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『Underdogs 』
矢野 古代jb1679)&加倉 一臣ja5823)&ゼロ=シュバイツァーjb7501



 からから、と軽妙な音が狭い店内に満ちた喧騒の中に紛れ込む。
 直後、威勢のいい出迎えの声が湧き上がった。

 居酒屋『殿』。
 小さな店構えながらも酒飲み達の笑い声が絶える事のない、隠れ家的な居酒屋だ。
 ここでは様々な人間模様が描かれる。‥‥否、何処かで描かれた人間模様が語られる。
 結婚を発表した若者を祝福する一団。
 彼氏と喧嘩した女性が鬱憤晴らしに管を巻く卓。
 横暴な会社の上司への愚痴を肴に、やいやいと騒ぎ立てる座敷‥‥。



 さて、そんなお店で本日描かれるのはお話は3人の男の話。
 小雪がちらつく冬の始まりのある日のことだ。

「いらっしゃいませ! 何名様ですか?」
「あ、3人で――あれ、なんて名前で予約してるんでしたっけ?」
 そういって、鳶色の髪がふわりと後ろを振り返った。
 予約を取り付けた本人は、どうやら遅刻してくるらしく。
「え、おじさんも聞いてないけど、『ゼロ』じゃないの?」
 後ろにいたコートの男もまた首を傾げた。
 困ったように顔を見合わせる2人を見て、予約リストを指で追うスタッフの娘。
「ゼロ様‥‥は承ってませんが、3名様は今日1組だけですので‥‥」
 そして満面の笑みを浮かべて彼女は言った。

「3名様でご予約の『Underdogs』様ですね!」

 (´H`)(´H`) ア‥ハイ‥‥。

 あ、これ絶対わざとのやつ。
 遅刻じゃなくて絶対物陰でニヤニヤ見てるやつや――!
 そう確信しながらも、男たちは『負け犬』として店に入っていくのであった。



「よっしゃ、ほな反省会するでー」
「「かんぱーい」」

 キン、と高く澄んだ音。間髪いれず、麦酒を喉を鳴らしながら流しこむ。
「いやぁ今回も上位ハンターたちは安定でしたねぇ」
 一息ついてから激戦を振り返るのは加倉 一臣(ja5823)。
 そう、この飲み会は先日沖縄リゾートゾーン『Orz』において行われた、(多分)第4次凄敗《せいはい》戦争‥‥通称鬼ごっこのおつかれ反省会なわけである。
 彼ら3人は常にその戦争の敗者。いついかなるときも淘汰されてきた。
「ホントホント。もう体が自然に『如何においしく負けるか』を模索してるからね。‥‥で、つぎはどういう散り方しようか」
 矢野 古代(jb1679)の言葉に一臣も倣うように頷き、「そうですねー」と次回に向けてより美味しい散り方を考え始める。
 咲き誇る花の盛りよりも散り際の美しさにこそ真実を見る――などと考えているかはともかく。
 生まれる前に死んでいくが如き2人の思考に、彼は思わず言ってしまったのだ。

「待ちぃや、なんで散る事前提なん?」
 ‥‥と。

 きょとん顔で「えっ」と声をあわせる古代と一臣。
 しかしゼロ=シュバイツァー(jb7501)はそんな運命に慣れきった2人の心根、もといたこ焼きにぶしゃっ!と竹串をつきたてた。
「『えっ』やないやろ! あのアホ毛に一矢報いたった俺を見習えや!」
 と、豪語するゼロだったが、一臣と古代は困惑の色を隠せない。
 だって、何やっても勝てる気がしない。一臣は今回果敢にも銀の悪魔に挑む事になったわけだが、まるでチートである。常識人(笑)
 初参加なのに普段のイメージだけで圧倒的上位に君臨できる狸《もの》すらいるのだ。
 逆説的に言えば、普段からいじられキャラとして確立している自分たちに選択肢があるだろうか。いいやない(反語)

 一臣と古代にとって、散ることは最早必定。運命。定理とも言える結末。であれば――
「散り方は大事、まず最初に考えるべき主題じゃないの?」
 一臣が真顔でこう問うのもまた、必然。
 そして、一つ大きく同意の頷きを返したあとに古代が続く。
「だからゼロも『勝ち目のない弱者たち(Underdogs)』って名前にしたんだと思ったんだけどねぇ」
「あん? 『Underdog』はただの負け犬じゃ「はーい、追加のたこ焼きでーす!」

