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『 赤い花・青い花 』
ブルノ・ロレンソka1124)&響ヶ谷 玲奈ka0028)&オーキッド=フォーカスライトka2578


 書斎机に積み上がった書類に、男が手を伸ばす。最初に手に触れたのは箔押しの白い封筒だった。
 静かで重厚な書斎は彼そのもののようであり、ペーパーナイフを扱う仕草は優雅と言ってもいいほどだったが、見る者をうすら寒くさせる雰囲気を漂わせていた。
「フン……随分と丁寧なことだな」
 男――ブルノ・ロレンソは小さく鼻で笑うと、灰皿の上で静かに煙を立ち昇らせている葉巻に手を伸ばす。
 封筒の中身は招待状だった。
 顔見知りの男が夏の間だけビアガーデンを開催するという。
 ひいてはその披露パーティーに裏街の顔役であるブルノも顔を出してもらいたい、という内容である。
 ただし、流麗な斜体文字の印刷文の下に、癖のある字でペン字の書き込みがあった。

『尚、開店祝いには相応しき花を所望す。貴殿の人脈に大いに期待するもの也』

 ブルノの唇から、煙と一緒にくくっと小さな笑いが漏れた。
「あの野郎、人にモノを頼むのが随分上手くなったものだ」
 それからほんの少しの間考え込むと、手元のベルを鳴らす。
 影のように部屋に滑り込んで来た部下に指示を与えると、すぐにブルノは招待状を脇に避け、次の書類に手を伸ばした。


「オーナー直々のご指名とは、嬉しいね」
 響ヶ谷 玲奈は悪戯っぽく肩をすくめて見せた。
「頑張ったご褒美らしいわよ? せいぜい楽しみましょ!」
 魅惑のウィンクを送りながら、オーキッド=フォーカスライトがブティックの扉に手をかける。

 ――いらっしゃいませ。
 店員が丁寧に出迎えるのは、先にブルノから用向きが伝わっているせいもあるだろう。
「今日はよろしくね。折角のチャンスだもの、とびっきり素敵なドレスを作ってもらっちゃうわよ!」
 オーキッドは豪奢な赤い髪を揺らして、堂々と店内を練り歩く。
 およそエルフらしくない、肉感的な印象を与える美しい脚は、ダンサーとしての彼女の誇りでもある。
「花、か……」
 玲奈は薄青緑の瞳を好奇心で輝かせながら、店の中を見回した。

 ブルノが招待状で依頼された『花』とは、パーティーに華を添える美女のこと。
 といっても別にお酌をして回れとかそういう意味ではなく、ただそこにいて、好きなように楽しんでいるだけでいいのだ。
 そこでブルノは、今月の売り上げに大いに貢献した玲奈とオーキッドに白羽の矢を立てた。
 もちろん、ブルノが選んだ『祝いの花』なのだから、妥協は許されない。
「一応は仕事のうちだが……まぁ、好きに楽しめ。金なら気にするな」
 ということで、ブルノが気に入っているこのブティックで、ドレスから靴からアクセサリーから一式整えることになったわけである。

 玲奈は少し考えこむ。
 右も左もわからない、過去さえも曖昧な自分を取り立て、カジノというブルノにとっては恐らく重要な資金源となる店でディーラーを任せてくれていることには、大いに恩義を感じている。
 今回もご褒美の面もあると分かってはいるが、どうせならブルノの役に立ちたいと思うのだ。
「玲奈?」
 ふわり。甘い香りと共に、肩に柔らかな重みがかかる。
 背後から肩を包むように腕をまわし、覗きこむのはオーキッドの煌めく金の瞳。女でもどきりとするような妖艶さだ。
「店長さんが楽しめって言ってるときは、ちょっと無茶するぐらいでちょうどいいのよ」
 オーキッドもまたブルノを好きなのだ。
 そしてこの「好き」は男として愛するというのではなく、雇い主として尊敬しているという意味である。
 それ以上を求めない。また、求められることもない。この関係が心地よいからこそ。
「……そうだな。じゃあ遠慮なく行こうか!」
 玲奈の笑顔が陽光のように輝いた。


