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『Season2 第四話  私が愛した世界 』
御門 鈴音aa0175)&輝夜aa0175hero001

前章

 時は夕暮れ、黄昏時。鈴音と輝夜はH.O.P.E.の車に揺られて帰路をひた走る。
 体に若干の疲れを抱え。ここちよい脱力感の中、鈴音はゲームをしているし輝夜は投げれる景色を見つめていた。
 静かで穏やかな時間がひたすらに流れる。そんな沈黙を息苦しく思ったのか輝夜がぽつりと口を開いた。
「朔夜は本当にあれで捕まったのかの?」
「どういうこと?」
 鈴音はゲームから顔を上げてカグヤを見る。セレクトボタンを押してステータス画面を開く。
「あ奴は……わらわと姉妹じゃが、わらわとは大きく違う」
 輝夜はポツリポツリと何事かを説明し始める。
「性質がそもそも違うし、何より思考回路も違う。能力も違えば、目指すものも与えられたものも違う」
「……輝夜と違っていろいろ考えるものね」
 輝夜は反射的に鈴音の手をぴしゃりと叩いた。小さく笑う鈴音。
「認めたくはないが、あ奴は頭がいい、用意周到じゃ。じゃから昔あ奴を倒す時も苦労した。まぁその時は弄した策ごと叩き切ってやったが…………」
 鈴音は呆れて言葉がなかった。
「じゃがこの前倒した時には、そんな手ごたえもなかった」
 輝夜は鮮やかな爪で皮をひっかきながら鈴音の目を見つめる。
「何かあるかもしれぬ」
「何かってなに?」
 そうこうしている間に車は自宅に到着した、鈴音はぺこりを頭を下げるが輝夜は鈴音を待たず部屋まで上がってしまう。
 すっかりこの生活にも慣れた輝夜。ドアノブをひねってもあかないからと言ってドアを外してしまうこともない。
 きちんと鍵をさして回して扉を開ける。
「あー、つかれたのじゃ」
「ジジ臭いよ輝夜」
 そう言うなり鈴音は休む間もなくボストンバックを取り出して。中に衣類を詰めはじめた。
「なぜ、荷物を詰めておるのじゃ?」
 輝夜はお行儀悪く寝そべったまま鈴音に問いかける。
「え? 言ったじゃない、今日は叔父さんと叔母さんの家に呼ばれてるって」
「おお!」
 輝夜の声が半トーン上がる。
「久しぶりに旨い料理が食えるのじゃ!」
 そう喜び勇んでお泊りセットの準備に取り掛かる輝夜。
「…………え、私の料理って美味しくないの?」
「叔母殿と比べると…………というだけじゃ。いや久しぶりじゃなぁ」
 これで叔父叔母には結構なついていた輝夜である、久しぶりに会えるのは嬉しいのだろう。そんな無邪気な子供っぽい輝夜を見ていると最近幸せになれる鈴音である。
 やれやれと一つため息をついて、鈴音は立ち上がった。
 そして輝夜の手を引く、戸締りをきちんとして。そしてバス停に向かう。
 ちょうどバスが来たところで二人はそれに乗り込んだ。
「これまでいろいろあったわね」
 バスに乗りながら揺られて運ばれる鈴音。その肩に頭を預けて眠る輝夜。
 輝夜が眠っているのをいいことに鈴音はポツリポツリと話を始めた。
「家を出てから初めてよね。帰るのって」
 リンカーになって、働き始めて、叔父叔母に迷惑をかけるのを恐れ家を出た。
 それ以来鈴音は帰っていない。
 久しぶりに長い休みが取れたので、帰ってきたらいい。そう言う話になったのだ。
「最初は、このちびっこ本当にどうしようって、思ってたのよ……」
 鈴音は思い出す。本当に本当の最初は、彼女の美しさに目を奪われたこと。
 けれど彼女の横暴な性格や血を吸う異常さなどを知って、むしろ反動で印象が最悪になったこと。
 けれど、いつも全力で生きている姿や、この世界に順応しようとする姿、甘いものが好きだったりそんな姿に愛らしさを覚えて。ふられて傷ついた鈴音を不器用ながら慰めようとしてくれたり、戦闘では鈴音を叱咤激励しいつも最後まで戦ってくれたことが信頼感になっている。
「ありがとう、輝夜。そしてこれからもよろしくね」
