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『to be 』
御子神 藍jb8679


 ――楽しいと思ってくれればいいな。

 あなたの笑顔は、私の喜びに繋がるから。
 あなたの幸せは、私の全てに繋がるから。

 ねぇ、先生。
 私、あなたと一緒の時間が何よりも大事だよ。





 この“ドキドキ”には、まだまだ、慣れないけれど。





 ――X’mas。





 in favoriteに隣接するsouvenir。

 恋人達の“定番”ショップ。
 伝えきれない想いを伝えてくれる特別なアイテム――ジュエリー。

 愛と幸せを深めるハート。
 花開く日々を願うフラワー。
 守りたいという想いを込めたクロス。
 希望やチャンスを手に出来ますようにとスター。

 色々なカタチ。
 様々なココロ――。

「――藍、聞いているかい?」
「え?」
「どうした? 気抜けた顔をして。具合でも悪い?」
「え、あ、わわ!?」

 彼の端整な容貌が、彼女――木嶋 藍(jb8679)の視界を覆った。

 こつん。

 額の温もりが合わさり、鼻先が触れる。
 とてもではないが、藍は彼と視線を交わすことなど出来なかった。だが、後頭部に添えられた彼の掌があたたかくて、でもその所為か耳が熱くて、合わさる額から蒸気が出そうで、両頬がまっかっかのあっちっちっちー!!

 藍はぐいっと首筋を捻って顎を引き、緊急避難。

「おやおや、すごい林檎顔だ」
「だ、誰が林檎にしてると……」
「大事をとって今日は帰るかい? ピアスはまた次の機会に――」
「い、いや! そんなのいや!」
「藍?」
「だ、だって……今日は“初めて”のクリスマスだし、それに、流架先生とお揃いのピアス……欲しいから」
「ふむ、“これ”は藍のお気に召さなかったかな」

 彼――藤宮 流架(jz0111)は意地の悪い微笑みを口許に置いたまま、骨ばった指先で藍の左の耳朶に触れた。
 鮮やかな色合いのエメラルドを宿したドロップピアスが、そっ、と、揺れる。藍が19歳を迎えるお祝いに、流架が贈ったものだ。

「もう! そんなわけないでしょ。私、すごく嬉しかったんだから。……流架先生も今、つけてくれてるの?」
「ん? ああ、勿論。ほら」

 流架が右耳に髪をかけると、穏やかな海色のドロップピアスが藍の瞳に差し込む。お揃いの形を改めて目にした藍の面が、ふにゃり――どうしようもなく笑んだ。

「えへへ……私、今まで“お揃い”ってあんまりなかったの。だから新鮮で。それに……」
「それに?」
「い、一番好きな人とお揃いのものを持てるって……その、幸せで。あ、でもね。今日は私が選びたいの。ピアスのデザイン。お互いにプレゼント出来ればな、って。……いい?」
「ふふ。どうぞ。君に任せるよ。――ああ、でも」
「うん?」
「“林檎熱”は平気?」

 と、目を細くした流架が不意を突いて顔を覗き込んでくるものだから、藍は条件反射的に頬に手を当てた――が、指先から伝わる熱が既に物語っていた。

 安定な彼女の様を見て、流架は口許を掌で覆いながら、ふぃ、と、背を向ける。しかし、藍が凝視すれば、その両肩はくつくつと忍び笑っていた。
 この教師、自分の彼女で楽しんでいる。実に意地が悪い。

「(……うん、知ってた)」

 未だに慣れないけれど。
 だが、それが何故かはわかっていたから。その感情を“再認識”して再び林檎になる前に、藍は半ば強引に気持ちを引き締めて(?)ピアス選びに集中するのであった。





