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『誓いはキスで閉じ込めて 』
シルヴィア・エインズワースja4157)&天谷悠里ja0115

 扉の前に黒いワンピースの少女と白い礼装の騎士が立っている。

 遠目に男性ではないかと思われたその騎士も近づけば中性的な女性であるとわかるだろう。
 すらりと長い手足をそのままに女性らしい体のラインを隠す衣装。
 元々の髪色と同じショートウィッグは完璧に彼女、シルヴィア・エインズワース(ja4157)を男装の麗人としている。
 中性的な魅力の中に艶っぽさがあるのは、自然な化粧から滲む元々の美しさと艶めきのせいだろうか。

「きたわね」

 黒い少女が口を開く。
 その声にシルヴィアが視線を投げれば、白いワンピースの少女に手を引かれ、純白のプリンセスドレスに身を包んだ可憐な姫が2人の方へ歩いて来るのが見えた。

「あの時より綺麗ね。彼女」

 呟くような黒い少女の言葉が聞こえていないのかシルヴィアの反応はない。
 彼女の視線は姫から一度も動かず、姫もまたシルヴィアから視線を外そうとしない。

 あの時。2年前のクリスマス・イブ。
 シルヴィアは今と同じ様にこの扉の前で姫、天谷悠里(ja0115)を待っていた。
 今と同じ様に白いプリンセスドレスに身を包み現れた悠里は、清楚な姫君か花嫁と言った印象をシルヴィアに与えていたが、今はそこに上品な色っぽさがプラスされ、美しさに深みが増している様に感じられた。

 ***

「ようこそ。魔法のお菓子屋へ」

「この部屋は誓いを交しあった姫とナイトだけが入れる部屋で御座います。お2人は以前このお部屋へ入られておりますので再度の誓いは結構です。今宵はこの部屋でごゆるりとお過ごし下さい」

 黒の少女が居ずまいを直し、歌う様に歓迎を口にすれば、横で深く頭を下げた白い少女が形式的なことではありますが、と断ってから朗々と言葉を紡ぐ。

 開かれた扉の奥には以前訪れた時同様、薔薇園の見える窓際に2人がけのソファーとローテーブルが見える。
 数歩進めば部屋に入れる。
 しかし騎士と姫はちらりと視線を絡めたままはにかんでばかりで足を前へと動かさない。
 そんな2人を見てか、白の少女が後ろ手に扉をパタンと閉めてしまった。

「……失礼致しました。どうやら、誤作動で扉が閉じてしまった様です。お手数ですが、再度誓いをかわして頂くことは可能でしょうか?」

「……こっちの不手際ね。多分開くとは思うんだけれど、少し待ってもらわなくてはいけなくなるのも悪いわ。ごめんなさいね。お願い出来るかしら」

 明らかに意図的に閉めたにも関わらず、顔色ひとつ変えずにしれっと言う白の少女。少しの間があって黒の少女も誓いを促した。

 2人は、今度ははっきりと顔を見合わせクスリと微笑んだ。
 扉が開く、開かないに関係なくもう一度誓いを交したい気持ちが2人にはあるのかもしれない。そう少女達は考えたのだ。
 ありがとう。そう少女達に囁き、シルヴィアが悠里の前に跪いた。

「姫。我が愛しのユウリ姫。貴女がお許し下さるなら、この私、シルヴィアは姫にこの命も魂も何もかもを捧げる事を誓いましょう」

 そっと手を差し出し返事を待つ騎士の指に、姫の指先が触れる。

「その誓いを許しましょう。そして私、天谷悠里は身も心もその全てを貴女に委ね、生涯貴女だけの姫でいる事を誓いましょう」

 滑る様に伸び、重なる手。
 白魚の様に白い悠里の手の甲にシルヴィアの唇が触れる。
 穏やかな表情でそれを見た悠里が腰を落とし、シルヴィアの額に口付ける。
 2人は見つめ合い、幸せそうに微笑んだ。

 ***

 ジャック・オー・ランタンから漏れるロウソクの灯り。
 暖炉では薪が時折音を立てながら燃える。
 温かい部屋はオレンジの温かい光が溢れていた。

 2人はゆっくりとソファーに座ると、白い花が浮かぶワインクーラーに入っている冷えたリキュールを互いに注ぎ、乾杯をした。

「花が浮かんでいるなんてオシャレですわ……あっ、これ、梨のお酒ですのね」

「あぁ、それで。浮かんでいるのは梨の花です。お酒に合わせてくれたのでしょう」

 少し驚いた様な悠里の声にシルヴィアが頷く。

「本当に梨を食べている様なみずみずしさがありますね。こちらの菓子も美味しいですよ、姫」

 生クリームとかぼちゃのチップスが添えられた梨のコンポートを上品に口へと運ぶと、リキュールとは違った甘さが口の中に広がった。
 梨ジュースの様な甘いリキュールはするすると喉を通っていく。

