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『サンドイッチの気持ち 』
橘 由香里aa1855)&宮ヶ匁 蛍丸aa2951


 それはスライム退治のミッションの後の話である
「あー、もうひどいわねこれ」
「ぐちゃぐちゃじゃない、うわ靴の中まで入ってる」
 そのミッションは難易度が低く、RPGで定番の雑魚敵スライムを倒してくるだけだというから侮った。
「うちの新商品の洗濯機で洗っちゃうから脱いで」
「あ、ありがとう遙華。じゃあお言葉に甘えさせてもらうわね」
 確かに敵は弱く、数が多いだけだったのでそれほど時間をかけることもなかったが、その攻撃をさんざん浴びた二人の少女は全身にゼリーを吹きかけられた状態になってしまいお着替えを余儀なくされたのだ。
 考えればわかっただろうに、対策も取れただろうに、侮ったがためにこの始末。
 二人は自身の油断を深く深く恥じた。
「由香里、こっちよ。シャワールームはこっち」
 そう『西大寺遙華(az0026)』がグロリア社内のリネン室からバスタオルを拝借すると『橘 由香里(aa1855) 』に投げ渡す。
「それにしてもよかったの? グロリア社の施設勝手に使って?」
「いいわよ、半分私のものだし」
 そして二人はグロリア社にいる、このまま家に帰るのもすごく気持ち悪かったので、会社で服を洗ってシャワーを浴びましょうそんな話になってここにいる。
「そうだ、遙華……」
「どうしたの?」
「そう言えば、着替えってどうするの?」
「あ…………」
 今日はとことんつめが甘い二人である。

  *   *

 同刻グロリア社。
 その社内を悠々と闊歩する女性がいた。
『ロクト(az0026hero001)』である、彼女はきょろきょろとあたりを見渡す『黒金 蛍丸(aa2951) 』を先導して歩いている。
「別にここに来るのは初めてじゃないのに、大丈夫?」
 ロクトが笑って振り返った。
「いえ。こういう会社という空気がなんとなく落ち着かないものでして」
 蛍丸は武器の改造申請をしに来たらしい。大事そうに武器を布にくるんで抱えている。
「うーん、いないわね、どこかしら」
 ロクトは腰に手を当てて考える素振りを見せる。
「お忙しいなら普通のスタッフの方でもいいですよ?」
 最近は武器改造の度に遙華を通しているため、グロリア社の窓口で遙華さんはいますかと言ってしまった蛍丸だが。
 よくよく考えればスタッフは誰でもいいのだ。
「まぁ、会えないとなると少し残念ではありますけど」
「あ!」
 その時である、蛍丸が軽く飛び上がるほどの声をロクトが上げた。
 そして意地悪い微笑みで蛍丸に告げる。
「衣装室にいるかもしれないわね。見てきてちょうだい。その先だから」
「は、はひ。なぜ衣装室なんかに……」
「それは、衣装が必要だからに決まってるわ。まぁもしいなかったら私が改造申請受けてあげるから、さぁ行ってきなさいな」
 そうぐいぐい押してくるロクトを拒み切れず蛍丸は単独でグロリア社内部を進軍する。
 そしてあっさりと衣装室の扉を見つけた。
「ここですか…………。遙華さん、入りますよ」
「え? だれちょっとまって」
 そう蛍丸が衣装室のドアを押し開くと、そこにはパラダイスが広がっていた。
 四方の壁は古今東西あらゆる衣装で埋め尽くされ、コスチュームだけではなく小道具も大量に並べられていた。
 ついでにお着替え中の女子も設置してあり、完璧である。
 これぞ衣裳部屋。
(お着替え中の女子?)
 その部屋を見渡す蛍丸の視線が一点で止まった。
 そこには二名の女子が時を止められてしまったような硬い表情でそこにいた。
 片や緑髪の女性は、そのしなやかな足を腹部に押し付けるようにたたんでソックスに足を通す最中であったし。
 片や黒髪ロングの小柄な少女は万歳して何かの衣装を脱ぐ途中であった。
 そして、一番重要なことなのだが彼女たちは下着姿である。
「へ……へ……返事くらい待ちなさいッ!!」
「すみません! 着替えてると思わなくて!」
 片や紫色の上下、片や水色の上下。その柄まで分析しかけた蛍丸であったがその顔面にライオンのぬいぐるみが叩きつけられて我に返った。
「まじまじ見てるんじゃないわよ」
 由香里のしんっと冷え切った声音。直後怒号がグロリア社内に響き渡る。
「出て行って!!」
 直後無作為に投げつけられる衣装室のあれこれ、ヌンチャク、パラソル、手ぬぐい、人形。
「ち。ちがボクにやましい気持ちは、というかこれは間違いで」
 直後幻想蝶から召喚されたのは由香里御用達の武器たち。
「弁明は後にした方がいいわよ」
 そう告げた遙華はちゃっかり別の衣装で体を隠してはいるが、その視線は蛍丸の心を凍てつかせるほどに冷たい。
「ごめんなさい!」
 次いで扉を閉める蛍丸。その背を守る扉にスタタっと何かが突き刺さる衝撃を感じて、蛍丸は顔を青くしたのだった。


