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『 ようかんのさんげき 』
星杜 焔ja5378)&若杉 英斗ja4230)&ミハイル・エッカートjb0544


 それは一通の招待状から始まった。
 若杉 英斗は、差出人のない封筒を慎重に開き、カードに目を通す。
「ハロウィンパーティーか」
 カードにはポップなオレンジと黒、緑、紫色があふれており、おばけや魔女のかわいらしいイラストがちりばめられていた。
「魔女ってことは女の子だよな。魔男なんていないし」
 まあだいたいそうなんだけど。
「どこのだれかは分からないけど、仮装した女の子と仲良くなれるチャンスかもしれな……いや、正体不明の差出人に騙された女の子だっているかもしれないし。だとしたら助けてあげないとな!」
 英斗は謎のパーティーに出席することを決めた。
 夢見る青年はきりっと表情を引き締めたまま、脳内では忙しくバラ色の妄想をシミュレートする。

 そして当日。
 深紅の裏地がついた黒いマント、白いレースの襟飾り、口元には小さな牙をのぞかせた英斗は、とある洋館の門前に居た。
「ここであってるんだよな」
 門を見上げる英斗の背後から、呼びかける者がいた。
「そっちも呼ばれたクチか?」
 振り向くと、軍服姿の男、ミハイル・エッカートである。
 手袋の指で帽子の庇を軽くつまみ、会釈する仕草がなかなか決まっている。
「そうです。この招待状で呼び出されたんですが」
「あー、同じだな」
 ミハイルも英斗のものと全く同じ招待状を持っていた。
「いったい誰が……」
「すみませーん!」
 更に声がかかる。
「俺達、ここの洋館に呼ばれたんですけど……」
 カメラを提げた中山律紀は、特徴的なニット帽を被っている。その後ろから、私服の大八木 梨香がついてきていた。
「もしかして招待状が来たのかな」
 英斗が尋ねると、律紀は頷き、白い封筒を見せた。だがその内容は少し違っている。
「取材依頼?」
「そうです。俺はまあ、ネタにな……もとい。面白そうな出来事があれば何でもお邪魔するんですけど。同じクラスの大八木さんが、日時や場所は一緒で、ちょっと内容が違う招待状を持ってて」
 梨香はミハイルや英斗と同じ文面だった。
「で、大八木さんは仮装は?」
「え? 中山さんが私服だから、いいかなと思って……」
「あ、俺は一応、戦場カメラマンの仮装」
 梨香がそっと目をそらす。

 そのとき、門扉がギギギ……と音を立てて開き、一同が身構える。
「大八木さん〜こういうときは、ちゃんと仮装したほうがいいのだ〜」
 扉の陰で微笑むのは、大きな包丁を握りしめたゾンビであった。
「きゃあ……っ!」
「いたいいたいいたい」
 悲鳴とは裏腹に、いきなりゾンビの腕を捻り、肩を掴んで引き倒そうとする梨香。
 ミハイルは冷静にゾンビを観察する。
「その声は……焔?」
「えっ」
 梨香がぱっと手を離した。
「こんにちは〜エッカートさん、なんかすごくかっこいいですよね〜」
 頭から血糊をたっぷり滴らせたゾンビ男・星杜 焔は、そう言って嬉しそうに笑っていた。


 一同は大きな扉から洋館に足を踏み入れた。
「で? 焔が首謀者なのか?」
 ミハイルが帽子をとって顔を煽ぎながら、疑わしそうな目を向ける。
「うん〜そんなような、そうでないような〜」
「なんだそりゃ」
 そのときだった。