 きらきら、星屑を零すように。

 色の輝きは恋に落ちるのと同じようだ。
 一目惚れをしてしまったら、離れたくなくなってしまう――。

 貴やかなレッドチェリー。
 柔らかなコニャック。
 爽やかなスカイブルー。
 穏やかなフォレストグリーン。
 淑やかなホワイト。

 色々な魅力。
 様々な音――。

「わ、わ、色ってこんなにあったっけ……すごい、どうしよ、たくさんありすぎて目移りしちゃう……!」

 光を透かす繊細さと、存在感のあるデザインが並ぶ。
 恐る恐る手にとっては感触を確かめ、傾けては瞳に色合いを映し、一呼吸「んーーー……」と唸ると、そっと元の位置に戻しては次の品へ――の繰り返し。

「デザインはシンプルなのがいいかな。男の人にも合う石が付いたピアスとかあればいいんだけど。身につける日の天気や季節、その日の気分でかろやかに飾れるようなのがいいなぁ」

 晴れの日や雨の日、曇りの日、雪の日、昼と夜――。
 何時もの日常でも、特別な日でも、その時の瞬間の中で人は異なる表情をするように。耳元のさり気ない飾りが動く度に揺れ、光を受けるのなら、様々なコントラストを楽しめるのではないだろうか。

「(一緒に、ね)」

 藍は心の内で呟いて、えへ、と顔を綻ばせた。

「――なに一人で笑っているんだい?」
「Σわッ!」

 藍が声を上げてびっくりした瞬間、彼女の身体は5cm程飛び上がったと思う。
 ぷぅ、と頬袋(?)を膨らませながら斜め右後ろを仰げば、勿論、彼の姿。気配を消して背後に忍び寄らないで欲しい。心臓に悪い(違う意味でも)。しかし、戦闘科目教師にそれを伝えても無駄だろうが。

「夕餉のことでも考えてた?」
「ち、違うし……!」
「今日はなにを食べようか。藍の好きなものご馳走するよ」
「え、ほんと? わー、どうしようかな! えっとね、今日は洋食がいいかなぁって思ってて――」

 ピアスは?

「はッ!?」





 ――更にそれから十五分程悩んで。

「これ……! これにする! 先生見てーーー!」

 藍が流架の傍らにだだーッと走ってきた。
 その瞳は、まるで宝箱を見つけてきたかのようなきらきらおめめ。宝箱の中には何があった――? と、流架の眼差しが穏やかに問うていた。藍が白い掌に掬ってきた光を、ぱっ、と、彼の前に差し出す。

 薔薇輝石――ロードナイトを使ったデザインのフープピアスだ。

 大きさは15mmタイプ。幅は3mm。
 シルバーのポイントリングが二つと、その間にローズクォーツのストーンリングがさり気ない存在感で飾っている。

「へえ、ベーシックなデザインだね」
「はい。先生もつけやすいかなって」
「石の色も綺麗だ。薔薇輝石と、ポイントリングの方は紅石英だね。この色合いを選んでくれたのはどうして?」
「え、えっと……うん。一応、私なりに先生をイメージしてみたんだけど……どうかな。気に入ってくれた?」
「――ああ」
「えへへ、よかった……!」
「だが、君の分は? 同じデザインのものを買うんだろう?」
「あ、うん。私のは先生に選んでもらおうかなぁって。石、いっぱい種類があるんだ。いいかな?」
「勿論。



 ……そうだな」

 流架は、藍が選んだ商品の飾り棚の前へ行くと、ピアスを幾つか手にとって思考を巡らせる。
 そして、数分後、

「――君にはこれを」

 月長石――オレンジムーンストーンを使ったピアスを藍に見せた。

「わ、わ! やわらかいオレンジ色だね、綺麗……! ポイントリングの方は……サードオニキス?」
「ああ。君の深い海色の髪に映えると思って」
「ありがと、嬉しい! じゃ、包んでもらいにいこっ!」

