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『つんでれ・みーつ・鈍感 』
志々 紅夏aa4282


「あら、ヤンキー」
 見覚えのある皮ジャン姿の青年に、志々 紅夏(aa4282)が出会い頭に放ったご挨拶はそれだった。最後に会ったのはこの世界と異世界との狭間に出来たドロップゾーンの狭間に出来た……細かい事は省略するが、とりあえず、この東京海上支部での再会が久方ぶり、というのは確かである。「ヤンキー」の呼称に顔をしかめた青年――李永平(az0057)が、口を開く前にさらに紅夏が、青年の顔にしっかりと目線を合わせて畳み掛ける。
「あんたいつも半裸なの? 秋冬服買ったら? 見てて寒くなるから言ってるだけで、風邪引いたらぶちのめしたい時に出来なくなったらどうするの、って思った訳じゃないわ」
 そして紅夏は永平の顔にじっと視線を合わせ続けた。身長176cmの永平からしてみれば、147cmの紅夏から遠慮容赦なく放たれる視線は、紅夏の睨むような目付きも合わせてケンカを売られているようにも見える。しかし紅夏からしてみればそれは必死の結果だった。そんな紅夏の、永平の首から下を見ないようにという必死の努力にちっとも気付く事はなく、永平は無造作に右腕を上げガシガシ金髪を掻きむしる。
「とりあえずだ、いきなり半裸とはご挨拶だなコラ。アンタこそ見てて寒くなる程度の格好してんじゃねえぜ。女なんだからきちんと着ときな」
 永平は言いつつチラリと紅夏に視線を落とした。素肌に皮ジャンを羽織っただけの永平に言われたくはないだろうが、紅夏もなめらかな肩がむき出しの半袖姿、と少々肌寒さを覚える服装なのは確かである。それに対し、紅夏はやはり永平の首から下は見ないように必死の目線固定で言葉を紡ぐ。
「今日家に帰ったら衣替えなのよ。最近、ちょっと立て込んでたからね……」
 言いつつ紅夏は少しだけ目を泳がせた。「立て込んでいた」は決して言い訳などではなく、実際同性の第二英雄が自分達の元に来たおかげでしばらくゴタゴタしていたのだ。紅夏は少し黙った後「礼は言っておくわ」と続け、さらにまた少し黙ってから落とすようにぽつりと呟く。
「……いざという時は私も力になるから、気張りなさいよ」
 その言葉に、永平は少し意表を突かれた顔をした。「思った訳じゃないわ」と加えつつ、「風邪引いたらぶちのめしたい時に出来なくなったらどうするの」と言ってくる紅夏の絵に描いたツンデレを普通にスルーしてしまう程、永平はそういった事には、疎い。そこでようやく紅夏に気を遣われていると気付き、永平は気まずそうに視線を逸らす。
「ああ……まあ、あんがとよ。その言葉はありがたく受け取っておくぜ。だがアンタも無理はすんじゃねえぞ。その……女なんだしよ」
 永平は聞こえるか聞こえないかの所でぽつりとそう付け足した。エージェントに限らず戦いに赴く者の中には、性別や年齢を口に出される事を差別と嫌う者もいる。永平もその事は知っていながら、女子供には密かに優しい気質から付け足さずにはいられなかった。果たして紅夏の耳にそれは届いたのか否なのか、いずれにしろ紅夏は視線を永平に合わせたまま睨むように言葉を続ける。
「まあ、その件はとりあえず置いておくとして、服は絶対買って。目のやり所に困る」
「目のやり所って……何の事だ?」
「あんたが動く度にちらちらちらちら見えるのよ。……何がとか言わせたりしないでよ? うるさいわね。男の子の裸なんて私見慣れてないのよ。両親は早くに死んだし、引き取ってくれた養母も旦那さんに先立たれたし、高校女子高だったし」
 永平の疑問に紅夏は早口に捲し立てた。前述したように身長176cmの永平に対し紅夏は147cmであり、素肌に皮ジャンを羽織っただけの永平を紅夏が見ると、ちょうどちらちら見えるのだ。あえて何がとは言わないが。決して恋愛感情的なあれそれがある訳ではなく、単純に見慣れていないから恥ずかしいのだ。見慣れていても恥ずかしいかもしれないが。
 しかし永平は紅夏のそんな葛藤……の方ではなく、「両親は早くに死んだ」「引き取ってくれた養母も旦那さんに先立たれた」の方に意識を奪われた。ヤンキーと呼ばれた相貌をしかめ、すまなそうな声を落とす。
「そ、そいつは……その……悪かったな……」
「そう思うならちゃんと服買って。そんな露出しているヤツじゃなくて、ちゃんとした冬服をよ」
「? それと冬服とは関係ねえんじゃねえか?」
「ちょっと! こっち近付かないで!」
 足を踏み出そうとした永平に紅夏は慌てて声を上げた。前述したように身長176cmの永平に対し紅夏は(以下省略)で、その状態でこれ以上近付かれたりしたら……見える。見えてしまう。あえて何がとは言わないが! 紅夏は頬をわずかながらに朱に染め、これ以上半裸ヤンキーが近付く前にビシリと指を突き付ける。
「いいからちゃんとした冬服買って! 見てて寒くならない程度に露出少なくてちゃんとあったかいヤツよ。分かったわね!」
 言い捨て紅夏は結った黒髪を大きく振って永平に素早く背を向けた。そして気の強さを表すようにスタスタスタと歩いていった。永平はしばしポカンとその姿を見送った後、変わらず自分の姿に無頓着で腕を持ち上げ頭を掻く。
「……変なヤツ」

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【志々 紅夏(aa4282)/ 女 / 20 / 能力者】
【李永平(az0057)/ 男 / 19 / 能力者】 

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。
 ツンデレクールビューティーな紅夏さんが年頃の女性らしくあわあわしている(ただし表面上はクールビューティー)を意識して書かせて頂きました。
 口調その他イメージと違う点などありましたら、お手数ですがリテイクお願い致します。
 この度はご指名頂き誠にありがとうございました。
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2016年10月20日

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