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『よくばりハロウィンパーティ 』
迫間 央aa1445)&皆月 若葉aa0778)&荒木 拓海aa1049)&メリッサ インガルズaa1049hero001)&三ッ也 槻右aa1163)&マイヤ 迫間 サーアaa1445hero001)&氷月aa3661)&シアンaa3661hero001)&ジーヴルaa3661hero002)&桐ヶ谷 狐鈴aa3997hero001

●プロローグ・ある事務屋の本気
 ある秋の日、迫間 央(aa1445)は何の気なしにニュースを眺めていた。
(東北の芋煮会……もうそんな時期なんだな)
 学校給食の調理員をしている母なら馴染みがありそうな巨大な鍋で、具材がかきまわされている。涼しい秋の空気の中、だしの効いたスープを飲む。そして、秋の豊かさを閉じ込めたようなほくほくの食感を楽しむ。魅力的なイベントだ。
(氷月ならあの鍋まるまる一杯でも完食しそうだな)
 恋人の姿が脳裏をよぎって、思わず笑みがこぼれる。氷月(aa3661)はクールかつ可憐な見た目に反して、フードファイター並かそれ以上に食べるという驚異の胃袋の持ち主だ。
(たまにはお腹いっぱい食べさせてあげたいよな……)
 妙案が閃いた。うちの地域にないのなら、企画してしまえばいい。
 炊き出し大会だ! 地元自治体のハロウィンイベントに便乗して――コンセプトはそう、「食欲の秋とハロウィンを同時に楽しむ!」。
 行ける! 央は使い慣れたパソコンで一息に企画書を書き上げた。

●ママ・パニック
 イベントは公民館の敷地を借りて行われることになった。抜けるような青空。強い光を放つ太陽は夏ならば敬遠されてしまうものだが、今の季節、それもこんな楽しい日には歓迎されるべきものだろう。
 テントの中では姦しい声が飛び交っていた。パワフルなおばちゃんが複数名集まっているのなら、そうならない理由はない。
 エプロンの紐を結びながら、央がやって来る。調理に備えて、スーツにゾンビメイクという簡易な仮装。名付けるなら『社畜ゾンビ』である。
 央を急かすのは彼の実母だ。おばちゃんたちは彼女の同僚の調理員たち。ノリの良いことに、蜘蛛の巣柄のエプロンやら動物デザインの帽子やらで簡易の仮装もしてくれている。
「お集まりいただきありがとうございます。本日は皆様のお力を大いにお借りしますので、どうぞよろしくお願いいたします」
 学校給食用の大型鍋や炊飯器で山盛り作った料理を思う存分頂く、というのが今回の趣旨だ。ハロウィンということで仮装とお菓子も欠かせない。
 挨拶が済んだかと思うと母に呼ばれ、央は調理場を離れる。何事かと訊くと、彼女は央の英雄に会いたいのだという。息子が世話になっているのだから挨拶くらいさせてほしいという言い分はもっともだが、央は不安だった。深い傷を持ち幻想蝶に閉じこもりがちの英雄、マイヤ サーア(aa1445hero001)。今日は珍しくイベントへの参加を決めてくれたが、大丈夫だろうか。
『いいわ、央』
 声が聞こえたかと思うと。
「ま、まあ……」
「私はマイヤ・サーア。あなたが央のお母様ね?」
 現れた女性の妖艶さに央の母は面食らった。いつものウエディングドレスを黒と紫の配色に変えたセクシーなドレス。頭には魔女のような三角帽。愁いを帯びた表情が美しい。
「こんなに綺麗な方が央の恋人だなんて……」
 母にまだ伝えるべきことがある。央が呼びかけると、夢でも見ているような顔で彼を見た。
「俺の恋人は別に……もいるんだ」
 母の表情が凍り付く。少しの間の後――怒りか、動揺か、あるいはどちらもだろうか――震える声で母は言った。
「説明しなさい、央!」
 央は話し始める。氷月のこと、かつては彼女の別人格だったが今は英雄となったジーヴル(aa3661hero002)のこと。後ろでは小気味よい包丁の音が聞こえ続けている。ようやく誤解が解けたころ、気まずい空気を吹き飛ばすような明るい声が聞こえた。央が振り返ると荒木 拓海(aa1049)、メリッサ インガルズ(aa1049hero001)、三ッ也 槻右(aa1163)が荷物を抱えて立っていた。

●ハプニング・モーニング
「これで一段落かな?」
 拓海が息を吐く。リサと共に早朝から差し入れの調理に励んでいたのだ。
「ええ、あとは焼き上がりを待つだけね。朝食にしましょうか」
 今日の仮装のことやイベントのことで会話は弾む。少し話に夢中になりすぎたせいで、彼らに最初に異変を伝えたのは嗅覚だった。
 「パーティ楽しみだな……って、なんか焦げ臭くない?」
 マフィンの焼き上がり時間を大幅に過ぎている。それなのに、終了の合図が鳴らなかったということは。リサは無駄だと知りながらオーブンに飛びつく。
「数字が……ひと桁多い……」
