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『番外編 新年真心を込めて 』
御門 鈴音aa0175)&輝夜aa0175hero001


プロローグ
 キッチンからかぐわしいにおいが漂ってくる。
「おお。昨日とは違い甘い香り、お汁粉じゃな。餅はよい、楽しみ方は無限大じゃ」
 その香りを楽しみながら手持無沙汰にみかんを弄ぶ『輝夜(aa0175hero001)』
「おひるごはんは、おせちと、お汁粉よ」
『御門 鈴音(aa0175)』はそうキッチンから告げると、皿を運ぶように輝夜に言いつけた。
 ちなみに銀色の妹君はこの時間帯は寝ている。
「にしても、よい文化じゃなぁ、正月」
 そうキッチンまで出向き皿の上の料理を見て告げた。
「おせちは縁起がいいから、いくら食べても平気なの」
 そう告げる鈴音、だが彼女はおせちの真の意味を知らない。
 輝夜はそれを知っていた。
 おせちとはいわゆる保存食。
 正月に料理をしなくていいように作り置きしておこうというのが、事の発端。
 だがそんなものは関係ない。
 鈴音は最近料理がうまくなった。だからここ三日間同じラインナップであろうとも全然気にしない。
「ずっと正月であればよいのじゃが」
 そうとろけそうなくらいに脱力している輝夜を見て、鈴音は少し笑った。
「なまけんぼうなんだから……あ、そうだわすれてた」
 そう鈴音はポンと手を叩くとおせちの皿をテーブルに置いて、足早に私室の奥へ潜って行ってしまった。
 何やら漁る音が聞こえ、その後小さな袋を握りしめ戻ってくる。
 そして、その手のカラフルな袋を輝夜に差し出した
「なんじゃこれは?」
 袋をさっそくあける輝夜。その中には鈴音がもっているのをよく見る紙幣が何枚か入っていた。
「お?」
 首をかしげる輝夜。
「お年玉よ。子供は毎年もらえるの」
「……ふ、ふん! 子ども扱いするではない」
 少しすねた素振りの輝夜はコタツに潜り込むとさっそくおせちに手を付ける。
 だが本当は怒っておらず、その視線は冷静にテレビ台に注がれていた。
 しばらく前からその台の上にテレビはない。
 それは妹とのけんかで壊してしまったからなのだが。
「どうしたの? 輝夜」
 その問いかけで我に帰る輝夜は鈴音の顔を見ると、うまいとだけつぶやいた。
 