「うむ? 何か言ったかのう?」
 バスが大きく揺れ、それで目が覚めてしまったんだろう。輝夜は目をこすりながら鈴音を見あげた。
「なんでもないよ」
 そう鈴音は笑って鈴音は輝夜の手を引き、停車したバスを降りた。
 叔母宅までは歩いて五分程度の道のりだったが、時刻は夜すっかりあたりは暗くなってしまった。
 予定より三十分も遅れてしまった、そう鈴音は時計を見て歩く速度を少し早めた。
 けれど特に焦る様子もないのは、この半年で叔父叔母たちともある程度打ち解けられたからだろう。
 彼女たちはいつも鈴音を心配してくれた。
 叔母は家事で困ったことがあればいつでもアドバイスをくれたし。不器用な叔父は何かとお金は足りてるかとか、体は大丈夫かとか、心配ばかりしてくれた。
 いつでも戻ってきていいんだぞと。そう預けられた叔母家の鍵を取り出し鈴音は家の前に立つ。
 そして違和感を感じて眉をひそめた。夜だというのに、灯りがついていない。
「鈴音よ、霊力じゃ」
 鈴音はあわてて扉を開いた、カギはかかってない。 
 静まり返った居間。
 鈴音がこれから来るというのに、叔父も叔母もいないのはおかしい。
「そんな……」
 あわててキッチンへと駆け、戸を荒々しく開け放つ。そして鈴音がキッチンでみたのは
 血痕がこびりついた床と、転がった包丁。そして。
「朔夜の字じゃな」
 手紙が一枚テーブルの上に置いてあった。
「そんな、迷惑をかけないようにって、家を出たのに」
 鈴音の両足から力が抜けた。深い絶望が鈴音を飲み込んでいく。
「あからさまじゃな。はっきりわかるように霊力を振りまいてから家を出ておる」
 輝夜は鈴音のそばに座るとその肩に手を置いた。
「そんな、あの子は今H.O.P.E.につかまっているはずじゃ」
「やはり……詰めが甘かったんじゃな……あの時首を跳ねておけば」
 苦虫をかみつぶしたような表情を見せる、しかし。
「だめよ!」
 今度は逆に鈴音が輝夜の肩を揺さぶった。
「それだけはダメ、一度朔夜ちゃんを殺してあんなに苦しんだなら、次は今まで以上に苦しむわ」
「であれば、どうすればよかった。朔夜を殺さなかったせいでまた、大切な物を失ってしまう」
「違う、違うよ輝夜」
 鈴音は輝夜の目をまっすぐ見て答える。
「まだ誰も死んでない、だったら誰も死なないように努力しよう? ね?」
 鈴音はテーブルの上に載っていた朔夜の手紙を差し出した。
「東和ホテル屋上で待つ……」
 それを鈴音は読み上げた。
「東和ホテルとはどこじゃ?」
「待っててね、五条さんに聞いてみるから」
 そう鈴音はスマホを取り出して操作する、ディスプレイには『五条 文菜』の文字。
「あ、先輩どうしたんですか? こんな時間に」
「いきなりでごめんね、東和ビルってどこにあるか教えてほしいの」
「え? もう五年も前に廃ビルになったやつじゃないですか、どうしたんですか?」
「ちょっとね……」
 そう鈴音は口をつぐむ、ないとは思うが文菜が深くかかわることで巻き込まれるのを恐れたのだ。だがそれを後輩は察してくれた。
「事件なんですね。わかりましたURL送っときます」
「ありがとう」
「あ、先輩ところで、次回作なんですが、『竹取物語』にしようと思うんですが、どうです?」
 次回作とは映研でとる映画のことだろう。文菜は味をしめてまた鈴音を主役に映像作品を撮ろうと画策しているらしい。
(この子以上の輝夜なんて、どこにもいないわよね)
「却下」
「えー、そんな」
「ごめんね、また連絡するから」
「はい、先輩もお気をつけて、ちゃんと帰ってこないとダメですよ?」
 そのあと鈴音は文菜にスピーカーフォンにするように言われて、鈴音はスマホから耳を離した、そしてディスプレイを輝夜に向ける。
「輝夜ちゃんもまたね、今度はケーキ食べに行こうね」
「うむ、わらわはケーキも好きじゃ!」
 そして文菜はおかしそうに笑って通話を切った。
「絶対に全部取り戻そう」
「おう、鈴音よ。バカな妹に最後のお灸をすえてやろうぞ」