 マフィンの表面は真っ黒になっていた。
「真ん中の方は食べられるんじゃない?」
「そうね。配るのは無理そうだけれど……」
 リサの声のトーンは沈んでいる。
「大丈夫! キッシュの方はすごく美味しくできたしさ。……皆が待ってる。笑顔で行こう……な」
 リサがショックから抜け出しきれないまま、家を出る。槻右と合流して会場へと向かう予定だったのだ。
「だったら、うちで引き取るよ」
 槻右の英雄は本日はお留守番らしい。表面を削り取って形こそ歪になったが、味の良さは確認済みだ。
「ありがとう」
 リサがようやく笑顔を取り戻す。安心した拓海は、相棒にアイコンタクトでお礼を伝えた。
 
●モンスター・キッチン
 槻介の仮装テーマは『狼男』だ。剥製のような帽子に、裾に鈴をつけた毛皮のマント。毛並みは黒だが耳と尻尾の先だけ水色になっている。「仮装さ……格好良いと言うより可愛いな……」とは拓海の談。リサも「似合ってるわ」と頷いていたので認めざるを得ないらしい。
 一方、拓海は青っぽい顔に縫い痕というメイクを施している。少しくたびれた普段着を着て、頭には大きなネジと来れば立派なフランケンシュタインだ。
「マイヤさん、リサさんも仮装にあうね!」
 槻右の言葉にリサとマイヤが顔を見合わせる。マイヤがダークなお姉さん魔女なら、リサはポップな妹魔女だろうか。黒をベースにオレンジを差し色にしたミニスカワンピとカボチャ帽子が可愛らしいが、黒ガーターでセクシーさもプラスされている。
「これ、良かったら。凝った料理じゃないけどね」
 槻右が差し出したのは鶏もも肉のオーブン焼き。香草塩と油をかけて焼いただけのシンプルな料理だが、香ばしく焼けた鶏肉の照りとハーブの香りが食欲をそそるメインディッシュだ。
「央、今日は呼んでくれてありがとう」
「わたしたちからも差し入れよ」
 大量のカボチャのキッシュだ。鮮やかなカボチャとブロッコリーで、彩りの良さは抜群。ウインナーも入って、ボリューム感と塩加減も丁度良い。
 調理場に入り、拓海は央の、リサはマイヤの作業を手伝うことにしたのだが。
「ええっと……お鍋をかきまわしているだけでいいの?」
「それしかできないのよ、ワタシ」
 リサはハッとした。マイヤの生活能力の無さは尋常ではない。
「私は愚神退治の都合のいいガジェットでいいのよ。とはいえ……たまにはいいかしらね」
 一瞬死んだ目になったマイヤだが、すぐに穏やかな表情を取り戻す。
「そうよ、楽しまなくちゃ」
 リサは微笑んだ。
「あ、このシチュー、カボチャが入ってるのね?」
「ええ、央のアイディアみたいよ」
 拓海は友人の手際の良さに感心していた。
「いつでも主夫になれるね。ってことは氷月さんたちが大黒柱?」
 首を傾げる拓海を央が軽く睨むが、すぐに二人とも破顔する。
「料理だけじゃなくって、運営にもかかわってるんでしょ? 器用だなぁ」
「仕事は準備と段取りが8割だからね! まぁここからは馬車馬のように働くだけさ」
 央は少しだけ共鳴時の面影がある不敵さで笑った。
「じゃ、馬一頭追加だね」
 拓海は隣で野菜を刻み始める。彼ほどではないが料理の心得はある。
「にしても大きい鍋。これどうしたの?」
「役所の伝手だ」
 彼はエージェントでありながら現役の公務員だ。
「あのパワフルな人たちは?」
「母の同僚。依頼数回分の謝礼でこれだけご助力願えるなら安いもんだな」
「はぁ〜……。央ってばデキる男だなあ」
 拓海が感心していると、元気な声が彼の名を呼んだ。友人の皆月 若葉(aa0778)だ。今日は吸血鬼の衣装に身を包んでいる。それでも怪しいというよりは親しみやすさや爽やかさを感じてしまうのは彼の個性だろう。子供ウケはきっとばっちりだ。
「皆月さんも、差し入れ作って来てくれたんだね!」
 おばちゃんに囲まれて味見をしていた槻右が言う。
「依頼でレシピを習ったんです。せっかくだから作ってみました」
 ジャックオーランタン型のカボチャクッキーだ。透明の袋とハロウィンらしいシールで丁寧にラッピングもしてある。
「ありがとう。若葉にはそのままお菓子係をやってもらえばいいかな?」
 拓海が問うと央は頷く。と、彼の携帯に着信が入った。それは彼の恋人たちの到着を告げる音だった。

●トリート・アンド・トリート
「お待たせ、央」
 いつものメイド服に小さめの牙。氷月が演じるのは吸血メイド。牙が本物なのは子供たちには内緒だ。
「央……」
 ジーヴルは到着するなり央の胸に飛び込む。龍を思わせる自分の姿にコンプレックスをもつジーヴルだが、オレンジのリボンや、蝙蝠の羽の髪留めで仮装をしてくれたらしい。央は彼女の頭を撫で、氷月に手を差し伸べた。
「すごくいい匂い。それにもうこんなに賑やかなんだね」
 央と手を繋ぎ、氷月は話し始める。以前に比べ、今は随分と流暢に話せるようになった。たくさん、たくさん、話しをしたい。こういう集まりは本当は苦手だけれど、せっかく央が用意してくれた会だ。できる限り楽しみたいと氷月は思う。
