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『世界を見つめる青年。 』
世良 霧人aa3803)&エリックaa3803hero002

プロローグ

 その誓いを忘れたわけではなかった。
 夜眠ると今でも鮮明に思い出せる。
 夢の中では彼に逢える。
 あのオレンジ色の髪だとか、微笑みだとか、そういうものを。
 ただ目覚めてしまえば、その光景は夢の彼方に仕舞われて……朧げで、輪郭すらつかみどころなく、ただ砂のように消え果る。
 そんな夜を何度繰り返してきたのだろうか。
 不定期に見るその夢は、記録に取り留めておこうとしても、その瞬間には覚えていられなくなってしまう。
 机の上でノートに向かい、夢日記をつけようとペンを持つ。
 そうやって。霞の向こうにいるような彼を思い出そうとするたびに、胸の奥の何かが疼くのだ。
 いつかきっと会える。
 胸が痛むたびにそう思える。
 彼と結んだ大切な誓約それ自体は失われていからこそ、痛むのだと。『世良 霧人(aa3803)』は思えるから。

 そうして彼がいない季節が、いくばくか過ぎた。


本編 再会

 それはなんでもない日常の話。
 霧人は職務を終えて妻の待つ家へをめざし歩いていた。
 その両肩に疲れを抱えながら。
 時は学校祭時期、生徒たちのやる気が増す時期はトラブルも増えるし、勉学に身が入らなくなる。
 それらすべてを計算しフォローするのが教師の務めであるが。
 そう言うイベントは各季節ごとにあるのが学校というもの。
 同僚に至っては、学校はアミューズメントパークと変わらないと言っていた、霧人はその言葉を受けて、なるほどいい得て妙である、そんな風に思っていた。
 ただ確かに仕事量は多いが、それ以外の負担は何一つないと言っていい。
 霧人のクラスはいい子ばかりだし、仕事量は多くてもサポートしてくれる仲間たちがいる。家に帰れば気遣ってくれる妻がいるし、家族の笑顔は癒しである。
 疲れ気味であっても日々の生活を思えば笑顔になれる、そんな帰り道。
 霧人は唐突に非日常の気配を感じ、はたと立ち止まる。
 黄昏時、自身の影が坂に暗く長く伸びること、それを霧人は黙って見つめる。
 次いで霧人は、生ぬるい風に霊力の残滓を感じた気がして振り返る。
 静まり返る路地裏。遠くに聞こえる子供たちの嬌声、それがいつもと違ってひどく不吉に思える。
「クロ……」
 そう従者の名前を呼ぼうとして、霧人は口をつぐんだ。
 いつもそばにつき従ってくれている従者は、今日はそばにいない。
 妻の英雄に駆り出されてどこかに行ってしまったのだ。彼も大変だなと思いながらそれを許した今朝の出来事を少し後悔する。
「気のせい、かな」
 そうため息をついて霧人は再び歩き出した。
 気のせいであればいい、そう願いながら。
 しかし。そんな願いはすぐに、無残に踏みにじられる。
 霧人は足早に帰路を進む、先に進めば進むほどに、この住宅地に何かが巣食っているような悪寒が強くなるのだ。
 どこから誰が現れるか分からない。
 心なしか恐怖で心拍数が上がる。
 その時だ。
 霧人の背後で砂利を踏みしめるような音が響いた。
 不思議と背後から迫る、誰かの荒い息遣いも聞こえた。
 霧人は弾かれたように振り返る。直後すれ違う青年、その太陽の輝きに似たオレンジ色の髪が視界の端に映る。

「うわあーーー!! オレはまだ死にたくないんだぁーー!!」

 そう叫び霧人を追い抜いていく青年、その声にも覚えがあった
「エリック!!」
 反射的に霧人は、その人物の名を呼んでいた。自分でもなぜだかわからずに。
「あんた、俺を知ってるのか?」
 二人はそれが再会だということを忘れていた。そしてそれを確かめる手段は今はない、危機が迫っていたからだ。
 直後路地を曲がって現れたのは二体の従魔。全身を鋼鉄の鎧で固めた屈強そうな鎧武者。
 どうやら、彼らはその青年を追っているようだった。
「君、追われて……」
「なぁ、あんた」
 その青年は場違いなほどぬけた表情で、霧人を見た。
「どこかで会ったことがないか?」
 次の瞬間、脳裏に一気に大量の情報が流れ込んできた。しかしそれの意味を理解する前にきえていく、ただわかったのは、彼が何を望んでこの世界にやってきたのかだ。
「君は、約束を果たしにここに来たんだね」
 次の瞬間振り下ろされる斧。それを霧人は半歩下がって回避する。
「そうだ、俺は、約束したんだ! 誰かに、たぶんあんたに。この世界の」
 エリックが走りながら手を伸ばす。霧人もつられて手を伸ばした。
「ああ、そうだたしか、その約束は。この世界の」

