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『福袋『初心者でも楽しめる正月プランin朱葉宅』 』
朱葉 宗二aa0027hero002)&A・Kaa0008hero002)&ユエリャン・李aa0076hero002

●よくよく咀嚼せよ正月料理
「ニホンの年越しは静かで落ちつかねぇな」
 花火が打ち上げられるわけでもなく、クリスマスほどにきらびやかな飾り付けをされることもない。
 歩道橋の上から街の様子を眺めていると、「金髪も暇しておったのか」と、馴染みのある声がした。振り返れば、そこにユエリャンがいた。
「ユーイ」
「主人はどうした?」
 ユエリャンもA・Kの隣に立ち、道を行き交う人々を眺める。
「おちびさんは朝から遊びに行ったみたいだな。俺は暇だったから、ちょっと散歩。ユーイは買い物か?」
「我輩も散歩だ……」
 大晦日には賑やかな一日を過ごし、日付が変わった瞬間にあけましておめでとうと言われた。ユエリャンの世界に月日を図る基準がなかったわけではない。一年という単位、それは多少違ったとしても理解できる。ただ、彼がこの世界へ顕現したのは、彼の状況が切迫したものであったからだ。月日が流れるにつれて彼のいた世界では状況が悪化し、月日が流れることを嬉しく思うことはなく、ましてや「おめでとう」などと言えるものでもなかった。
「……この世界にはまだ平穏がある」
 ユエリャンの言葉にA・Kも「そうだな……」と頷く。
「この平穏を、守っていかねーといけねーな」
 賑わう街を見つめながら、二人は新たな年に改めて決意を固くした。
「ところで、正月とはなにをするのだろうな」
「ちびからお年玉というやつをもらったが……」
「我輩ももらった。神社の屋台でなにか食べるのも楽しいし、初売りで好きなものを買うのもいいだろうと……」
 時々、福袋と書かれた大きな紙袋を持っている人々が目の前を通る。
「あの中身はいったい何なんだろうな」
「なぞであるな」
 その時、A・Kとユエリャンのスマホが同時に振動した。
 二人はそれぞれスマホを見ると、写真が届いていた。
「……大型犬はなにをしているのだ?」
 ユエリャンのところには、頬にばつ印を書かれたもう一人の英雄。
「……なんだこれ?」
 A・Kのところにはひし形の紙が空に浮いているものだった。
 普段はしない遊びを楽しんでいる様子の小さな相棒に、二人はくすりと笑う。
「ちびが楽しんでいるなら」
「我々も正月のことをもう少し理解しておく必要があるな」
 相棒を愛する二人は、友を頼ることにした。

