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『チャイムは正体を隠してくれない。 』
世良 霧人aa3803


 キーンコーンカーンコーン
 授業終了のベルが鳴る。
『世良 霧人(aa3803) 』の務める中学校は今時珍しく周囲に響き渡るように、時を刻むチャイムを鳴らす。
 周囲への配慮が叫ばれる昨今、だんだんと学校内でしか鳴らさない場所が増えたのだが、この学校は近隣の町内会であったり自治体と仲がいいから許されているのかもしれない。
 これも日頃の行い故である。
「ねぇ、先生。共鳴して見せてよ」
 そんな平和な日常の一時。
「先生の英雄って猫なんでしょ? いいなぁ今度連れてきてよ」
 霧人は廊下の隅に追いやられていた。
「えー。私絵描きさんだって聞いたよ、カッコいいらしいよ」
「せんせー」
 女生徒五〜六人に囲まれる霧人は白目をむいて燃え尽きたように天井を見上げていた。
「ま、まともに授業にもいけない……」
「せんせぇ」
 そう、霧人はあの一件以来学校では話題の中心だった。
 授業中にはリンカーとしての体験談を求められるし。
 部活では共鳴してほしいとせがまれるし。
 廊下を歩いていても生徒に追いかけられる。
 ここ最近まともに仕事ができていない気がした。
 職員会議ではそれらすべてが霧人が悪いと、なぜか謝罪させられるし。
「あ〜」
 すべては36時間TV。その番組の一コマで霧人がリンカーであるとばれてしまったのが、全ての始まりだった。
 こんなことにならないためにも。全力で正体を隠していたのに……
 その努力が全て水の泡になってしまったのだった。
 キーンコーンカーンコーン。
 チャイムが鳴る。
 霧人はあわてて生徒たちをクラスに戻すと、自分も足早に担当教室へ向かった。
「遅れてごめん」
 そう戸を引いて顔を出した瞬間クラスが沸いた。
「先生テレビ出演おめでとう」 
 霧人は思い出す、そう言えばあの一件以来この教室に来るのは初めてだったと。
 部活でなじみのある女子生徒が霧人にさっそく告げる。
「先生、あのへそくり何に使う予定だったの?」
「あれは……。なんでもいいだろう? ほら、授業始めるから教科書を開いて」
 だがそれには耳を貸さない生徒たち。
「今までで一番つらい事件ってなんだった?」
 霧人は溜息をついて教科書を教壇の上に置いた。
「僕は、いろんな依頼に出たよ。死にかけたことも一度や二度じゃない」
「先生、包帯巻いて学校に来たこと何回かあったよね。それって、夫婦喧嘩じゃなかったの?」
 霧人は苦笑いを浮かべる。
「僕の奥さんは確かに……強いけど。僕をあんなふうにはしないよ」
「じゃあ、全部愚神と?」
「まぁ、そうだったかもね」
 そうそっけなく返して授業に戻ろうとする霧人、しかし教室の中心で息をのむ声が聞こえ、それに思わず視線がついて行ってしまう。
「先生、突然いなくなったりしないよね?」
 その生徒も部活でなじみのある女生徒だった。
 言葉を交わすことも多い、その生徒が、目に涙をためてこちらを見ているのだった。
「心配しなくていいから」
 そう霧人はその子の頭をガシガシと撫でる。
「僕は絶対帰ってくる、君たちが卒業するのを見送らないといけないから。それに仲間もいる、奥さんだってリンカーだから。みんなとなら戻ってこれる」
 そう告げると女性とは霧人を見あげて微笑んだ。
「先生は、私達のヒーローだね」
 そう女生徒が告げると、再びクラスを歓声が包んだ。
「わかったから、もう授業に戻ってもいいかな?」
「先生、英雄出してよ」
「今日は家で留守番してる」
「幻想蝶っていうのに入ってるんじゃないの?」
「うちは放任主義」
「先生、良い体してたけど鍛えてるの?」
 突如霧人の脳裏によみがえる、ピンク液が肌を伝う感触。
 思わず霧人は両腕を体の前でクロスさせる。
「任務をこなすうちに自然と」
「脱いでよ!」
「絶対ダメ」
「せんせ〜」
「期末試験も近いし授業やらせてほしいんだけど!」
「だめ〜」
 そうクラスが一丸となって授業を妨害し始めた。
 だがまぁ、仕方ないだろうなと霧人は溜息をつく。むしろ今だけだろうと霧人は考え。そしてついにはチョークまで置いてしまった。
「よし、今日はとことん付き合おう。その代り次回はこんなことは無しだよ?」
 三度歓声が上がる教室。
「その代り僕の相談にも乗ってもらう」
 そう言って霧人は照れ臭そうに微笑んだ。
「奥さんとの記念日の贈り物何がいいと思う?」
 こうしてチャイムが鳴るまで、霧人の平和な日常は続くのだった。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『世良 霧人(aa3803) 』
ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 メリークリスマス
 いつもお世話になっております鳴海です。
 OMCご注文ありがとうございました。
 36時間TVでは大変な目にあわれましたね。ですがきっとあの時視聴率は上がったはずです、だって面白い映像だったのですから。
 霧人さんは幼少期の不幸を脱してもいまだに薄幸ですね。
 主に原因は杏奈さんな気がいたしますが。
 それでは今日はこの辺で、ありがとうございました。
 鳴海でした。



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2016年12月26日

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