後章

 東和ホテルとは海に面したリゾートホテルである。と言っても一度も開業することなくつぶれてしまった。
 いわく、幽霊が出るそうで綺麗な内装がよりホラー感を煽るらしい。
 だがそんな前情報を聞いていても鈴音は全く恐れることはなかった。ホラーを克服したわけではない。
 ただ単に必死だったのだ。一分一秒でも惜しかった。
「早く屋上へ」
 そう重たい扉を開くと。そこには長く細い髪を揺らしながら海を見つめる少女がいた。
 少女の名前は朔夜。
 輝夜の妹だ。
「二人をどこへやったのじゃ朔夜!」
「いやよ、お姉さま。そんなに怖い顔してはダメ」
 そういたずらっぽく微笑んだ朔夜、しかし目は笑っていなかった。
「私に勝ったら教えてあげる」
「負けたら?」
 鈴音が問いかけた。
「皆殺し」
 次の瞬間朔夜の両手に大槍が出現、それをノーアクションで射出した。
 着弾、轟音。
 上がる煙と、その向こうに浮かぶシルエット。
 金糸の髪を振り乱し、真紅の刃を構える鈴音。
 鈴音は朔夜と鈴音フォームで相対することを決めた。
――行くぞ朔夜! 今回ばかりは泣いて謝っても許さん!!
 二人は弾かれるように地面を蹴った。そして空気が裂けるほどの勢いで激突。
 衝撃で屋上のコンクリートに何本も傷が走った。
 そしてはじかれたのは朔夜。
「あああああ!」
 朔夜は給水塔に激突し。人形のようにその場に横たわる。
「終りよ、これ以上は怪我をするわ……」
 そう鈴音が歩み寄るが、朔夜がそれを手のひらで制した。
「あなた達は共鳴、するそうね。でもそんな脆弱なたましいが二つつながったところでどうなるの?」
 朔夜は笑う。そして腕を振るうと地面から膨大な、青色の何かが溢れる。
 霊力ではない。そして鈴音にはそれが何かわかった。
「たましい?」
 無数の怨嗟が聞こえた、悲鳴と、懇願、生きたいと望む思いが聞こえた。
 そう鈴音には聞こえてしまうのだ。鈴音には……。
「やめて!!」
 鈴音が鋭く叫ぶと朔夜は告げる。
「ソウル・リンク」
 無数の魂が少女を包むそれは、色も声もなくし単なるエネルギーへとろ過されて。そして少女を成長させる栄養となった。
 つややかな太もも、流れるような髪は長さをまし。胸が膨らむ。
 そしてそこに立っていたのは、成長した朔夜だった。ちょうど鈴音と歳は同じくらいだろうか。
「まぁ、全盛期の半分ってところね……」
 そして朔夜は、何もない空間から六つの槍を召喚して見せた。
 それがホテル屋上を砕き。落下する鈴音。
 そこは十五階。
 煙の向こうから、朔夜が接近してきた。
「え?」
 弾き飛ばされる鈴音。しかしその両足はしっかりと壁を掴み、壁を粉砕しながら朔夜へととびかかる、大剣と槍でのつばぜりあい。
「Danse Macabr」
「なに?」
「この、槍の名前、素敵でしょう?」
――つまらんことを!
 振るう槍を弾き、鈴音は着地する。
――鈴音!
「うん、もう一つ先へ!」
 鈴音から霊力が噴出された。それを吹き飛ばしてまた鈴音は飛ぶ。
 その霊力の幕が剥がれると見えたのは夜の闇を宿したような黒髪。
 輝夜フォームである。
「はぁ!!」
 三合、大剣で切り上げ切り落とし、刺突。それを朔夜は捌いて見せた。後ろに半歩下がってからの切り替えし。
 刺突。それを避けるとハラハラと舞う黒髪。その槍の柄に肩を当てて全身。大剣を滑らせるように腹部に入れる鈴音。
 だが朔夜はもう一本槍を召喚することによってそれを防いだ。
「二槍使い……」
――朔夜は器用じゃからなぁ。
「感心してる場合じゃ……」
――くるぞ鈴音!
 朔夜の反撃。半歩ふみこみ槍の刺突。それをかわすとみるとさらに踏み込み両槍で十字に切りつける。
 それに大剣を巻き込みはじかれガードが上がった。
 次いで弾丸のような刺突。
 左に体をひねって退避。
 しかしそれで体性が崩れてしまった。
 朔夜の横なぎの一撃。
 吹き飛ばされる鈴音。
 転がった先に放たれたDanse Macabr。
 大きく煙が舞う。
「くっ」
 その煙の中から鈴音が飛び出した。壁を走る。血をぬぐって大剣を構え。
 さらに加速する。
「バカの一つ覚えね! お姉さまと一緒」
 違う、一緒ではない。
 鈴音はその時また。フォームを変えた。
「妹の分際で姉の悪口は関心せんなぁ」
 輝夜フォーム〜朱麗鬼〜
 その飛び散る霊力光と姿に朔夜の反応が一瞬遅れる。
 そして輝夜の大剣が閃き、それが致命傷を与える。そのはずだった。
 しかし、朔夜は。
「まだよ!」
 建物の床を破壊、地面を失った輝夜は踏ん張ることができず攻撃を大きくはずした。
 次いで見たのはその下の階に敷き詰められている真紅の槍。全てがDanse Macabr。
「あらかじめ設置しておいたのよ」

