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『甘々けも耳初詣♪〜甘酒よりお汁粉よりとっても! 』
幻・A・ファビアンaa3896)&マリアンヌ・マリエールaa3895

「はぁ……」
 年が明けました。
「弱りましたわ」
 おめでたい元旦に、困ったような声が襖の向こうから漏れ聞こえてきます。
「こんなはずでありませんでしたのに……」
 やや甘みの混じるため息はまだ続いています。
「♪もぅー、いっぱい寝たよお正月ぅ〜♪」
 そんな襖の手前に、脳天気な歌声と軽やかな足音が近付きました。
「♪お正月にはたこ焼きと、わたあめ回して甘々に……あれ?」
 おや。
 気分よく何か違うお正月の歌を口ずさんでいた幻・A・ファビアン(aa3896)ですが、急に立ち止まり狐耳の頭を軽く傾げました。もしかしたら、奇跡的に歌詞の間違いに気付いたのかもしれません。
「わたあめは甘いけど、たこ焼きは甘いかなぁ?」
 もとい、奇跡的に気付いたのは歌詞違いではなく味違いの方のようで。狐尻尾ふりん♪。
「あん、やっぱりですわ。困りましたわぁ」
 ここで襖の奥から悩ましい声。これを聞いた幻はぴぴんと狐耳を立てるのです。
 そして思い立ったら即、行動!
「マリィママ、どうしたのっ!」
 ――すぱーーーーーんっ!
 思いっきり襖を開けました。
 そりゃもう両手で勢い良く両開きの全開でっ!
「きゃあ……」
 ひっ、と身を縮めたマリアンヌ・マリエール(aa3895)が襖の奥にいました。
 ちょうど着替えの最中だったようで薄桃色で花とせせらぎ柄の着物を巻きつけるようにしています。素肌を晒した首筋。寄せた肩が白く、ロップイヤーのうさ耳がだらりん。すり寄せた太ももも乱れた合わせからチラリして白く印象的です。
「あ、マホちゃん? ちょうど良かったですわぁ。一緒に初詣に行きましょう」
 一瞬恥ずかしそうにしたマリアンヌですが、開けたのが幻と知り安心したようです。着衣の乱れたまま近寄ってだきゅだきゅ。そのまま着物にくるんでお持ち帰りしてしまいそうな勢いです。……いや、もちろんここは自宅ですが。
「マリィママと初詣? 嬉しいな。……でも、さっき何か困ってたよ?」
「この着物、可愛いのですけど胸の部分の模様で……」
 幻を離したマリアンヌ、ほら、と着物を合わせてみた。
 すると……。
「わ、花の模様が重なって大きさが強調されてる〜」
「ですわよねぇ……食べすぎましたかしら?」
 ふう、とため息をついた時でした。
「じゃ、ボクも同じ柄を着てボクの胸も強調させるっ!」
「まあ、マホちゃん……」
 きぱ、と言い切るぺったんこ胸の幻。その健気さと可愛らしさに思わず感激するマリアンヌです。
 それはもう、ぎゅむぎゅむと、むぎゅむぎゅと幻をそのおっきな胸で抱きしめてあげるのでした。