 ぎぎぎぎ……

 ばたん。

「なんだか凝った仕掛けだな。どうなってるんだろう?」
 閉じた扉を振り返り、英斗が感心する。
「不思議だよね〜俺にもよくわからないのだよ〜」
 焔はにこにこ笑っていた。
 笑っているが、なんだか様子がおかしい。少なくとも律紀にはそう見えた。
「どういうこと?」
「うん〜俺もパーティーを楽しくしようと思って、仕掛けは用意したんだけどね〜。それだけじゃないことが起きるみたいなのだ〜」
「ちょっと待って。それでハロウィンパーティーとかまずいんじゃない?」
 律紀が襟首をつかむと、ゾンビ焔はかくかく揺さぶられながら笑っている。
「さすが中山くんはゆうしゅうだね〜俺もそう思い始めたところだったのだよ〜」
「どれ、ちょっと見せてみろ……開錠も駄目なのか」
 ミハイルが小さく舌打ちする。
「……だめだ。びくともしない」
 英斗が扉に体当たりで挑むが、開く様子は全くなかった。

「これからどうなるんですか、私たち」
 梨香の声がさすがに不安げだ。英斗がポンと肩を叩き、力強い視線を向ける。
「大丈夫だ、大八木さん! 俺達はディバインナイトだか――」
「明日はアルバイトが入ってるので困るんです」
 ――だめだこいつら。
 焔は、自分などよりユーモアもあって頼りになるのに、英斗が未だに「非モテディバ」であることを残念に思うのだった。
「ともかくだね〜着替えるといいのだ」
「は?」
「大八木さんはきっと仮装してこないと思って、似合う衣装を奥さんが用意してくれてるのだ〜」
「は……?」

 10分後。
「そんな気はしました」
 応接間に現れた梨香は、黒い猫耳に黒い尻尾、黒のメイド服に身を包み、死んだ魚のような眼をしていた。
「よく似合ってるのだ〜」
 にこにこしながら焔が大きなメニュー表を開く。
「さて、応接間のお題は『一発芸』だよ〜。全員が一発芸をしたらクイズが出るからね〜正解すると次の部屋に行けるのだ〜」
 どん引きする一同の中、ゆらりとアウルの輝きを揺らめかせる英斗。
「一発芸? ……俺の『ディバイン音頭』を魅せる時がやってきたようだな?」
 のっけからハードル高すぎる。
「♪俺はディバイン、ディバインナイト〜♪」
 朗々たる歌声、謎のおどり。
 焔の笑顔は凍りつき、梨香はしゃがみ込んで、顔を覆った指の隙間から踊りを見ている。
「ディバインナイト、なかなかやるな。だが俺も負けちゃいないぜ!」
 ある時は特命を帯びた企業戦士、またある時はニヒルなガンマン。
 しかしてその実態は熱い芸人魂を持つ男、ミハイルはなぜか持ち込んでいたハンディマイクをスイッチオン。
「Whooooooo!!!!」
 いきなり絶好調のシャウトが洋館を震わせる。
「いい声してるな〜」
 律紀は何もかもを捨てたかのようだ。
 続くは焔。
「リンゴの皮をむくよ〜」
 するすると糸のように細く長くリンゴの皮をむき始める。
 その間に律紀が学園の教師のものまねをした。
 梨香はうんうん唸っていたが、おもむろに長い髪をばさりと前に垂らし、応接間のテレビの上からだらりと下がる。
「あ、テレビが」
 梨香が脇によけると、画面に何か文字が映った。

『仲間外れを答えよ
 (A)麻婆茄子
 (B)おたんこナス
 (C)メランザーネ』

「仲間はずれ?」
 英斗が首をひねる。
「とりあえずAとCは食えるだろうから、Bじゃないのか」
 ミハイルがそう言ったとき、部屋の奥にあった扉が音もなく開いていった。
「正解だぜ? これぐらいなら簡単だ」
 ニヤリと笑い、先陣を切って次の部屋へ踏み込んでいく。


