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『●Only*Order 』
ユエリャン・李aa0076hero002)&マリア・D・セイントaa0545hero002

 それは慰労を兼ねたH.O.P.E.主催の合宿企画であった。
 エントリーしたリンカーたちがH.O.P.E.の宿泊施設に泊まり、パートナーや仲間たちと親交をあたためる…………そういう趣旨のものであった。
「合宿と言えば、夕飯はカレーだな」
「カレーじゃなくて、アタシは肉がいいんだ!」
「みんなだってカレー食べたいだろ?」
「たしかにカレーはすきですけど、お気になさらず、ですよ!」
「つーか、カレーに限らず色々作るからさぁ…………」
 集まったエージェントたちがわいわいと楽しげに夕飯のメニューについてああだこうだと話し合う。
「……………ふむ」
 そんな中、ユエリャン・李(aa0076hero002)は一人離れて仲間たちを眺めていた。
「どうしたんだ? 人見知りでもあるまいし」
 鳥の羽のようなふわふわした白いくせ毛を揺らして性別不明の麗人の前に現れたのは、彼の友人であるマリア・D・セイント(aa0545hero002)だ。
「白の君か。そうだ、きみは料理は得意であるか」
「べつに得意ってわけじゃねーが、それなりには」
「なら丁度良い。光栄に思うがよいぞ」
 嬉しそうなユエリャンの笑みにマリアは少しだけ眉をひそめる。



 早朝────まだ朝日も差さない暗い時間に厨房のライトが点いた。
「さて、何からやるか」
 すでに完璧に身だしなみを整えたユエリャン、その後をマリアが続く。
「こんなに早く来る必要があるのか? 朝飯だろ、もうちょっと遅くても問題ないんじゃねーのか」
 英雄である二人は基本的に睡眠を必要としない。だが、能力者たちは眠っているだろうし、英雄の仲間たちもまだ休んでいるような時間である。
「仕方あるまい、これ以上遅くなるとうちの大型犬が起きてくるからな」
「一言、言っておけばいいだろ」
「それでは面白味がなかろう」
 朝食に面白味は必要なのだろうか。しかし、こういったタイプに慣れているマリアはその辺りを敢えて突っ込まない。そもそもこの計画を事前に一言告げた場合、止められるか監視がつくのは想像に難くない。自分が第三者だったら、そうする。
 ────たぶん、それでは駄目なんだろーな。サプライズってやつかね。
 昨夜、ユエリャンがこっそり持ち掛けてきたのは、互いの能力者のために朝食を作ることだった。
 ────なんでアタシがアイツのために。面倒くせーな。
 とは言え、朝食作りもユエリャンとならば面白そうだと思い、気まぐれに気まぐれを重ねて付き合うことにしたのだ。マリアは自分と同時期に現世界へ現れた同期────この尊大で少し風変わりな友人を気に入っている。そして、それは向こうも同じようで、この美人は現世界のちょっとした経験に何かとマリアを誘ってくるのだ。
「さて。この辺りの材料使えばいいんだな?」
 おもむろに冷蔵庫を物色するマリアに背を向けて、ユエリャンは厨房のあちこちを開いては道具に触れてその使い方を見定めている。
「これは────成程、蒸かすものであるな」
「やめろよ…………いきなり上級者向けの道具を使うのは」
 知らない道具の使い方をすぐに理解するのは流石であるし、ある程度器用に扱えるであろうことは想像できるが、折角の好きに作れる食事に余計なリスクは負いたくないマリアであった。
「食えるものを作ろうぜ、ほら、この中のレシピから好きなの選べ」
「なるほど」
 頷きながらユエリャンは受け取ったタブレットを流れるような所作で隣へと伏せて置く。
「ユエ」
「ん?」
「レシピは見たほうがいいぜ」
「善処しよう」
「わかった」
 無理に勧めても見ないことは容易に想像がついたため、マリアは食材選びに戻った。きっと、たぶん、どうしても必要になったら見るだろう。そう思うことにした。これはこれで面白くもあることだし。
「この材料なら、ベーコンエッグ、野菜スープ、スムージー、サラダが作れるな。
 ユエ、そっちはどうすんだ?」
 健康志向の相棒を思い浮かべながら自分の献立を考え、それから、多少心配な友人の方を振り返る。
「玉子焼きと味噌汁、ご飯に鮭の塩焼き…………。
 おチビちゃんは吾輩が作ったと知ったら何でも喜ぶであろうが、概ねこんなものか」
 正統派な和食の献立を意外に思いながらも、マリアはその中で一点だけ引っかかった。
「米、か」
 マリアの目線の先には普段は手袋に包まれているユエリャンのすらっとした指があった。
「むっ」
 予想通り、早朝の冷たい水に触れたユエリャンはその手をさっと引っ込めた。
「水で研がねーと、味が落ちるって言うしな」
 ぬるま湯で早炊きする方法もあるが、少しでも美味しい米で朝食が食べたい。
「では、これでどうか」
 ユエリャンがボウルとザル、泡だて器を持ち出した。
「あー……、まあ、イケると言えばイケるがどこで覚えたんだ」
「米から余分なモノを洗い落とせればいいのであろう?」
「米を傷つけないようにな」
 マリアの脳裏に以前どこぞで見かけた『マニキュアを傷つけないように米を研ぐ女子OL』の映像が過った。


