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『紅葉狩り 』
弓月・小太ka4679

「今日は暖かくなりましたねぇ」
 ふう、と振り向いた弓月・小太(ka4679)。
 額の汗を拭った背後に、赤や黄色に色付き見事な錦を織りなす紅葉が高い。空は青白く清らか。見事に折り重なる木々を際立たせていた。
「うん。とっても気持ちいいよね、小太さん」
 元気よくこたえたのはフラ・キャンディ(kz0121)。
 小太に誘われ小高いこの山の遊歩道を登り、開けたこの場所に来てから目を輝かせっぱなしだ。
「よ、良かったですぅ」
 フラの様子に嬉しそうな小太。こっそり彼女の最初の感想を思い出す。

「うわあ。ボク、こんな宝石箱のような場所は初めて。エルフの隠れ里にも紅葉はあったけど、こんなに素敵じゃなかったよ」
「ほ、本当ですかぁ。フラさん、森に住んでたから慣れてるかもって、退屈したらどうしようかと……」
「慣れてないよ。枯れない木と一緒だったり一本だけとかなら珍しくないけどね」
 否定するフラの言葉が次第に柔らかくなる。
「……それに、一人じゃないもん」
 きゅっと小太の腕に自分の腕を絡め寄り添った。肘がフラの体に触れる。柔らかい。
「え、ええと……」
「まあ、小さなカップルさん」
 赤面して固まったところ、向かいから下りてきた女性グループの声が聞こえた。
「可愛らしくてお似合いだこと」
「あんなにくっついて、素敵ね〜」
「ホント、二人とも食べちゃいたいくらい可愛いわね」
 きゃいきゃいと話題になっているのを知り、フラまで真っ赤になり離れる。
「あ……」
 軽くなった腕を残念に思ったが、すぐにそれでもいいと感じた。
(フラさん……)
 距離を取って見上げたフラの姿が、光の加減か透き通るように見えたのだ。
 白くて清楚なワンピースの薄い生地がきらめく。腕や腰、太もものシルエットが浮かぶ。いま、風が舞い赤い葉っぱが妖精のような姿に彩りを加えた。ふわふわの金髪が緩やかにボリューミーに持ち上がる。
「あ……」
 不意に振り向いたフラが今度は目を丸めた。
「ど、どうしましたぁ?」
「その……赤い紅葉の中で白い小太さんがものすごくきれいに見えたから……」
 口元に拳を添えたフラ、照れている。
「と、とにかく奥に行きましょう」
 もちろん小太は自分の姿に気付かない。
 薄い色の着物を着た姿が背後の紅葉の錦の中、くっきりと浮かぶ。
 いや、白い肌と合わせ光線の加減で僅かに輪郭が周りの紅に染まっている。銀色の髪の毛はもう少しはっきりと赤色を跳ねていた。
 そして、ほんのり頬が染まっている。丸められた瞳の赤が鮮烈な印象を残している。
「うん」
 フラ、背を向け振り返る小太の背中を追うのだった。

 木々の装いを楽しみつつ日差しの暖かさなど話すうち、下り坂への立看板を発見した。
「フラさん、川下りですよぅ」
「へえっ。珍しいよね。行ってみよう!」
 指差す小太に早速向かうフラ。
 川辺に下りて、二人揃って息を飲んだ。
「すっごい、ここを下るんだ!」
「下から紅葉のトンネルを抜けるんですね……」
 見上げる光景もすごそうです、と小太。
「ちょっと危ないところもあるんじゃが……」
「大丈夫。ボクたち、ハンターだし」
 管理小屋の主人が一瞬止めたがフラの言葉でそれ以上は言わなかった。
「じゃ、行きますよぅ」
 二人は小舟に乗り込み、小太が流れに竿を差し出発!

「見て、小太さん。すっごい!」
「ふわ……」
 舳先にかじりついたフラが指差し、小太も息を飲む。
 漕ぎ出した川の流れは緩やかで、浅瀬深みと佇まいを変える。
 見上げれば両岸からせり出した紅葉の枝が空を覆い、川面では葉の織りなす錦が深みの色合いの中、揺らめいていた。
 それが流れの先に伸びている。いや、先は見通せないが木々は続いている。
 まるで紅葉の抜け道だ。
「ボク、こんな紅葉狩り初めて」
「ぼ、僕もですよう……」
「ね、小太さん。こっち来て」
 すっかり幻想的な雰囲気でとろけてしまったフラが温もりを求める。
「よいしょ……大丈夫ですか?」
「うん。とってもステキ」
 隣に座ると腕に身を預けてきた。心地良い重さ、温もり。
 小太もすっかりとろけてしまった。
 が、その時ッ!

 ――がくん!
「ふぇ?」
「わっ」
 突然、小舟が大きく揺れた。
 段差を下ったのだ。左に揺れて加速する。
「ど、どうしたんですかねぇ」
「小太さん、見て!」
 抱きつかれて真っ赤になる小太。フラはそのまま進行方向を指差し慌てた。
「きゅ……急流になってませんかぁ?」
 その通り。
 先が見えなかったのは下っていたからだ!
「急流下りだから人が少なかったんだねっ!」
「はわわっ」
 むぎゅー、と抱きつかれる小太だがどうしようもない。どぱーん、だぱーんと降りかかる水。ぐらんぐらん揺れる小舟に弄ばれる。
「お、落ちちゃいそう……」
「そ、そうだ。こうすれば……」
 小太、フラを押し倒し覆いかぶさった。これで転落もないし飛び散る水も自分だけがかぶることになる。


 やがて流れは緩やかに。
「ふう……びっくりした」
「お、面白かったですけどびしょ濡れで……はわわ!?」
 途中から必死に覆いかぶさる自分にフラが笑顔を向けていたのを知っている。だから笑顔で引き起こそうとしたのだが、まさか水に濡れた服がフラにぴったり張り付いているとは!
「し、しかもワンピースが白だから透けてますぅ」
 押し倒した分、余計に水が染み込んでいたようだ。小太、わたわたしつつ自分の服を脱いでフラに掛け岸に寄せる。
「わ……」
「あそこでだれかが焚き火を……フラさん、待っててくださいよぅ」
 小太、走る。
 褌一丁でっ!
 そして戻ってきた手にはタオルとほかほかの焼き芋が。
「フラさん、おまたせしましたぁ。タオルと温かいお芋あったので買ってきたのですよぉ」
「それより小太さん、それ……」
「ふわっ!」
 フラに掛けたのは自分の着物。脱げば褌一丁になるのは覚悟していた。 
 予定外だったのは、自分の着物もびしょびしょでフラがさらに寒そうにしていたことと……。
「は、張り付いてお芋のようにくっきり膨らんでますぅ」
 腰を引いて隠す小太。透けてはいないがぴったり張り付いていた。見ないように覆った手の指の間からしっかり見ているフラの真っ赤な様子がその惨状を物語る。
「と、とにかく焚き火に交ぜてもらって服を乾かそう!」
 走り出したフラに手を引っ張られ、また忘れようにも忘れられない思い出ができてしまいましたぁ、とか思うのだった。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太 様

 いつもお世話様になっております。
 秋の醍醐味、紅葉狩りですね。可愛らしいカップルの、やっぱり最後に酷い目に遭うのね、な様子をお楽しみください。

 それはそれとして、こんな場所があったら私も行ってみたいです。
 急流下りだけは勘弁ですが。

 そんなこんなで、ご発注ありがとうございました♪
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ファナティックブラッド
2016年12月02日

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