 程なくして、2人が纏う空気がほろ酔いになった女性独特のものに変わる。

「ユウリ姫、口付けをしても良いでしょうか?先程の誓いを……貴女への忠誠が消えてしまう前に封じ込めてしまいたいのです」

 そっとグラスを置いたシルヴィアが少し潤んだ瞳で悠里を見据える。

「……ええ。構いませんよ」

 慈愛を込めた瞳で微笑む悠里の頬をシルヴィアの手が包みこんだ。

 触れるだけの誓いのキス。
 触れたままの唇の隙間から囁く様に誓いの言葉をもう一度唱えお互いの誓いだけを交換する。
 そのまま隙間を塞ぎ、相手の言葉を自分のうちに閉じ込める。想いがどこにも漏れないない様に、言葉が空気に混ざって消えてしまわない様に。

 そんな神聖な口づけの儀式を、悠里は喜びと祝福する気持ちで受けていた。

「姫……ユウリ姫……愛しています」

 恋い焦がれる相手の名を呼びもう一度唇を塞ぐ。
 神聖な誓いのそれではなく、愛しいと伝える為のキス。
 悠里の腰を抱き寄せるその腕は優しいながらも誰にも渡さないという固い意志が見える。

「シルヴィア……私も、私も愛しています」

 熱をあげる柔らかい恋人の唇を感じながら悠里の唇が動く。
 シルヴィアの熱に浮かされる様に悠里の唇もまた熱くなっていく。唇と唇の間から甘い息が溢れ部屋を満たしていくにつれシルヴィアと悠里を昂ぶっていく。

 3度目のキスまでに時間は殆ど無かった。
 梨のリキュールの甘さか、彼女達自身が生来持つ甘さか、はたまたその両方か、触れた唇も絡む舌も、絡む水も全てが甘く脳を痺れさせていく。
 いつもなら何度も唇を重ね合う2人。
 だが、今夜は唇を離さないまま、上気した頬を撫で、指を白い相手の肌に滑らせる。薄く色付いていく肌も、悦びに小さく跳ねる体も、漏れる甘い声も自分だけのものにしたい。誰にも渡したくないという気持ちが強く現れている様にお互いに感じられた。
 それがまた相手への愛おしさを高ぶらせ、体を火照らせる。
 丁寧に全身を愛するその姿は、日々激化していく学園での戦いの中で荒んでいく互いの心を慰める様にも見えた。

 唇も肌もずっと重ねている。そっと離した唇は、それは欲しいと意識する間もない位に直ぐにお互いの唇に触れ、己の肌を撫でる指が離れるのを見ればどうして。と言う眼差しとともに指を掴んでしまう。
 まるで触れ合っているのが当たり前の様に自然にそうなってしまうのだ。
 そして、彼女達は魔法が解けるまで、夜が明けるまでそうしていたいと心から願うのだった。

 梨の花言葉は愛情。そして梨は『有りの実』とも言われている。
 どんな時も互いを愛する存在であります様に。そう祈っている様に梨の花が水面で揺れながら2人の甘い時間を見つめていた。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・
登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 真実の愛と忠誠を貴女に 】
【ja0115 / 天谷悠里 / 女性 / 18歳 / 真実の愛と慈しみを貴女に 】
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 シルヴィア様、天谷様いつもお世話になっております。
 今回もご依頼ありがとうございました。
 ハロウィンと言えばかぼちゃが定番ですが、秋は色々な果物がおいしい季節でもあるので、ハロウィンの秋の収穫を祝う。と言う側面から梨を用いてみましたが如何だったでしょうか?
 また、今回は騎士と姫の誓いを主に描かせて頂いているため、いつもより甘い描写が少なくあっさりとした文体にしております。
 
 お気に召したのであれば幸いですが、何かお気に召さない部分があれば何なりとお申し付け下さい。
 何度もご縁を頂き光栄です。
 またお会い出来る機会を心から楽しみにしております。
VIG・パーティノベル -
龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2016年11月15日

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