「……うん。こんなもんかな」
 宗二は相棒に持っていくために重箱にお節を綺麗に入れたところだった。他にも甘酒やお餅用のあんこなどがタッパーに入っている。
 準備も整い、出かけようかという時、チャイムが鳴った。
「誰だろう?」
 三が日に自分のところを訪れる人物に思い当たる節もないまま扉を開けると、そこにはA・Kとユエリャンが立っていた。
「来てやったぞ! 喜ぶがいい!」
 ユエリャンが尊大に言う。
「どうしたの? 二人とも」
 宗二がどうぞと部屋に通す前に、二人は我が家のように家に上がり込んだ。
「ソージに教えて欲しいことがあって」
「優男はこの世界とそっくりな世界から来たのだろう?」
「うん?」
 当然のようにくつろぎはじめる二人に怒ることもなく、宗二は手際よくお茶を淹れる。
「それで、正月について教えてもらおうと思って」
 A・Kがそう言うと、宗二は「正月について?」と聞き返す。
「この世界では新しい一年のはじめは随分と大切なものらしいからな」
「それで、ちびたちと楽しむためには、俺たちはなにをしたらいいのかと思って」
「なるほど」
 宗二が煎茶を出すと、A・Kは湯呑みに触れ、「あっつ!」とすぐに手を引っ込めた。
「まだ熱いから、気をつけて」
「そういえば、手土産を持ってきたぞ」
 ユエリャンの言葉に、A・Kが紙袋を机の上に置いた。
「どうもありがとう」
 宗二は黄色いMの文字が入った紙袋から、紙に包まれた丸いものを取り出した。
「これはなにかな?」
「グラタンでコロッケなバーガーだ」
「バーガー」
 そう言われて、黄色いMの文字のお店を宗二は思い出す。
「はじめて食べるよ」
「そうなのか?」
「高級な香りは微塵もしないが、これはこれで美味であるぞ」
 そう言いながらユエリャンもバーガーを取り出して食べようとすると、宗二がそれを止めた。
「これは俺がいただくから、二人はこっちを食べなよ」
 宗二はそう言って、お節を机の上に広げた。
「お正月を知りたいんでしょ? それをつまみながら待ってて、いま、雑煮も用意するから」
「これは知っているぞ。お節というやつだろう? 大型犬がおチビちゃんたちのためにせっせっと作っておった……それにしても、優男が作ったものは猫成分が少ないな」
 ユエリャンが最初に見たお節は料理番の助手が猫好きだったために猫型の具が盛り込まれていた。
 ユエリャンはこんにゃくを箸でとり、一口食べた。
 ついでに持ち込んだ日本酒もぐびりと呷る。
「うむ。優男のは甘めの味付けだな」
「ユーイのとこは違ったのか?」
 A・Kは数の子を食べ、こちらも日本酒をぐびり。
「うちのはピリ辛だったな」
「ユーイの好みの味にしてくれたんじゃねーの?」
「ピリ辛とはいえど、おチビちゃんでも食べれる辛さだからな、我輩のためというわけでもなかろう」
「お節はみんなで食べるものですからね、それぞれが好きなものが入っていたら嬉しいですよね」
 宗二が二人の前にお椀に入ったお雑煮を置いた。
 A・Kは餅を箸でつまみ、怪訝な顔をする。
「これは知ってるぞ……食ったら死ぬやつだよな?」
「死ぬ……? 我輩、餅は好きであるがな」
「ちゃんと噛まないで飲み込んだら喉に詰まることもあるけど、しっかり噛んだら大丈夫だよ」
 宗二の言葉に、A・Kは目から鱗が落ちたかのような表情となる。
「そうなのか?」
「美味しいと思うから、食べてみて」
 お雑煮の餅を頬張り、A・Kは頬を緩ませた。
「うまいな」

●サイノウ光る正月遊び
 お雑煮を食べ、お節をつまみ、甘酒を飲み(日本酒も飲み)、お正月の食を堪能したユエリャンは畳の上に横になると瞼を閉じる。
「優男のところは居心地がいいな」
 そう言いながら、目を開けてユエリャンはちらりと部屋の隅へ視線を向ける。
「……清潔感には欠けるがな」
 部屋の隅には本や書類の類、乾いた洗濯物が積まれていた。
「せっかくだから、書き初めとお正月の遊びもやってみようか」
 宗二の提案にユエリャンは上体を起こして小首を傾げた。
「書き初め?」
「筆と墨で新年の抱負を書くんです」
「ホーフ?」と、A・Kが聞き返す。
「新年の目標だね」
 筆と硯と墨、それから半紙に下敷きを宗二は用意した。
 まずは宗二がお手本を見せる。
「筆に墨をつけて……」
 綺麗な字で丁寧に書かれた宗二の新年の抱負は……『健康』。
 なにやら地味だが、大切なものである。
「はい。ゆえにゃんしゃ……」
 ユエリャンさんと呼ぶ予定が、盛大に噛んだ。
「すみません」と謝った宗二だが、ユエリャンは別段気にしていない。
 むしろ、猫好きとしては「にゃん」がつくことはおいしくもある。
 筆を渡されたユエリャンは真剣な表情で書く。
「我輩の抱負は……」
『ひびしょうじん』。
「であるな」
 筆のしなやかな強さを生かした大きく勢いのある字だ。
「我輩、漢字はまだ習得しておらぬのでひらがなだが、来年は漢字で書くぞ」
「ひらがなでも、立派ないい字だよ」と宗二は褒める。
「じゃ、次は俺だな」
 A・Kが筆を持ち……『バーガーセイハ!』。
「世界中のバーガーを制覇してやるぜ!」
「いい目標だね!」
 書き初めは乾くまで机の上に置いておくことにして、宗二は黄色いMの文字が入った袋の中から福笑いを取り出した。
「次はこれやってみる? みんなで遊ぶために買ってきてくれたんだよね?」
「露店で売ってたんだよ。それ、飾りじゃねーのか?」
 おたふくの白い顔と、目や口などのパーツが入った袋を、A・Kは面白い飾りだと思った。
「お正月に、子供達が遊ぶものだよ」
 福笑いの遊び方を説明した宗二は、タンスの中から手ぬぐいを取り出し、A・Kに渡す。
「それで目隠しして」
 目隠しをしたA・Kは顔のパーツを手に取り、指でよく触って確認した。
「この形は口だろう……このへんが顎だったと思うから……」
 A・Kは慎重にパーツを置いた。そして、次の顔のパーツを手に取り、またじっくりと考える。
「金髪……長いな」
「いや、だってよ、ちゃんとした顔にしなきゃいけねーだろ?」
「もっと気楽に遊んでいいんだよ。むしろ、成功しないところが面白いんだから」
「そうなのか?」
「金髪が持ってるのは目だから、上のほうだな」
「おっし! じゃ、ここだな!」
 ユエリャンと宗二にヒントをもらいながらA・Kはパーツを置いていく。
「それじゃ、目隠しを外してみて」
 目隠しを外すと、口のあたりに目があり、左目が口になり、鼻が逆さになったおたふくが出来上がっていた。
「ユーイ!」と、不満げな声をあげながらもA・Kは笑っている。
「最初に目を口だと思い込んだのは金髪だぞ」
 ユエリャンも笑った。

