▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『祭囃子はまだ遠く 』
コルト スティルツaa1741)&アルゴスaa1741hero001

 じぃわ、じぃわと蝉の鳴く声が聞こえる。
 締め切られた窓の向こうでは、夕暮れが遠くの空を藍色に染めてていた。色は涼しげなのに気温はべらぼうに高い。アスファルトから蜃気楼が立ち上っているのを幻視しそうだ。

 だがそれも、空調の効いた室内にいれば関係ない。

「……おっ、これかわいいな」

 ソファーに寝っ転がってファッション雑誌をめくるコルト スティルツ(aa1741)は、スティック状のスナック菓子を片手にだらだらと休日を満喫していた。
 ぽりぽりと棒状に固められたジャガイモのお菓子をかじる姿は、なんというか、とても堕落している。ソファーに寝転がって雑誌を読みながら、ついでに前髪はゴムで縛っている辺りが特に。なんというか、クジラの噴水みたいになっている。

「あ、秋の新作じゃん、チェックしとこ」

 エアコンが涼やかな風を送り出してくれている最高のコンディション、テーブルの上には氷の入った麦茶も完備。
 窓の外は夕方過ぎだというのに気温が35度を超えている。
 文明の利器万歳。コルトはそんなことを思いながら雑誌のページをめくった。

 しばらくぺらぺらと雑誌をめくって、飽きたところでぐぅっと伸びをしながら起き上がる。
 そのまま鼻歌なぞ歌いながら、幻想蝶からいくつか装備を取り出して、柔らかい布で磨いたり、細かい傷の確認などをしていく。
 コルトの表情は楽しそうだが、手つきは真剣そのものだ。

 と。

「ギチ」
「ん? ぉあ、おかえり……なんだその格好」

 灼熱地獄から、同居人アルゴス(aa1741hero001)が帰還した。
 虫ヅラにHOPEマンのお面をくっつけ、左手にわたあめの入ったファンシーな袋とりんご飴と食べかけのかき氷、右手に金魚の入った袋と焼きそばの入ったタッパを提げ、食べかけのたこ焼きを持って帰ってきた。

 なんというか、ツッコミどころが多すぎて最早触れたくない。
 かき氷など溶けかけている。両手がふさがって食べられないとは思わなかったのだろうか。それとも溶けた汁を飲んでいたのだろうか。虫だけに。

「ギチチ」
「んぇ? ああ、そっか今日花火大会か……」

 あからさまに祭りを満喫した格好のアルゴスが指差したのは、思いの外几帳面な字で壁掛けカレンダーに書かれた「花火大会」の文字。
 何を隠そう、アルゴスがうきうきと書き記したものである。

 そういえばなんかどんどこ聞こえてたなぁ、とぼんやり思うコルト。
 興味がないので全く気にしていなかった。せっかく近所でやっているのに。アルゴスがうずうずしていたのに。連れ出されるのは断固拒否した。だって外暑い。

「あーそれでその格好……というかそのお面は意味あるのか……」
「ヂ」
「あるのか? 俺にはまったくわからんぞ……」

 多少デフォルメされてマヌケな顔になっているHOPEマンのお面を受け取って、内心「イラネ」と思いながらもしげしげと眺めてみる。見れば見るほど苛立ちが募る面構えだ。コルトはこれ以上イラつく前にお面を投げ捨てた。アルゴスが回収した。気に入っているらしい。

「にしても、買い込んだなぁ……」

 机に並べられた戦利品の数々を見ながら、コルトは若干呆れ顔だ。コルト的には、祭りの屋台で売っているものなどコスパが悪すぎて買う気がしないのである。買う奴の気が知れない、とも思っていた。酷い言い様である。

「ギチギチギチチ」
「いやそんなもん見せられても」

 光る腕輪なぞその最たるものである。アルゴスは嬉しそうにぴかぴかさせていた。コルトは呆れたため息をつきそうになって……そういえばアルゴスにとって初めての花火大会だったかもしれないと思い至ってすんでのとことで飲み込んだ。

 なんだかんだ、こういった「行事」はスルーして過ごしてきた。
 これからもずっとそうだと思っていたけれど、なかなかどうして、人生とは面白いものである。

「……なぁ、お前、外で花火見なくていいのか」

 じるじるじるじる、と半分溶けたかき氷を吸い込むアルゴスに、ふと声をかける。
 表情のわかり辛い顔のアルゴスは、一瞬だけコルトに視線を向けると、無言でエアコンを指差した。

「ああ、やっぱ外暑かったのか」
「ギギ」

 ほんとうは、それだけではないのだと、大量の「お土産」を買い込んできたアルゴスを見ていればなんとなく察しがつく。
 でもそれを指摘するのはなんとなく癪で、コルトは「ふぅん」と気の無い返事をして、まだ温かさの残るたこ焼きを一つ摘んだ。

 ドーン、と重低音が窓ガラスを震わせる。

「お、始まった」
「ギュチチチ!」

 途端にアルゴスが窓際に張り付く。
 なにやらコルトに向かってまくし立てているが、相変わらずなにを言っているのか全くわからない。

 ドーン、パリパリパリ。
 ドドーン、シュワワワワ。
 ひゅるるるるる、パチパチパチ。

 色とりどりの炎の花が、夏の夜空を彩っている。

 ふと、コルトは手入れの途中だった愛銃を見た。
 中に詰まっているのは、夜空に咲き誇るあれと、同じもの。

「……ま、たまにはいいか」

 ぱくり、とたこ焼きを口に含む。
 途端に広がるチープな味が、なぜだか妙に、美味しく思えた。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
【aa1741/コルト スティルツ/性別不詳/9歳/人間/命中適性】
【aa1741hero001/アルゴス/性別不詳/30歳/英雄/ジャックポット】
WTツインノベル この商品を注文する
クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2016年10月03日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.