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『ハッピーハッピーハロウィン 』
宮ヶ匁 蛍丸aa2951)&泉 杏樹aa0045)&Nikolaus Wirenaa0302hero001)&桃井 咲良aa3355)&楪 アルトaa4349

《ハロウィン準備編》

 十月三十一日それは死者が蘇ってくる日だと言われている。その日には仮装を行い、おばけの列に紛れ込む必要があるのだとか。
 さてそんな日に藤の茶室の前に佇む狼耳の少年が一人。
 彼は一体どちらなのだろうか。
 トリックオアトリート。
 たのしいパーティーが始まる 
「いらっしゃいなの」
 そう『泉 杏樹(aa0045) 』が引き戸を開けると。尻尾を揺らして『黒金 蛍丸(aa2951) 』は告げた。
「トリックオアトリートです!」
「わぁ、お菓子をあげないといたずらされちゃうです? だったらこちらへどうぞ」
 そう告げて杏樹はくるりと踵を返した、赤いフレアスカートが舞い、頭巾を改めてかぶったそれは。
「うわ、赤ずきんちゃんですね、とっても可愛いです」
 照れ隠しに頭巾を引っ張りながら杏樹は微笑んだ。
「ありがとうなの、蛍丸さんは、…………狼男!」
 一瞬迷った杏樹、勇ましい耳と、ふかふかな尻尾はとても狼っぽいのだが、蛍丸が付けているとなんとなく犬っぽかったので迷ってしまったのだ。
「そう言えば杏樹さんその手袋はなんですか?」
「あ、これは」
 そう杏子が困った顔で両手を隠したその時である。

「おじゃましまーす」

 二人は玄関を振り返る。
「「はーい」」
 ハモってしまったことに顔を見合わせる二人、少し笑って玄関へ走った。
 そこには可愛らしく耳を震わせて『桃井 咲良(aa3355) 』が立っていた、三角帽子をかぶり直し、二人に手を振る。
「今日は呼んでくれてありがとね」
「わ、魔法使いさんですね」
 杏樹が手を合わせて咲良の衣装を眺めている、咲良はマントを広げて見せ、腰に下げているステッキを構えると完璧である。
「よくお似合いですよ」
 そう咲良も居間に通して、ひとまずの飾りつけを始めた。
「上の方は僕がやりますよ」
「あ、僕もやりたい」
 二人は脚立に上ると、下から杏樹がカボチャや、蝙蝠のステッカーなど手渡す。貼ってもすぐはがせるやつだ。
「なんだか、こうして準備をしているだけで楽しいの」
「その気持ち。わかるなぁ、ホームパーティーってなかなかやる機会ないし」
 そう咲良が微笑みなが、パーティー定番の紙の鎖を繋いでいる。
「みんな揃うの楽しみだなぁ」
「うん、そうなの」
 生返事を返す杏樹。それもそのはず彼女の視線の向こうには桜の尻尾が揺れていて。それに合わせて首が、右へ行ったり左へ行ったり。
「杏樹さん」
「は、はい!」
 杏樹が飛び上がって振り返ると、蛍丸が大きなお化けかぼちゃを抱えていた。
「これはどこに置きます?」
 そう蛍丸はお化けかぼちゃを撫でた、目と口がくりぬかれているが、苦戦したのだろうちょっと荒さが目立つ。
「すごーい、誰が作ったの?」
 咲良が問いかける。
「えっと……杏樹が」
「可愛いジャックオランタンですね」
「ちなみに中身はどこに行ったのかな?」
 そう咲良があたりを見渡すと、テーブルの上にカボチャのパイが乗っていることに気が付いた。
「これかなぁ」
 そう咲良はあったかそうなパイに手を伸ばす、すると。
「あら、つまみ食いはいけないんじゃないの?」
「うわ」
 背後から声が聞こえた。
 振り返ればそこには『西大寺遙華(az0026) 』が立っている。
「きっと準備でお腹がすいたんじゃない?」
 『Nikolaus Wiren(aa0302hero001) 』が上着を杏樹に手渡しながらそう告げた。

