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『 デートの流儀 』
ウィンター ニックスaa1482hero002)&ゼノビア オルコットaa0626

●人の見かけは千差万別
 ゼノビア オルコット(aa0626)は比較的真面目な性格である。
 若さ特有の潔癖な精神もあるが、それを抜きにしても彼女は同学年の中でも大分真面目だと言えるだろう。
 だから、彼女は待ち合わせの時間よりいつも早く来る。大体三十分か一時間か。今日もその習慣に従って一時間程早く到着したのだった。
「おや、ゼノビア殿。随分と早いな」
 だから、着いた時に既にウィンター ニックス(aa1482hero002)がいた事には結構びっくりした。
『大丈夫です』
 慌てて事前にいくつか書いてきたメモを提示するが、内容を間違える。これはウィンターが後から来た時に出す予定だったものだ。
『お待たせしました』
 それに気付き、すぐに適切なページを探し掲げる。
 軽い感じのウィンターに何となく時間にルーズなイメージを持っていた。だからこんなに驚いてしまったのだ。それを自覚し、ゼノビアは少し反省した。人を見かけのイメージで計ってはいけない。解ってはいたつもりだが、実践するのは意外と難しい。
「ははは、某がこんなに早く来るとは思っていなかったのかな?」
 ゼノビアの様子から事情を察したウィンターが快活に笑いながら聞く。
 ゼノビアは素直に頷いた。嘘を吐いても仕方あるまい。
「ゼノビア殿のような可憐で美しい女性と食事するというのだ。遅れるわけにはいかんだろう。女性を待たせるのは某の主義に反するからな」
 そう言って爽やかに微笑む。
「さて、それでは行きましょうか、レディ?」
 組んでいた腕を解き差し出された右手をゼノビアは素直に受け取って、二人は歩き出した。

●赤い宝石
 連れられて着いたのは郊外の住宅街にポツンとある小さなレストランだった。
「失礼するぞ」
 カランカランとドアベルが鳴らし中に入る。
 中はシックな雰囲気な内装で、木造の家屋の特徴を存分に生かしたなかなかにお洒落な店だった。
 ドアベルの音に導かれ、奥から見事な髭を蓄えた初老の男性が顔を出す。
「お、エージェントの兄さんの所の人だね。聞いてるよ」
 ウィンターの特徴的な角と髪の色を見て店主が言う。
 あまりに特徴的なウィンターのそれは、例え初対面でもまず見間違う事などありえまい。
「兄弟がいろいろ世話になっているところなのだ」
 カウンターの椅子を引いて座るよう促しながらそっと告げる。
 まあ、あえて『だから兄弟のツケが効くのだ』などと言ったりはしない。
 デートの雰囲気を作るのも男の役割だ。うん、別に誤魔化しているわけでも隠しているわけでもない。
「さて、何を食べる? ここは野菜のメニューが非常に豊富なのだそうだ」
(お肉じゃなかった……)
 本当に野菜の多い、メニューを眺めながら少しだけ意外に感じる。
 先日の筋肉を付ける付けないの話の延長で、今日のご飯も肉料理が中心なのかと思っていた。
「肉は先日たらふく食べただろうからな。バランスも重要だぞ」
 頬杖をついて横目で様子を眺めていたウィンターがからかうように言う。
「それにまだ昼だしな。ゼノビア殿に肉は重いだろう?」
 ウィンターの言葉にこくこくと頷く。
 ゼノビアも見た目の割りにはよく食べる方ではあるが、それにしても昼食に肉はさすがに重い。
「まあ、ゼノビア殿にはもっと筋肉を付けてほしいのは確かだが。それ以上に成長期だからな。栄養の偏りはいかん。過度のダイエットもいかんぞ。よく食べてよく運動する。これに勝る健康法も美容法もない」
 顎に手を当て口早に持論を展開する。
「と、少々口が動きすぎたな。さあ、ゼノビア殿。遠慮なく注文すると良いぞ」
 自分の金でないという後ろめたさはウィンターの爽やかな笑顔からはまったく感じられない。ゼノビアも気付くことはないだろう。
 何せ後ろめたさなど感じていないのだから当然である。
「ふむ、少々お悩みかね」
 しばらくメニューを読みふけっていたゼノビアに声を掛ける。ゼノビアは少しだけ悩んだ後素直に頷いた。
「まあ、初めてくる店で当たりを引くというのは難しいからな。と言って、某も来たのは初めてだからな。こういう時は素直に聞くものだ。なあ、店主?」
「そうさなぁ。お客さんに定番メニューとして人気があるのはトマトだが、食べてみるかい?」
「トマトは大丈夫か、ゼノビア殿?」
 ウィンターの問いにコクンと頷く。
「そいつは良かった。……さ、これがうちのオススメ『トマトワイン』だ」
 店主が厨房からワイングラスにいっぱい詰まったミニトマトを持ってくる。
 赤いトマトをワインに見立てているのだろう。面白い工夫で見た目にも楽しい。
「ほう、ミニトマトか」
「いろいろ説明してあげてもいいが、まずは一口食べてみな」
 店主に促され、グラスから一つ摘み、口に運ぶ。
「……!」
「ほう、これは……」
 口の中に入れて、一気に広がるその甘みに驚く。
『美味しい!』
「うむ、まるで果物だな。こんなに甘いトマトは初めて食った。なんて品種なんだ?」
「ありがとうよ。品種は決まってない。そのグラスの中には厳選したいろんな種類のトマトが入ってる。それを食べ比べて楽しむのもこれの楽しみ方さ」
 言われてグラスを横から覗くと、確かに丸っこいものから縦に長いもの、黄色いものなど様々な種類のトマトが入っているのが分かる。
「面白い試みだな。なるほど気に入ったぞ、店主」
 ウィンターがもう一つトマトを口に放り込みながら言う。
(おうちで買ったらいくらくらいなのかな……?)
 メニューの『トマトワイン ¥800』という記述を見ながらゼノビアはしばし頭を悩ませた。