 そしてパーティーの当日。
 ふたりをブルノが馬車で迎えに来た。
 店までそれほど距離がある訳ではないが、こういう場合に歩いて向かうのは野暮というものだし、きちんと着飾った女にその辺りを上等の靴で歩きまわらせるようなブルノではない。
 ブルノ自身は、無駄な皺が一切見当たらない仕立ての良いダークカラーのスーツを纏い、真っ白なカラーにはくすんだ濃紫色のタイを締めている。
「支度はできたか」
「もちろんよ! 店長さん、いかがかしら?」
 オーキッドは片手を腰に当ててポーズを取り、流し眼をくれる。
 身につけたのは深い赫色のタイトなミニドレス。
 燃えるような赤色の豊かな髪をアップにまとめ、踊る炎のような赤く大きなグロリオサの花飾りをあしらった。
 耳飾りはシンプルなラインストーン、豊かな胸元にも細いラリエットを無造作にかけただけである。
 短めのスカートからはすらりとした脚が伸び、思い切り細く高いかかとのピンヒールでダンサーの面目躍如の堂々たる立ち姿である。
「どう? 似合ってるかな?」
 玲奈は笑いながら、どうだ! といわんばかりに、両手を腰に当てて胸を逸らす。
 サテンの光沢が艶やかな青色のチャイナドレスには、金糸銀糸の刺繍の睡蓮が艶やかに咲き誇っていた。
 金糸の房飾りと薄青の宝石を組み合わせた耳飾り、ブレスレットは揃いで作らせたものだ。
 ドレスにも似た飾りが取り付けられており、玲奈が動くたびに僅かに揺れ、均整のとれた身体のラインをいやがうえにも強調する。
 艶やかに咲き揃う赤と青の花を前に、ブルノは軽く鼻を鳴らしただけだった。
「乗れ。行くぞ」
 時間には煩い男である。
 馬車はすぐに目的の店に向けて走りだした。


 店の玄関先で馬車を降りる。
 取り次ぎの者が知らせたのか、すぐにこの店のオーナーが顔を見せた。
「よく来てくれたな、ブルノ!」
 人当たりの良さそうな、ブルノとそう歳も変わらないように見える男だった。
 ブルノは僅かに身を引き、オーキッドと玲奈が相手から良く見えるように立つ。
「約束の花だ。俺の選んだ花に文句はねえだろうな?」
 玲奈がクスッと笑う。
 面と向かって褒めてはくれなくても、こういう風に紹介してくれるところが嬉しいではないか。
 だから持ち前の明るい笑顔を、オーナーの男に向ける。
「こんばんは。素敵なお店だときいて、楽しみにしてきたんだよ」
「お招き有難う。いい夜になりそうね」
 オーキッドも軽く会釈し、それから嫣然と微笑んだ。
 オーナーは感心したようにふたりを眺め、それからブルノの肩を叩いた。
「勿論だとも! お前のおかげで今夜は最高の夜になりそうだ。レディ達も心ゆくまで楽しんでくれよ!」
 一同は互いに簡単な自己紹介をすませ、店の中へすすむ。

 壁に鏡を巡らし、たくさんの燭台を灯した部屋は、昼のように明るかった。
 入ってすぐには飲み物のカウンター、それから談笑のスペースがある。
 中庭に面した大窓はすべて開け放たれ、気持ちの良い風が吹き抜けていく。
 庭にもあかあかと篝火が焚かれ、適度に距離をあけて並べたテーブル席を照らしていた。
 客人達は思い思いの席につき、オーナー自らスパークリングワインの瓶を手に現れ、客のグラスに注いで回る。
「では皆さん、今宵はゆっくりとお楽しみください!」
 グラスを掲げ、皆が口々にオーナーに祝辞を述べる。
 和やかにパーティーが始まった。


 玲奈がビールのグラスに口をつけた。
 ブルノと親しいオーナーらしく、店は居心地がよく、ウエイター達のしつけも行きとどいている。
「うん。結構おいしいかも?」
 余り飲める方ではない玲奈にもビールが上質であることがわかった。
「でも飲み過ぎは注意だね」
「潰れたら置いていくぞ」
 ブルノが当然とばかりに言った。
「大丈夫よ! このお店なら、ちゃーんと面倒を見てくれるわよ。ね、店長さん?」
 オーキッドがくすくす笑いながら、挨拶まわりから戻って来たオーナーに同意を求める。
「ははは! そんなふうに思ってもらえたのなら光栄だな!」
「もちろんよ。お料理もおいしいわ。店長さんも召しあがらない? はい、あーん♪」
 オーキッドがエビのフリッターをフォークで口に届けると、茶目っ気いっぱいのオーナーは目を見開いて大げさに頬張る。
 オーキッドも玲奈も、それを見てコロコロと笑った。
「そうそう、ビアカクテルも今日は用意してあるよ。軽い物を試してみてはどうかな?」
 オーナーがカウンターを示す。
「ありがとう。飲んでみるね」
 玲奈が立ちあがり、オーキッドも続く。
 