「マイヤ様〜、すっごくお綺麗ですわ〜!」
 奥でリサと話していたマイヤはびくりと肩を震わせる。黒い羽を出せるように改造された特注のシスター服。大きく手を振る桃色の髪の天使――シアン(aa3661hero001)はいつになくハイテンションだ。想い人のマイヤと話せるかもしれないという期待がそうさせるのだろう。
「シアンお姉ちゃん、幸せそうです」
 そう言って嬉し気に笑うのは桐ヶ谷 狐鈴(aa3997hero001)だ。頭には狐の耳、シアンとお揃いのシスター服からは尻尾が飛び出してぱたぱたと揺れていた。
「央、何か手伝う?」
 氷月が恋人を見上げて首を傾げる。彼女をもてなしたくて企画した会だが、その気持ちが嬉しくて央は頷いた。
「私も……央と一緒」
 ジーヴルはエプロンの裾を引っ張る。
「それじゃあお願いしようかな。助かるよ、氷月、ジーヴル」
 氷月は大きなおひつに入ったほかほかご飯を不思議そうに見つめる。
「もう完成してるように見えるけど」
 さつまいもの角切りを混ぜこんで炊かれたご飯を、おばちゃんたちがラップフィルムに取る。茶巾絞りのようにラップをねじって軽くボール状に整えれば、あっという間にまん丸おむすびの完成だ。綺麗な三角おむすびを作るのは案外難しいが、これなら難易度は低めだ。小さめサイズと可愛い見た目は、子供が多いであろうゲストのためだったのだが、丁度良かったかもしれない。
「これならできそう」
 メイド姿の氷月が料理をする姿は、なかなか絵になっている。
「やってごらん、ジーヴル?」
「こう?」
「うん、上手いぞ。その調子だ」
 ベルトや包帯を巻いているため細かい作業は難しそうなジーヴルには鍋をかきまわす役を任せて、マイヤを氷月の隣へ連れ出す。
「央、私料理は……」
「一緒にやらない? 私も頑張ってみる」
 マイヤは恐る恐る作業に参加してみる。
「はいよ、お姉さん。熱いから気をつけな」
「ええ。確かこれを……」
 最初の一度はラップを破いてしまって失敗。次は手のひらの間でプレスされぺしゃんこになるおにぎり。どうやら氷月も似たような状況らしい。
「誰でも最初は失敗するからね。もっと優しく、壊れ物を扱うようにやってみよう」
「わかった」
 何度か失敗を繰り返して、ようやく掴んだ力加減。それはもどかしくなるくらいに優しい。
「やったな」
 央が柔らかく笑う。
「大丈夫、ちょっと握りすぎたのは俺が食べるから。この量なら許容範囲内だな」
 優しくてもどかしい――それは彼を思い起こさせる言葉だ。マイヤは思う。彼がおむすびをひとつ口に運んで見せると、氷月はほんのりと安心したような顔を見せた。
 その後はスピードこそ遅いものの、マイヤと氷月の手でまんまるおむすびが詰まれていく。央は作業を手伝いながらジーヴルが寂しがらないよう側に行ったり、戻ってくれば氷月やマイヤの仕事を褒めて見たりと器用に監督業をこなしている。
「ハッピーハロウィン!」
 若葉の声が聞こえた。お客たちが集まり始めたようだ。
「とりっく、おあ、とりーと!」
「はい、お菓子をどうぞ」
 ちいさなお姫様の前にひざまづき、吸血鬼は手作りクッキーを渡す。
「お兄ちゃん、ありがとー!」
 若葉は笑顔で手を振る。子供たちの喜ぶ顔が見られるというのは嬉しい。
「秋鮭を使ったみそ仕立ての石狩鍋、さといもがごろごろっと入った醤油ベースの芋煮、カボチャの入った秋味シチュー、どれもおすすめですよ」
 やってきた親子連れに槻右が愛想よく説明する。
「お待たせしました。ごゆっくり召し上がってくださいね」
 シアンの側には狐鈴が控え、一生懸命義姉を手伝っている。
「お姉ちゃん、新しいお皿、です」
「ありがとう、お手伝いできてえらいわ、狐鈴」
 料理のできる拓海とリサはひたすらに野菜を刻む係に回される。後から来るゲストのため、第2陣となる鍋の調理が始まるのだ。
「できました〜」
「ありがとね、拓海君」
「いえいえ!」
 拓海は順調におばちゃんからの好感度を上げている。
「あ、切っちゃった」
「拓海!」
 リサは焦って彼の手を取った。あまり深くはなさそうだ。手早く処置をして、リサはため息を吐く。
「しっかりしてよね、もう」
 それは拓海に向けた言葉なのか、それとも自分への戒めなのか。語調が強めになってしまったのは、八つ当たりではないと信じたい。
「リサ、何か機嫌悪くないか?」
 今度は拓海が心配そうにリサを覗き込む。
「そ、そんなことないわ!」
 おばちゃんに妬いているなんて言える訳がない。リサは作業に集中し始めたフリをする。拓海は少ししょんぼりしながら、次の野菜に手を伸ばす。目を伏せた顔がいつもより少し大人っぽく見えた。
(今朝も思ったけど……一緒に料理をするって何だかいいわよね)
