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『 オーサカ・ダンジョン・ラプソディ 』
ナガル・クロッソニアaa3796)&ラドヴァン・ルェヴィトaa3239hero001

●スタート地点

 窓の外を流れる景色が、少しずつ形を取り戻していく。
 電車が減速し、少し揺れる車内ではせっかちな人々がもう腰を上げている。
 だがナガル・クロッソニアは、まだ額をガラス窓にぴたりとくっつけ、真ん丸な目を見開いて窓の外を見ていた。
 流れていくビルはどんどん密度を増していき、並走する線路がいきなり増えたと思った瞬間、ふっと辺りが暗くなる。
「ひゃっ!?」
 余りに景色に見入っていたので、電車が駅舎の大屋根の下に入ったことに気付かなかったのだ。
『大阪――大阪。お忘れ物などなさいませんよう、お気をつけて……』
 機械音声のような女性の声が、日本語に続き英語で乗り換えの案内を語り始めた。
「気をつけるのだ。こちらが開くぞ」
「は、はいっ!」
 ラドヴァン・ルェヴィトに言われて、ようやくナガルは額から顔を離した。

 それとほとんど同時に目の前の扉が開く。
「うひゃああ!?」
「ナガル、はぐれるでない!!」
 降りる人、乗る人が入り乱れ、目をぐるぐるさせながらナガルはその波に呑まれてしまった。なんといっても降りた人が一斉に近くの階段に向かうのだから、押し流されたらそのままである。
 いも掘りのように、ラドヴァンが引っ張り出してくれたお陰で、どうにかホームで一息つくことができた。
「び、びっくりしました……」
「うむ。ここが大阪か。実に面白いな」
 目を細め、ラドヴァンが駅舎を見上げる。
 大きなドラゴンの翼に覆われたような駅舎には、鉄骨とガラスが組み合わされた通路が張り巡らされ、無数の人々が行き交う。

 ……ラドヴァンは改めて駅の案内板を確認した。
「うむ。今度こそ間違いない。大阪だな!」
「大阪です! 新大阪じゃなくって!!」
 ナガルが嬉しそうに駅名を指差した。
 そう、紛らわしいのだが、新幹線は新大阪駅で、大阪駅ではない。
 どうやらこのふたり、ここに辿りつく前に少しトラブルに見舞われたようだ。
「楽しみです! えーと、ここは……」
 ホームの数字と、構内案内板を見比べる。
「ここ、は……なんだか出口が一杯ですね」
 ラドヴァンもじっと睨みつける。
「このホームにあるだけでも、上だの下だの向かう階段があるのだな」

 ――なるほど、わからん!

 だがそもそもこのふたり、大阪のどこに行きたいのか全く決めていない。
 ナガルは知識の宝庫と信じるラドヴァンと一緒なら、何も怖くないと思っているし。
 ラドヴァンはといえば旅好きで、どこを見ても楽しめる男なので、めちゃくちゃな場所ほどワクワクしてくるという始末。付き合いの悪い能力者を置いてきたので、気ままな旅を思う存分楽しむつもりだ。
 というわけで。
「取り敢えず歩いてみましょう!」
「おう!」
 ふたりは自信満々で、どこに続くのか分からない階段を下りて行った。

 ――このとき、ナガル達はまだ知らなかった。
 この階段こそが、伝説の可変ダンジョン『UMEDA』への入口であった事に……!

 ザッザッザッ。


●地下突入

 改札を出て、最初に目についた階段を下る。
「電車が入ったホームはかなり高い場所にあったからな。地面はまだ下がるのであろうよ」
 ラドヴァンがこう言ったからなのだが、改札を出た時点で一度周囲を確認すべきだった。そこが地面だ!
 だがふたりは周りの人々とまるで隊列を組むように、堂々と歩いていく。
 ……ナガルはやや小走り気味だったが。
「なんだか、は、はやいです……!」
「おお、大丈夫か。よく考えてみれば、なにも俺様達が急ぐ必要などないのだ」
 ラドヴァンがからからと笑う。
 工事中らしい細い通路を抜け、しばらく歩いていくと、突然視界が広がる。
「ここは中継地点か」
 道なのか広場なのか、これまで歩いてきた道とは全く違う、広く美しい一角である。
 そして困ったことには、そこからほぼ全方位に向かって道が伸びていた。
「ではどの道からいってみるかな」
 ラドヴァンはこの状況がすっかり面白くなってきたようだ。
「あっち! 少し明るいです」
「うむ、なにやら水の匂いがするような……?」
 通路を右に折れ、しばらく行くと、その理由がわかった。
「な、何なのだここは……!」
 ラドヴァンはひらけた天井から差し込む陽光のもと、立ちつくす。
 光を受けて煌めくのは、謎の石造りの泉である。
「まさかこの水を飲めば生命力が回復するなどということもあるまいがな」
 ナガルはラドヴァンの腕を掴みながら、こわごわ覗きこんだ。
「浅い、ですね?」
「そのようだ。とにかくこの場所を覚えておくとしよう」
 ――セーブポイント。