 そして、初詣客でごった返す神社の参道で。
「えへへ、マリィママとお揃い嬉しいなっ♪」
 くるん、と幻がその場で一回転しました。
 朱色の大鳥居の主柱を背に、水色地に花柄せせらぎ模様の着物をひらめかせます。確かにマリアンヌとお揃いの柄なのですが……。
「ね、マリィママ。どうかなっ!」
 特に柄の影響で胸が大きく見えるわけではありません。
「マホちゃんはやっぱり可愛いものが似合いますわぁ♪」
 もっとも、大きな胸の前で両手を組み合わせ目尻を甘く緩めているマリアンヌにはそんなことまったく問題ありません。自分の胸で弱っていたこともすっかり忘却の彼方です。
「じゃ、行きましょう!」
 幻、マリアンヌとのお出掛けがとっても楽しそうです。
 それはもう、思わず拝殿の方に一人で歩きだしてしまうくらいに。
 でもすぐに気付いて立ち止まります。
 一人ぼっちで歩きだしてしまったの、と。足りないものにしゅんと狐尻尾も垂れてしまっています。
 その時でした。
「マホちゃん、迷子になっちゃだめですわよ?」
 空虚な感覚に震えていた手が、温もりに包まれます。
 振り返る幻。
 彼の手を握ったマリアンヌが、にっこり。
「うんっ」
 すっかり明るさを取り戻した幻。見詰める目と目。安心感。
 心と同様、尻尾も弾むようにくるんとうねるのです。
 そうやって仲良く歩く姿はとても微笑ましいようで、すれ違う人の視線とほほ笑みを集めています。もちろん、幻もマリアンヌも笑顔。楽しそうにぴくんと幻の狐耳が動けば、マリアンヌの垂れたウサギ耳もゆらり。呼応してくれたのが嬉しく、喜んでくれたことにわいてくる幸福感。揺れる人波に身を任せ、夢見る気分で先へ先へ。
 と、その時でした。
「あっ……」
「え?」
 突然消えた手の平の温もり。
 幻が振り返るとマリアンヌが消えていました。とたんに寂しそうに、捨て犬めいた顔になります。
 でも、それは一瞬のことでした。
「良かった、ありましたわ。さ、行きましょう、マホちゃん」
 人波を割って、後ろからマリアンヌが戻ってきました。ちゃんともう一度手をつなぎます。
 でも、突然のことに驚いたこともあって先程までの幸せ全開モードから気分が沈んでしまいました。
「何かあったの、マリィママ」
「ううん。なんでもありませんわ」
 心はどこか弾みません。狐尻尾はしゅんと垂れています。
 拝殿と賽銭箱はもうすぐです。

