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『聖なる夜の後日談 』
志々 紅夏aa4282


「付き合って貰うわよ、選択肢ははい・是・YES」
 そう言ってビシリと指を突き付けてきた志々 紅夏(aa4282)に、李永平(az0057)はなんとも言えない微妙過ぎる顔をした。「『はい・是・YES』って、それ全部同じですやん……」と謎の言語のツッコミが頭を過ぎったというのもあるし、
「付き合うって……何処に。っていうかなんで俺が」
「選択肢ははい・是・YES。ごちゃごちゃ言わずにとにかく私に付き合いなさい」
 呟かれた反論をビシリと一刀両断し、紅夏は永平の腕を掴んでそのままズルズル引きずり始めた。自分より遥かに小柄な女の腕など振りほどくのは簡単だが、そんな事をしたら何を言われるか分からない。っていうか永平を見た瞬間、妙にギラリと光った目がなんだかちょっと怖かった……などとは、例え口が裂けたって言うワケにはいかないが。

 こうして、東京支部から謎の強制連行を受けた永平は、そのまま「苺&チョコフェア」という可愛い看板の掲げられた、可愛いとしか言い様のないカフェテリアへと連れて来られた。手書きの看板は苺とハートでこれでもかとデコられており、入口前のベンチには何故かうさぎのぬいぐるみ。白いレンガの壁にマホガニーの扉は女の子が開けて潜るのにこれ以上なく相応しく、とりあえずヤンキー崩れの男が好んで入る店ではない。
「……おい、なんだこれ」
「だからごちゃごちゃ言わないの。いいから一緒に入るわよ」 
 またもや呟かれた反論をビシリと一刀両断し、紅夏は永平の腕を掴んだまま店の中へと入っていった。店員に案内されるまま窓際の席に着席し、永平に口を挟ませないまま「ショコラ苺パフェとレアチーズ苺パフェ一つずつ」と注文する。
「……おい、お前」
「《ごちゃごちゃ言わないで付き合ってって言ってるでしょ。あれを見られたからには、あんたの恥ずかしい姿もばっちり見てやるんだからね》」
 紅夏の口から発せられたたどたどしい中国語に、永平は驚いたように赤い瞳を瞬かせた。一瞬薄れた眉間の皺をしかしすぐに元に戻し、紅夏よりずっと流暢な中国語で話し掛ける。
「《お前、中国語なんて喋れたのか?》」
「《喋れる、って程でもないけどね。大学で英語と独語は履修してるけど、中国語は取ってないし》」
「《だったら、なんで》」
「《独学で勉強してるのよ。古劉幇の中国語資料、読もうと思って。相手を知るには言葉はその一歩でしょ》」
 と言っても、まだまだだけど、紅夏は日本語でそう零した。きちんと喋れているか実は不安で、意味が通じてなさそうなら日本語で訂正しようと思っていたが、とりあえず永平にはちゃんと通じているようだ。永平は一瞬納得したような顔をして、それから呆れたように息を吐く。
「随分とまあ、頑張っているんだな」
「まあね。どっかの誰かさんもそうしてるし。だったら私も頑張らないと」
 紅夏の言葉に再度目を瞬かせ、永平は脱力したように椅子に身を沈ませた。しばらくして「お待たせしました」と二つのパフェが届いたので、永平が何か言う前に紅夏がてきぱき指示を出す。
「ショコラ苺パフェはこっち、レアチーズ苺パフェはそっちの方にお願いします」
「え、おいお前」
「ごゆっくりどうぞ」
 かくして紅夏と永平の前に可愛いパフェがででんと置かれた。眉間にこれでもかと皺を寄せ、口をへの字に折り曲げてレアチーズ苺パフェを見る永平。紅夏はその顔を視界に収めて屈託なく声を上げる。
「しっかし、パフェが似合わないわね。きゅーと」
「お前が勝手に頼んだんだろ」
「言ったでしょ。今日はあんたの恥ずかしい姿をばっちり見てやるんだからね。慈悲で撮影と通報はしないでおいてあげるわよ」
 言いながら紅夏はさっそくパフェを一口食べた。永平は口をへの字にしたままパフェを睨み下ろしていた。不満そうな顔ではあるが、怒って帰る、というつもりはないらしい。
「ところで、それちょっと寄越しなさいよ」
「食いたきゃ食えよ。俺は別にこんなモン……」
「そんなにいっぱい食べられるワケないじゃない。せっかくここまで来たんだから、ちゃんと食べて少しは力つけなさい」
 私のもあげるから、と紅夏は通りすがった店員に小皿を二つ注文した。永平はテーブルに視線を落とし、聞こえるか聞こえないかの小さな声でぼそりと呟く。
「戻れるのかな、俺は」
「あんたは努力してるんでしょ。なら成し得る」
 さらっと、紅夏は言い切った。永平をちらっと一度だけ見て、すぐさまパフェに視線を戻す。永平はしばし紅夏のつむじ辺りを眺めていたが、「そうか」と微かに声を落とした。
「ところで、なんでここなんだ。正直居心地悪いんだが……」
「だから連れて来たんじゃない。パフェの似合わない男がパフェを食べる姿を見て大笑いがしたかったのよ」
「……お前なあ」
「写真とかは撮らないであげるから、ちゃんと食べなさいよ。ほらほら」
 常にない気安さで紅夏は永平に接していた。亡き養母以外の前では素直になれない、そんな紅夏が割と気を許しているのは、弱い部分を見られた為と、現状永平を自分に似た奴と認識しているからだった。紅夏に押される永平は、このままでは埒が明かないと観念してスプーンを取った。そこに小皿を持った店員が現れる。
「お待たせしました」
「あ、ありがとうございます」
「本日はデートですか? 楽しんでいって下さいね」
 少女マンガのテンプレートが突如として打ち放たれた。年頃の男女が向かい合い、仲良くパフェを食べていればそういう認識にもなるだろう。その事を全く理解していなかった二人はテンプレートを同時に聞き、全く同時に声を上げた。
「「違う!」」


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【志々 紅夏(aa4282)/ 女 / 20 / 能力者】
【李永平(az0057)/ 男 / 19 / 能力者】 

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。
 ツンデレ二人がパフェをつつき合う、そんな微笑ましい(?)日常を精一杯表現させて頂きました。
 口調その他イメージと違う点などありましたら、お手数ですがリテイクお願い致します。
 この度はご指名頂き誠にありがとうございました。
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2017年02月14日

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