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『愛馬は見た! 盗賊団が消えた謎! 』
エルバッハ・リオンka2434

 雑木林の中に細く続く道の傍ら、ゆらゆらと赤い炎が揺れる。炎の側では、一匹の馬が安らいだ様子で草をはんでいた。
 ちょろちょろと流れる水の音に混じって、布が擦れる音が聞こえてきた。
「少々陰気臭い森だと思っていましたが、水場があったのは幸いでしたね」
 布擦れ音の主、エルバッハ・リオン(ka2434)は近くを流れる小川を眺めていた。暗い森にしては、キレイな水が流れている。
 もしかしたら魚もいるかもしれない……等と考えながら、荷物の上へと服を重ねる。気ままな一人旅だからこそ、水浴びも気兼ねなくできる。
 不意に空を見上げれば、星空――ため息の一つでも出そうになるのだが……。そんなエルの姿をじっと捉える気配があった。
ピクリと愛馬の耳が動き、尾が振れた。馬が嘶く前に、その背に触れて落ち着かせる。
「本来であれば気兼ねなく、水浴びができるはずなのですが……」
 魔術具のグローブは着けたままだ。呼吸を整えて、星明りに照らされたそれらを見定める。ぬめりを持った皮膚、ぎょろりとした目玉、歪な身体つき……雑魔だと一瞬でわかる。おそらくは、カエルか何かが変化したものだろう。
 そいつらが飛び出してくるより早く、飛び退き、覚醒する。胸元に薔薇の花を模した赤い紋様が浮かび上がる。胸元から両頬、両脚、両腕へと六本の赤い茨が伸びていく。まるで身体に巻き付くようにして伸びた茨が、それぞれの尖端へとたどり着く。
 手のひらから炎弾が飛び出し、目の前で爆発した。雑魔が近づくより早く、連続で爆発を巻き起こす。暗闇の中に赤い光が何度も散っていった。それらが収束すると、一陣の風が吹いて燻っていた煙が消える。
 あとに残っていたのは、消えかかった雑魔の身体だけだった。
「無粋にも程があり……ま……」
 全て倒せたか周囲を見渡して、気づく。傍らにまとめてあった荷物が散り散りになっていた。反射的に攻撃したためか、乱打した魔法が荷物を吹き飛ばしてしまったらしい。
「これは、弱りましたね」
 今の所持品は手にはめている魔道具のグローブのみ。それ以外の装備や衣類は一切合切、散ってしまった。悩ましげに呟くと、馬だけが「ひん」と答えるのだった。


 少なくとも火はあるのだと、思い直して思案すること数分――。
 再び茂みから音が聞こえてきた。歪虚や雑魔とは違った人の足音に、エルの表情には緊張が走る。
「へっへっへ、お頭! こんなところに女がいやすぜ!」
「おう、いいオンナじゃねぇか……しかも、誘ってやがるじゃねぇか」
 下卑た笑い声をあげながら姿を現したのは、複数の盗賊だった。おそらくは、この林を根城にしている盗賊団だろう。手袋のみ装備するエルの姿に、舌なめずりをする。
「へっへっへ、安心しな……抵抗しなければ優しく……」
 頭と思しき男が、ナイフ片手に告げるがエルは動じる様子がない。怯えた反応を期待していた盗賊たちは、互いに目配せしていた。
 盗賊団に向けて、エルは一つため息をつく。
 その表情は、とても安らいでいた。
「これで服を調達できます。幸いなことに、このまま消してしまっても心が痛まない連中のようですし」
 エルの言葉の意味がわからない盗賊団たちだったが、次の瞬間、再びエルの身体に薔薇の紋様が浮かび上がる。見惚れる時間すら与えず、エルは魔法を放つ。派手な爆炎が林の中に再び舞う。
 野太い叫び声が、林の中に響き、夜鳥が飛び立つ。これなら、あのカエル雑魔に会っていた方が幸せだったかもしれないとエルの愛馬は思っていた……かもしれない。

 翌日――。
「お嬢ちゃん……えらい不格好だなぁ」
「事情がありまして、よろしければ服屋をご紹介していただけると助かるのですが」
 次の街へ入っていくエルの姿があった。体格にあきらかに合っていない男物を着込み、愛馬に乗っている。訝しげに見ながらも、街の人は地図で服屋を示す。
「あぁ、ここだけど……お嬢ちゃん、どっちから来たん?」
「あっちの林からですが」
「もしかして、盗賊団に襲われた口かい。あそこには質の悪い……」
「いえ」と否定を示したエルは、「私の起こした不慮の事故ですから、でも盗賊団がいるんですね」
 しれっと言ってのけ、エルは愛馬を進ませる。
 数日後、自警団は林中へ盗賊狩りにでかけたが何故か一人も姿を現さなかったという……。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【エルバッハ・リオン(ka2434) / 女 / 12歳 / エルフ / 
魔術師(マギステル)】

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藤木はむ クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年02月07日

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