 このまま泉沿いに道を進むか、別の方向へ行くか。
「あっちへ行く人のほうが多いですよね」
 ナガルが指さす方へは、確かに人の流れができている。
「よし。ではまずはあちらへ行くとするぞ!」
「はい!」
 まさに行き当たりばったり。
 来た道を少し戻り、幅の広い通路を進む。
「……少し下っているな」
 ラドヴァンが首を傾げるが、そこで戻るという発想はないようだ。
 通りの両脇にはファッション関係の店が多く、ナガルは楽しそうに眺めながら歩く。
「なんだかカラフルで賑やかですね」
 そうして少し歩くと、また分岐に出くわす。
 ここでもやはり、取り敢えずは人の多いほうへ向かう。
 すると可愛い衣装や雑貨の店が並ぶ美しい通りは、突然うす暗い通路へとつながった。ナガルはあまりの変わりように、思わず振り向く。後ろにあるのはやはり明るく綺麗な通りで、まるで魔法にかけられたようだ。
「こっちで良かったのでしょうか?」
 だがラドヴァンは目を輝かせている。
「ふむ……俺様の勘はこっちのほうが面白いと告げているぞ!」
 気がつけば、通路の様相は一変していた。
 怪しく、ほの暗く、左右の壁の切れ目からはまだ細い道が奥へと続いている。
 それが両側である。
「旅はこうでなくてはな! 地下にあるというのに、まるで裏街の風情ではないか」
 足取り軽く細い路地へ踏みこむと、さっきまでの表通りでは颯爽と足早に歩く人が多かったのに、この路地には蠢く影のような人々が集まっていた。
 ときどき思い出したように電飾の派手な店が現れたかと思うと、その角を折れた先には歯医者などがあったりする。
「ところで少々腹が減ってな……なにか旨いものはあるだろうか?」
「いい匂いがします」
 ナガルが鼻をひくひくさせた。
「よしではこの店にするとしよう。……安いな?」
 壁にかかった値札に、ラドヴァンが首を傾げた。
「貨幣単位が違うのか?」
「持っているお金が使えるでしょうか……?」
 ナガルはおそるおそるお財布を覗きこむ。
 もちろん貨幣単位は間違いではなく、やたら安く、やたら旨いうどんをすすり、元気回復。
「よし。では元の場所へ……ん?」
 店を出たところで、ラドヴァンは口をつぐむ。
 既にどっちから歩いてきたのか、どっちへ行けば進むのかもわからない、似たような細い通路がそこに……。


●セーブした所からはじめる

「よ、よし。ここは確かに見覚えがあるぞ!!」
 石造りの泉のほとりで、ラドヴァンが拳を握った。
 どういう訳か似たような名前の建物が4つもあって、それぞれ似たような地下通路が2階分もあって、それぞれが連絡通路でつながっていて、もう一生出られないかと思ったが、どうにか戻って来たところだ。
「さっきはこっちだったから……あっちです!」
「よし、行くぞ!」
 全く懲りてないふたりは、続いて別の道へ。
 だがすぐにまた、足が止まる。
「いい匂いが……」
「するな」
 見れば長蛇の列。よく分からないがとりあえずその後ろにつき、薄黄色のクレープのような、けれどまったく甘い匂いはしないモノを、適当に指さして注文する。
 ラドヴァンの風貌にも、店員は異邦人に慣れているのか全く気にしていないようだ。
「イカヤキ、というのに、イカの形をしていないぞ」
 通路の端っこを少し借りて、パックに入った暖かい食べ物にかぶりつく。
「……旨い!!」
「うまいやろ〜? せっかくやねんし、食べといて損はないで」
「お、おう」
 ラドヴァンはナガルに『知り合いか?』と目で尋ねるが、ナガルはふるふると首を横に振る。通りすがりに間の手を入れる見知らぬオッサンとの出会いも、旅ならでは……と思っておこう。