 扉から続く廊下を進むと、食堂に入る。
 そこで背後の扉が閉じた。
「次は〜食卓にクイズがあるよ〜」
 焔の言う通り、食卓にはエンドウ豆が盛られたお皿があり、『箸を使って1分以内に全ての豆を隣の皿に移せ』とメモがある。
「よし、これはがんばれそうだな」
 英斗は早速箸を手に取り、身構えた。
「ガイジンだからって舐めてもらっちゃ困るぜ」
 ミハイル他、全員が皿を取り囲む。
「Ready……Go!!」
 チャカチャカチャカ。
 全員がせわしなく箸を駆使し、どうにか豆を移し終える。
 皿に書いてあった文字は……

『仲間外れを答えよ
 (A)イカ焼き
 (B)ロールイカ
 (C)クラーケン』

「クラーケンが食えるかーーー!!!」
 律紀の絶叫で次の扉が開き、入った先は台所。
 次のお題は……
「苦手な食材を調理して食べること、だね〜」
「…………」
 ミハイルの顔が『暗転』と言っていいぐらいに変化した。
「小さいかけらにして、何かに混ぜ込めば……」
 ぶつぶつ何か呟きながら、顔色は青から土色になっていく。彼の天敵はピーマンだ。
 英斗は腕組みして考え込んだ。
「苦手な食べ物は特にはないけど。極度に辛いのとかは色々と大変だよね」
「私は納豆だけはどうしても……あっ」
 梨香はついうっかり本音を。
「俺、好き嫌いはないんだけどね。お弁当に入ってたキュウリは嫌だったなあ」
 中途半端に温まり、くったりしたキュウリを思い出す律紀。
「苦手な食材かあ〜鯖の味噌煮は苦手だけど食材というくくりじゃないよね!」
 焔、さりげなく本気の苦手は回避。
「素材といえばこれかな〜臭いがテロだよね〜」
 そう言って棚から取り出したものを見て、ミハイルが叫び声を上げる。
「てめっ、ここでそれを使うか!?」
 焔が今まさに開けようとしているのは、伝説の缶詰・シュールストレミング。
 本場の人たちですら、壁にしみつく臭いを嫌って、屋外でしか開けないという代物だ。
「蒸留酒で洗って〜赤カブと和えて〜がんばろうと思うよ〜」
「ふざけんな!! 責任とって台所の空気ぜんぶ吸い込め!」
 さすがにそれは無理。
 ミハイルはパンパンに膨らんでいる缶を取り上げる。
 考え込んでいた英斗がカッと目を見開く。
「じゃあこうしよう。全部混ぜるんだ!」
「「「ハァ!?」」」

 30分後。
 ピーマン・納豆・缶詰サバ味噌・キュウリを炒めて、激辛味付けした炒飯を、全員がかきこむことになる。
「全くピーマンの味はしない……やったぜ、クリアだ」
「同感です……全てが激辛に打ち消されました……」
 ミハイルと梨香がテーブルに突っ伏しながらの勝利宣言。
「思ったよりもいけるんじゃないかな」
「お弁当の匂いが染みついてダメだったのかも。案外食べられますね」
 残りを平らげる英斗と律紀。
 さりげなく一番ダメージを受けていたのは焔であった。食感と臭みが鬼門だったサバ味噌が、割とそのまま混入していたらしい……。


 次の部屋は寝室。
 なぜかもふもふちまっとした黒ヤギや白ヤギや、巨大なもふら様やケセランが部屋を占拠していて、存分に遊んであげないとクイズを出してくれないという、苦しくも楽しいお題であった。
 そしてたどり着いた最後の部屋、パーティールーム。
「うおっすごいな!」
 英斗が思わず声をあげたほど、豪華にしつらえてある。
 暗い部屋を無数の黒い蝋燭が照らし、テーブルには山盛りのオードブルやお菓子が待ち構えていた。
「美味しそう。これがご褒美なのかな?」
「ご褒美だけど最後の課題だよ〜」
「焔! ここに居たのか」
 ミハイルは寝室に居なかった焔を心配していたのだ。
「……って、最後の課題? どういうことだ?」
「この中に鍵が隠されているのだ〜全部食べて探しだしてね〜」
 蝋燭の明かりに焔の微笑みが照らされる。
 満足しきった恍惚の笑み。
 そう、妖怪・めしくえおばけの真の目的は、招待客にお腹いっぱい食べさせることだったのだ!