 (・H・)‥‥。

 居酒屋とカラオケの店員は、だいたい《パッシブキル:空気を読まない強い心》を取得している。
「あっどうもー。‥‥粒でかっ!?」
「えへへ。うちの一番人気なんですよ〜」
「ゼロ君そっちのお皿とこのグラス下げてもらって」
「あ、おう。ほなおねーさんこれよろしゅう」
「はーい! ではごゆっくりどうぞー」
 ぱたぱたと下がっていく店員を見送り、ほっこりと笑顔になる男性陣。
「いやぁ一生懸命の子は可愛いですねぇv」
「可愛いねぇ。‥‥マイエンジェルには負けるけど」
「キリングマシーンの天使(笑)」
「俺にとってはご褒美だ(キリッ」
「うん、重症(ほほえみ」
「せやな(合掌) ほな熱々のうちに食おか」
 気を取り直して、ビール片手に各々がたこ焼きの山を崩し始める。
 外はカリカリ、中はじゅわとろの大阪式。口に入れると、紅生姜と桜海老の香りがふんわり香った。
「‥‥あぇ? ほんで、さっき何の話ひへはんらっへ」
 はふはふとたこ焼きを頬張りつつ、古代。
「あー、だから『Underdog』h「こちら、本日『忘年会キャンペーン』のサービスで、お一人様1つずつのプレミアムたこ焼きでーす♪ ただし、ランダムでカラシ入りでーす☆(ゝω・)v」

 (・H・)‥‥。

 居酒屋とカラオケの店員は、だいたい《パッシブキル:空気を読まない強い心》を取得している(再)



「おいゼロ、ハズレあるらしいぞ。『たこ焼き神嘘つかない(棒読み)』とか言ってたのにーうっそつっきだー」
「言うてへんしそれミスターナントカやし、ってかこれはノーカンやろ!? あと40のヒゲおっさんが唇とがらすなや!?」
「ブブー! まだぴっちぴちの38ですぅー。あ、ゼロおじいちゃんは歳数えられなくなったんだっけ?」
「じゃかぁしい、俺は永遠の33歳(外見)や!」
「30代といえば加倉君も30歳おめでとう!!! ぎっくり腰は大人の証拠だぞぉ!!」
「そら古代さんがなっとるだけやろ。つーかむしろ自分四十肩きーつけや」
「くっ‥‥また一つ業を背負ってしまうのか‥‥(絶望顔) あ、でも体壊したら娘に気遣ってもらえるかな!?かな!?」
「メンタルも壊してくれるんやない?」
「愛が痛い!」
 ぎゃあぎゃあやいやい。
 アルコールが入って回りが良くなった口でゼロと古代は喧々諤々。
 その隣、一臣は一人プレミアムたこ焼きをじっと見つめる。
「ロシアンたこ‥‥これ、ある意味『狩りもの競争』だよねぇ。当たりの奪い合い、みたいな‥‥・」
「確かに。まぁこういう時は協力し合うのが狩られ組の定石ってもんだろう?」
 はははと乾いた笑いを漏らす古代。
 しかしその時、隣の卓で催されていた女子会で、誰かが言った。


「えー、別に裏切ってもいいじゃん! 友達だからって遠慮してたらアンタずっとその壁越えられないよ!?」


 ――どうやら、大学で友達が好きな先輩を好きになってしまった――というような、まるで違う話題だったわけだが。
 耳に飛び込んでしまった。『友人を出し抜けば壁を越えられる』と。

 一拍おいて。
「ですよね。いつも通り――」
 いつものアルカイックスマイルを浮かべた一臣と
「せやな。いつも通り‥‥」
 必要以上に人懐こそうな笑みのゼロが、古代を見つめ返した。

 やの しってるか。 『狩りもの競争』でふたりとも なかまはいざとなったらみすてるってかいてた(※意訳)





 ほのかに焼き目のついた球体を睨めつけながら、古代は静かに周囲を見回した。
(‥‥さっきの一言で2人にスイッチが入ったようだな‥‥)
 どくん、どくん。喧騒の中で、心臓が一際大きく決意の鐘を鳴らしていた。
 勝者の側に立つためには、きっかけが必要だ。
 強者は時にそのイメージだけで弱者を退ける。保身のために誰もが強きを避け、結果、強き者は更なる自由を手に入れる。
(だから、今回は勝つ‥‥そして、いつか偉大な父《ビッグダディ》として娘に勝利するのだ!!)

