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『世界超えても 』
アオイ・トライアルセブンaa4076hero001)&エミナ・トライアルフォーaa1379hero001

●ゆめ
 あたしは、夢を見る。
 起きたら忘れる、束の間の夢。

 あたしは、そこでは人間じゃなかったんだ。
 今も人間に見えるかと言われると、違うだろうな。けど、人の形なんてしてなかった──だって、機械だったから。
 でも、あたしは……あたし『達』『姉妹』はいて、お喋りするのが好きだった。

『あたしに任せてくれれば、誰かが手当てするまでもなく戦闘なんて終わるって。だから──』

『戦いに絶対はない。そう言っていたのはあなたですよ』

『そうだけど、姉様はあたしに任せてのんびりしてていいんだぜ』

『あなたは──』

 そこで、あたしは目が覚めた。
 憶えてないけど、夢を見た気がする。
 懐かしい気がしたから、かつての世界の夢でも見たとかかもな。
 この世界に召喚された時に色々吹っ飛んじゃったから、忘れたその夢がかつての世界だったとしても、本当にそうなのかどうか、あたしには分かんないけど、。
 ま、あたしが懐かしくて、あたしがそうだと思えばそうだろ。
 それで十分だ。

●あなたは、ここにいた
 あたしは、ベンチに腰掛け、深い溜め息を吐く。
 ここは、H.O.P.E.東京海上支部───この世界に降り立って、それから、ここに来た。
 あたしにはよく判らないけど、この世界であたしみたいに異世界から来た存在と誓約を交わした人は能力者と呼ばれ、大体の人はここのH.O.P.E.に登録し、エージェントってのになるんだってさ。
 1人で戦うのには限度があるってのは、あたしにも解る。
 けど、今日はちょっと混雑してるみたいで、手続きが難航してるらしくて……正直退屈だ。
 あたしに見かねっていうか自分もそうだったみたいで、あいつが様子見に行ったけどよ、ちょっと時間掛かり過ぎだよな。
 こんなに待たせんなら、あたしらだけで戦っても───

 視線の端を、青い髪が流れた。

「ありがとうございます。中々興味深かったです」

 抑揚なく、棒読みといっていい声。
 でも、言っている内容には感情があって───いや、そんなことは今どうでもいい。
 あたしは殆ど反射的にその声の方へ顔を向けた。

 青い髪の少女が、身振り手振りで何か話している。
 その両腕はあたしみたいに───この世界で言う、アイアンパンクって奴のようだった。
 話しているのは知り合いらしく、右手の甲を見せると、その知り合いは気に入ってもらえたことの感謝を口にしている。

「誰?」
 あたしは思わず通りすがったこの世界の奴っぽそうな人を掴まえて聞いていた。
「あぁ、あの子は英雄のエミナちゃん。彼女、表情や声で感情が出ないからって、右手の甲にある小さい窓に顔文字沢山表示させるの。いい子よ」
 驚きながらも教えてくれた言葉。
 あたしは、話を聞きながら直感した。

 エミナ。
 あたしは、知ってる。

 この世界に来て細かいことは憶えてない。
 でも、感じるんだ。

 あたしは、知ってる。
 あの人は、姉様だ!

 けれど、その時、姉様は駆け寄ってきた能力者らしき子に声を掛けられ、あたしはやっと順番が来たと呼びに来た自分の能力者に呼ばれていた。
「エミナ……」
 あたしは、その名を反芻する。
 もう、心は決まっていた。
「あたしは、アオイ・トライアルセブン(aa4076hero001)だ」
 隣で、えーぜろいちじゃなかったのかと言われても、あたしは気にしないぜ。
 だって、姉様がここにいる。
 それなら、あたしもその名を名乗らなきゃダメだろ?

 今度会ったら、姉様に声を掛ける。
 憶えてない可能性もあるけど、そんなの声を掛けてから考えればいいだろ!

