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『パラドックス・シフト 』
Arcard Flawlessaa1024)&Iria Hunteraa1024hero001



「で? ロクト、本当に私たちが出向く意味があるの?」
「まだ、開設したばかりで年月が短いH.O.P.E.の技術解析部では、解析できないとなると、私達が出るしかないじゃない」
『西大寺遙華(az0026)』は早足で廊下を闊歩する。その一方後ろを司書のように突き従うのは『ロクト(az0026hero001)』だ。
 二人はH.O.P.E.内留置所を目指しながら会話を続ける。
「それに相手も相手だしね。科学技術に明るい……リンカー。私たち以外いないわね」
 そうロクトが言い切ると、遙華はふーんと興味がなさそうにつぶやく。
「まぁ、なんだっていいわ、早く片付けて紅茶に本で午後を過ごしましょう」
 そう告げ重たい扉を押し開く、遙華。
 地下への階段を足音を鳴らして降りると、看守がおり、彼から鍵を預かって目的の房の前に立った。
「貴女が……漂流者?」
 そう告げるとその人物は、髪を揺らして反応を見せた。
 独房の中にいたのは一人の女性、それが鎖で繋がれていた。
 彼女がここに繋がれている経緯としては。突然野山から下りてきて、いきなりH.O.P.E.の警備の者にここはどこでいつなんだと、まるでタイムスリップでもしてきたかのようなセリフを吐いたためだ。
 その時点で逮捕された。霊力の残滓が感じられ、従魔愚神の可能性もあった故。仕方のないことではあったが。
 遙華には彼女が愚神や従魔には見えなかった。
「いきなり物騒な対応されたぞ」
 そう薄く目をあけて赤い髪の隙間から『Arcard Flawless(aa1024) 』は遙華たちを見つめた。
 疲労が見え隠れする、H.O.P.E.は彼女をどのように扱っていたのかと心配になるレベルで、衰弱しているように見えた。
「貴女が、愚神の可能性があるからよ」
 遙華は鍵を扉に差し込む。
「遙華! 危険よ」
「愚神?」
 ロクトの静止を振り切って遙華は独房内に侵入する、それを追ってロクトも入った。常に共鳴できるように彼女と触れ合える距離をキープしながら、ロクトもArcardを眺める。
「どうなの、あなたは……人類を害するもの?」
 その時だった、突如暗闇の中から遙華へ何かが飛来した。
 それは天井や壁をはりつくように走ると、最終的には真正面から遙華に飛びつき。もふっと音をならして遙華の顔面にへばりついた。
 その陰をみて、ロクトは反射的に銃を抜こうとした。
 しかし。
「いやいや、野蛮だな」
 その時ロクトは目を見開くことになる。
 鎖で繋がれていたはずのArcardが目の前にいた。
 その左手で銃を抑えている、きちんと撃鉄と銃身の間に指を挟ませ誤射しないようにもなっている、そして右手でロクトがうかつに動けないように首を圧迫していた。
「…………チェックメイトね」
 ロクトはArcardの手首を見て覚った。
 そこには彼女を繋いでいた手かせ、その鎖がひきちぎられ両手でわっかが揺れていた。
「きちんと見てよ、無害だ」
 ロクトは遙華を反射的に見る、そしてやっと理解した。遙華の頭に張り付いていたのは『Iria Hunter(aa1024hero001)』
「なうなう」
「貴女が愚神なら遙華はすでに死んでるわね」
 その言葉を受けて遙華は確信した。そして顔に張り付いている獣耳の少女を引きはがす。
「英雄?」
 遙華は首をかしげた。
「なう!」
「じゃあ、あなたは能力者?」
「そんな風に不思議そうに尋ねられたってさ、何のことかさっぱり分からない」
 そうArcardは床に座るとあっけらかんと言い放った。
「食べるものはないかな? ろくな物を摂取してない」