「「絵をかく」」

 次の瞬間胸の奥の熱量が一気に爆ぜるのを感じた。
 湧き上がる霊力の本流が従魔を弾き飛ばし二人を守るように円となって展開される。
 それは明確な形となって湧き上がり、二人を繋ぐ霊力のラインとなる。
 光がほとばしった。
 この世のすべての物理法則より二人の感情が優先される感覚。
 二人はかけがえのない相棒となることを誓ったのだ。
 
 共鳴。

 次の瞬間二人は一つになっていた、新たな姿、新たな力。
 幻想蝶を片手に霧人は従魔を睨む。
「話は後にしよう」
――ああ、こいつらをぶっ飛ばして。そして……。
「ああ、誓いを果たそう」
 まだ二度目だというのに、その共鳴姿はひどく体になじむ。
 霧人は手を何度も開いたり握ったりして、そして走り寄る従魔を見据えた。
「いける!」
 次の瞬間霧人は敵の足を払い後方へ飛んだ。
「これを覚えているかい?」
 次いで取り出したるはネビロスの操糸。
 それを見ると、にやりとエリックは笑い、告げた。
「覚えてるぜ、俺にピッタリな武器だ」
 霧人が着地直後駆ける、槍を潜り抜け、糸で従魔の足をからめ捕り一体を転倒させた。
 次いで迫る二体目の従魔、その手首をサマーソルトで蹴り上げ、斧を弾き。
 素早く着地、脇を駆け抜けるように背後へ。
「すごい、敵が止まって見える」
 霧人はそう感嘆の声をもらすと、従魔の膝を蹴りぬき、背中を蹴り上げ、膝立ちになった従魔の肩へと上る。
 次いで槍を持った従魔の攻撃をギリギリまでひきつけて。飛んだ。
 その槍は従魔の顔面に突き刺さる。
 エリックはその光景を見て笑った。
――畳み掛けるぜ!
 その言葉に頷くと霧人はその手の糸を手繰る。キリキリと甲高い音を鳴らして、次の瞬間、従魔はバラバラになってはじけ飛んだ。
 唖然と佇むもう一体の従魔。その槍を腕ごと糸で絡め捕り。
 霧人はそのすぐ左隣に降り立つ。
「チェックメイトだよ」
 そして霧人は左手に握ったナイフを鎧の隙間に差し込んだ。
 あたりに霊力が感じられなくなると二人は共鳴を解いた。
「おかえり、エリック」
「あ? んんー。ただいま霧人」

エピローグ

 その後霧人は特に何も考えずに家に連れて帰った。
 妻は最初は驚いた顔をしたが、一瞬で状況を理解したのか。
 今からもう一人分創るわね。
 そう言って台所の奥に潜っていった。
「まぁ。彼女に関しては心配してなかったけど」
 問題は、彼女の英雄と、自身の第一英雄の反応だな。
 そう霧人は溜息をついて、エリックを見る。
 彼はさっそくスケッチブックに向かっていた。
 これから彼がどんな絵をかくのか。
 それが楽しみな霧とは柔らかく微笑んで夕飯が並ぶのを待つ。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『世良 霧人(aa3803) 』
『エリック(aa3803hero002) 』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 OMCご注文ありがとうございます!
 いつもお世話になっております、鳴海です。
 今回は二人目の英雄と出会うお話ということで描かせていただきました。
 リンクブレイブ一周年にして激動の時代到来ですね。
 あちこちで人間関係相関図が書き換わっているのを見てわくわくしている鳴海です。
 エリックさんとも今後楽しくかかわれることを期待しております。
 それでは鳴海でした。
 またお会いしましょう!
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リンクブレイブ
2016年09月28日

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