   *   *
 

「もう入ってきていいわよ」
 そう由香里の声が響き、蛍丸はほっと胸をなでおろす。
 これからどんな仕打ちが待っていても、甘んじて受け入れよう。
 そんな決意を固めて中に入ると。二人は普段からは想像もできないような衣装をまとっていた。
 由香里はアラビアンなコスチューム。おへそ丸出しで透けた布を体に纏っている、すらりと伸びる足が美しく、妖艶に見えた。
 対して遙華はナース服。ピンク味がかっているいわゆる似非もの、ではあったが白いタイツとミニスカートは普段の落ち着いた雰囲気とのギャップを生み出している。
「二人とも、お似合いです」
「褒めて欲しくてこの服を選んだんじゃないわ」
「サイズが合うのがなかなかなかったのよ」
 そう顔を赤らめてそっぽを向く二人。
「服が乾くまでの一時間、この服装だなんて、ため息が出るわ……」
 由香里がそう告げ椅子に腰かける。
「何があったんですか?」
「蛍丸こそ何でここに……」
 そう二人が自分がなぜここにいるのか説明し終えると遙華は溜息をついて机に突っ伏した。
「ロクト……」
「え? ど、どうしたんですか」
「あなた、騙されたのよ、ロクトに」
「ああ、じゃあ黒金くんがどうしても覗きたくて突撃してきたわけじゃないのね」
「違いますよ!!」
 そう萎縮する蛍丸。
 それを見てニヤリと笑みを合わせる女子二人。
「じゃあ、ちょっと罰ゲームで」
「ここにある衣装を着させてみましょうか……」
「え! だってここ女物しかないじゃないですか!!」
 そんな言葉も気にかけず衣装を漁る遙華。
「確かこの辺にメイド服が」
「メイド服でも過激な物にしましょう」
 そう由香里が進言すると、気合を入れて探し始める遙華。
「ねぇ、黒鉄くん……」
「はい、何ですか?」
 その時由香里は見た。
 蛍丸の顔が由香里の方を向く中、視線だけは遙華の方に注がれていたのを。
「さっきから、遙華にくぎ付けね」 
 意地悪く笑う由香里。
「いえ、そんなことは……」
「そんなに可愛かった? 遙華のミニスカナース姿」
 なんでもない振りしつつ顔だけは赤くしている遙華、衣装を探しながら頬の熱が引くことを待つようだ、賢い選択である。
「いえいえいえいえ! あ、いえ可愛くはあるんですけど、ずっと見てるわけでは」
「さっきからパンツ見えてるしね」
「はひ!」
 その時ゆったりした動作で遙華がスカートを抑え、遙華が振り返った。
 その表情はいろんな感情で真っ赤に染まり、言いたいことが多すぎて逆に何から告げたものか分からなくなった口は堅く閉ざされている、ついでに涙目。
「違います! 見えてません! 遙華さん、見えてませんてば!」
 無言でそっぽを向く遙華。その視線を追って遙華の周囲をうろうろ歩く蛍丸。そんな二人を見ながら由香里は思うところがあった。
(本当に……)
 仲が良くて。それを見ているとなんとなく、いじめたくなる。