 少しの間の後、リサが小さく鼻歌を歌い始めたことに気づいた拓海は、ほっとする。
(よかった。せっかくのハロウィンなんだ。リサが悲しい顔してたり怒ってたりしたら、いやだもんな)
 槻右の元には若葉がやってくる。
「まだお菓子のストックってあります? 俺の分なくなっちゃって」
「早いなあ。大人気だね」
 若葉は照れ笑いを返すが、槻右はふと思う。
「あ、でも皆月さんのクッキー、僕も食べたかったな」
「それは大丈夫! ちゃんと皆さんの分は確保してありますから」
「本当? 楽しみだな」
 槻右はテントの中からストックのお菓子を持ってくる。
「じゃ、いってきまーす」
 女の子がもじもじとこちらを見ている。恥ずかしくて、自分から話しかけられないのだろう。若葉は人懐っこい笑顔を浮かべて近づいて行く。
「こんにちは。俺は吸血鬼だよ。君は何のおばけかな?」
 しゃがみ込み目線を合わせて、ゆっくりと問う。猫耳のカチューシャをつけた女の子が答える。
「……えっと、ばけねこさんだよ」
「化け猫さん、今日は来てくれてありがとう。俺と一緒におばけの国のご挨拶してみようか」
 トリック・オア・トリート! ふたりは声を合わせる。
「よくできました! じゃあこれあげるね」
「ありがとう、おにいちゃん」
 彼女は嬉しそうにお菓子を掲げて、友達の元へ戻って行った。そこでぐぐぅ、とお腹が鳴る。誰にも聞かれなくてよかった。美味しい匂いはいいものだけれど、お昼前から頑張っている彼らにとってはちょっぴり残酷でもある。
「よし、あとちょっとがんばろうかな」
 わずかに西に傾いた太陽を見上げて若葉は呟いた。

●ハロウィン・グルメ・パーティ
 盛況のうちに炊き出しは終了し、一同は遅めの昼食タイムに入る。折り畳みの机といすを並べて、仲間たちとのハロウィンパーティだ。
 槻右がおむすびにかじりつく。この時期だけあってもちろん新米。お米の味をダイレクトに味わえる塩むすびに加えて、角切りのさつまいもをまぜこんだおむすびと、栗ご飯のおむすびがあるのだ。そして、しょうゆベースのあったか芋煮がご飯に合わないはずがないわけで――。
「央……凄い美味しい。……持って帰ってもいい?」
 槻右の純粋な尊敬のまなざしに央も気を良くする。
「氷月が食べつくさなければね」
 スープをうっとりとすすっていた槻右は央の左隣り、つまり自分の正面に座る人物を見る。
「央、これおいしい……!」
「氷月さん幸せそうに食べるなぁ」
 皆の手前、いつもよりはセーブしているがそれでもやはり猛スピードで皿が空になっていく。
「おかわりもあるからね」
 そんなことを心底嬉しそうに言う。今日も今日とて忙しく働いていた央だが、疲れは見えない。
(氷月さんと付き合い始めてからの央、すごく生き生きしてるなぁ)
 拓海は微笑ましい気持ちになる。
 央の右隣にはジーヴルが恋人に密着したまま食事をしている。無意識なのか服がはだけて妙に艶っぽい。央ははっとしてジーヴルの服を整える。動揺した彼というのは結構なレア映像だが、茶化すほど野暮じゃない。
「本当に仲が良いんだな」
 央の正面に座った拓海が言うと、ジーヴルは伏し目がちながら嬉し気に笑う。央との仲を褒められるのが嬉しいのだ。
 ジーヴルは央に貰ったハートのネックレスと銀のドルフィンリングを大事に身につけている。それに目を止めたのはジーヴルの向かいの若葉だ。
「それ似合ってるね」
「……央にもらった、の……いつも……つけてる……こっちは遊園地で」
 ジーヴルはネックレスのハートを指先で撫でる。
「そっか。ジーヴルさんの宝物なんだね」
 彼女は眼を輝かせて頷く。「ドルフィンリングはどこで?」と若葉が質問を続けると嬉しそうに答えている。
「あ、拓海その肉……最後の一個」
「あ〜! 酷い!」
 槻右はすました顔でもぐもぐと口を動かす。
「俺の肉返してよ〜」
「作ったのは僕だよ?」
 フランケンVS狼男のバトルが勃発した。
「央の友達、面白い人ばかりだね」
 皿にとってあった槻右の料理をおいしそうに頬張って、氷月が言う。
「そう? 確かに個性は強いかな」
「うん、それにいい人たち」
 最初は緊張していた氷月も硬さが取れてきている。拓海と槻右のじゃれ合いは和やかな調子で続く。
「もう、拓海ったら子供みたい」
 隣のテーブルに座るリサはあきれ顔で言う。席の関係で氷月が槻右や拓海と話し始めた。央は今度はジーヴルの話を一緒に聞いて相槌を打っている。とはいっても氷月は話半分ならぬ、話1割と言ったところで、ほとんど食事にかかりきりだ。結局6人の会話は『最近受けた依頼』というテーマに行きついたらしい。
(女の子と仲良くするのはちょっと妬けちゃうけど……それも拓海のいいところよね)
 少し頭が冷えて、そう思えるようになっていた。リサはシチューをすくって口に入れる。ほんのりとした優しい甘さだ。
「流石、私たちの力作ね」