 カウンターでバーテンダーに声をかけると、ちょっとした雑談になった。
 ふたりとも店ではお酒を選ぶ担当ではないが、やはり他の店はどんなところかと興味もある。
 だがいつまでも話しこんでいる訳にもいかなかった。
 開店祝いの『花』を、放っておく者ばかりではないのである。
「こんばんは」
 伊達物らしい若い男が、笑みを浮かべて玲奈の隣にさりげなく並ぶ。
「こんばんは」
 屈託のない笑顔を返す玲奈に、勝手に脈ありと考えたか、男は座席に誘う。
 身につけている物などを見れば、玲奈にはおよそどれぐらい「遊びにお金を使える」男かわかる。
 雑談に相槌を打ちつつ、軽く観察を済ませたところで、男が距離を詰めてきた。
「良かったらこの後、何処かへご一緒しませんか? いい店があるんですよ」
 玲奈は笑顔で応じつつ、胸元から魔法のようにカードを一枚取り出した。
「それは嬉しいな。わたしはここのカジノでディーラーをしているのさ。良ければ運試しに来るかい?」
 なんのことはない、営業である。

「なあに? 楽しそうね」
 玲奈が言い寄られているのを見てか、オーキッドがさりげなく声をかけてきた。
 だが問題ないと知ると、伊達男に営業スマイルを送る。
「ごめんなさいね、お話は後でお願いできるかしら?」
 それからさりげなく、玲奈についてくるようにと目配せした。
「……なにかあったのかな?」
「ちょっとしたお手伝いよ」
 悪戯っぽく玲奈を見た瞳は、金とも緑ともつかない輝きを放つ。


 いつのまにかブルノの姿は店の中に見当たらず、オーナーの姿もない。
 目を凝らすと、テーブル席で雑談しているふたりの男の姿があった。
 賑やかで、明るくて、綺麗なビアガーデン。
 だが彼らのいる一角は、見えないベールで仕切られたような異質な空間だった。
 どんな表情をしているのかも、何の話をしているのかも全くわからない。
 だが夏の夜気にひと筋の冷気が混じったような、一種独特の気配は、オーキッドも玲奈も良く知っているものだった。
「オーキッドさん?」
 玲奈はオーキッドが何をしようとしているのかがわからず、表情を窺う。
「……いくわよ」
 オーキッドは玲奈の腕を抱えて、ぐんぐんと歩き出す。
 その目の前には鋭い目つきで庭の隅を窺う男がいた。
「こんばんは。なにかお捜しかしら?」
 オーキッドはさりげない風で男の前に回り、今まさに一歩を踏み出そうとした男の向こうずねを、絶妙のタイミングで蹴飛ばした。
「なッ……?」
 玲奈とオーキッドは両側から男の腕を掴んで支える。
「今日は日頃の憂さを忘れて楽しまなくちゃ。さ、行こうか」
 玲奈は自由なほうの手で、男の上着のポケットを二度ほど軽く叩いた。
 わかっているぞ、というように――。

 ブルノとオーナー、どちらが標的だったのかはわからない。
「イカサマで慣れてるからね」
 玲奈が見たところ、なにか良からぬモノが男のポケットに入っていたのは間違いない。
 店の強面に引き渡した後で男がどうなったかは、ふたりにとってどうでもいいことだった。


 カウンターに腰を落ち着けたオーキッドと玲奈の背後に、ブルノが現れた。
「そろそろ帰るぞ。充分楽しんだか?」
 ふたりは男を見上げる。
 有能で、頼りがいのある、雇い主。結果を出せばきちんと応えてくれる。
 ――それでいい。それだけで充分。
「ええ。とっても楽しかったわ!」
「わたしも。ありがとう、オーナー」
 オーキッドと玲奈は顔を見合わせてクスッと笑う。
「……なら結構。明日からまた稼いでくれ」


 それから何日か後のこと。
 ブルノ宛に、手紙が添えられた包みが届く。

『赤い花と青い花へ。心ばかりの御礼をお納めいただければ幸い』

「……フン」
 小さく笑うブルノのデスクの上では、アクアマリンとガーネットの耳飾りがひとそろいずつ煌めいていた。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka1124 / ブルノ・ロレンソ / 男性 / 55 / 人間(CW)/ 機導師 / 裏街の顔役】
【ka0028 / 響ヶ谷 玲奈 / 女性 / 19 / 人間(RB)/ 聖導士 / 青い花】
【ka2578 / オーキッド=フォーカスライト / 女性 / 21 / エルフ / 機導師 / 赤い花】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました。夏の夜の宴のひと幕をお届けいたします。
どうも女性の(主に衣装の)描写に字数が偏っているような気がしないでもないですが。
一応、黒一点(?)にも、赤と青の間の色を添えてみました。お気に召しましたら幸いです。
このたびのご依頼、誠に有難うございました!
colorパーティノベル -
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ファナティックブラッド
2016年09月30日

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