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『ケンカするほど仲が良かったらよかったのに 』
輝夜aa0175hero001)&朔夜aa0175hero002



 時は夕暮れ。住宅地の家々からは、その日の献立の匂いが漂い始め。普段は閑散としている道路が少しだけにぎわいを見せる。
 そんな道の真ん中を『輝夜(aa0175hero001) 』は駆けていた。
 その美しい金糸の髪をなびかせて、その表情は満足げで。
 彼女は近所の公園からの帰りだった。
 最近の輝夜は、能力者がいない時間は自由な行動が許されているため、暇なときは近所の子供たちと遊んでいるのだ。
「そろそろ奴が帰ってくるころじゃ」
 だが普段なら輝夜が帰るのはとっぷり日が暮れる、子供たちがいなくなる時間帯で、でもなぜ今日は早いのかというと。
 能力者の買い物の中味を予測してのことだった。彼女が帰ってきたならきっとカステラを買い込んできているだろう。
 それが楽しみで公園遊びを早々に切り上げてきたのだ。
 その美しい容姿のせいで最初は子供たちから畏怖の念を集めていた輝夜。
 しかし今は周りから避けられることもなくなり公園の絶対王者として君臨している。
 今日もお姫様ごっこと称して、子供たちに無茶振りする遊びをしてきた。
 そんな輝夜が見慣れたアパートの一室の前に立つと、中から異様な空気が漂ってくる。
 輝夜はドアノブを回すことをためらった。
「まさか、従魔かの?」
 しかし。なんとなく知っているこの威圧感の質。そうまるでタコやイカと相対したような、気持ち悪さ。
 一体何が待ち受けているのだろうか。そう警戒しつつ輝夜はゆっくりと扉を開けた
 その時であるさっそく襲いくる影。それに臆することなく、輝夜は一歩前進した。
 そんな輝夜めがけ、それはまるで振り子のように円を描き、輝夜に叩きつけられる。それを輝夜は。
「甘いぞ!」
 そう両の爪で切り裂いてしまう。輝夜の目の前で綿が舞った。
「人形じゃと!」
 そう輝夜に迫っていたのは人形、そして、その背後で扉が閉まった。
「とじこめられた!」
 輝夜が改めてドアノブを回してもその扉は接着されたように開かない。
「誰がこのようなことを……」
 そう後ずさると輝夜の足が何かをはじいた。ぷつんと言う感触と共にしゅるしゅると何かが巻き取られる音が聞こえ。横っ面から首に糸が巻き付いてきた。
「く、してやられたんじゃ」
 そのまま引きずられ洗面所の洗濯機に叩きつけられる輝夜。
 その衝撃で上の棚から洗剤の詰まった袋が輝夜に叩きつけられる。
「おおお。目が……」
 真っ白の粉まみれの輝夜、彼女は痛む体に鞭打って立ち上がり何気なく足を前に出すと転がっていた石鹸に足を取られ。扉の開いていたシャワールームへと吸い込まれていった。
 そのまま、ごんと鈍い音を立てて輝夜は床に頭を打ちつけた。
「ううう〜」
 たんこぶができてしまった頭をさすって立ち上がる輝夜。
「なんじゃ、このトラップの山は……。しかもこの手口、知っておる気が……」
 しかし追い打ちをかけるように、輝夜の頭上から水が。
「おおおお、何じゃ」
 ぬれねずみの輝夜、しかも洗剤が溶けだして泡にもまみれている。
 みじめだ。すごく惨めだった。
 先ほど女王様と呼ばれていた時間とは真反対の心持ちである。
「なぜ、このような……」
 こんな目に自分が合わなければいけないんだろう。そんな感傷に輝夜が浸っているとそこで輝夜の耳に笑い声が届いた。
「あははははははは」
「朔夜か!!」
 脳で理解する前に口が勝手に動いた輝夜。
 そうこのトラップ劇を仕掛けたのは『朔夜(aa0175hero002) 』輝夜の妹であり、先日の事件でH.O.P.E.に連行されたはずの英雄であった。
「朔夜お主。なんの真似じゃ! そもそもH.O.P.E.に囚われたはずでは」
「ここに住むことになったわ」
 輝夜の声だけが奥の部屋、つまり居間から聞こえる。
「なんじゃと」
「鈴音と契約してここに住むことになったのよ!!」
 驚愕に目を見開く輝夜。
「けど、こんなぼろアパートに住むなんて正気の沙汰じゃないわ。そんなに住んでほしかったら今から言う条件を飲んでもらうから」
 そう不遜に、気高く、高らかに朔夜は告げる。
「なんじゃ」
「豪華な個室、潤沢なお菓子、輝夜の生活圏を押し入れのみにする」
「く! わらわを何じゃと思っておるんじゃ! 蒼い狸だとでも思っておるのか」
 輝夜は悔しさのあまり拳を壁に叩きつけた。ザーッという音が耳障りに聞こえる。
「青狸より間抜けよ!」
 その一言で切れた輝夜は口角を釣り上げて告げた。
「よかろう、このトラップを全て捌いて、お主に拳骨をみまってやる。姉に逆らうとどういうことになるか、思い知らせてやるんじゃ」
 そうはじかれたようにシャワールームを脱出した輝夜。
 壁を走ることで床に設置されたトラップを避ける。
 しかし。それも予想されていたようで、洗濯物が輝夜の目の前に展開された。
「な!」
 それにからめ捕られ、床へと落される輝夜。
 その衝撃で別のトラップが機動。振り下ろされるハンマーを転がって回避。
 しかし今度は鍋が落ちてきてそれがクリーンヒットした。
「あうっ!」
 一瞬目を回す輝夜。そんな輝夜の頭上から発射されるマヨネーズ。
「朔夜!! 食べ物を粗末にしてはいかんとあれほど」
「ひゃあ!」
「うぬぅ」
「さ、さくや!」
 聞こえてくる面白いくらい輝夜の声に、トラップへ巻き込まれる姿を想像しながら朔夜は居間のコタツの上でふんぞり返っていた
「ふふふ、そろそろあきらめたらどう?」
 しかしその言葉を輝夜はうなり声で否定し、ついに輝夜は朔夜のまつ、居間へと到達する。
 それはそれはあわれな姿だった。全身をマヨネーズでべとべとにしつつ、頭は泡だらけで足跡が点々と続くほどに全身が水を含んでる。 
 そしてその表情は朔夜をぞくぞくさせるほど、羞恥と怒りに満ちていた。
「さぁ。お仕置きの時間じゃ……」 
「それが遺言?」
 朔夜はにたりと微笑む。そして幻想蝶を取り出した。
「たわけが」
 そう告げると輝夜も幻想蝶をその手に握る、次の瞬間。
 二人は武器を抜いた。朔夜は槍を、輝夜は大剣を引き抜いて、そしてそれをお互いに叩きつけた。
 真紅の刃が火花を散らし、風圧でまず、テレビの画面がひび割れた。
「悪い子はすぐに、あ奴にお仕置きされる運命じゃ!」
「お仕置き? されないわ、だってこれ全部お姉さまがやったことにするもの」
「卑劣な!」
 朔夜の槍ですくい上げるような、薙。それを輝夜は大剣の腹で受け。一歩前へ躍り出る。
 その拳を叩きつけようとするも、朔夜はそれを手刀で叩き落とし、距離を取る。
 追撃のために輝夜は飛び。一閃。
 その衝撃で勉強机の上に置かれたものが全て吹き飛んだ。
 直後激しい金属音。
 お互いが空中で全力の一閃。衝撃を殺し切れず二人は壁に叩きつけられた。
 壁にひびが入り、壁紙が破れた。
「ぬおおおおお」
「この、バカ力!」
 しかし二人は懲りずに再度距離を詰めた。そして再度刃を叩きつける。
 その応酬が永遠と繰り返された。だがその勢いも徐々に徐々に弱まっていく。
 そもそもAGWというものは共鳴していなければ真価は発揮できない。
 そうなると重いし使いにくい武器でしかないのだ。であればあっという間に二人の息が上がるのも頷けるだろう。
「ぬう! わらわにかつての力があれば!」
「前と同じって言ったって、バカ力になるだけでしょ!!」
 その時ついに朔夜が槍から手を離した。
 そして接近、輝夜に掌底をみまう。
 その華奢な体は面白いように吹っ飛んで台所の棚を粉砕した。
 あたりに散らばる料理器具。
「お主……」
 輝夜は拳を握りしめ、駆けた。
「死ぬがよい!」
 そう振り上げたこぶし朔夜の顔面に叩きつける。朔夜は涙をにじませながら耐えた。
「やったわね!」
 朔夜は反撃とばかりに髪の毛を掴んで輝夜を引き倒す。
 その拘束を輝夜が足を払って脱出、また拳を朔夜の顔面に叩きつけた。
 それに負けじと朔夜のビンタ。赤くはれた頬を気にもせずに輝夜は何度も朔夜の顔面を殴り続ける。
 そんなあまりの容赦のなさに朔夜は思わず声を上げた。
「女のくせにグーって何よ!」
「お主こそ! そんな、なまっちょろいビンタでごときで、わらわを止められると思うておるのか!」
「この!」
 そう伸ばされた左手を輝夜は受け止める、拘束から逃れようともがく朔夜、だがその動きに輝夜の足腰がついていけず、二人は輝夜を下にして倒れ込んだ。
 その時である。
 朔夜の用意した最後のトラップが発動した。
 上から降り注ぐ、ケチャップ&マヨネーズ。
 二人はぐちゃぐちゃになりながらも立ち上がり、そして。
 お互いの顔を見合わせる。
「戦いはまだ……」
「これからね……」
 そう息を整え、改めて拳を振り上げたその瞬間。