 本編

 初売り、大売出し。それは日本国民のロマン。福袋とはどうしてあそこまで人を引き付けるのだろうか。
 それは引きこもり系女子鈴音も例外ではない。
 去年依頼でためたお金、それをちょっと大目に使って、大奮発でこの年始のお楽しみを満喫するつもりだった。
 そのお供に連れてこられた輝夜はたまったものではない。
 と思いきや。
 鈴音がいない、目の前にはそびえたつような人の壁。
「鈴音よ、いい年して迷子になるとは、目も当てられん」
 そうやれやれとため息をつくと申し訳程度に鈴音を探す。やはりいない。さてどうしよう。
 そう腕を組む輝夜である。
「探すのはあとでよいじゃろうな」
 そう告げるとカグヤはデパートの全体図を確認するためエスカレーター付近へ。
 三階に家電売り場の文字を見つけると、エスカレーターに乗って三階へ。
「この、えすかれぇたぁと言う乗り物にも、慣れた、完璧にこの世界に順応したと言っても良いじゃろう」
 輝夜は最初、この乗り物に乗った時、あまりの不自然さに足が震え半分屈んでいたのだが、それがいけなかった。
 なんとそのあとエスカレーターに髪が巻き込まれ。
 そして……あの時のことは思い出したくもなかった。
「そう言うわけで、上の階に上ることは避けておったが、いよいよ来たか……」
 そう輝夜が仁王立ちして眺めるのは、年始大特価の文字。
 そしてここからは未知の領域。
 輝夜は唾を飲み下し、電子の世界へと足を踏み入れた。
 ちかちかと光る照明や、所狭しと置かれた、硬くてつるつるしているよくわからないもの達、それを素通りするとそこには、テレビが森に生えた木のごとく慣れべられており。輝夜は思わず目を回した。
「あら、お嬢ちゃん、何を買いに来たのかしら」
 そんな輝夜へしゃがみこんで話しかけてくれるお姉さん。
 胸元にはこのお店のロゴが入った名札が。
 店員さんだということはさすがの輝夜にもわかった。
「じつは、テレビをさがしておってのう」
 輝夜は精一杯説明した。大きさはこれくらいと腕を使ってみせたり。
 普段はどんな番組を見ているのか話したり。
 できれば画面が飛び出す奴がいいと言ってみたり。
「鈴音はアニメばかりみておるでのう。こうその手の物が多く映るものがよいのじゃ」
 鈴音がいればおそらく涙したことだろう。
 最初輝夜はテレビを、中に小人か妖怪が入っている者だと思っていたが、今ではちゃんとテレビを理解している。
 成長である、輝夜は一年でこんなにも成長した。
「ちなみに予算はいくらくらいでしょうか」
 そう告げた店員に輝夜はぽち袋を差し出す。
「なるほど、ではこの値段帯であればこれなんていかがですか?」
 そう店員が指示したのは輝夜が両手で抱えられるような小型のテレビ。
 前に家にあったものからすると半分以下である。
「うむ、もう少し大きくならないのかえ」
「私どもも地域最安値でやっておりますので、このご予算だと、これ以上は難しいですね」
「うむぅ」
 輝夜は悩んだ。しかしテレビは無いと困る。
 引きこもり系女子鈴音のことだ、テレビが無くては引きこもれなくて、外に出る羽目になり、しかし直射日光の厳しさゆえに干からびて。
 たすけてぇ、輝夜ぁ、とそこらへんでのたれ死んでしまうだろう。
 そこまで考えて少し輝夜は面白くなってしまったが、気を取り直して店員に向き直る。
「これしか買えないのであれば仕方あるまい」
 そう告げてテレビを包むように告げたその時である。
「あら? 輝夜ちゃんじゃないですか」
 その聞き覚えのある声に振り返るとそこには見慣れた少女がいた。
『五条 文菜(NPC)』である。
「おお、文菜ではないか。どうしたのじゃ、こんなところで」
「いえ、ボイスレコーダーを買いに来たんですけど、先輩は?」
「あ奴は人波にもまれてどこかに消えてしもうた。迷子というやつじゃ」
「あら、先輩にも困ったものですね、いつまでも子供で」
「そうなんじゃ、全く鈴音はわらわがいなければ本当にだめなやつでのう」
 そんな楽しげに鈴音の話をする輝夜が可愛くて、文菜はふわふわの頭を撫でる。
「おお?」
「ちなみに輝夜ちゃんは、何を買いに来たんですか?」
「テレビじゃ、鈴音のテレビを壊してしまってのう」
「であれば、私に言ってくれれば、良い家電を見繕ったのに」
「うむ?」
 その時である、店員さんが配達表を持って歩み寄ってきた。
「こちらに住所を」
「いや、持って帰るからよい」
「ああ。保護者のかたがいらっしゃったんですね」
 店員は告げる、その時である、文菜の両目が光った。
「輝夜ちゃん、予算はいくらくらいですか?」
「うむ……」
 そう文菜にぽち袋を手渡す輝夜。それを見て文菜は目を見開いた。
「なるほど、であれば向かいの家電量販店の方がいい物が買えます」
 びくりと店員の肩が震える。
「しかし、地域最安値と……」
「それは嘘ですよ」
 そう告げると文菜は手帳を開いて輝夜に矢継ぎ早に知識を流し込んでいく。
「この地域一帯の家電屋さんの情報と、料金傾向は調べてあります。そしてこのお店が地域最安値だったことはない、今日たまたまそうだったとしても、さっき向かいの家電屋さんに言ってきた私は、ざっと……」
 輝夜には、その言葉の八割も理解することはできなかっただろう。
 口をはさむ間もなくまくしたてる家電量販店談義。
 それを店員さんと十分くらい聞きつつわかったのは、このテレビよりもっといいテレビが買えそうなこと。
「向かいの電気屋さんに行きましょう、私クーポン持ってますからそこそこいいものが買えるはずです」
 意気消沈して去っていく店員さんの背中を見つめながら輝夜は告げた。
「しかしのう、鈴音がおらぬうちにこの建物から姿を消してはのう……」
 その言葉を聞いて文菜は電話を取り出した。ディスプレイにはおっぱいの文字。
「あ、先輩。輝夜ちゃん見つけましたよ、一緒にいます、そして先輩、テレビ買わないでくださいね」
 そう告げて電話を切ると文菜は遠くを指さした。
「ほら、あれ」
 見れば鈴音がそこにいて、同じ女性店員に話しかけられていた。

