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『運動会はハプニングと共に 』
猫野・宮子ja0024)&ALjb4583


 とある秋晴れの一日、猫野・宮子(ja0024)とAL(jb4583)は地域の運動会に参加していた。
 それはいわゆる町内会の単位で行われる親睦会のようなもので、順位を競いはするが、勝敗が主な目的ではない。
 大切なのは同じ地域に住む者同士、能力者も一般人も分け隔てなく、皆で一緒に楽しむこと。
 よって、老若男女やアウルの有無を問わず、誰でも自由に参加することが出来た。

 そのせいか、プログラムには普通の運動会ではお目にかかれないような競技種目がずらりと並んでいる。
 中には暗算の速さと正確さを競う競技や、カラオケのイントロを当てるクイズのようなもの、フィールド全体を使った巨大チェスや巨大神経衰弱など、運動とは程遠い種目もあった。
「なるほど、知識や記憶力にはアウルの影響はありませんから、これなら一般の方とも一緒に楽しめますね」
「でも、それは運動とは言わない気がするんだよ?」
「僕はこれも立派な運動だと思いますが……ほら、頭の体操って言うでしょう?」
「あっ、そうか! ALくん頭良い!」
 もちろん普通の運動会で行われるようなトラック競技やダンス、綱引き、大玉転がしなどもある。
 二人が参加するのは、そうした普通の競技だった。
「頑張ろうね、ALくん!」
「はい、宮子様には負けませんよ」
 二人は学校指定の体操服を着込んで競技のフィールドに立つ。
「でもなんでかな、みんなの視線がボクに集まってる気がするんだよ?」
 特に男の人。
 普段はあまり目立つ方ではないのに、何故だろう。
「ボクの格好、何か変かな? もしかして、はみ出てたりする?」
「いいえ、宮子様は何を着ても似合いますから、それで皆さん注目なさっているのでしょう」
 はみ出るとは何のことかと内心で首を傾げつつ、ALは本心からそう答えた。
 彼は知らない、宮子が穿いている紺色のショートパンツが「ブルマー」というものであり、それが今や学校現場では絶滅したが故に、一部の愛好家の間では崇拝に近い感情を呼び起こすアイテムとなっていることを。
 宮子は宮子で「女子の体操服と言ったらこれ」と思い込んでいる様子なのは、魔法少女の世界ではそれが未だに現役であることが多いためだろう。
 周囲を見ても同じ格好をしている者がいないという事実には、どうやら気付いていないようだ。

 そんなこともあって観客の注目を一身に浴びつつ、宮子は午前中に行われた個人競技を好成績でクリア、午後の団体競技を前にお弁当でひと休み。
「ALくんもお疲れ様なんだよ。いっぱい作って来たから、どんどん食べてほしいんだよ!」
「いつもありがとうございます、いただきます」
 目の前に広げられた弁当は三段重ねの大きな重箱に、彩りも鮮やかにぎっしりと詰められていた。
 定番の鶏の唐揚げにタコさんウィンナー、甘い卵焼き、豚肉のアスパラ巻き、鮭のマヨネーズ焼き、きんぴらごぼうにほうれん草のゴマ和え、星型にカットしたハッシュドポテト、それに一口サイズの小さなおにぎりや、手まり寿司などなど。
「宮子様の作るお料理はいつも美味しいですね」
 出来たてはもちろん、こうしてお弁当に入れても味が落ちることがない。
「僕がお返し出来ることといったら、これくらいですが……」
 ALはポットに入れてきた湯でお茶を淹れる。
 紙コップなどではなく陶器のティーセットを持参して、しかもきちんと温めてから使うという本格仕様。
「ありがとうなんだよ。ALくんが淹れてくれるお茶も、いつもすごく美味しいんだよ!」
 宮子にはとても真似が出来ないから、それでお互い様だろうか。

 お腹が一杯になったら、次は午後の部。
 ここからはペアや団体での競技がメインになる。
「えっと、ボク達がエントリーしたのは……」

 二人三脚パン食い障害物競走。

 読んで字の如く、二人三脚でパン食い競走と障害物競走を行うものだ。
 スタートしてすぐに待ち受けているのは、紐でつり下げられた剥き出しのパン。
「これはどっちか片方が取れればいいんだよっ」
「はい、でも取ったパンはその場で食べ終わらないと動けないそうです」
 しかも手を使わずに、二人で両端から食べ進めなければならないとか、何の○ッキーゲームですか。
「とにかく、パンを取らなきゃ始まらないんだよっ」
 息を合わせて、せーのでジャンプ!
「ひやふぉはま、ふぉれまひた!」
 惚れました?
 いや、取れました、ですね。
「じゃあ次は二人で食べるんだよ!」
 宮子は反対側からはむっと噛み付いて、もぐもぐ、もぐもぐ……
 あれ、これってこのまま食べ進んだらどうなるの?
 チューとかしちゃうんじゃないの?
 でも仕方ないよね、そういうルールなんだから!