 一臣は、そっと目を伏せて周囲の気配に意識をそばだてた。
 負ける事には慣れている。
 諦める事にも慣れている。
 自分ならうまく負けることで傷を減らす立ち回りもできるから。
(俺が引く事で周囲が円滑になるなら重畳‥‥だけど)
 此処に会するは同じ穴の狢。気遣いを向けるべき相手では、ない。
 すっと瞼を開く。鈍く光を抱く双眸に、笑みはなかった。

 ゼロが動く。それを察知し古代と一臣は視線で牽制するも、彼の手は通常のたこ焼きを一つさらっていくのみ。
(2人とも火ィつくんが遅すぎやろ。そんな弱火じゃ、たこも狩人もよう焼けへんで)
 しかしゼロは2人の反応に内心口角を上げていた。
 欠け落ちていた勝利への飢え。それを得たとき、彼らはどう変貌するのか。
(袂を分かつことを怖れて今勝負せん選択肢はない。それに俺がこの勝負で負けるはずがないんや!)
 なぜならゼロはたこ焼きの神。この狐色の内に隠しごとなど、愚策極まりない。
 あとは如何に、彼らより先に安全牌を掴み取るか、だ。


 時間にして数秒。
 僅かに淀んだ空気に構わず、ゼロがすっと拳を前に突き出した。
「ま、平等にじゃんけんしよか」
 しかしゼロが自分に有利なカードを切ってくるのは明々白々。すかさず一臣が切り返す。
「でも、ゼロ君のINIなら遅出しでも追いつくでしょ。ここは誕生日権限で俺からじゃない?」
「誕生日権限‥‥だと‥‥!?」
 一瞬目を見開くゼロ。
「ゼロ君。人間はね、誕生日は一日神様になれるんだよ」
「誕生日はみんな我儘聞いてくれたりするよねぇ」
 うんうんと頷く古代。流れるように娘エピソードを差し込もうとするが、たこ焼き(ノーマル)を口に放り込まれ沈黙。おいしい。
「そういうことだから、じゃあ俺が」
 言って一臣はすっと竹串をプレミアムたこに向かわせる。
 が、あと数mmというところで一臣の竹串に一瞬美しい菊の花が開く。ゼロのスキル《雷菊》である。
「待たんかい。つかおみさん誕生日今日やないやろ!」
 ぴりりと右腕走るしびれ。一臣は内心舌打ちをしながら、動かない腕の代わりに頭を回した。
 『選たこ眼』に関して、彼の右に出るものは居ない‥‥つまりゼロが先に選べる状況は、勝ちを差し出すようなものなのだ。
「365日のうちの10日差だし。誤差3%未満ならまだアディショナルタイム。セーフセーフ」
「なわけあるか! ウダウダ言っとらんで、さっさとじゃんけんするで」
 一臣は逡巡したが、これ以上のゴネは意味をなさないと判断。半ば強引なゼロの誘いに乗って右手を出した。
 また、それを見て古代もジョッキを握っていた左手を前に突き出す。

「ほな、最初はグー‥‥!」

 全員が拳を振り下ろした。瞬間、ゼロの拳の隙間から爪楊枝が滑り出す。
(後出しは読まれとったが――俺のカードはそれだけやないで!)
 後出しを禁じられた今、じゃんけんの結果は約束されぬ未来。
 であれば、全員がじゃんけんに意識を向けている間に引ったくって腹に収めるのが最良――!!
 ぎらり。ゼロの口角が上がる。もらった。
 しかし、爪楊枝が狐色に突き立つことはなく。からんと密やかな音を立てて座卓の上を転がっていった。
 手が滑った? ――いいや、ゼロの掌にも楊枝の感触はある。が、折れている!

「何かしてくると思ってたんだよねぇ」

 口を開いたのはこれまで傍観していた古代。
 その瞳は緑の焔を宿し、ゼロの手元を鋭く凝視していた。
「緑火眼――」
 そして古代の右手には、数本の爪楊枝。
「ふ‥‥《射術三式・軌曲》。俺は凡人だが、たこと娘を護る事はできる!」
「古代さん!!」
「ちっ、伏兵がおったか‥‥! だがまだ勝負は――んぁ!?」
 仕切り直してじゃんけんを続行しようとするゼロの顔が凍りつく。
 狙うべきたこは既に皿になく、次いで視界に入ったのは古代へ驚きの表情を向けたままプレミアムたこを口にいれんとする一臣の姿。
 《ポーカーフェイス》で表情を作り、古代に意識を向けていると見せかけて《侵入》で音もなく標的を掻っ攫ったようだ。もう何がなんだかわからない。
「ゼロ君が焦るってことはこれが当たり‥‥!」
 たこが一臣の口内へと放り込まれる。
「ちぃっ!! ――――なぁんて、な!!」
 神速で突き出されるゼロの人差し指。
 しかし一臣の口は既に閉ざされようとしている。
(いくらゼロ君でも、口の中から掻き出すほどの時間はない!)
(‥‥とでも思っとるんやろ。ここまでは狙い通り――これでも喰らいや!)