《パーティー開始》

「ハッピーハロウィン」
 ニコラウスは手に提げたバスケットに手を入れると、中から南瓜と紫芋のタルトを取り出してみた。
「すごーい、怪しい、でも甘い香り!」
 蜘蛛の巣やお化けの砂糖菓子が乗っているそれは、紫色で、食べ物としては珍しい色合いだったが、香りはスイートポテトにカボチャを混ぜたようなほっこりとした香り。
 一目でそれが美味しいものだとわかった咲良は、すごく喜んでそれを受け取ると、もぐもぐと食べ始める。
「おいしぃ」
 小さく噛みしめるようにつぶやく咲良。
「差し入れありがとうございます、そしてニコラウスさんの仮装は」
 蛍丸が問いかけると、ニコラウスは口の端から垂れている血をぬぐって不敵な笑みを作って見せた。
「吸血鬼……」
「トリックオアブラッドと言ったところでしょうか」
「それいいわね」
 そんな冗談にクスリと笑い、遙華の方に視線を移すと、まず目に入ったのが頭に突き刺さっているでっかいボルトだった。
「遙華さんはフランケンシュタインでしょうか」
「ええ、よくわかったわね」
 つぎはぎの肌は部分部分が浅黒くなっている。
「あと咲良、これもよければ」
 遙華もお土産を持ってきたらしい、袋の中から箱を取り出すと、そこには沢山のクッキーが詰まっている。
 差し出されたそれを咲良がつまむと。
 まぁ、何の変哲もないクッキーであった。甘くておいしい。
 ただ大きさの割には口の中に残る部分が少ない気がする。
「このクッキー中がくうどう……え! 声が」
 咲良の高めの声がさらに叩くなると、一行は思わず噴き出した。
「何が起こったの?」
「ヘリウムクッキー、食べると一言分程度声が甲高くなるわ」
「お鍋を落しそうになったの」 
 いまだに笑いを抑えている様子の杏樹から蛍丸は鍋を受け取り、遙華はヘリウムクッキーをテーブルに並べる。
 蛍丸はその、昆布が入っただけのお鍋をガスコンロに設置すると、ボンベを装着した。