 向かいに座るマイヤは控えめに笑った。何せシチューに関しては混ぜていただけだし、おむすびだって味付けはおばちゃんたちだろう。
「だって今日の私たちは魔法使いよ。おいしくなる魔法がかかっていてもおかしくないじゃない?」
 マイヤは意外そうに眼を見開く。
「面白いわね。私にそんな優しい魔法が使えるなんて……」
 自分には似合わない。マイヤの笑顔に影が落ちる。
「ほら、央さんも食べてるわ。マイヤさんの優しさが央さんにも伝わってるはずよ」
「……ありがとう」
 そのとき、マイヤの隣の空席に腰掛ける者がいた。
「マイヤ様、お隣失礼しますねっ」
 シアンだ。なぜか自分などを好いてくる相手。けっして嫌いなわけではないけれど――心境は複雑だ。
「コリン、おいで」
 彼女についてきたのは狐の耳が生えたあどけない少女。
「こっちの椅子、使います?」
 リサが腰を浮かしかけるが。
「ありがとうございます。でも、平気ですのよ」
 狐鈴はシアンの膝の上に座る。シアンは可愛い妹の髪を「いい子」と言うように撫でて満足げに笑った。
「おいしそうなものがたくさんあるわね。どれから食べようかしらね?」
「お姉ちゃん、ボク、栗ごはんが食べたい……です」
 当然のように「あーん」を始める二人。見事なラブラブっぷりである。何気なく虚空に眼を逸らしたマイヤに、シアンの声が届いた。
「あのっ……! わたくしの仮装、いかがでしょうか? 羽を活かせたら素敵かなと思って、聖職者のイメージで作って頂いたんですの」
「そう、こだわっているのね。綺麗な衣装だと思うわ」
 マイヤは衣装をちらと眺めて、抑揚の乏しい声で言う。彼女をよく知らないものが見たら機嫌が悪いと勘違いしたかもしれない。
 シアンの顔がぱっと輝く。喜色満面とはこのことだろう。
「ありがとうございます! マイヤ様もとっても素敵です! 今のドレスなら、黒い羽を持つわたくしと並ぶとまるで一対のように見えるのではないかと考えてしまって……やだわたくしったら何を言っているのかしら。ああっ! でもいつもの白いお召し物も、ブルーの髪に良く映えて、色っぽいのに無垢なイメージもあって、とっても素敵なのですけれど!」
 シアンは言葉を挟む暇もなく言葉を紡ぎつづける。膝の上の幼子はさぞ寂しがっていると思いきや、やはり義姉の幸せイコール自分の幸せという式は健在らしい。シアンに体重を預けて、ニコニコしている。
「コリン、次は何が食べたい?」
「次は……ボクがお姉ちゃんに」
 狐鈴はスプーンを持ち上げ、シアンの口に運ぶ。リサはこっそりと胸をなでおろした。なんだかおかしな状況だが、皆それぞれにこの集まりを楽しんでいることだけはわかった。
「皆月さん、この芋煮、味が浸みてて美味しいよ」
 きのこもしめじと舞茸と椎茸と3種類使われており、香りも味も折り紙付きだ。
「あ、俺まだ食べてないです。石狩鍋も美味しいですよ。鮭がほろっほろに煮えてていい感じです」
 こちらにはあつあつの豆腐やニンジン、大根、ネギなどが彩りを添える。お好みで山椒を掛けるのも良いらしい。
「本当? じゃあお代わりしに行こうかな」
 槻右と若葉が立ち上がる。若葉は央たちの近くへ戻り、槻右はこちらへやってきた。飲み物は持参の酒らしくほろ酔いのようだ。
「初めまして! 僕は三ツ也 槻右と言います。よろしくお願いしますね」
 柔和な笑顔と声は、狐鈴にも警戒心を起こさせることは無かった。人を襲う狼男のイメージではないかもしれないが、黒い立ち耳は良く似合っている。
「ボクは……桐ケ谷 狐鈴……です」
 きちんとご挨拶できた義妹の頭を撫で、シアンが言う。
「三ツ也様、依頼ではお世話になりました」
「こちらこそ。お揃いの仮装、素敵ですね」
 狐鈴はシアンと顔を見合わせて満足そうに笑った。

●スイート・ドリーム
「三ツ也さ〜ん」
 拓海と若葉が席を移動してくる。スプーンですくったシチューを、狐鈴のために冷ましていたシアンは「フー」と尖らせた口を元に戻す。
「あら? 氷月とジーヴルはいませんわね。どちらへ行ったんですの?」
「央のお母さんにご挨拶」
 眉間にシワを刻み、わざとらしいくらいの重々しい調子で拓海が言う。
「もう、拓海さん。説明は済んでるから修羅場にはならないと思うって迫間さん言ってたじゃないですか」
「あはは、ごめんごめん」
 すかさずフォローする若葉はやはり好青年である。
「しゅらば?」
 狐鈴が首を傾げる。やば、と拓海と若葉はあせるが、シアンは何事もなかったかのように言う。
「なんでもないわ。ほら、シチュー食べましょうね?」
「うん……おいしい」
 狐鈴が微笑むと、場の空気が一気に和んだ気がした。
「よかった。そうだ、迫間さんが冷蔵庫にあるアレ食べていいよって」
 若葉が微笑む。
「拓海?」
 リサが問うが、彼らは顔を見合わせて微笑むばかり。
「何よ、にやにやして気味が悪いわね?」
「じゃ、リサさんに嫌われちゃう前に持ってきますか」
