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『聖輝節の鐘、鳴り響く頃に…… 』
弓月・小太ka4679

「あ、あの、フラさん。今日は暇ですかぁ? よければ一緒にお祭り見に行きませんかぁ? で、できれば夜までぇ……」
 弓月・小太(ka4679)の誘いに、フラ・キャンディ(kz0121)は満面の笑みで立ち上がった。
「うんっ。予定なんかないから大丈夫だよっ!」
「これ、もしよければ程度の用事で約束を破る気か? ワシのパーティーに付き合ってくれるはずじゃったろう」
 フラの背後では後見人の老人がそんな苦言を呈している。予定はあったようだ。
「えーっ。おじいさんたちばっかりでボクが行っても場違いだよ」
「あ、あのぅ……。もしもダメならまた今度でも……」
 口を尖らせ後見人に不満を示すフラ。小太は不安になって言葉を濁したが、これがよくなかった。
「ちょっと、そんな弱気でどうするの。ほら、フラちゃんもその気だし、思い切って連れ出して逃げちゃいなさい」
 横にいたフラ付きのオカマ興行師にお尻をたたかれた。フラも助けを求めるような視線を向けている。
「そ、それじゃ大切なデートに行ってきますねぇっ!」
 意を決した小太、思い切って言い捨てるとフラの手を取り逃げ出した。
「あはっ。それじゃ行ってきま〜すっ♪」
「ふぇ? フラさん、急ぎすぎですよぉ」
 楽しそうに駆け出すフラ。いつの間にか逆に小太を引っ張っていたり。
「……やれやれ、最初からそう言えばよかろうに」
「ああいう男の子で安心してるくせに」
 ふんす、と鼻息を荒くする後見人に、くすくす笑う興行師が二人を見送る――。

「……あ」
 街に出た二人は改めて周りを見て足を止めた。
 噴水そばのイスやおしゃれな雑貨屋の店先などに男女のカップルがあふれていたのだ。しかも腕を組んだり相手の腰に手を当ててぴったりと寄り添ったりと仲睦まじいことこの上ない。笑顔は絶えることなく、見つめ合う視線は優しく愛おしく。
「そ、その……聖輝節ですねぇ」
「ああいうの、いいよね……ボクたちもあんな風かなぁ?」
 幸せそうなカップルに、小太は恥ずかしがりフラは憧れた。
(も、もしかしてフラさんって……)
 小太、フラがおませさんなのか、それともただ純粋に幸せそうな人たちの真似をしてみたいだけなのか判断に迷っていた。というか、チャーミングな女の子とこんな近い場所で一緒にいること自体が小太にとってはとっても刺激が強すぎてどきどきどきどき……。
「ふ、フラさん?」
「うんっ!」
「ふ、ふぁっ!?」
 小太、心臓が飛び上がった。
 何せ周りを気にしてうわの空だったフラの名を呼んだだけで、何を勘違いしたのか周りのカップルの真似をして腕にしがみついてきたのだから。
 むにゅり、と柔らかな膨らみが肘に感じられる。
(も、もしかして僕のほうからこうしてって誘ったと勘違いされたのでしょうかぁ??)
 ぐるぐる目が回る中、判断力は落ちてないらしい。正解である。
 ただし、注意力は激烈に落ちていた!

「はい! そこまでよ!」
「反カップル同盟『自由の鐘(ベルリバティ)』、トナカイ牧場チーム参上♪」
 突然、色眼鏡を掛けてサンタ服姿の女性集団が現れ二人を引き離した。
「わっ。突然何?」
「い、いったいこれは何ですかぁ?」
 抗議の声を上げる二人だが、もう遅い。それぞれ捕縛されてしまった。
「恋愛革命の名の下に、正義の裁きを行います!」
「周りもほぅら、この通り♪」
 女性集団が周りを見回す。そこかしこで似たような格好の男性集団などがカップルに襲いかかって脱衣などをしかけているではないか。
「んもう、みんなに迷惑掛けたらいけないよ!」
「おっと。私たちは可愛い男性をトナカイとして飼い慣らすこと。女の子には用がないの」
「わぁ!」
 後ろから羽交い締めにされているフラの目の前で小太が服を脱がされた。丸裸のふんどし一丁姿にされ身を縮めた頭にかぽりとトナカイカチューシャをセット。
「さあ、後はお尻にこの尻尾を刺して可愛いトナカイの出来上がり。高く売れそうね〜」
「お、お尻に、尻尾を刺すんですかぁ!?」
「そんなことさせないよ!」
 お尻のどこに?と身を縮めた小太。フラは羽交い締めの力が弱まった――どうやら拘束していた女性も小太のこれからの運命にうっとりして油断したらしい――とみて、身を屈めた!
「あっ!」
 服を脱いでキャミソール1枚になったフラ、小太を捕まえていた女性にキック。見事小太を助け出す。
「お、覚えてなさい!」
 こうして退散する女性集団。
「フラさん、その格好……」
「あ……。ええと、一緒だから」
 恥ずかしい格好で見つめ合って、真っ赤になる二人だった。