 ――がらん、がらん……。
「マリィママ、それは?」
 拝殿の前に到着した幻。
 早速賽銭箱に興味を示したところで隣のマリアンヌが何かしたのに気付きました。天井から垂れている紅白の綱を揺らし上についた大きな鈴を鳴らしたようですね。
「マホちゃん、まずはこれを揺らして神様に『お参りに来ましたよ』って知らせるのですわ」
「ボクもする〜」
「あらあら♪」
 幻、目を輝かせてマリアンヌの持つ綱に飛びつきます。その勢いで怪我してしまわないようしっかりと抱きとめてあげマリアンヌです。がらんがらんと同じように鳴らした幻、とても満足そう。垂れていた尻尾もようやくふわふわくりんと楽しそうになったようです。
「そしてそのあとはお賽銭を賽銭箱に入れて……」
「えっと……入れたよ」
 マリアンヌ、静かに小銭を投入。幻は嬉しそうにチャリンと音をさせて投げ入れたり。
「後は、二礼二拍手一礼してお願い事を」
 静かな佇まいから礼をして、拍手の音もたおやかに。
「にれい……よくわかんないけど、お願いっ。……マリィママやみんなといっぱい仲良くできますよーにっ」
「まあ。願い事は声にしなくてもちゃ?んと神様は聞いてくれますのよ」
 くすくすとマリアンヌ。
「本当? じゃ、もう叶うの?」
「それは、マホちゃんが今年良い子でいられたら、ですわね」
「え?。でも、いつも良い子だから叶ったも同然だよっ!」
「あらあら。それは嬉しいですわね」
 突然抱きついて甘えてくる幻の頭を撫でてやるマリアンヌです。
 が、その顔が上がりましたよ?
「マリィママはどんなお願いしたの?」
「そうですわね……」
 口元に指を添えてちょっとだけ考えます。
「これから行くところについてきてくれたら教えてあげますわぁ♪」
「うんっ、行く。どこ行くの、マリィママ。早く行こう!」
「あらまぁ」
 幻、腕を引いてマリアンヌを急かすのです。
 ところが。
 ピピン、と突然幻の狐耳の先っぽが立ちましたよ。
 何かに反応しているようですが……ああっ、鼻先も何かを探すように巡らされました。
「あっ!」
 思わず幻が声を上げたのは、見回す先に甘味処の幟旗を発見したからです。
「う……」
 いつもなら
「マリィママ、甘い匂いがするみたい。行ってみるの!」
 と甘えていたに違いありません。
 でも、今はマリアンヌと約束しています。神様にもお願いしました。絶対に良い子にしていなくてはなりません。
 でも!
「うう……」
 甘い匂いが幻の鼻先を魅惑的にくすぐります。
 いつもなら
「お汁粉の匂いだよっ。休憩して食べるの〜」
 と甘えて以下略なのです。
 でもでも、約束……と耳へにゃした時でした。
 ――ふわっ。
「マリィ……ママ?」
 マリアンヌが困っている幻を優しく抱きしめたのです。
 それはもう、優しく、愛おしく……。
「マホちゃん、よく我慢できましたわ。実は連れて行こうとしたのはあそこでしたの」
「本当?」
「ええ。良い子にしてるかどうか試してごめんなさいね。でもさすがマホちゃん。偉かったですわぁ」
 我慢していた時の様子がとても健気で可愛らしかったので、ご褒美のむぎゅむぎゅは倍増です。あるいは、黙っていてごめんねという気持ちも込めているのかもしれませんね。
 もしかしたら、幻はちょっとした意地悪に怒ってしまうかもしれません。
 ところが。
「でも……本当に? ボクがあっちに行きたがってたからマリィママが行きたかった所を変えたとかじゃ、ない?」
 幻、怒るどころかマリアンヌを気遣っているではありませんか。
 これにはマリアンヌ、さらにきゅ〜ん♪となったようで。
「そんなことありませんわ。ほら、さっきマホちゃんのそばを離れたのは、あの店の招待券を落としたからですの」
 チケット二枚を取り出して見せます。確かにあの甘味処のお汁粉無料券でした。
「そっか。あの時マリィママが消えたのは、落としたこれを拾いに行ってたんだ」
「マホちゃんをびっくりさせようとして黙っててごめんなさいね」
 手のひらを包む温もりが消えて寂しかった記憶が蘇りますが、マリアンヌの謝罪を聞くまでもなくすっかり機嫌を直しています。
「ううん。マリィママといっしょにお汁粉、うれしいなっ♪」
 マリアンヌの手を取った幻、足取りも軽やかに甘味処に向かいます。
「あら、いらっしゃいまし」
「お邪魔しますわ」
 どうやら店員さんはマリアンヌの知り合いのようですね。席も隣り合う二人分、用意してくれました。
 すぐに温かいお汁粉も出て来ます。
「わあっ。美味しそう。それじゃ、いただ……」
「待って、マホちゃん」
 早速口を開けた幻をマリアンヌが止めます。
 どうして、と視線を向けると……。
 ――ふーっ、ふーっ。
 幻が火傷してしまわないよう、木製スプーンですくって念入りに冷ましているではないですか。
 そして口元に運ぶのです。
「……はい、あ〜ん」
「あーん♪」
 ぱくっ。
「甘くてあつあつで美味しいの…♪」
 ううん、と身をよじり天にも昇りそうな仕草をする幻です。
「喜んでもらえて良かったですわ♪」
 ぽふ、と寄りかかって来る幻を抱き留め、よいこよいこと髪を撫でまたふーふーしてから食べさせるマリアンヌでした。
「あ。……そういえばマリィママのお願い……」
「皆で仲良く暮らせたら」
 我に返って聞いてくる幻の口元には、餡子が少しついてますね。
「……良いですわねぇ♪」
 マリアンヌ、指先でそっとほっぺの餡子を掬い取ってぺろりと舐めるのです。
 とても甘いようで、笑顔もとってもまろやかです。



━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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aa3896/幻・A・ファビアン/男/10/ワイルドブラッド/命中適性
aa3895/マリアンヌ・マリエール/女性/12/ワイルドブラッド/命中適性

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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幻・A・ファビアン 様

 明けましておめでとうございます。
 甘々な初詣。年の初めにはやっぱり心の温かくなるお話がいいですよねっ。
 出だしの4分の1は完全アドリブです。キャラがちゃっと違うな、と感じた場合はタイトルを見て、「ああ、酒粕から作ってアルコール分の残る甘酒でも飲んで気分がいいのか」と思ってくださいませ。

 この度はご発注、ありがとうございました。
八福パーティノベル -
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2017年01月06日

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