   *   *

 少女移動中。とりあえず遙華は食堂のおばちゃんに温かい食事を頼み、H.O.P.E.の会議室を抑えた。
 そこに彼女の解析結果と食事を届けるように命じ会議室に向かったのだが。
 一足先に届けられていた資料を見て、思わず遙華は額を抑えた。
「信じられない」
 Arcardたちが温かいスープにありついている光景をよそに、遙華は彼女の身体状況について目を通す。
「目と脊髄が機械、しかも技術レベルが違いすぎる……」
(それだけじゃないけどね)
 Arcardはひそかにそう心の中でつぶやいた。
「それにしてもこのナイフ。材質も技術もまるで解析できない。オーパーツだとでもいうの?」
 そうArcardから押収した装備品を手に取りながら感嘆の声を漏らした。
「余程いい腕の職人が作ったのね」
「ソレ、安物の量産品だけど」
「えっ!」
 言葉を失う遙華、あっけらかんと続けるArcard。
「察した。この界隈、物理的な技術は何世紀分か古いんだね」
「この界隈、あなたは別の世界からやってきたという話だけど。その世界では……」
「僕たちはもはや、武器を手に取って戦うということはしなかったよ、大型兵器に乗ってっていうのが主流だった」
「大型兵器……ロボット。ロマンね」
 遙華の顔が輝くが、すぐにまじめな雰囲気に戻ってしまった。
「残念なお知らせがあるわ」
 そう遙華はArcardの真ん前に座ると彼女を見据えた。
「覚悟はできてる」
 皿を前につきだし完食をアピールするArcard。
「貴女の武装も、詳しい原理の解析ができなかったわ、素材からして調達不可能。つまりは修理不可能」
「ふーん」
「あら、意外と平然としてるのね」
「道具なんて、壊れたり使えなくなったりするのは当たり前、その都度新しいものを調達するだけさ」
 だが、と。Arcardは口元を抑える。今の会話で何か引っかかることがあった。
 遙華にじゃれつくIriaを見つめながら、Arcardは自分の記憶に手を突っ込んでいく。
 例えば、自分の武装がこの世界より優れていたとして、もし外敵と戦う場合。
 そう外敵と戦う場合だ。
 山中で遭遇した敵、あの謎の生物には銃が利かなかった。
 あれらにはどう対処しているのだろうか。
「ちょっと待って、僕の武器が高性能だとして、それであいつらには傷一つつけられなかったんだ。だとしたら君たちはどうやってあの化物と戦っていたの」
「あいつら?」
 Arcardは、ここで初めて自分がこの世界に迷い込み、森の中で奇妙な敵と遭遇し、鉄拳で制裁を加えたことを明かす。
「あー、なるほど」
 ロクトが言った。遙華はいまいちまだ状況が飲み込めていないようだった。
「この武器は確かに機構こそ優れているけど、霊力が通ってないから、従魔には傷一つ負わせられないのよ。ただ、共鳴したあなたの拳は霊力を介しているから、攻撃も通った」
「霊力? 従魔? つまり君たちは彼らと拳で戦ってるの?」
「AGWを使って戦ってるわ」
 遙華が告げる。
「ん? きちんと有効な武器はあるってこと?」
「まずはこの世界の話からしないといけないみたいね」
 そう遙華はIriaの耳の後ろをかきながら、そう告げた。
 …………シリアスが台無しである。
「ん?」
「この世界は、今侵略を受けているの」
 そこで遙華が語ったのは、Arcardからすると単なるファンタジーだった。
 理想的なエネルギー、霊力。
 どこからともなく現れる敵。愚神。
 そして愚神が使役する従魔。
 彼らに対抗するためには霊力を用いた武装を使用するしかなく、その武装こそAGW。
 その使用を可能にするのが能力者。
 そして異世界からの放浪者、英雄。
「で、僕が能力者で。この子が英雄」
「貴女の話を信じるなら、どっちも英雄な気がするのだけどね」
 遙華は言った。
「なるほど理解した。とりあえずこの子のおかげで、僕が理不尽に死ぬことはなさそうだ」
「そうね、ただ能力者はあくまで人間、あなたもエネルギー摂取は必要みたいだし生きるために先立つものが必要なんじゃない?」
 そう遙華はにやりと笑って告げる。
「おっしゃる通りだけど」
「よければ、私の権限であなたをH.O.P.E.エージェントとして迎え入れるわ。どう? 悪い話じゃないと思うわ。身元は保証されるのだから、こんな風に捕まることもなくなるだろうし」
「まぁ、断る理由もないかな。君たちも人手不足みたいだしね」
 そうArcardは同意する。なんのリスクもなさそうだし、いざとなれば遙華という少女はどうとでもできそうだ。そう判断した。
「そうなると、登録名が必要なのだけど」
「ああ、そうだね。だったら僕の名前は『Arcard Flawless』」
「よろしく、Arcard。私は西大寺 遙華よろしくね」
 そう二人は握手を交わす。
「この子は?」
 そう両脇を掴んで持ち上げられた。少女Iria。
 彼女はどこからともなくカンペを持ち出しそこにアルファベットでIriaと書いていた。おそらくそれが名前なのだろう。
「うーん、意外とありふれた名前だな」
 識別ミスは戦場で大きな損害に繋がる、それを知っているArcardはこう提案する。
「後ろにHunterをつけるのはどうだろう」
 それが気に入ったのか、Iriaは首を縦にぶんぶんと振った。
「なうなうなー」
「じゃあ、君は今日から『Iria Hunter』だ」
「よろしくね」

 こうして、Arcardの波乱万丈の物語は始まることになる。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『Arcard Flawless(aa1024) 』
『Iria Hunter(aa1024hero001)』
『西大寺遙華(az0026)』
『ロクト(az0026hero001)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。鳴海です!
 この度はOMCご注文ありがとうございました!
 今回は前回からの引き続きで説明会ですね。
 ちなみにこちらの話、遙華がエージェントし始めるより、結構前な気分で書いております。
 そうすると二人の付き合いはそこそこ長いのかなと想像してみたり。
 Arcardさんは戦闘系の依頼で多々お世話になっております。
 いつも、彼女の発想には驚かされるばかりで、普段とは違った趣でリプレイをかけるのでありがたいです。
 また本編でお会いしましょう。
 それでは鳴海でした、ありがとうございました。
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2016年12月15日

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