 誇張ではなく、ドンと音を立てて置かれたのはバケツ。そして大皿。
「せーの!」
 若葉が皿を抑え、拓海がバケツをひっくり返す。
「こ、これは……!」
 槻右が息を飲む。
「ぷりん……?」
 狐鈴が言う。直径約25cm、高さは30cmという抜群のプロポーション。容積にして10リットル。夢のバケツプリンが王の風格ともいうべき、堂々たる威容を誇っていた。
「カボチャプリンだよ」
 若葉が言う。
「氷月さん用に作ったけど、よかったらおひとつどうぞってね」
 拓海が付け足した。
「すごい……美味しそう、です。それに……綺麗な色……。こんなの、みたこと……ありません」
 狐鈴の眼はキラキラと輝く。
「ちょっともったいないけど切り分けちゃおうか」
 槻右が持ち上げようとするが――重い手ごたえが彼の手を止める。擬音で表すなら『ぶるるんっ!』だ。『ぷるん』なんて生易しいいものではなかった。
「落としたら責任問題だからな」
「プレッシャーかけるのやめてよ、拓海」
 結局は包丁の方を持ってくることにして、一同は夢のプリンに舌鼓を打つ。
「おいしい!」
「本当ね。央さんにレシピ聞かなくちゃ」
「作ってくれるの、リサ?」
 拓海が尋ねる。
「そうね。今日失敗しちゃった分のお返しに」
 リサは悪戯っぽく言う。たまらず二人は笑い合うのだった。
「おいしい……です」
「よかったわね、コリン」
 カボチャの甘味と濃厚な生クリームの風味が溶け合う。少し苦めのカラメルソースが良いアクセントになっている。とろけるような笑顔を見せる狐鈴に、シアンはつられて笑顔になる。
(マイヤ様……やっぱり気になるのかしら)
 マイヤはプリンにはしゃぐ一同ではなく、少し離れた席にいる3人を見遣っていた。
 
●ナイス・トゥ・ミート・ユー
「……央のお母さん、はじめまして」
 氷月とジーヴルが自己紹介する。氷月は央の隣に立っており、ジーヴルは央の背中に隠れて腰に腕を回している。
「……似てる」
 央の陰から母親と目を合わせたジーヴルが言った。
「そうだね」
 氷月も神妙な顔で二人を見比べ、同意する。迫間家の母と息子は互いを見る。なんだか笑い出したくなる気持ちだ。
「いつも息子がお世話になってます。央のこと、よろしくお願いしますね」
 母親が握手を求める。氷月は機械の右手を差し出すのをちょっとためらう。HOPEにはいろんな個性を持った人がいるけれど、それでもたまにびっくりされることがある。
(でも、この人なら大丈夫、だよね)
 母親は差し出した右手をぎゅっと握った。不思議と安心する。きっと見た目だけではなく心も優しい央と似ているのだろう。
「こちらこそ」
 自分を救ってくれた人。温かさを教えてくれた人。そして、絶え間なく幸せを与えてくれる人。それが央だ。伝えなくちゃと思う。
「私は、央と出会えて、央と一緒に居られて、すごく幸せで……これからもずっと一緒にいたいし、央のお母さんとも仲良くなりたいなって……」
「氷月……」
 ジーヴルが央の体をぎゅうぎゅう締め付ける。
「うん、ジーヴルも一緒にね」
 氷月の言葉に彼女は安心したような表情を見せた。央は口を開く。
「他の人たちと形は違うかもしれないけど、俺は氷月もジーヴルもきっと幸せにしてみせる。だから、見守っててくれないかな」
「話を聞いた時は正直卒倒しかけたけれど」
「ごめん」
 母は笑って「最後まで聞きなさい」と言う。
「だけど、3人の顔を見てたら安心した。央、中途半端な覚悟じゃないのね」
「ああ、もちろんだよ」
 氷月が言う。
「私も央を幸せにする。央のこと、ちゃんと守るから。ね、ジーヴル」
「……うん。絶対、守る」
 央は苦笑した。
「そのセリフ、俺が先に言いたかったな」
 氷月は首を傾げた。母は噴き出した。
「頼もしい恋人さんたち!」
 氷月の頭を撫でてもう一度「よろしくね」と言った。温かい手だ、と氷月は思った。
「よろ、しく……」
 央の陰から出て、央の母に撫でられたジーヴルも嬉し気な顔をしていた。
 仲間たちの待つ席へ戻る途中、氷月がぽつりと言う。
「何だか……お母さんっていいね」
 氷月とジーヴルにはHOPEに保護される以前の記憶がほとんどない。それを知る央は思わず足を止める。
「悲しいとか寂しいとか、そういうことじゃないよ。私には央も、シアンも、ジーヴルも、HOPEの仲間だっているから」
 氷月は央の母を振り返りながら、言葉を紡ぐ。
「ただ……央のお母さんに会えてよかったなって思ったの」
 その理由を説明しようとして、氷月は適当な言葉が見当たらないことに気づく。恋人の顔を見上げると、彼は笑っていた。
「ありがとう。そう思ってくれたのなら嬉しい」
 氷月の気持ちは伝わったらしい。じんわりと胸があたたかくなる。
「……央の、お母さん……好き」
「うん。私も」
 央もまた幸福感に包まれて氷月とジーヴルの顔を見た。