「他にもやってみよう。うちにもなにかあったと思うから……」
 宗二はごそごそと押入れの中を探る。
「えーと、ここにあったと思うんだけどな~」
 押入れの奥から箱を取り出して蓋をあけると、目的のものを見つけた。
「あったあった」と、宗二は独楽を取り出した。
「なんだそれは?」
 ユエリャンもA・Kも興味深そうに宗二の手の中を覗き込む。
「これはこうやって遊ぶんだ」と、宗二は独楽に紐を巻いてフローリングの床の上に放った。
 独楽はくるくると回る。
「おお! 面白そうだな!」
 A・Kも挑戦するが、独楽は斜めになりすぐに動きを止めてしまった。
「どれ、我輩がやってみよう!」
 張り切ってユエリャンが放った独楽はあらぬ方向へ飛んで行き、危うく窓ガラスを割りそうになる。
「……二人とも、外で遊ぼう」
 宗二はにこりと優しく微笑んだ。
 近くの公園に出ると、宗二は凧をあげた。風は凧を持ち上げ、宗二は糸で操る。
「ちびがやってたのはこれか!」
 A・Kが感心したように凧を見上げる。
「はいどうぞ」と宗二はユエリャンに凧を渡した。
 空高くまで上げた状態の凧なら、たとえ小さな子供が持っても遊ぶことができる……そう思ってユエリャンに渡したのだが、ユエリャンが持った凧は動きが定まらず、安定さを失い、風に叩き落とされるようにして落ちてきた。
「……」
 宗二はとりあえず笑顔をキープしたまま言った。
「……これも、一種の才能かな?」
「下手な慰めなどいらん」
 ユエリャンは宗二の優しさを一蹴した。
「えっと……一応、他にも持ってきたけど……やる?」
「やるに決まっておる!」
「じゃ」と、宗二は羽子板の板をユエリャンに渡す。
「はい。ゆえしゃんしゃん」
「……」
 渡された謎の板よりもユエリャンは宗二のかみっぷりが気になった。
「……呼びにくいなら、ユエでいいぞ?」
「じゃ、ユエさんって呼ぶね」
「うむ」
「ユエしゃん」
 結局噛んだ宗二にA・Kが笑う。
 羽子板の遊び方を聞いたユエリャンとA・Kは早速挑戦することにした。
「行くぜ! ユーイ!」
「よし来い!!」
 さすがの運動神経でA・Kはキレのいい羽を打つ。そして、運動音痴っぷりを発揮して、全力で板を振って、羽を落とすユエリャン。
「はい。じゃ、羽を落としたほうには墨で……」
 書き初めで使った墨と筆をしっかり持って来ていた宗二が笑顔でユエリャンに詰め寄る。
「ぬ!? なにかの刑か、これは?」
「刑というほどのものじゃないけど、負けるたびに墨で描かれるから……気をつけてね」
「大型犬のあれはこういうことであったか……」
 宗二がA・Kから羽子板を受け取り、羽を構える。
「じゃ、今度は俺が打つよ~!」
「よし来い!」
 宗二の打った優しい羽なら打てるかと思ったユエリャンだったが、結局は先ほどと同じ結果となった。
「打ちやすいところに打ったつもりだったんだけど……」
 ユエリャンの運動音痴にはどうやら救いがないらしいと、宗二も悟りはじめる。
 しかし、負けず嫌いなユエリャンはめげずに連続参戦。
 そして……
「……貴様ら、覚えておれよ……」
 連敗したユエリャンは、ユエリャンの顔に楽しそうに墨をつけるA・Kを睨む。五つほど丸ばつの図形が顔に描かれたところでユエリャンは渋々と板を宗二に渡した。
「行くぜ! ソージ!!」
「いいよー!」
 A・Kと宗二は英雄の能力を存分に発揮し、激しい打ち合いを繰り広げた。
「これで、トドメだ!」
 A・Kの全力スマッシュを宗二は受け止めたものの、あまりの強い打ち合いに耐えられなくなった羽が壊れ、闘いの幕を閉じた。

