▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『ただ一人の姫君 』
シルヴィア・エインズワースja4157

 指先に口付けながら黒い少女が熱っぽい視線をシルヴィア・エインズワース(ja4157)に送りながら口を開く。

「それにしても羨ましいわ」

「羨ましい?私がですか?」

 意図を汲み兼ねてシルヴィアは首を傾げる。

「……他の方の花嫁にそう言った発言は不謹慎です」

 冷ややかに言い放つ白の少女の視線もまた熱を帯び、体の奥でくすぶっている熱を暴かれている様な気持ちになってくる。

「でも、そう思わない?こんな愛されるに相応しい姫は珍しいわ。赤い花嫁のものじゃなかったら私が愛するのに」

 残念そうにそう言う少女。
 指に触れるか触れないかの距離で動くその唇はいつもより熱い。

「そんな、冗談……」

 笑えない。とシルヴィアは苦笑しようとした。
 しかし、その笑いは黒い少女と視線を合わせた瞬間泡の様に消えてしまう。
 その目は愛しい彼女と同じ愛を与える者の、与えてくれる者の目。

「……確かに貴女のように美しさも可憐さも可愛らしさも、ここまで愛される要素を
持ち合わせた姫はそういないでしょう。だからと言って願望を口に出すのはどうかと思います」

 首筋に這わされた指。
 耳元で動く唇の感覚。
 やけに理性的な言葉。
 白い少女の動きは黒い少女の言葉を裏付けするようにしか感じられない。

「お堅いわね。『叶うことなら私たちも愛したい』そう言って仕舞えばいいのに。顔に書いてあるんだから言っても同じでしょう?」

 愛おしそうに胸元に頬を寄せ音を立て口付ける黒い少女。
 いつもより早い息が肌にくすぐったい。

「私たちでもいいわよね?」

 その口調が初めてこのドレスで愛された六月の夜を思い出す。
 少女とは思えない程の妖艶な笑み。

「……でも……」

「あの人じゃなきゃ嫌?」

 腰に手を回し鎖骨に這わされるのは黒い少女の舌。

「私たちではいけませんか?」

 耳朶を甘噛みされながら聞こえて来るのは冷静な声とその隙間に漏れる昂り熱い息。

「わ……私は……」

 唇を噛み声を抑えながら尋ねればそっと目元を手で覆われる。

「心を犯されるように愛されたあの夜を。奪われるように愛された夜。あの時貴女はあの花嫁に愛される悦びを知ってしまった。そうですね」

 いつもと違った恋人の妖艶な笑み。愛を乞い奪われることを自ら望む己の姿。

「貴女は花嫁に跪きその体の全てで奉仕するのが相応しい。我々では彼女の代わりにもならない。そうですね」

 白い少女の声に導かれるように想像するのは、愛しい花嫁に奉仕し、愛を乞う白い花嫁。その指で、唇で、舌で、視線で、声で与えられる愛に喜ぶその姿。

「愛を授けてくれる花嫁に忠誠を誓って仕えるのが貴女の愛。貴女に相応しい愛の姿。そう思わない?」

 愛される自分にどこか抵抗のあったシルヴィアの心の中でことん。と音を立て
何かが落ちた。
 ナイトであったとずっと聞かされていた先祖の話。
 その末裔である自分の本質が愛される姫であることに後ろめたさのようなものがあったのかもしれない。
 しかし、忠誠を誓い奉仕するのが相応しい愛ならば何も問題はない。

「……思い……ます」

 少女達は詠う。
 世界で一番赤い花嫁に仕えるに相応しいのはシルヴィアだと。
 恍惚の表情で奉仕するシルヴィアの姿がどれだけ美しいのかを。
 その行為にどれだけシルヴィアが悦び昂ぶるのかを。

 頭の中にはっきりと浮かぶ情景に少女達の愛撫もなしに愛しい人の名を甘い声で呟いてしまう。

  ***

 触れたい。口付けて、あの瞳で見つめられたい。もっと、もっと……
 そう思ったところで目の前に光が戻る。目を覆っていた手がなくなったのだ。

「これよりドレスアップの仕上げに移りますがよろしいですか?」

 どうして尋ねるのか?そうシルヴィアの表情が訴えると黒い少女がくすりと笑う。

「これ以上やると後戻り出来ないわ、多分ね。この店の外にも影響が出るかもしれない。それでもいい?」

 やはり尋ねる意味がシルヴィアにはわからない。
 答えなど決まっているのに。

「…………」

「畏まりました」

 そう頭を下げ少女達は準備を始めた。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳/ 欲しいのは花嫁の愛 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛

 度重なるご依頼本当にありがとうございます。

 前回の物語からの続きになります。凛とした姫騎士様が可憐で愛らしい姫になるまであと一歩といったところまで来ました。
 次の物語で全てのドレスアップが完成する予定です。そちらはもう暫くお待ちください。

 お気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 またお会いできる事を心からお待ちしております。
WTシングルノベル この商品を注文する
龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2017年01月11日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.