●あなたは、だれ
 私に向かって、誰かが近づいてくる。
 誰でしょうか。周囲に知り合いはいなかったと思ったのですが。
 振り返ると、私とは違う真っ赤な髪をした、外見年齢にして17歳位の少女が接近していました。
 両腕がアイアンパンクのように機械化されていますが、恐らくアイアンパンクではないものと思われます。
 ……という分析をしている場合ではありませんでしたね。
「どなたでしょうか」
「名前、エミナって言うんだってな。フルネーム、聞いていいか」
 名乗る時はご自分から名乗るべきとは思いますが、何か確かめたいことがあるように見受けられますので、先に名乗った方が良さそうです。
「エミナ・トライアルフォー(aa1379hero001)と申します。以後お見知りおきを」
 私がそう名乗ると、目の前の少女は私が名乗った名前を何度も繰り返し始めます。
 何か変なことを言ったでしょうか。
 もしかしたら、かつての世界で関係があったかもしれませんが、残念なことに私の記憶にこれ程までに鮮烈な紅さはありません。
 ですが───
「お名前を伺っていいですか」
 私は、その目をじっと見る。
 私とは違い、表情豊かそうなこの方の頬には、『7』の文字。
 それだけでなく、私は深い所で何かを感じている。
 恐らく、この方は『そう』なのでしょう。
「あたしは、アオイ。姉様の妹だ」
 妹?
 唐突に言われたことについていけません。
 私はかつて医療機械でしたから、私が姉で、こちらの方が妹というのであれば、こちらの方もかつての世界では機械であったのでしょう。
 それならば、私と同じように両腕が機械であることも整合性がつけられます。
 嘘を言っているようには見えませんし、何より私が深い場所でこの方に何かを感じているのなら、私の記憶になくとも同質であることが考えられるでしょう。
「あなたが妹と言うのなら、そうなのでしょう」
「ああ! 記憶の殆ど忘れても、姉様のことを忘れるものかよ」
「そういうもの、ですか」
 私はそう言いながら、アオイさんが笑っている様を見つめます。
 この方は、私と違って笑うことが出来るのですね。
 声も弾んでいて、リズムを感じます。
 妹というのであれば……、少し羨ましいですね。
「あたしは姉様のこと、尊敬してたんだ。ここに来た時に殆ど吹っ飛んだけど、姉様は姉様にしか出来ないことやったのは憶えてる。あたしは姉様と話すの、好きだったぜ」
「話す……?」
「ここで言う、チャットみたいな空間だな。姉様とあたしは違う所にいたから、そういう場所でしか会えなかったのも憶えてる」
 つまり、電脳空間上で会っていたということになりますから、やはりお互い機械だったのでしょう。
 口振りからして、私とアオイさんは一緒の場所にいなかったようですが。
「あたしと姉様は、英雄だったんだぜ。他の姉様も凄かったけど、英雄ってまでになったのはあたしと姉様で、でも、姉様はいつも姉様で、本当に大好きで尊敬してる」
 ですが、私にはアオイさんの記憶がありません。
 思い違いではないでしょうが───H.O.P.E.の研修にもあった、英雄が同じ世界から召喚されたとしても同じ時間軸であるとは限らない。同じ世界でも時系列が異なる場合もあり、その謎は英雄が記憶の多くを失っていることもあり、この世界では解明されていないという事実に当て嵌まるものと思われます。
 きっと、アオイさんは、未来の私を知っているのでしょう。
 この世界に来て、多くを失っても尚、どこかで私を憶えていて、どこかで私を見かけて知って、そして、今日この日に声を掛けた。
 そう考えると、やはり整合性が取れます。
「ところで、姉様、姉様ん所の能力者、どうだ? あたしのはしょうがないヤツなんだが、姉様の能力者はどうなのかと思って」
「私にエミナの名を与えてくれた人。創る楽しさを知っている人ですね」
 この一言に尽きるでしょう。
 まだ未熟といって差し支えない年齢の少女と言えばそれまででしかなくとも、その身に宿る好奇心、物を作る喜びはまるで湧き水のようです。
 けれど、それだけでなく、自身の未熟を受け入れ、成長しようと思える人。
 とは言え、猪突猛進で、勢いで突っ走ることもありますが。
「姉様の能力者は、あたしのとは違うっぽいよな。あ、ってことは、姉様はバトルメディックなのか?」
「ええ」
 『事後』の『治療』ではなく、『事前』の『予防』をする為にこの身はあれど、人を救う術を手にしたいという思いがそうさせているのでしょう。
 アオイさんはジャックポットの適性だそうですが、能力者の希望で近接戦闘重視で考えている為戦い方をシフトしていると笑っていて、やはり私とは違うものを感じます。
「戦闘は専門外だろ? 今後はあたしに全部任せて後ろにいてくれていいんだぜ!」
 ……。
 …………。
 ………………。
 ちょっと今ムッとしているみたいです。
 顔文字を表示させましたが、疎いみたいで気づかないようです。
 仕方ありません、判り易い手段を取りましょう。
「調子に乗るんじゃありません」
「姉様、いひゃいいひゃい。頬引っ張らないで」
 口は災いの元ですよ。

●わたしとあたし
 姉様に怒られた……。
 前にもこういうのあったような気がするけど、憶えてないんだよな。
 けど、姉様に会えて、嬉しい。
 聞いた範囲だけど、姉様はあたしよりもずっと前にこの世界に来てて、エージェントにもなって、色んな戦いを経験してるみたいだ。
 姉様があたしより戦いを経験してるなんて、不思議って言うか……姉様は後ろにいるだけってイヤだったのかもな。
 知らなかった姉様の思いが見えたけど、でも、今の姉様凄く充実してるみたいで、それはそれで凄い嬉しいぜ。
「アオイさん、いいえ、アオイ」
 姉様が初めてあたしの名を呼び捨てで呼んだ。
 その手が、すっと伸びてくる。

「この世界でまた再会してくれてありがとうございます」

 あぁ、やっぱあたしは姉様が好きだな。
 本当に尊敬出来る人。
 あたしに魂なんてものがあるとしたら、だから、姉様を刻みつけることが出来たんだろうな。

「あたしこそありがとう。姉様」
 あたしがその手を握ると、姉様の右の手の甲の小さな窓が感謝しているみたいな文字が浮かんでいるのが見えた。
 ですが、と姉様が言ったのとほぼ同時に小さな窓に怒ってるみたいな文字が浮かぶ。
「私は、後ろに引っ込んでいたいと思いませんので、先程のようなことは2度と言わないようにしてください」
「はーい」
 私は、姉様には勝てそうにないな。

 でも、だから、姉様はあたしの姉様で、世界を超えてもあたしは憶えていた。
 そして、今、本当の意味で再会したんだ。
 それって、勝つことより凄くないか?

 これからもよろしくな。大好きなあたしの姉様!

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【アオイ・トライアルセブン(aa4076hero001)/女/17/響き奏でるかんばせの花】
【エミナ・トライアルフォー(aa1379hero001) /女/14/咲き乱れる文字の花】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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真名木です。
この度はご指名ありがとうございます。
時間軸違えど同じ世界からやってきた2人の再会を、それぞれの視点での一人称、心情中心でとのことでしたので、今回は双方の目線を意識した形で執筆させていただきました。
お2人が戦場で助け合う日も遠い未来ではないかもしれませんね。
互いのなすべきことの為、姉妹共々これからもこの世界で歩き続けてくださいね。
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真名木風由 クリエイターズルームへ
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2016年09月28日

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