――まだ、まだたりないの?

 鈴音は輝夜に問いかける。
 初めて共鳴し、最もなじみのある鈴音フォーム。それは輝夜の力の発現そして鈴音に対する歩み寄りの形である輝夜フォーム。
 そして輝夜と鈴音の力の結晶である朱麗鬼フォーム。
 すべての力を結集しても朔夜と互角、いや、相手の方が一歩勝っている。
 まだだ、まだ力が足りない。
「いや、奴にはない者ばかりじゃ。いくら魂を吸っても。何も得られないと教えてやれ! 鈴音!」
――うん!
 そう頷くと、体の主導権だけを鈴音に移譲する輝夜。
 そして鈴音は朔夜の槍を伝って、朔夜へと近づいていく。
「何をそんなに恐れてるの?」
「恐れてなどない!」
「何をそんなに痛がってるの?」
「痛がってなどない!」
「教えて」
「下等な人間め! 私に近寄るな!」
「あなたは人間を下等だなんて思ってないわ違う?」
 朔夜の瞳が一瞬潤んだ!
「う、うるさい! 人間風情が、私とお姉さまの間に入ってこないで!」
「はあああああああ!」
 次の瞬間鈴音は地面から突き出した槍の先を大剣の刃で正確に撃った。
 その衝撃はその階すべてに伝わり、そして。槍の生えた階ごと全てを粉砕した。
「そんなめちゃくちゃよ!」
 そして階下に立つのは鈴音、その周囲を高密度の霊力であふれさせて佇んでいた。
「私は朔夜ちゃんが来てくれたことに感謝してるよ」
「敵に感謝なんて」
 朔夜は槍を構える。
「私が、輝夜をどれだけ大切に思ってるか実感できた」
 鈴音は思い出す、自分の身の危険も顧みず、輝夜を助けるために廃工場に向かったこと。
「みんなが、どれだけ私を大切にしてくれてるか、教えてくれた」
 朔夜に囚われた鈴音を助けてくれたのは、今まで怖くて触れられなかった『他人』という存在だった。
「そして、あなたが生きて現れてくれたことで、輝夜の苦しみをどうにかしてあげられる」
「どういうこと?」
「輝夜は貴女を手にかけてしまったこと、ずっと苦しんで、苦悩して、後悔していた」
「そんな…………そんなことあるはずない。だって、だってお姉ちゃんは」
 朔夜の脳裏に蘇るのは、姉妹が最初に行き違ってしまった場面。
 あの時朔夜は思ったのだ、姉は自分のことなどどうでもいいのだと。
「元から、こんなひどい結末になんてしなくてよかったのよ! 話し合えばよかった!」
「だまれえええええ!」
 朔夜の霊力が槍に集中、それは地球を射抜くのかと思えるほどに強大な槍と化す。