「氷月お姉ちゃん、ジーヴルお姉ちゃん、お帰りなさい」
 狐鈴が言う。
「かぼちゃプリン、お先にいただきましたわ。とってもおいしかったです」
 シアンの言葉に、氷月が臨戦態勢に入る。
「央、プリンがあるの?」
「うん。せっかくだから作ってみた。冷蔵庫に入ってるから取りに行こうか」
 ヒュゴウ。氷月の関係者たちにはもはやお馴染みの擬音。プリンが一瞬のうちに消えた。
「おいしい」
 そう言って見上げて来る氷月はとても愛らしい。すさまじいフードファイターぶりが吹っ飛ぶくらいに可憐である。
「よかった。俺は少し片付けを手伝ってくるよ。すぐに戻るから」
「私……行く」
「うん、いってらっしゃい」
 氷月はそう言うと食事を再開した。側に座る仲間たちは食事を終えて談笑している。少しペースを抑えて会話に加わる。
「氷月さんもキッシュ食べる?」
 リサが問う。
「うん、ありがと」
 色づいたイチョウの葉のように鮮やかな黄色。サクサクさとなめらかさが調和した食感。甘さと塩辛さのバランスもばっちりだ。
「おいしい。これ、手作りなの?」
「ええ、拓海と一緒にね」
 氷月は表情こそ崩さないが、瞳にはありありと尊敬の念が浮かんでいる。
「すごいね。ねぇ……料理がうまくなる秘訣ってあるの?」
 リサは首を傾げ、拓海を見た。
「なんだろうな。あ、美味しいご飯を食べること?」
「ふふ、それはあるかも。氷月さんならばっちりね」
 氷月は意外そうな顔をした。少し考えて、呟く。
「そっか……私も央に作ってあげられたらいいな」
 リサは言う。
「きっと喜ぶわよ。まずは今日みたいに一緒に作ってみたら?」
「あ……それ、いいかも。ありがとうメリッサ」
「リサでいいわ」
 央の大切な人たちと、少しずつだけれど仲良くなれている気がする。氷月は嬉しくなった。
「氷月さん、これは俺から」
 若葉からはカボチャの甘味を活かした優しい甘さのクッキーをもらう。食べるペースがもう一段階遅くなったのは会話が弾んでいるから。――それでもやっぱり、他の人よりずっと早いのだけれど。
「氷月お姉ちゃん……すごいです。手品みたいです……」
「手品と言うか、ブラックホールというか。まぁ、幸せそうで何よりね」
 シアンは相棒から義妹へ視線を移す。
「コリンはもうお腹いっぱい?」
「うん……お腹がいっぱいで、気持ちよくて……ちょっとだけ眠いです」
 狐鈴の手がぽかぽかと温かい。本当に眠ってしまいそうだ。
「シアンお姉ちゃん……少しだけ……」
「あらあら」
 冷蔵庫を借りた関係で公民館は鍵が開いている。しばらく休ませてもらうことにしよう。央の母の同僚が狐鈴を抱いて歩くシアンにひざ掛けを貸してくれた。
「あら? マイヤ様?」
 狐鈴を座布団の上に寝かせ、何気なく部屋の外に出てみると、マイヤがキッチンから歩いてきた。意外な遭遇にシアンは眼を見開いた。少し大きすぎる声が出て、口を押えた。
「こんなところでどうしたんですの?」
「あなたこそ」
 と言いかけたところでマイヤは事情を察した。声のトーンを落としたシアン。ずっとべったりだった幼い少女の不在。いつも通りのうつろな様子ながら、聡い彼女には十分すぎる判断材料だったろう。
「ワタシは央の洗い物を手伝おうとしたのだけれど……」
「あ」
 シアンもすべて言う前に状況を察した。
「あの、少しの間、お話し相手になって頂けませんか? マイヤ様さえよろしかったらなんですけれど!」
 マイヤは無表情にシアンの顔を見返す。
「そっちの部屋は開いているのかしらね? ここで話していたら安眠妨害でしょう?」
 シアンは数秒固まって、隣の部屋をノックしてみた。ふすまなので音が間抜けなのはご愛敬だ。返事はない。開けてみるとそこは無人だ。
「だ、大丈夫そうです」
「じゃあ、ここでいいわね。……本当に物好きな人」
 ふすまが閉まる音を聞いた央の口角が上がる。皿洗いを再開しようとしたとき、恋人のかすかな声が聞こえた。
「央……よかった、ね」
 緩んだ顔を見られてしまったようだ。しかし安堵したのだから仕方ない。
「ありがとう」
 半分は気遣ってくれたお礼に、半分は照れ隠しに、流しに向かっていた体を反転させて髪にキスを落とす。
(あんな風にマイヤの世界が少しずつ広がっていけば嬉しいんだが……うん、そうなっていくと信じよう)
 スポンジをくしゅくしゅと握ると泡がこんもりと大きくなる。洗剤のいい香りが広がって心地良かった。

●エピローグ・魔法が解けても
「楽しかったね」
 拓海が言うと、槻右が頷く。
「うん、来年もできたらいいよね」
「拓海さん、今日は誘ってくれてありがとうございました!」
 若葉が言うと拓海は答える。
「こちらこそ! 若葉が大活躍してくれたおかげで助かったよ!」
「そんな、大げさですって」
「大げさじゃないわ。若葉さんって年下にモテるのね。『吸血鬼のお兄ちゃん、バイバイ』ってわざわざ言いに来てくれた子もいたし」