●蛹の孵る頃に
「さて、ゼノビア殿。これからどこか行きたいところはあるか?」
 トマト以外にも少し腹に溜まるものも注文し、食べ終えた頃合いでウィンターが尋ねる。
『ウィンターさんの、行きたい場所、でいいです』
「……ふむ」
 ゼノビアのその返答に、ウィンターは背もたれを少し軋ませ考え込む。
「ゼノビア殿は気になる男性などいるか?」
「――!?」
 急に言われて訳も分からずわたわたと狼狽える。
 そして、頭の中に思い浮かぶ顔が一つ。
「お、その反応はいるようだな。では某が一つ、ゼノビア殿に大事なことを教えてあげよう」
 ゼノビアの様子からその胸中を察し、指をピンと一本立てて語る。
「デートの時は男にうんと甘える事だ。好きな女性に甘えられて嬉しくない男など存在しない。男と言うのは厄介な生き物でな。女性に気を使われていると分かるとプライドが傷つくのだ。ゼノビア殿が意中とする男性にそういう返答はしてはいかんぞ」
 ま、某は慣れてるから大丈夫だが、と付け足して笑う。
 色々な意味で顔を真っ赤にしながらゼノビアがうつむく。そもそもこれがデートなのだという事すらウィンターに言われて初めて気づいた次第である。
「まあ、今回はエスコート場所を事前に考えなかった某も悪かった。某がよく女性を連れて行くとなると少々ゼノビア殿には背伸びになってしまうからな。まだ化粧品や宝石には興味はないだろう?」
 静かに頷くゼノビアを眺めながら、食後のコーヒーに口を付けしばし考える。
「そうだな。ゼノビア殿のその美しい髪に合うアクセサリーを探しに行こうではないか」
 脳内検索でゼノビアに相応しそうな店を見つけ出し口にする。
「可愛い小物の多い店だ。きっとゼノビア殿の気に入るものもあるだろう?」
「……」
 たっぷり三十秒ほどは悩んでから、先ほどのウィンターの言葉を思い出し頷く。
「よし、では決まりだな。ここからそうは遠くない。十キロほどだ」
「いや、遠いだろう、それは」
 食器を片付けに来た店主が通りすがりにツッコむ。
「そうか? まあ、疲れたのなら某が背負っていくから大丈夫だ」
『だ、大丈夫です! 歩ける、です!』
 慌ててメモを掲げるゼノビアにウィンターはニッと笑いかける。
「よし、いい返事だ! 何なら走るか、ゼノビア殿!」
「――」
 それにはフルフルと首を勢いよく振って断る。
「そうか……。まあ、夜の食事の場所はうんと背伸びした場所を用意してある。楽しみにしているといいぞ」
 グッと親指を立てて言うウィンターに、少しばかりの不安を抱きながらゼノビアは微笑んだ。

 その夜、これまたツケの効く行きつけの居酒屋で、ゼノビアは少しだけ大人の味の塩辛さを知ったのだった。


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa1482hero002 / ウィンター ニックス / 男性 / 27歳 / ジャックポット】
【aa0626 / ゼノビア オルコット / 女性 / 16歳 / 命中適正】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お世話になっております、弐号です。
ちょっとナンパなお兄さんと可憐な純情お嬢さんのデート、如何だったでしょうか。
ウィンターさんがどの程度プレイボーイかは悩みましたが、それなりに女性の扱いには長けているという方針で行ってみました。
女性しかいないから口調も優し気ですね。イメージと違っていたらすみません。
年の差デートの雰囲気が出ていれば幸いです。
それでは、またもし機会があればご利用いただければ嬉しいです。
今回はありがとうございました!
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2016年12月13日

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