(スミコ、すまん、わらわの力だけでは鈴音を守りきることができそうにない。じゃから)
 輝夜は祈る、いつも鈴音を心配してそばにいる彼女に。そして。
――頼む、力を貸してくれ!
 そう輝夜が叫んだ瞬間、二人を暖かな風が包みこんだ。
 鈴音の胸の内から湧き上がる熱い思い。それを受けて鈴音の姿がぶれた。
 いくつもの思いと経験を介して進化してきた鈴音と輝夜の力。
 そこに、他者の思いが、願いが加わる。
 そしてその人々の笑顔を守りたいと思う心が。
 癒しでも破壊でもない。救済の力を目覚めさせる。
 鈴音フォーム〜戦極〜。
 流れる金糸の髪はひとまとめに。茜色の鎧が目を引く。その手に鬼帝の剣を携えて。鈴音は朔夜を真っ向から見据えた。
「はああああ!」
 大槍を剣で打ち上げる。
「そんな!」
 そしてその手に大弓を召喚。矢をつがえ、引き絞り、放った。
 魔を滅するその槍は、輝夜の腹部を貫き。そして。
「あああああああ!」
 膨大な魂を空中に解き放つ。
 その緩やかに下降する小さくなっていく体、それを鈴音はしっかり抱きしめた。
(この表情、どこかで……) 
 朔夜を見下ろす鈴音の瞳は穏やかだった。朔夜は思い出す。
 それはかつて別れた契約者と最後の時。彼等は彼女らは一様に。こんな表情を浮かべていた。
 憎しみでもない、悲しみでも怯えでもない、優しい表情。 
 たぶん、許していたのだ。悪しきも良きも許して愛して、死んでいった。
 それを受け入れることができなかったのは自分のせいなのだろう。
 自分の悲しみが深すぎて。受け入れられなかった。
 共鳴を解いて、涙を流す朔夜の手を、輝夜は取った。
「お互い、こんな姿になってしもうたのう」
 そう輝夜は朔夜の頭を撫でる。
 とめどなく涙があふれた、あんなに欲した温もりがここにあった。
「私を、殺して……」
 朔夜は二人に懇願した。全てわかったのだ。自分のわがままだったと。
 どうにもならない事柄を、どうにかしようとしすぎた。
「私は過ちを犯しすぎた。申し訳が立たないわ。私と契約したあの子たち、あの子たちが愛した人間を、私は殺しすぎた」
「だめよ」
 鈴音は凛と告げた。
「それなら、わらわも同じじゃ。わらわは同族を殺した、殺しすぎるほどにな。今すぐお主に首を跳ねられてもおかしくはない」
「一緒に許してもらえる方法を考えましょう? 安易に死ぬことが一番許されないことだわ」
「一緒に? いいの?」
「勿論よ。その代り、負けた子には罰ゲームが必要よね、輝夜」
「そうじゃなぁ、まぁつきものが落ちたようじゃし……もうせんとおもうが。人を殺すことは禁止したいのう」
「そうね、そうしましょう」
「ありがとう、二人とも」
 そう朔夜は下ろしてと鈴音に頼んだ。
 よろけるその肩を輝夜が支え。朔夜は鈴音を見あげた。
「私の最後の契約者になってくれる?」
「うん、よろこ……」

「それまでだ。役立たず」

 その直後銃声が鳴り響いた、連続して三度。
 輝夜はまるで紙細工のように弾き飛ばされ、鈴音は朔夜を守ろうと反射的に前に。
 だが朔夜はそれを許しはしなかった。
 鈴音は目を見開く、一条の光が朔夜の胸を貫いていたから。
「朔夜!!」
 その瞬間、度重なる衝撃で壊れかけていたホテルはついに崩壊を始めた、大量の瓦礫と共に海にのみこまれていく朔夜。
「そんな! そんな!」
「まて! 鈴音。お前が言っても死ぬだけじゃ」
 砕けた地面そして海へ飲まれていく。
「朔夜!」

「ありがう。私を許してくれて」
 その声だけがむなしく虚空に響いて……。
「誰なの!」
 鈴音は目に涙をためて振り返った。
 しかし、そこに魔弾の射手はもういなかった。

エピローグ

 その後鈴音は夜を徹して海を探した、瓦礫の隙間にも、海の底も探したが、見つからなかった
「そんな、そんな、せっかく……」
 鈴音は疲れ切った腕を水面に叩きつけた。
――鈴音よ。もうよい。
 輝夜は言った。
「もう十分じゃ」
 そう共鳴を解いて、砂浜で項垂れる鈴音の頭を撫でた。
(もし、もしじゃ。奴が全盛期の力を取り戻していたなら)
 輝夜は思い出す。自分を苦しめたあの力を。
(あの程度では死なぬはずじゃ。じゃがそれは)
 希望的観測でしかないことは輝夜にもわかっていた。

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『御門 鈴音 (aa0175) 』
『輝夜(aa0175hero001)』
『五條文菜(NPC)』
『朔夜(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 はい、というわけで今回は大長編でしたがいかがでしたでしょう。
 いつもお世話になっております鳴海です。
 今回で妹様との決着がつくということで気合を入れて書かせていただきましたが。
 なんだか後味の悪い感じになってしまいましたが。きっとすっきり終れる展開が何かあるんだと信じて、きっちり書かせていただきました
 鳴海でさえも続きが気になって仕方ないのですが。
 それはまた次のお話ですね! おまちしております!
 それでは鳴海でした。ありがとうございました!

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2016年10月06日

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