 今日のメンバーとは、プライベートでの交流は初めてだった若葉もすっかり打ち解けたようだ。リサは笑って来年に思いを馳せる。
「来年は何の仮装にしようかしら?」
「俺も迷うなぁ」
 拓海も一緒になって考え始める。
「リサさんは、今年はマイヤさんとペアだったでしょ? だったら来年は拓海とリサさんがペアの仮装をすればいいんじゃない?」
 槻右の言葉にリサは頬を染めるが、拓海はぽかんとして答える。
「2人で対って言ったら何だろう。うーん……狛犬?」
 なんとも色気のない回答に槻右は呆れる。
「そこは王子様とお姫様じゃないの?」
「ええっ? 俺は王子なんて柄じゃないって」
 槻右はここぞとばかりに若葉を味方に引き入れる。
「俺も見てみたいかも」
「ほらほら、皆月さんも賛成だって」
 しかし拓海もやられっぱなしではない。逆襲とばかりに言う。
「じゃあ、槻右は今度こそ犬ね」
「似合いそうね!」
 リサの素早い反応に若葉が噴き出す。
「はは、そっちはリサさんが味方なんですね」
 一気に劣勢に陥った槻右は言う。
「助けてよ、皆月さん!」
「でも、今日の仮装も良く似合ってて可愛いですし」
 悪気なく言う若葉に、槻右ががっくり肩を落とす。
「やっぱり可愛いなのかぁ……」
 来年の話をすると鬼が笑うなら、ハロウィンに集まった異形たちが大爆笑しそうな会話で盛り上がりながら4人は帰っていく。彼らがどんな仮装をするかは、来年のお楽しみだ。
「央、今日はありがとう」
「……ありがとう」
 テントが撤去された会場で、央はジーヴルとお別れのハグを交わす。今日は彼女からのスキンシップを受け入れることは多かったが、自分からアクションを起こすことは少なかった。だから今、強く抱きしめる。
「だい、すき……央……」
「俺も、愛してるよ、ジーヴル」
 ジーヴルが名残惜しそうに彼から離れ、氷月を振り返る。
「氷月、も……?」
 人気があまりないとはいえ、近くにマイヤやシアン、狐鈴もいる。氷月はそっと央の首裏に手を回し、囁いた。
「今度はふたりっきりになれるところがいいな」
 今日はたくさんしゃべることができて嬉しかった。だから、今度はぎゅっとくっついてみたい。欲張りな願いだけれど、きっと央は叶えてくれるから。
「その次はジーヴルを優先していいよ」
 彼女はそれだけ言って離れようとするが――健気な言葉に心が締め付けられた央は、腰に腕を回しただけの柔らかな拘束をきついものへと変えた。
「ああ、約束だ」
 ハロウィンを過ぎれば、季節は冬へと向かっていく。また大切な仲間と、最愛の恋人と、あたたかな時間を迎えられることを願いながら、央は2人の恋人に手を振った。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【迫間 央(aa1445)/男性/25歳/冷静に俯瞰する者】
【皆月 若葉(aa0778)/男性/18歳/義】
【荒木 拓海(aa1049)/男性/26歳/近未来カウボーイ】
【メリッサ インガルズ(aa1049hero001)/女性/18歳/近未来カウガール】
【三ッ也 槻右(aa1163)/男性/20歳/追跡者】
【マイヤ サーア(aa1445hero001)/女性/26歳/宿縁の結び目】
【氷月(aa3661)/女性/18歳/巡り合う者】
【シアン(aa3661hero001)/女性/20歳/巡り合う者】
【ジーヴル(aa3661hero002)/女性/18歳/エージェント】
【桐ヶ谷 狐鈴(aa3997hero001)/?/10歳/エージェント】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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高庭ぺん銀です。この度はご発注ありがとうございました!
央さん、マイヤさん、氷月さん、シアンさん、ジーヴルさん、またお会いできて嬉しいです。
拓海さんとリサさんは、本来のキャラ設定でお目にかかるという意味では初めまして(笑)
若葉さん、槻右さん、狐鈴さんは、本当に初めましてですね。
ほのぼのした雰囲気やご飯の話を書くのは大好きなので、お任せしてもらえて幸せでした。

今回のお話には、かなり多くのアドリブを入れさせていただきました。物足りない点や違和感のある点などありましたら、ご遠慮なくリテイクをお申し付けください。
それでは、また皆様にお会いできる時を楽しみにしております。
VIG・パーティノベル -
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2016年11月21日

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