「で。どっちが好みなの?」

 その唐突な質問に二人は固まった。
「何がですか?」
 蛍丸がきょとんと首をひねって答える。
「だから、黒鉄くん。どっちが好みなの? 女性として」
 ぼんと、二人のあたまから湯気が噴き出した。
「どどどどど、どっちって」
 両手を前に出してぶんぶん振る蛍丸。
「遙華と私に決まってるでしょ?」 
「ゆゆゆゆ、由香里そんな」
「そそそそ、そうですよ、いったいなんでそんなことを」
 その時である、由香里は感じた。原因不明にささくれだっていた心、それが癒されていくのを。
 そして気が付いてしまったのである。この二人は面白い。
「遙華は蛍丸と中がいいわよね」
「え? そうかしら」
 由香里は立っている蛍丸を長椅子に座らせて、その横に自分も座った。そして尋問を再開する。
「なんでもこの前ふたりで町に行ったらしいじゃない」
 由香里は思い出す。蛍丸が楽しそうに遙華がどんな本が好きで……と話していたことを。その時の楽しそうな蛍丸の表情を。
「私も行きたかったわ」
 遙華も蛍丸の隣に腰掛け、苦笑いを浮かべて言った。
「な、なんだか由香里が怖い」
「やっぱり遙華?」
「あわわわ」
 二種類のいい香りが蛍丸の鼻腔をくすぐる。
「違うわ、私ふられてるもの」
 今度は由香里が驚く番だった。
「そうなの?」
「ええ。きっぱりと」
 由香里と遙華の視線が交わる、蛍丸が委縮して小さくなってしまったためだ。
「そういえば、誰が好きなのか私知らないのよね、やっぱり由香里?」
 身を乗り出す遙華。
「あうあう」
「だって、蛍丸いつも由香里のこと気にかけてるものね」
「そうなの?」
「ええ、私と話してるときにはずっと、橘さんが、橘さんがって」
 その発言を受けてなんとなく嬉しそうな由香里である。
「そう言えば、蛍丸、なんでそんなにかちこちなの?」
 そう遙華が声をかけて見れば、罰が悪そうに蛍丸は縮こまっていた。
「きょ、距離が」
 その時初めて女子二人は蛍丸を挟み込んで話しに熱中していたんだと気が付いた。
 太ももが触れる距離だし、頬に息がかかる距離で話をしていた。
 蛍丸はサンドイッチの中身状態だし、顔が真っ赤で今にも倒れそうである。
「あら、ごめんなさい蛍丸」
「ああ、はしたない。ごめんね黒鉄君」
 そう告げて二人は立ち上がる。直後時計を見るとちょうど乾燥機が止まる時間だった。
「服を取りに行くわ、二人はここで待っていて」
 そう遙華が足早に衣装室を後にすると、最後に由香里は蛍丸にこう告げた。
「で、どっちなのよ」

「どっちと言われましても……えーと……二人共、大切な人ですし」


 エピローグ

 
 その後普段着を身に纏って由香里はグロリア社を後にした。
 蛍丸も、今日は疲れたから用事は後日にすると告げ、由香里と共に帰路につく。
「それにしても」
 蛍丸がおもむろに口を開いた。
「お二人は変わられましたよね?」
 そう夕陽を背に蛍丸は振り返った。
「そうかしら?」
 由香里は風になびく髪を抑えてそう返す。
「ええ、だって昔の二人なら僕のことに興味を持つことはなかったと思います」
「……そうかもね」
 頬を赤らめて由香里は視線を逸らした。
 由香里は思い返す、余裕がなく、忙殺されていた自分のこと。
 今も暇になったとは言えないが、心にゆとりを持てたのはきっと、誰かのおかげ。
「それに、昔なら死んでも露出の多い衣装は着なさそうです」
「それも確かに」
「あと、僕をいじめることもしなかったと思います」
「それはどうかしらね……」
 そう目を閉じて微笑んだ由香里を蛍丸はただ見つめていた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『橘 由香里(aa1855) 』
『黒金 蛍丸(aa2951) 』
『西大寺遙華(az0026)』
『ロクト(az0026hero001)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお二人にはお世話になっております。
 鳴海です。今回はツインノベルご注文ありがとうございました!
 今回はラブコメということで、気合を入れて書かせていただきましたよ。
 それにしてもこの三人だとお話が広がりますね。
 もっとこう、三人で名前で呼び合ってみようとか、蛍丸さんの好きなコスチュームはどれか探してみようとか、アドリブで入れて見たいことはいっぱいあったのですが、文字数の関係で断念です。
 悲しいです。
 そしてコスプレは鳴海の趣味です。気に入っていただければ幸いです。
 それでは今後どうなるか分からない蛍丸さんの恋の行方。ご一緒に追わせていただけると嬉しいです。
 由香里さんはガデンツァの件お疲れ様でした。恐れることを知らない英雄さんのプレイングを楽しく読ませていただきました。
 今後ともお二人の物語にお供させていただければ幸いです。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
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2016年10月19日

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