《秋のお鍋は騒乱のお味》

「可愛い名前の現象のせいで、秋でも寒いの。だから鍋も料理のレパートリーに加えて見ました」
 しかし中には何も入っていない、具材も持ち寄り制らしい。各々が自分の食材を手に集まる。
 そんな中蛍丸だけは電話で誰かと話していた。
「どうしたのかしら」
 ニコラウスが蛍丸に問いかける、すると蛍丸は通話を切り全員に告げた。
「アルトさん、遅れるそうです、早めに始めてて欲しいそうですよ」
「鍋ができるころにはちょうどいいかもしれないわね」
 そううきうきのニコラウスである。ひょっとすると鍋という日本文化に触れるのは初めてかもしれない。
「じゃあ、闇鍋会開始なの」
 杏樹が手を上げると遙華が苦笑いした。
「それ、すごく不安になるわね」
 まぁ実際は具材を手順関係なく入れるあたりはとても闇鍋っぽさは出ている。
「お野菜入れて」
 咲良がカット済みの野菜を投入した
「お肉をいれて」
 遙華がすかさず牛肉を流しいれる。
「カボチャをいれて」
 杏樹がジャックオランタンの中味と思しきカボチャを投入する。
「え、鍋の具材にカボチャ?」
「ハロウィンなので」
「僕は意外と好きですよ、カボチャ」
「まぁ、不味くはならないと思うけど」
「そしてアンコ」
 ドボン。
 仲良く話をしていた杏樹、遙華、蛍丸の会話が一瞬で止まった。
 お菓子をひたすらに食べていた咲良でさえも手を止めてニコラウスを見ている。
 見れば彼は、タイ焼き屋さんなどが使う、あんこを乗せる板のようなものを構えていた。
「あら? 間違ったかしら」
「きゃー、早く他の具材を取り出してください」
 杏樹の号令で我に帰る一同。
「ニコラウスさん、そのアンコどこから」
 蛍丸が苦笑いを浮かべる。
「ふふふ、内緒」
「汁がまっ黒に……」
 そしてさしてあわてていない咲良。
「真っ黒になって具材を探せないわ、全く見えない」
 肉だけは回収しようと箸を振り回す遙華。
「お野菜も取り出さないと」
「聞いたわよ、日本にはこんな諺があるらしいわね『腹に入れば同じ』」
「それ、まずいもの食べる前に自分に言い聞かせる言葉だから!」
 てんやわんやの杏樹と遙華を見つめながらニコニコ笑顔のニコラウス。
 ただそうこうしているうちにお肉と野菜は救出できたようで、遙華がざるに開けた食材を台所で洗いに行った。
「カボチャとあんこは相性がよさそうなの」
 杏樹はそう鍋をかきまわす。
「じゃあ、あとはもちをいれましょう」
 そう杏樹が取り出したるは、四角く切って売られているもち、似ても焼いてもよしな奴。
「お汁粉だね!」
 咲良が言った。
「でもお鍋使えなくなっちゃったよ、どうする?」
 そう咲良が振り返ると、そこには鍋を掲げる遙華がいた。
「こんなこともあろうかと鍋を用意してるわ」
 ここで咲良は確信した、みんなテンションがおかしくなっている。
 そんな中、咲良の耳がガラリラと引き戸がずれる音をキャッチした。
 この時間にここに尋ねてくるのはあと一人しか心当たりがない。それを皆わかっているようだったので全員が玄関に向かった。
「おじゃましまーす、なんか甘いいい香りするな」
 そう遅れて登場したのは『楪 アルト(aa4349) 』である。
「なぜ毛布をかぶってるのかしら?」
 ニコラウスが問いかけると、アルトは間髪入れずに答える。
「いや、外はさむいだろ?」
「顔真っ赤ですよ」
 蛍丸が告げた。
「これは、まぁ寒さでやられたんだよ」
「寒いの? 大変なの。今お鍋を作ってるところだったから上がって」
 そう杏奈が温かい部屋に通してもアルトは毛布を脱がすことはなかった。
「はい、差し入れ」
 アルトは自分のカバンから袋を取り出す。中身を眺める杏樹と遙華。
「これはなんですか?」
「ちくわ」
「ちくわ?」
 首をかしげる杏樹。
「あと、こんにゃく」
「こんにゃく……」
 考え込む杏樹。
「鍋やるんだろ?」
 アルトは異様な反応に戸惑い気味である。
「鍋というよりはおでんみたいね」
 ニコラウスはこんにゃくを引っ掴むとそれをまじまじと眺めた、もしかするとこんにゃくを見るのが初めてなのかもしれない。
「まぁ、お鍋には入りますよ、入ります」
 蛍丸がミトンを両手に装備して新たに沸いた鍋を持って登場した。
 さっそく鍋への具材投入を開始する。
「ちくわいれて」
 アルトが適度な大きさに切ったちくわを鍋に流し込む。
「お肉いれて」
 遙華があんこを洗い落としたお肉を投入。
「こんにゃく入れて」
 そして蛍丸がこんにゃくをばらばらと入れていくと。最後にニコラウスが。
「あとは、お鍋の定番はポン酢よね」
 ドボドボと真っ黒い液体の詰まった瓶を逆さにして、中身を全部入れてしまった。
「ああああ!」
 叫ぶアルト。
「一瓶いれた!」
 これには咲良も絶句である。
「違うのニコラウスさん、ポン酢っていうのは小皿に入れてつけながら食べるものなの」
 杏樹が必死に説明するが、いまいち日本の鍋というものを理解しきれないニコラウスである。
「これは酸っぱい鍋になりそうですね」
 苦笑いを浮かべる蛍丸、酸っぱくなってしまった鍋からたちこめる香りはなんとも言い難い。
「食べられるんでしょうか」
「こんなこともあろうかと鍋を持ってきているわ」
 遙華がそう鍋を掲げて見せると蛍丸は驚きの声を上げる。
「二つ目ですか!?」
「というか、この状況が予見できてるなら、防ぐ手段を考えた方がよかったんじゃ」
 アルトはそう苦笑いを浮かべる。
 結果的にポン酢はまずいものではないので薄めるために汁を捨てようという話の流れになったが、それにアルトが待ったをかけた。
「まった! 捨てるって言う単語が許せない」
 アルト鍋調整中の風景が続く、ちなみにその隣でいい感じに煮えつつあるカボチャ入りお汁こ
 汗だくアルト。
「あの、毛布をかぶったままコンロの前はつらいんじゃ」
 そう心配そうに問いかけたのは蛍丸。
「いや、平気だから、平気だから」
 しかしアルトは平気だからの一点張りで譲ろうとしない。
「ふぅ、お部屋あついの」
「脱いじゃおうかな」
 そう杏樹と咲良が薄着になり始めた。その光景にどぎまぎしながらも蛍丸はアルトを気遣う。
「ほら、皆さんですら熱そうなのに」
 汗ダラダラのアルト。
「いや、大丈夫だから……」
 実際アルトは大丈夫ではなかった、なんだか喉がひりひりするし、意識も朦朧としてきた。毛布はいつの間にか汗でびっちょりであり、だんだん熱いんだか熱くないんだかわからなくなってきた、その時である。
 ニコラウスが告げた。
「あ、毛布に引火してる」
「えええ! あつ!」
 飛び上がるアルト、毛布を投げ捨てるアルト、しかしその毛布に火などついていない。まんまと騙されたわけである。
 そして露わになる妖精服。 
 背中の羽とか、フリルのついたスカートはとても可愛い。 
 しかし。
「みるなーーーー!」
 露出度が高かった、胸とか太ももとか。
「うわーーーーん」
 涙目のアルト。
 結局彼女は鍋の完成と共に部屋の隅っこに移動し、どんよりと肩を落とす羽目になる。
「うううう」
 藤の茶室の床にのの字を数千回と刻むアルト。そんな彼女の隣にニコラウスが腰を下ろした。
「ごめんなさい、アルト。私そんなにあなたが嫌がるなんて思わなくて」
「いいんだ、全ての原因はこの衣装を着ちゃったあたしにあるんだ」
 そんなアルトの背後から、可愛いですよー、なんて声が飛ぶ。
「やかましー」
 そうさらにブルーを増すアルト。
「ごめんなさい、これ、お詫びと言ってはなんだけど」
 そうニコラウスが取り出したるは何の変哲もないクッキー。
 実を言うとお腹が減っていたアルトは、ちょっと頬を赤らめてそれを手に取った。
「ありがとう」
 そして口に運び、咀嚼すると。ニコラウスは告げた。
「トリックオアトリート」
「え? なにが?」
 全員が噴き出した。普段高めのアルトの声が二倍速になったように甲高く響いたためだ。
「ええ! なによこの声」
 再び甲高く響く声。笑い転げるニコラウス。
「悪戯ってこのこと!? もう、笑うな!」
 その後、なぜかヘリウムの効果が長く続くアルトは、ひたすらにヘリウムクッキーを食べさせられたらしい。
 