 藍は流架の腕を引っ張ると、高揚した心持ちの勢いに任せて、ぎゅっと腕を組んだ。
 
 瞬きすら熱く。
 彼の微笑む声が耳に溶ける。





 藍は春告げの鳥のように、流架の温もりで小さく鳴いた。




 Spot ――「Quartet」。

 空中で揺れ動く花香。
 二人は流架の学生時代からの友人、迦具山 臣が経営する花屋にいた。

 此処へ来たいという藍の希望に、流架は一瞬、逡巡する顔色を表したのだが、藍は気づかなかったようだ。二つ返事に頷く流架に、藍は満面の笑みを向けた。

「いらっしゃいませ――、……と。おや?」
「やあ、臣」
「こんにちは!」
「流架? それに木嶋さん。……?」

 来店した藍――ではなく、何故か流架を眺めながら、臣は意想外な表情を浮かべて二人を迎えた。

「うん? どうかしましたか? 臣さん」
「――ああ、いえ。失礼しました。木嶋さんとは流架の誕生日会以来ですね。お元気そうで何よりです」
「その節はお世話になりました! えっと、今日はオススメのラインナップとかあれば見せていただきたいんですけど……」
「オススメ、ですか。……そう、ですね」

 藍の視線が手近な花に向かっている僅かな瞬、臣と流架は目配せをしていた。
 そして、思考の色を含ませた眼差しのまま、臣は顎に添えていた指先を軽く、とんとん、と、二回叩くと、口角を上げた唇を開いた。

「――その前に、お二人に一つお願いしたいことがあるのですが……よろしいでしょうか?」
「お願い、ですか?」
「ええ」
「私で出来ることでしたらお手伝いしますよ」
「ありがとうございます。――勿論、流架も了承してくれますよね?」
「は? ……ん、まあ」
「ふふ。簡単な配達ですので、“気を張らないでも”大丈夫ですよ」

 そう穏やかに目笑すると、臣は「少々お待ち下さい」と言葉を置いて店の奥へ姿を消した。

「先生、どうかしたの?」
「――え。どうしてだい?」
「んー、なんとなく。……もしかして、臣さんのこと苦手なの?」
「まさか」

 流架が、ふっと柔和な笑みを零す。

「関わりを苦手とする人間を“友人”とは呼ばないよ、俺はね」

 水に雪が溶けるような、そんな面差しで。
 心に在るとわかる淀みのない返答に、藍は目許を弛めて小さく息をつく。その吐息に被って、「お待たせしました」と、呼びかける臣の声が藍の背後でした。振り返ると、臣から手提げのギフト用紙袋を渡される。

「これですか?」
「ええ。配達場所は流架が知っていますので」
「え? 先生が?」
「はい。――ですよね? 流架」
「あー……まあ……そうだ、な。ん」
「ふーん……? じゃ、行こっか先生!」
「ああ」
「仲睦まじいお二人のお時間を頂戴して申し訳ありませんが、よろしくお願いします。――あ、因みに」
「はい?」
「中を覗いたら呪われますので気をつけて下さいね」
「Σへっ!?」
「では、素敵なお時間を――」

 臣は、ふふ、と、人の悪い笑みを浮かべながら二人を見送った。





 通りをてくてく。
 流架に道案内されながら暫し歩いて、藍は、ふと。

「(流架先生と臣さん……もしかして、根っこが似てるのかな)」

 藍は瞳を泳がせ、自分だけの“イジワルなヒーロー”をそろりと仰いだのであった。




 街灯が点き始めた。
 冬の夕暮れ空は、ほんの僅かな時間で何通りもの色彩を眺めることが出来る。





 目的地に到着した藍は、感嘆の吐息を零した。

 其処は、都会の喧噪から忘れ去られたかのようなイングリッシュガーデンであった。
 蔓性のイングリッシュローズのアーチをくぐると、野に咲いた花のような――不規則に植えられた植物が二人を迎える。
 黄色やグリーン系のホスタ、冬咲きのクレマチスに遅咲きのガーベラ、奥のベンチには御柳梅と冬桜が白と淡紅の雪花を降らせていた。

「ここ、すごい……なんて素敵なの」

 風景に視線と心を奪われながら、藍は石の通路を進む。
 何処かの田舎を思わせる素朴な雰囲気に、藍は安らぎを感じていた。ネイビーな双眸をほっそりとさせ、大好きな花々の海にほろ酔った意識がふわりと漂う。