 もぐもぐもぐ、ちゅ。
 クリームパンの味でした。

「わ、わざとこういう競技なのかな? よく見たら男女ペアばっかりだよっ」
 わたわたしながら次の障害へ進むと、そこに待ち構えていたのは細くて長い平均台。
 これを渡れと言うのか、二人三脚で。
「これは……横に並んでカニ歩きするしかなさそうですね」
 ALのアドバイスに従って二人並んでぴったりと身を寄せ合い、そろりそろりと一歩ずつ。
 バランスを崩しそうになる度に二人で互いにしがみつき、支え合って何とかしのぐ。
「なんか、この競技……密着することが多いような」
 ような、ではなく完全にそれを目的として企画されたとしか思えない。
 男の子としては嬉しい限りだけれど、女の子としてはどうなのだろう……と思いつつも、全ては勝利のため。
「失礼します、宮子様」
 ALは宮子の腰をしっかり抱き寄せて更に密着、完璧な一体感と共に平均台をクリアした。
「こ、この調子で次も頑張るんだよっ」
 宮子の顔が赤いのは、動いて暑くなったから……だけではないと思いたい男心。
 その赤い顔は、次の競技で更に真っ赤に燃え上がる。

 目の前に置かれているのは調理用のバット、中に入っている白い粉は小麦粉だ。
「ここに埋もれている飴玉を探して、咥えて運べば良いのですね」
「そうなんだよ、でも手は使えないんだよ」
 だから当然、息で粉を吹き飛ばしながら探すしかないのだけれど……二人の息が上手く合わないと、こうなります。
「ぶふぉっ、ごふげふくしゅんっ!」
「あ、ALくん大丈夫!?」
 ごめんね、吹き飛ばした粉がALくんの顔を直撃しちゃったよ!
「だ、だいじょうb……ごほっ、です。宮子様は僕に構わず飴玉を探してくだsっくしゅ!」
 粉が鼻と口と目に入って咳とクシャミが止まらなくて目も開けられないけど大丈夫!
「わかったんだよ! あっ、見付けたんだよ!」
 えっと、これを……なに、二人で咥えて運ぶの?
 二人でって、どうやって……?
 宮子は助けを求めるように他のカップルの様子を見た。
 途端、目に飛び込んで来たのはキス寸前にまで顔を近付けた二人の姿。
 慌てて顔を手で覆い、目を逸らそうとしたけれど、ふと何かが気になって指の隙間からチラリと覗いてみる。
 二人の顔の間には、飴玉があった。
 つまり、二人の唇で飴玉を挟んで運ぶ、これが正解。
「宮子様、どうしました?」
「えっ、ううん、何でもないんだよ! えっと、ALくんごめんね!」
 まだ目を開けられないALに向かって、宮子は飴玉を挟んだ唇をそーっと近付けてみる。

 ぷちゅ。

 触れてない、唇は触れてない……まだぎりぎり、かろうじて。
 しかしこの状態で二人三脚となると、触れるのは、もしくは離れてしまって飴玉が転がり落ちるのは時間の問題。
 そしてまだ恋人未満と主張する二人に訪れたのは、後者でした。
「あっ、飴玉が落ちたんだよっ!?」
 コロコロ転がって、宮子の服の中に!
「ALくん、とって!」
「は、はい……! では失礼して……っ」
 もう目は見えるようになっていたけれど、紳士としてそこは目を逸らしつつ、手探りでごそごそと。
 なお服の中に手を突っ込むのが紳士のすることかというツッコミは非常時につき却下でお願いします。
「そ、そんなところには入ってないんだよっ!?」
「はっ、し、失礼しましたっ」
 そんなところってどんなところ、なんて質問も却下です。
「ありました宮子様!」
「じゃ、もう一度二人で挟むんだよ!」
 せーの、ぷちゅ。
 これって確かキャンディキスって言うんじゃなかったっけ。