《プレゼント交換タイム》

 ちなみにこのパーティーのために全員がプレゼントを用意した。
「では、音楽が止まったところで手に持っていたプレゼントがその人の物ということで」
 そう、部屋の真ん中に集められたプレゼントをランダムで皆に手渡していく蛍丸。
 スマホを操作し、適当にタイマーをかけて、蛍丸は音楽を流し始めた。
 皆は円状になり、流れてくるプレゼントを隣の人に渡すという。
 定番の手法を取っている。
 そして唐突に音楽が止まった。
「あけていいのか?」
 アルトが蛍丸に問いかける。
「ええ。どうぞ」
 そう言うと全員がアルトに注目した。
 アルトははやる気持ちを押さえつけながら包み紙を綺麗に開けると。
 そこから。
「うぷ」
 ばいーんと人形が飛び出してきて、アルトの顔面にぶち当たった。
 それは水色の人型の人形、うすい上着にウエーブのかかった髪。
 そう『ガデンツァ(NPC)』を模した人形である。
「いつの間にか、ぼっち(ガデンツァ)の術中に」
「それ、私のプレゼントね」
 ニコラウスが手を挙げた。
「趣味の悪い人形だなぁ」
 アルトはその人形のてをつまむと振り回し始める。
「そしてその箱底は隠しぶたになっていて、チョコレート菓子が詰まってるわ」
「ありがとう」
 ガデンツァの人形は投げ捨てて、ニコラウスの手を握るアルト。
 その隣で咲良もお菓子当てたようで喜んでいる。
「やった、おやつだ! 甘い」
「お味はどうですか?」
 蛍丸がそう問いかけた。咲良は上機嫌でクッキーをもう一つ口に運ぶ。
 そう蛍丸の用意したプレゼントとは。焼いたカボチャクッキーである。
「カボチャの甘さがよく出てて美味しいよぉ」
 幸せそうに微笑む咲良。
 気分がいいのか、咲良の尻尾が一段と揺れている。
 それが気になるのか、杏樹はその尻尾を追って視線を泳がせている。
「は。杏樹もプレゼント開けないと」
 尻尾の魔力から解放された杏樹も包をあける。
 そこには、ハロウィン風のポットが入っていた。お化けかぼちゃに蝙蝠がくっついた感じの可愛らしいデザインである。
「ああ、湯沸かし器?」
 ニコラウスが説明書を読みながら言った。
「可愛くなくてごめん、実用的なのしか思い浮かばなくて」
 アルトからのプレゼントの様だった、しかしアルトの態度とは裏腹に杏樹はポットを抱きかかえている。
「ううん、いいの! これがあればどこでもお湯が沸かせるの、そうしたら紅茶も沢山入れられるね!」
「申し訳程度の機能として」
 アルトが杏樹からポットを受け取り、電源に繋ぐと。蝙蝠の羽がパタパタ動いた。
「お湯が沸いたとき、羽が動く」
「かわいいの」
 幸せそうにポットを抱きかかえる、そんな風景を見ていて楽しみが募ったのか
蛍丸もせっせとラッピングを解いてみる。
 そこには小さな箱があり、中には猫耳ニット帽、そして猫の手の手袋が入っていた。
「おそろいだにゃん」
 咲良が言った。
「おそろいだにゃん?」
 遙華がそう言って首をかしげた、その手にはピンク色の陶器の猫が握られている、桜の香りのお香もセットである。
「あ、杏樹のです」
「とっても可愛いわ、大切にするわね、杏樹」
「ところで蛍丸君はどう反応するのかな?」
 そうニコラウスが告げると全員の視線が蛍丸に集まった。
「え……っと。おそろいだ、にゃん?」
 そう首をかしげつつも顔真っ赤の蛍丸。
「うう、みなさんひどいです」
 そうアルトのいた部屋の隅っこに今度は蛍丸が行ってしまう。
 そんな彼のフォローはアルトとニコラウスにまかせて、遙華がお香の使い方を杏樹に習っていた。
「これすごくかわいいね」
 咲良がお香ネコを撫でるのを見ていて。思わず杏樹の手が咲良の頭にのびてしまう。ふわっとした感触が心地よく、なぜかドキドキする杏樹であった。
「あ、ごめんなさい、ついつい手が」
「ごろにゃーん、なんてね?」
 咲良がウインクした。それを見ていた遙華がうらやましそうに告げる。
「あ、あの、私も耳触っていいかしら」
「耳はダメー」
 咲良は両手で十字を作って見せた。
「な、なんで」
 残念そうな遙華である。
「ぞわぞわってするからだめ!」
 そうこうしている間に、蛍丸の機嫌がもどったらしい。
「さぁ、最後のプレゼントをあけましょう」
 そう蛍丸に促されてニコラウスは包を開いていく。
「残っているのは遙華さんのプレゼントですね」
「なんだか、恥ずかしいわね」
 蛍丸の言葉に頬をかきながら答える遙華。
 視線が注がれる。
「あら。これって」
 ニコラウスがまず包をあけると転がり出てきたのは印刷用紙。そして。
「ポラロイドカメラ?」
「これ、けっこうおもしろいのよ」
 遙華は言う。
「メモリーカードをさしているとそっちにデータが蓄積されるけど、それを外すと、ちゃんと写真が出てくるの?」
「写真が出てくる?」
 箱からカメラを取り出したニコラウス、どうやらそのカメラにはもう電池が入っているらしく。誤ってシャッターを切ったニコラウスの驚いた顔がさっそく印刷されて出てきた。
「こういうこと」
 そう遙華が言うとニコラウスは微笑んだ。
「ありがとう、これでいろいろ楽しいことができそうね」
「集合写真撮りたいの!」
 そんなカメラを見て杏樹は手を挙げた。
「いいね!」 
 咲良が同意する。幸い印刷用紙はたくさんある。
 撮影会の開始だった。
 ここにきてパーティーはまだ中盤戦、これから盛り上がりを見せる会場を見て
 蛍丸、そして杏樹。主催の二人は微笑みあった。