 また寄り道をしてしまったが、更に先へ。
「それにしてもどこまで続くのだろうな、この地下迷路は。こうなったら端を見届けてみたいものだな!」
「はい!」
 ナガルも元気いっぱい、冒険の旅を楽しんでいる。
 そうしてまた、四方へ道が伸びるポイントに到着した。
「おお。ここはまた人が多いものだ」
 縦横無尽に人々が行き交い、見ているだけでも飽きないほどだ。
「みんなあんなに早足で、どうしてぶつからないのでしょう?」
「なにか特殊な感覚器官でも持っているのかもしれんな」
 すでに人外扱いの大阪人である。
「おお、あそこに階段がある。もしや地上に出られるかもしれんな」
 ラドヴァンが見つけた階段を一生懸命上がると、ぶわっと熱い風が吹きつけた。
「ひゃあ!」
 そこは確かに地上だった。
 びっくりするほど普通の、余り幅の広くないアスファルトの歩道に出たのだ。
 複雑に交差する広い車道を、車がびゅんびゅん走って行く。
「ううむ……ここはどこだ」
 ラドヴァンが目をぱちぱちさせた。
 実際、地下の光景に慣れてしまった目には、地上の光景のほうが奇異に映る。
「あっちが駅なのでしょうか……?」
「む?」
 ナガルが指さす方には、ビルとビルの隙間に、見覚えのあるドラゴンの翼のような大きな屋根が見える。
 ――だが。
「どうやってあそこへ行くのだ?」
 目の前の車道を横切ることが自殺行為であることはすぐにわかった。
「地下道を戻るしかなさそうですね」
「そのようだな! なんというトラップだ」
 面白そうに笑いながら、ラドヴァンは階段を下りる。

 そこでまた、間違った。
 さっき来た通路ではなく、別の通路へと入りこんで行ったのだ。
「おお、また珍しいものがあるな!」
「こっちのお店も見ていいですか?」
 全く懲りていないふたりは、あっちへうろうろ、こっちへうろうろ。
 立ち飲みのおじさん達を眺め、お菓子を量り売りする店を覗き、アイスクリームにかぶりつきながら、どんどん進む。
 ――そしてついに辿りついたのだ。
「ここは……ここが地下迷宮の終着点か……!!」
 ラドヴァンが感極まったように掠れた声を上げた。
 地下街の果てに待っていたのは、巨大な噴水だったのだ!
「ラドヴァンさん、ほら! お金が入ってます!」
 ナガルの言う通り、なぜか小銭が沈んでいる。
「なるほど、また戻って来られるようにというまじないだな。では俺様たちも投げ込んでおこう」
 さすがにラドヴァンは物知りだった。
「そんなおまじないがあるんですか!」
 ナガルは感心しながら、孔のあいた小銭を投げ入れる。
(またこうして、ラドヴァンさんと旅ができますように……!)
 迷っても一緒なら怖くない。
 楽しくて、頼もしい王さまとまた……!


●伝説は続く

 泉の周囲にはまたもや多くの上り階段があった。
 ふたりは満足げに、力強く地上を目指す。
 ――が。

「ここはどこだあああああああ!!!!」

 見れば、傾きかけた夕日がビルの間に沈んで行く。
 辺りには見覚えのあるものは何もない。
「く……くくく……まだだ……まだ終わらんぞ……!」
 ラドヴァンが拳を握った。
「はい!」
 ナガルは期待に胸を膨らませ、目を輝かせる。


 俺達の大阪はまだこれからだ――!!


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa3796 / ナガル・クロッソニア / 女性 / 16 / ワイルドブラッド・回避適性】
【aa3239hero001 / ラドヴァン・ルェヴィト / 男性 / 46 / バトルメディック】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました。大阪地下迷宮狂詩曲のお届けになります。
およそどこかわかるように描写したつもりですが、お楽しみいただけましたら幸いです。なお、まだ北側は手つかずです!
口調など、気になる点がありましたらお知らせください。
この度のご依頼、誠に有難うございました!
colorパーティノベル -
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2016年09月30日

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