 ぷにょん。

 傍から見れば、アラサー男がアラサー男の頬を突くきm(訂正線)和やかな光景。だが。
 ごぷ、と鈍くせり上がる水音と共に一臣の目が見開いた。
「ふごああああぁぁああ! 鼻! 鼻にカラシがあああ!」
「ちょっ、何したんだゼロ」
「えー? 俺カラシ入りやと知ってて《徹し》で内部破裂させたりなんかしてへんよぉ?(棒」
「まさに外道‥‥! それが人のすることかよぉ!」
「俺天魔やし?」
「すいませんお茶! お茶ください!! 助けて!」
「は、はい! どうぞ!」
 騒ぎを聞きつけた店員がばたばたと駆け寄り、ガラスのお椀に注がれたそれを差し出した。
 ぐいっと一口。
「わぁ香ばしくてよく出汁が効いたおty‥‥いや出汁そのものだよね!? とってもおいしい鰹出汁だよね!?」
「あっすみません、つい間違えました! お出汁でもたこ焼きを召し上がっていただこうと思いまして!」
 見た目は煎茶と似た色だから仕方ない。
 麦茶とめんつゆを間違えるのと同じくらい仕方ない。
「お、出汁もええな。気が利いとるやん」
 悶絶する一臣を横目に、ゼロはひょいっと出汁の器を受取り件のたこ焼きを泳がせる。
 それに倣って、古代もプレミアムたこに箸をつけた。
「それじゃあハズレはなくなったことだし安心して食べようか。‥‥加倉君の尊い犠牲は忘れないよ(合掌」
 あむっ。

「――」
「‥‥!!」

 \ぶばーーーー/

「ちょいまち、全部カラシやんけ! どういうこっちゃ!?」
「わぁ! 一皿全部カラシ入りは大当たりですよ! おめでとうございまーす!!」
 年内に悪いことがあると、来年は良い出来事に恵まれる――。
 そんな大将の粋なはからいにより、3人は店中の客から微かな憐憫が入り交じった祝福の哄笑と、『来年は良いことありますよ券(※ビール割引券)(※1月以降有効)』を手渡されるのであった。




『裏切ったら壁の向こう側に行けるかもしれない』

 だが、壁の向こうが優しい世界だけとは限らない。
 険しい絶壁を越えた先の景色。
 それは抜け道も退路もない地雷原と、壁を登るために蹴落としあって襤褸雑巾になった男たちの姿がきっとあるのだろう。
 それでも彼らは絶望に立ち向かう。例え、敗北の運命にとらわれていたとしても。

 『Underdog』
 ――それは負けてばかりの弱者。
 『Underdog』
 ――それは逆境の中でも強者に牙を剥く、挑戦者。

 彼らがどのような犬になるのかは、定かではない。



 ☆俺達の戦いはこれからだ――!!(絶望鬼ごっこ先生の次回作にご期待ください!)






━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

[> jb1679/矢野 古代/男性/40歳/インフィルトレイター
  ja5823/加倉 一臣/男性/29歳/インフィルトレイター
  jb7501/ゼロ=シュバイツァー/男性/33歳/阿修羅

  Special Thanks うっかり看板娘(NPC)


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
どうしよう無駄な掛け合いが止まらない。いっそ会話劇にしたかった!由貴です。

VIGノベルにも関わらず、なんやかんやで年の瀬とは一体どういうことか――。
結局忘年会感のある感じに。ハロウィンなんてなかった。

その間に加倉君はお誕生日おめでとうございます!30歳ですね!!!(
こ、これを狙っての納品日だったんだし(震え声)嘘ですほんとすみません。
期待感と現実の温度差でグッピーが死なない事を祈ってます。それ以上はいけない。

ゼロ君はたこ焼き神として負けられない戦いだった気はするんですが、
きっとたこ焼き神であればカラシ入りだろうと冷えてモサモサだろうと暖かく受け入れると信じてます(澄んだ瞳
‥‥というネタも入れたかったんですけど既に文字数!

そしてそして、古代さんはゼロ君とやいやい言い合いしてる所が楽しすぎて、会話パートがやめられないとまらない状態に。
しまった褌ネタを入れ忘れたー!!!って今気づきましたガッデム。書き足したいけど文字数(
ぴっちぴちの38歳、つぎは四十肩と生活習慣病にお気をつけください――(なまなましい


そんなわけで、反省会‥‥反省?してたっけ?会ノベル、負けてばかりの方も挑戦者の方も、お楽しみいただければ幸いです。
ご発注ありがとうございました!

VIG・パーティノベル -
由貴 珪花 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2016年12月27日

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