エピローグ
「みんな楽しんでくれているようでよかったですね」
 そう台所で次の料理の準備をしている蛍丸、そして杏樹。
「うん、大成功なの」
 そう微笑む杏樹は、包丁を握るために手袋をはずしていた。そしてその手を見られてあわてて隠す杏樹。
「その怪我……と、カボチャ」
 蛍丸はキッチンの隅っこに詰まれた大量の砕かれカボチャを見て察していた。
 杏樹がこの日の準備のためにどれだけ頑張ってくれていたのかを。
「あとね、蛍丸さん。これ」
 しかし、それだけではなかった。
 杏樹の手の傷の原因は、相棒とカボチャ加工に明け暮れてできたものではない。
 その手にちょこんと乗った守り袋を縫っている間にできた傷でもある。
「これは……」
 サードオニキスとブルーレース入り守り袋、それを差し出す杏樹。
 不格好な出来ではあるが。杏樹はこれを作るためにどれだけ努力したのかそれを蛍丸はすぐに感じ取った。
「ありがとうございます。大切にしますね」
 そう告げると、杏樹は満面の笑みで微笑んだ。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『黒金 蛍丸(aa2951) 』
『泉 杏樹(aa0045) 』
『Nikolaus Wiren(aa0302hero001) 』
『桃井 咲良(aa3355) 』
『楪 アルト(aa4349) 』
『西大寺遙華(az0026) 』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はパーティーノベルご注文ありがとうございました!
鳴海です。
いつもお世話になっております。
今回は皆さんが集まってワイワイしているところを想像して、面白そうなところをギュッと集めるような形で書いてみました。気に入っていただけたなら幸いです。
それでは本編でお会いしましょう、鳴海でした、ありがとうございました。

VIG・パーティノベル -
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2016年11月14日

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