくれてありがとう』

 祭の後片付けも終わり、帰宅し、寝静まる家の中、オリヴィエは1人、その本を開いた。
 何故、その本を選んだかと言われたら、今日過ごしたからとしか言いようがないが、今日はその本を読みたいと思ったのだ。
「……………………わっしょい」
 やっぱり大声ではない。
「かぎや」
「たまや」
 その言葉をやはり大声ではなく、口に出す。
 皆で見た花火は、口で上手く言えない何かをくれたような気がする。
 だから、オリヴィエは、もう1度、その言葉を繰り返した。

 今宵の夏祭りは、楽しい思い出としてそれぞれの心の中で永遠に在る。
 いつも、いつでも、その日に還ることが出来るよう。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【オリヴィエ・オドラン(aa0068hero001)/男/10/Vrai olivier odorant】
【葛原 武継(aa0008)/男/10/祈られ、願う無垢な『子供』】
【稍乃 チカ(aa0046hero001)/男/17/八宏の静寂を壊し、護る為に殺す者】
【木陰 黎夜(aa0061)/?/13/夜明けに温もりを見る少女】
【紫 征四郎(aa0076)/女/7/未来へ進む瞳】
【桜寺りりあ(aa0092)/女/17/優しき時間を愛して】
【白虎丸(aa0123hero001)/男/45/天然王白虎丸】
【伊邪那美(aa0127hero001)/女/8/神の舞姫】
【ゼノビア オルコット(aa0626)/女/16/いつか音が響く世界へ】
【御代 つくし(aa0657)/女/16/太陽よりも輝く笑みを浮かべて】
【ルーシャン(aa0784)/女/6/穢れなき白の女王】
【十影夕(aa0890)/男/17/目線と存在と】
【シキ(aa0890hero001)/?/7/ゆえにわたしがシキである】
【泉興京 桜子(aa0936)/女/7/溌剌なる桜の姫】
【アル(aa1730)/女/13/舞う歌姫】
【ナガル・クロッソニア(aa3796)/女/16/夜を舞う鈴猫】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
真名木です。
この度はご指名ありがとうございます。
夏祭りのリンクシナリオでしたので、場所の違いもあることより、緩やかではありますが、リンクさせていただいています。
皆さんにとって良い夏の思い出になれば幸いです。

日々花の花言葉:楽しい思い出。
colorパーティノベル -
真名木風由 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年09月26日

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