   *   *

「なんだ、テレビなら私が買ったのに」
 そう、買い物袋を大量にさげバスに乗る鈴音と輝夜、それに便乗した文菜も一緒である。
「ありがとう、文菜ちゃん、おかげで大変なことにならずに済んだわ、テレビも買えたし」
 ちなみテレビを担いでいるのは輝夜である。さすが英雄。
「いえ、いいんです、でもたまたま出会えて幸運でした」
 ちなみに文菜の家が鈴音の家と近いことが判明し文菜は鈴音の家に御呼ばれすることになったのだが。
 もう一つ目論見があった。
 文菜が鈴音の家に着くなりやらされたのは配線まわり、テレビの設定、録画機の設定、全てをやらせるためである。
 ただ、文菜はこういうのが好きみたいで意気揚々とやっていたが。
「おお、お主、なかなかやるのう」
 輝夜が文菜をばしばし叩いて褒めていると、鈴音がお茶と一緒にカステラを運んでいた。
「うぬ! 最近すっかり存在を忘れておった」
 輝夜はそれに飛びついた。
 しかも、これはいつも食べているものよりすこしいいカステラ。
「新年の計は元旦にあり〜」
 そんなことを言いつつ輝夜はカステラを頬張るとご満悦である。
 それを眺めながら文菜は鈴音に問いかけた。
「先輩、お年玉なんて、大人ですね」
「ううん、そう言うわけじゃないけど、ほら、この世界に慣れるために買い物をさせてみるのもいいかと思って」
 鈴音はそうお盆で口を隠して答える。
「この世界は輝夜のいた世界みたいに物を奪い取っていい世界じゃないってことを教えようと思ったんだけど」
 鈴音は輝夜を見つめて微笑んだ。
「でも、もう伝わっていたみたいね」
 うららかな午後が過ぎ去る、今年もまた波乱の多い、けれどいい一年になりそうだと、鈴音は思った。

 幕間の物語

 ちなみに鈴音が家電屋さんにいたのは偶然ではなくわけがある。
 あれは鈴音が輝夜とはぐれ、迷子センターに呼びかけをしてもらおうとそこを目指していた時のこと。
「まったくもう、輝夜ってば、すぐにどこか行っちゃうんだから。でも呼び出したりしたらおこるかもなぁ」 
 そんな鈴音の動きが止まる、膝に何か当たって前につんのめった。
「わっ」
 すんでのところでバランスを取り直す鈴音。前かがみになった視界には先ほど目に映らなかった、二足歩行の猫が映っている。
(英雄かな)
 おそらく先ほどぶつかったのもこのネコなんだろう。
 猫は恭しくお辞儀をすると。
「失礼、マドモアゼル」
 そうつげて去って行った。
「ああ、そうです。探されている方なら三階にいらっしゃいますよ」
 その言葉に言葉を返そうとした鈴音は目を疑う、その猫はすでに目の前から消えていたから。 

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『五条 文菜(NPC)』
『御門 鈴音(aa0175)』
『輝夜(aa0175hero001)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。
 鳴海でございます。
 OMCご注文ありがとうございました。
 今回は新年ノベルということで、日常を意識して書いてみました。
 ここから三人の日常が垣間見えるといいかなと思って書いております。
 そして新展開の伏線ですね、わくわくですね。
 それでは、今回短いですがこの辺で。
 鳴海でした、ありがとうございました。
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2017年02月13日

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