「もふもふと遊んでお腹もすいているはず〜いっぱい食べてね〜」
「これを……全部……?」
 英斗が唸る。こんなことならさっき、炒飯なんかにするんじゃなかったと思ったが後の祭り。
「食べ物の中に鍵があるの? 飲み込んじゃったりしない?」
「鍵は結構大きいからね〜よくかんで食べるといい〜」
 いつのまにか、もふら様達も部屋にやってきた。ケセランがおばけのようにたゆたっている。
 ミハイルは呆れたように大きく息をつき、それから笑顔を見せた。
「とにかく、一旦鍵のことは忘れて。折角の焔の手料理をいただこうか」
 焔が嬉しそうに頷いた。

 律紀はこわごわカナッペをつついた。
「これ、本当にさっきのシュールストレミングなんだ……」
「いちどやってみたかったのだ〜」
 律紀は焔とカナッペを撮影した後、実食に移行。ネタのためなら体を張ることには慣れている。
 だがしかし。
「うん、すごい……しょっぱくて……さかなくさくて……無理」
 戦場カメラマンは、弱々しい匍匐前進で窓へと退避。
「まったく無茶しやがるぜ……」
 ミハイルはなるべく『危険物』から身体を遠ざけるようにして、テーブルに手を伸ばす。
「でもアレも北欧の美少女が差し出してくれたら、美味しくなるかもしれないっ! 試してみる価値はあるんじゃないかな!」
 英斗のフリに、焔は無言の笑みを返した。

 しかしこれも最初のうちだけ。
 たいへん美味しいオードブルとお菓子だったが、何といっても量が多すぎた。
「まだ鍵は出てないんですよね……?」
 梨香がかぼちゃのプリンを食べきって、皆を見回す。
 ミハイルはりんごのタルトにナイフを入れ、首を振った。
「そいつらが呑み込んだんじゃないのか?」
 横目でもふらをちらりと見るが、焔が手ずからお菓子を与えているので、それは大丈夫そうだ。
「となると、これ?」
 青い顔の律紀が指差すのは、黒い塊。
「上等の羊羹だな。洋館だけに」
 キリッ。
 真顔で冗談を言うのが英斗である。
 すでに反応する気力も残っていない律紀は、腕を伸ばして羊羹を取り上げた。
「これぐらいいけば、このムカムカも消えるかもしれないよね……!」
「大げさな奴だな。どんなに甘くたって、砂糖の甘さよりは甘くならねぇはずだぜ?」
 ミハイルが続いた。

 が。

「あーまーいーおーもーいー」
「歯がぁ、歯が浮くぅ!」
「無理。もう呑み込めない……!!」
「鍵は? ねえ、鍵は!?」
「お茶を……せめて渋〜いお茶を……!!」

 これが本当の『ようかんのさんげき』だったとさ。


 尚、鍵は無事に見つかり、羊羹、もとい、洋館からの脱出に成功した。

「楽しかったね〜またやりたいね〜」
 満足そうな焔に対し、他のメンツは何も語らなかったという。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja5378 / 星杜 焔 / 男性 / 18 / めしくえおばけ】
【ja4230 / 若杉 英斗 / 男性 / 22 / 夢見る青年】
【jb0544 / ミハイル・エッカート / 男性 / 31 / 飛び込む勇気】

同行NPC
【jz0021 / 中山律紀 / 男性 / 20 / だいたい自滅型】
【jz0061 / 大八木 梨香 / 女性 / 21 / だいたい巻き込まれ型】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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大変お待たせいたしました!
ただし、多くは語るまい。
ご依頼のイメージから大きく逸れていないようでしたら幸いです。
この度のご依頼、誠に有難うございました!
VIG・パーティノベル -
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エリュシオン
2016年12月08日

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