 そして、蝋燭が揺らぐテーブルで。
「み、店の中まではああいった人たちは来ないんですねぇ」
 ちゃんと服を着て、大人な雰囲気で二人だけの食事。メーンディッシュはチキンのオレンジソースソテーだ。
「店に迷惑は掛けられないんじゃないかなぁ?」
 ノンアルコールシャンパンで改めて乾杯。
「ほっとしましたぁ」
「ボク、こんな雰囲気の食事、初めてだよ」
 フラの言葉にどきっとする小太。思わず口に運ぶフォークも手元が狂う。
「あ。ボクが拭いてあげるね」
 テーブルは対面ではなく、隣り合うように座っている。ナプキンで優しく口元を拭かれる。満足そうなフラの笑顔が間近で息も掛かるくらいだ。
「き、今日は誘ってよかったです」
「ボクも、誘われて幸せだよ」
 そんなこんなでディナーは進む。

「そろそろ時間でしょうかぁ? フラさん、ちょっと移動しましょぅー」
「え? 何、急に」
「少し運動しましょぅ」
 店を出てどこかに向かう小太。手を繋いで、今度はしっかり自分がフラを連れて行く。
 行き着いたところは小高い丘の、人けのない場所だった。目の前には街全体を見下ろすことができる。
 時は、空に一番星が輝き始めた頃。
「きょ、今日はその、できれば二人で鐘の音を聴きたかったのでこんな所にぃ」
「あ、そうか。ここなら店の中よりしっかり聴くことができるよね」
 ただ、風の強い場所である。人けの少ない理由である。
 草の上に敷いたシートに腰掛けたフラが、身を縮めて両膝を抱いている。
「……」
 そっと身を寄せてやる小太。
「……」
 ぐぐっ、と身を寄せるフラの重さと温もりが伝わってくる。見つめ合って、笑顔。
 空にはすっかり夜の帳が下り、星が輝き始めた。鐘はまだ鳴らない。
「鐘……意外と遅いですねぇ」
「ううん。街の明かりがきれいだし、小太さんいるから大丈夫」
 フラの言葉に、彼女の視線を追う小太。街は人の営みを表すようにキラキラしている。温もりもある。
 ぶるっ、とフラが震えた。
 小太、思い切ってフラの背中に回り……。
「あっ」
 全身を包むように、背後から優しく抱いた。
「あ、えと、寒そうだったのでぇ。よ、よかったでしょうかぁ……」
「小太さん、寒くない?」
「フラさんが温かいから……」
「なら、いいよ」
 フラが身を縮めたのは、小太の息が耳に掛かったから。小太、寒くならないよう密着するようにフラの動きに合わせてしっかりと抱き締める。
「ん、今日の小太さん、たくましい」
「フラさん……」
 優しい、そして誘うようなフラの横顔。視線。二人の唇が近い。少し、フラの下唇が震えた。
 その時。
 ――りん、ごーん……りんごーん……。
「あ、鐘ですぅ」
「うん、聞こえるよ。小太さん」
 鐘の鳴り響く中、胸にフラを抱いたまま手をしっかりと握りしめる。フラも、求めるように手を握り返す。
 来年も、一緒にこの鐘を聞くことができますようにと願いながら。
 鐘は、鳴り続ける。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士(エルフ)

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太 様

 メリー・クリスマス。
 素敵なシチュエーションですね。フラちゃんもすっかりメロメロのようです。
 なんか、ハプニングは小太さんの方が酷い目に遭ってフラちゃんが助けてますが(。
 文字数の関係で、発注書にあった「最後は家まで送る」まで描写できませんでした。紳士的に接しますよ、という意思表示と取り、逆に冒頭で信頼されている様子の描写に代えさせていただきました。
 やっぱり、ロマンチックに物語を締めたいですからね♪

 この度はご発注、ありがとうございました。
八福パーティノベル -
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ファナティックブラッド
2016年12月21日

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