 どうにか飴玉を運び終え、最後に待っていたのは網くぐり。
「よかった、これなら簡単そうなんだよ!」
 と、思うでしょ?
 しかし、これが最後に設置されている意味を考えてみましょう。
 ただ普通に網をくぐるだけで終わるなんて、あるはずがなかった。
「ひあっ!?」
 開始数秒でALが素っ頓狂な声を上げる。
「待って下さい宮子様! 服、服がっ」
「服?」
 その声に、宮子も思わず自分の体操服を見下ろした。
 網をくぐっている最中なのだから、乱れているのは当然だ。
 けれど、これは乱れているというより……脱げかかっっている!?
「はわわ、ボクの服もだよ!?」
 いったい何がどうなっているのか。
 よく見れば肩や脇の縫い目がほつれて糸が延びている。
 この網には何か脱衣を促すための巧妙な細工が施されているらしい。
 しかし深く考えている時間も、服を直している時間もなかった。
「で、でもゆっくりしてたら負けちゃうっ」
 ここは委細構わず一気に抜ける!
「出られたんだよっ!」
 その時にはもう下着の一部がかろうじて残るのみ、振り向けば網に引っかかった服の残骸が死屍累々。
 しかし気にしている場合ではない、隠すべきところは最低限隠して、後はゴールまで走るのみ!

 結果は二着、しかし。
「え、総合成績で一位ってどういうこと?」
「宮子様、どうやらこの競技には隠しパラメータがあったようです」
 それは競技中のいちゃらぶ度。
 密着度が高かったり、仲の良いところを見せ付けたりすると高くなる。
「申し訳ありません。僕が宮子様の服の中に手を突っ込んだのがポイント高かったようで……」
「ううん、ボクは気にしてないんだよっ」
 と、にこやかに返されるのも微妙な気分ではあるけれど。
「それに、そのおかげで一番になれたんだよね。ALくんありがとうだよっ」
 だきゅんっ!
 抱き付いた瞬間、最後の砦が足元にはらりと落ちた。
 でも周りからは見えないから大丈夫。
 それにすぐバスタオルかけてもらったし……だから出て来ないで蔵倫様、あなたのお仕事はここにはないのよ!

 なお破れた服は回収し、元通りに縫い直された上で返してもらえるそうです。


 そして全ての競技が終わり、結果に満足した二人は仲良くシャワー室へ。
「うわぁ、汗と泥でベタベタなんだよ」
 でも楽しかったと、宮子は温かいシャワーを浴びながら思い出に浸る。
「二人三脚は色々大変だったけど、ね」
「ええ、まさかあんなことに……楽しかったですけどね、ふふ……あれ?」
「ん、どうしたの? ALくん」
 そこでALは、はたと気付いた。
 ナチュラルに宮子と隣同士でシャワーを浴びていることに。
 シャワーは男女共用……であるはずがない。
 恐らくここは女性用、しかしALの容姿が普通に女の子に見えてもおかしくないレベルで可愛かったために、誰にも見とがめられることがなかったのだろう。
 間仕切りは一応、ある。
 下半身が隠れる程度には。
 あとはシャワーの流れと湯気だけが頼りだ。
 その湯気を通してぼんやりと見える互いの姿。
「…………。……え、ALくん?」
 固まったようにじっと動かないALの様子に、ちょっと心配になった宮子は声をかけてみる。
「あっ」
 じろじろと見ていたことに気付かれたと思ったのか、ALの顔は見る間に真っ赤っか。
「いえ……やっぱり宮子様の身体、綺麗だなって」
「そ、そうかな。ALくんの身体も……意外と綺麗(///」
 そのまま暫し見つめ合う二人。

 シャワーの音だけが、そこに時が流れていることを教えていた。
 けれど、二人の耳には何も聞こえず――


 しかしそんな空気を読まず、ドヤドヤと入ってきたオバチャン集団!
「あ、ALちゃん、そろそろ出ようか(あわわわ」
「そ、そうね、宮子ちゃん(わたたた」
 バスタオルで身体を隠し、女の子のふりをして、どうにか誤魔化した二人は怪しまれずにシャワー室を脱出。
 その後は無事に着替えて帰りましたとさ☆



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja0024/猫野・宮子/女性/外見年齢14歳/相変わらずハプニングを呼ぶお猫さま】
【jb4583/AL/男性/外見年齢13歳/相変わらず巻き込まれるお狐さま】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

いつもお世話になっております、STANZAです。
ご依頼ありがとうございました。

今回も蔵倫様と良い感じにバトルさせていただきました(爽笑(
恋人までもう少しですか、影ながら応援させていただきますねっ(ぐっ

口調や設定等、齟齬がありましたらご遠慮なくリテイクをお申し付けください。
(特に「僕」と「ボク」の使用が怪しいので、間違えていましたら前回までの分も含めてご遠慮なく!)
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エリュシオン
2016年11月25日

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