「これは……どういうことかしら?」

 輝夜の背後から声が聞こえた。そして輝夜の背後に何かいるということは、相対している朔夜にはそれが見えているということだ。
 朔夜は震えていた。その瞳に映る鬼を輝夜は見て、スッと頭の血が引いていく。
 そして輝夜の視界に映る荒れた部屋。
 ああ、これはもうだめなんだな。
 そう輝夜の中で変なあきらめがついた。

 その夜、二人は足がしびれて動けなくなるほどに正座させられ。お説教をされた。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『輝夜(aa0175hero001) 』
『朔夜(aa0175hero002) 』


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はOMCご注文いただきありがとうございます。鳴海です!
いつもお世話になっております。
今回は姉妹喧嘩がテーマということで。シナリオ内ではこの二人を同時動かすことはなかったのでとても楽しく書かせていただきました。
いつか、仲直りしてくれたらいいなぁと思いながら思いっきりケンカしていただいた所存でございます。
本編では朔夜さんが現れたことによって輝夜さんの違う一面が発揮されることが多くなり、とても楽しんで書かせていただいているのですが。
 今後二人がどのような未来を描くのか楽しみで仕方ありません。
 では今回はこのあたりで。
 また近いうちにお会いしましょう。鳴海でした。
 ありがとうございました。
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2016年12月16日

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