「……気に入ったかい?」

 木製のベンチに腰をかけながら、流架が窺うような声音で声をかけてきた。心を現に引き戻した藍が振り向き、「はい、とっても!」と、頷きながら白い歯を零す。彼女のその様子を眺めて、流架は気抜けしたように微笑んだ。

「あ、そういえば配達の花って誰に渡すの? ここで待ち合わせしてるとか?」
「ん? あー……」
「?」
「うん。――藍、おいで」

 と、流架が右手を差し出してきたので、藍は目許を弛ませたまま彼の指先に触れ、互いの掌の温もりを重ねる。流架は自分の方へ彼女を少し寄せると、脇に置いていた紙袋から“それ”を取り出し――、





「はい、お届けものです」





 レモンイエロー色のワックスペーパーでラッピングされた花束を手渡した。

「え……?」

 すぐには頭が反応をせず、藍は緩慢な瞬きをしながら自らの手に視線を落とし、じわじわと目を大きくする。
 手許のあたたかい色は、ブルーデイジーとカスミソウであった。
 中心の黄色い部分と鮮やかな青色の花弁のコントラストが非常に美しい。主役の花を引き立てる綿菓子のようなカスミソウも可愛らしく、優しい雰囲気を演出していた。

「これ……私に……? でも、どうして……?」

 不意の出来事に呆然とする藍に、流架は薄く笑った。

「ん。本当は夕餉を食べてから此処に来る予定だったんだ。臣には事前に、此処へ花束を届けてもらうよう頼んでいてね」
「それは、ここに来た私をびっくりさせる為……?」
「ああ。まあ、臣の機転に感謝かな。君が花を買ってしまった後に花の贈り物というのもね」
「……もう。そんなこと気にしないでいいのに。先生が選んでくれた花なら、私はそれで嬉しいよ。……あ、でも、ここを選んだのはどうして?」
「夏の海で約束しただろう? 今度は俺の行きたい場所へ行こう、ってね。君と――藍と、此処へ来たかったんだ。忘却された庭園のような静けさではあるけれど、花は確かに色づいて、咲き誇っているから」

 与えられたその時間を、一瞬を、愛おしい彼女と過ごしたかったから――。

「……」
「藍?」
「ありがとう、大好き」
「ああ。俺も君が愛しいよ。……幸せでいよう、一緒に」
「……うん。傍に居てね。あなたで……私を包んでね」

 そう伝えた藍の唇が、微かに、み、と、動く。
 そして、腰を屈め、微笑み置く流架の面へ首を伸ばした。

 、

 彼の頬に、甘い色が触れる。
 睫毛をふるりと震わせながら唇を離すと、藍は身体を引く流れで流架の表情を窺った。微動する瞳が藍を凝視している。紅潮した両頬で彼の目を見つめ返すと、幸せで蕩けきった笑みを浮かべながら、

「……受け取り印」

 一言。
 殆ど声にならなかった。だが、流架は目を大きくして表情を揺るがせると、ぎこちなく首を動かして、掌で口許を覆う。そして、ぽつりと独白した。

「困る」
「え……?」

 流架の言葉に肩を縮めた藍であったが、

「可愛くて、困る」

 その瞬間、藍の身体は彼の胸の中に抱き締められていた。















 只、息をしているだけでも、
 只、触れているだけでも、

 溢れ出す気持ちは何よりも“特別”で。





 火照った二人のココロに惹かれて、花咲く真白がはらはら――空から舞って、ふわりと溶けた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【jb8679 / 木嶋 藍 / 女 / 19 / 青鳥ノ頬】
【jz0111 / 藤宮 流架 / 男 / 26 / 羽休メノ籠】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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愁水です。
平素よりお世話になっております。
少々早いですが、X’masデートノベルをお届け致します。

ピアスのデザインや花に何日悩んだことでしょう( この癖をどうにかしたいです。
お任せのお言葉もありがとうございました。幸せな一日ということで、ご希望にお応え出来ていればよいのですが。

此度も素敵なご縁とご依頼、誠にありがとうございました!
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エリュシオン
2016年12月15日

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