 冷水でさっと洗ったレタスを千切り、水を切る。その間に野菜をスープに入れて柔らかく煮込む。
 小皿によそって味を見ていると、隣から細い腕がひょいと伸びてレードルを奪い、自分の器にスープを注ぐ。
「美味い。流石であるな、君は将来良い嫁になるぞ」
「そりゃどうも」
 同じ尊大さを持っていても相棒とは少し違うユエリャンから飛び出す言葉を軽く流しながら、マリアは友人を見上げた。
「ユエ、やっぱこういうのって相手の好みとかに合わせた方がいいのかね」
 フライパンの上でカリカリに焼けたベーコンから食欲を刺激する香りが漂う。薄い肉から溢れた油がじゅわじゅわと音を立てる。
「ふむ。白の君が作ったのなら、それで充分だとは思うが」
 何か言いかけたユエリャンはふと一旦口を閉じ、厨房の棚を見回した。
「流石にカレー粉は無いようだ」
「なんでだよ、合宿と言ったらカレーだろ。いや、食いたいわけじゃねーが」
「昨夜カレーもあったからな。もしかしたら、尋ねれば自前でカレー粉を持ち込んでいる者が貸してくれるかもしれないが」
「そこまですることじゃねーよ」
 普段、相棒の好物であるカレーに辟易しているはずのマリアの、『気まぐれ』にユエリャンの目元が優しくなる。
 マリアはそのまま器用に卵を次々と割ってフライパンに落とした。
 すこし多めに。
「よっと」
 人数より多く用意した皿に乗せたベーコンエッグが減っている。
「だろうと思ったぜ」
 隣で堂々と『味見』をしているユエリャンが彼女の言葉に不思議そうに首を傾げた。
「美味であった。もう一皿食べてやろう」
「しょうがねーな。使っちまうか。あ、そこのソース使えよ」
「ソース……?」
 フライパンの上を滑るベーコンがじゅわあと音を立て、油が跳ねる。
「…………ところで、それ、なんだよ」
 台所に充満した甘い香り。
 その原因はなんとなくわかる。わかるが、ソレはあまり朝の和食を作る台所に相応しい香りではない────。
「ふふふ、ちょっと思いついてな」
「そりゃ、子供は甘いモンは好きだけどさ」
「ん?」
「いや」
 さきほどのユエリャンの微笑に気付いていたマリアは、呆れたように「自分こそ」と小さく呟く。
「ユエ、焦がすなよ」
「気をつけよう」
 ユエリャンは楽しそうにソレをフライ返しの先でつついた。


 マリアが心配していたよりずっとユエリャンは器用に調理していた。何より器具の扱いがうまい。
「どうだ、これは美しいであろう!」
「よく出来てるな」
 充分に火が通りつつも無駄な焦げ目の無い美味しそうな鮭の塩焼き。それを誇らしげに見せるユエリャンにマリアは素直に感想を述べた。マリアも鮭の焼き加減は特に気にしてこまめにユエリャンに声をかけてはいたが、思った以上の出来栄えだ。
 ユエリャンの笑みが深くなり、にんまりと笑う。
「こちらも中々の出来だぞ、一口飲んでおくれ」
「うん、いい味だ」
 続いて差し出された味噌汁もよく出来ていた。
 だが。
「卵とチョコは合うはずだが……出汁が喧嘩してんな」
 最後にシックな色のチョコレート入り卵焼きを一口食べたマリアはそう言った。
 ユエリャンは納得のいかない顔で、細いフォークで突き刺した卵焼きをまじまじと見る。厨房では終始笑顔のユエリャンだったが今は少しだけ眉尻が下がっている。
「甘く苦味があって、卵に合うと思ったのだが」
 湯煎までして溶かしたチョコレートは卵と良く混ざり、一見するとケーキのようにふわふわで綺麗ではあった。
「でも、焦げずに綺麗に焼けてるし、他のも美味いよ。レシピ見ねーわりにはうまくできたな!」
 マリアの言葉にユエリャンは再び満足そうに完成した料理を眺めた。
「上手くできたなら君のおかげだな」
 ほかほかと湯気が立つ朝食は随分美味しそうに見えたし、味見をした限りではとても良く出来ていた。
 昨日凍らせておいたバナナで多めに作ったスムージーをマリアがユエリャンに渡すと、隣に並んだふたりは軽くグラスを合わせた。
「楽しかったな。またやろう」
 ユエリャンを、そして、派手に散らかった台所を見渡してマリアは笑った。
 完成した朝食は盆に乗せた。片付けは…………まあ、ユエリャンはしないだろうし、マリアだって今日はもうやる気がない。
「冷める前にあいつら起こして朝飯にしようぜ!」
 まだ朝食には早い時間だが、まあいい。
 やり遂げた満足感を胸に、ふたりはどちらともなく笑みを交わした。



 もうすぐ台所仕事が得意な仲間がやって来る。大量に減った冷蔵庫の中身、チョコレートの固まったボウルや使いっぱなしの器具と食材の切れ端が溢れたシンクの惨状に悲鳴があがるまであと数分。




登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0076hero002/ユエリャン・李/?/28/シャドウルーカー】
【aa0545hero002/マリア・D・セイント/女性/20/シャドウルーカー】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ご依頼ありがとうございます。
それぞれの能力者たちは美味しい朝食をとることができそうですね。
ユエリャンさんとマリアさんも楽しいひとときを過ごせたと思います。
ひと騒動あったかもしれませんが、それぞれに思い出深い合宿となり、
無事、絆も深まった……でしょうか?
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2016年12月26日

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