 宗二の家に戻ると、宗二は絵や数字が描かれた大きな紙とサイコロを用意した。
「これはなんだ?」
「これも正月の遊びなのか?」
 ユエリャンとA・Kは興味深そうに紙を眺める。
「これはすごろく。えーくん、サイコロを振ってみて」
 A・Kがサイコロを振ると、3の目が出た。
「それじゃ、これをスタートから三つ進んだところに置いて」
 そう言って宗二はA・Kに二頭身の小さな人形を渡した。
「なにやら書いてあるな」
 プラスチック製の人形を置いたところには文字が書かれていた。
「餅の食べ過ぎで一回休み……そんな食ってねーけどな」
 喉に詰まるのが怖くて……とは言えない。
 ユエリャンが振ったサイコロの目は5だ。人形をスタートから五つ目のマスに置く。
「またなにか書いてあるぞ……羽子板に惨敗、一回休み」
 A・Kが「預言書みてーだな」と笑い、宗二も思わず吹き出す。
「じゃ、俺の番だね!」
 ユエリャンに睨まれながら宗二はサイコロを振った。
「お年玉ゲット。五マス進め」
 順調にマスを進む宗二とは違い、A・Kとユエリャンの二人は休みばかりに止まり手こずる。
 二人がやっとゴールにたどり着いた頃、夕日が窓から差し込み、部屋を夕焼け色に染める。
「すっかり邪魔してしまったな」
「正月の遊びはくだらないもんばっかだけど……面白かったな」
「これで、二人とも小さな相棒と楽しいお正月を過ごせそうだね!」
「じゃ、俺もそろそろ相棒のところにお節持って行こうかな……」と、宗二が出かける準備を始めようとしたが、二人は再び酒をくみ、お節をつまみ始めた。
「帰るのはもう少し後でいいだろう」
「ゆっくりして行こうぜ」
 A・Kとユエリャンはグラタンでコロッケなバーガーも食べ始める。
「うむ。美味である。今年より、正月はお節とグラタンでコロッケなバーガーを食うものだとすれば良いぞ」
「その決まりいいな!」
「しかし、日本酒には合わんな」
「ビールならいけんじゃねーか?」
「そうだな」
「……」
 賑やかな二人を宗二は微笑んで見つめ、スマートフォンを取り出すとメールを打った。
『お節は明日持って行きます。』



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0027hero002 / 朱葉宗二 / 男性 / 43 / カオティックブレイド】
【aa0008hero002 / A・K / 男性 / 26 / ジャックポット】
【aa0076hero002 / ユエリャン・李 / ? / 28 / シャドウルーカー】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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この度はご依頼いただきまして、ありがとうございます。
宗二とA・Kとユエリャンがお正月を堪能できていたら嬉しいです。しかし、宗二にはお邪魔だったかな……いえ、優しい宗二ですから、きっと腹をくくって楽しんでくれたことでしょう☆
英雄三人で過ごすお正月はこのような賑やかな内容となりましたが、ご期待に添えていましたら幸いです。
今後も三人の活躍を楽しみにしています♪
八福パーティノベル -
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2017年01月19日

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