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『鬼噺 』
翡翠 龍斗ja7594)&浪風 悠人ja3452)&RehniNamja5283


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 此の世はまるで蜘蛛の糸。

 獲物は喰われ、牙嗤う。
 赫に染まった浮世の澱み、結んだ四糸が祓います。

 からから絡んで今宵も闇へ――さあさあ、蜘蛛蛇鬼は御用心。





「それで今日は、何処の誰を殺ってほしいと仰るんだい?」

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 晴らせぬ恨みは江の門戸まで――。

**

 通りゃんせ。
 通りゃんせ。

 此処は“色鬼”の大路。
 本日も本日とてお日柄よく、“悪”代官は往来する。

 行きにぽいぽい。
 帰りにぽいぽい。

 仏蘭西を代表する着色鮮やかな洋菓子――マカロンをばら撒く。庶民へばら撒く。節分の如くめっちゃばら撒く。其れはまるで“色豆”だ。

 彼は庶民に命じた。
 マカロンを拝み、食せ――。
 其れ即ち、ダイナマ 伊藤(jz0126)を崇め奉ることに繋がるのだ。と。

 取り敢えずこの悪代官。人は悪くないのだ。只、人が変なだけなのだ。だからこそ、庶民達は親しみを込めて彼を悪代官と呼ぶ。時代がそう呼ばせるのだから仕様がない。

 しかし、ある日。
 彼は一線を越えてしまった。

 町の和菓子を一括独占するという暴挙に出たのだ。
 来る日も来る日もばら撒かれるマカロンの甘さに、庶民の舌が飽きるのも当たり前で。最終的には素朴で馴染みの深い和に手が伸びてしまう此の事実。天敵(和菓子)許すまじ――ということで、ダイナマ悪代官の横暴が始まったのであった。

 目には目であれば。
 歯には歯であれば。
 江戸の色鬼には“裏人”が相応しいだろう。





 現を得るが為に化ける鬼、“唏鬼”と噂される彼等が――。




 一人は、金色(こんじき)の不知火龍。

 艶のある花萌葱な長髪を項の辺りで結い、一に流しているのは、仰いだ晴天の色を瞳に映す彼――翡翠 龍斗(ja7594)

 長屋に身を置く、腕のいい飾り職人である。
 露芝模様が施された花紺青色の着物を纏い、その様と同じく、落ち着きのある若人。そして独り身の女性は残念。この方、妻帯者です。

 仕上がった簪を懐紙に包んで、龍斗は町へ。

 ダイナマの子供じみた行い=和菓子の独り占めが始まって、数日。町には只、味気ない表情だけが残されていた。今では、攫われた甘味の香すらも恋しい――といった庶民の項垂れようである。

「和菓子一つ――どころではないが、こうも町の雰囲気が変わるとはな……」

 勢いのない人の波を目線で流しながら、龍斗の足は町角を曲がった。
 向かった先は――、

「頼まれていた品だ。注文通り、提灯型の玉簪で仕上げたぞ」

 依頼主の女性が住まう長屋の一室。
 女性は礼を伝えながら簪を受け取ると、薄紅に染まった焦点を龍斗に当てながら、ほう、と、温んだ吐息を零した。簪を見ろ、簪を。

「? では、な。今後とも御贔屓に」

 年頃の淡い恋心など露知らずの恋愛天然男児、龍斗。加え、愛妻一筋の彼は女性から簪の代金を頂戴すると、関心は直ぐさま仕事から唯一人の女性へと移り、彼は社交辞令を一つ置いて、颯爽と踵を返したのだった。





「さて……奥さんへの土産は何にするか。何時もなら団子や餅菓子を選ぶのだがな……さて、どうしたものか。餅と言えば……“彼”はどうしているのだろうな。まあ、大量に備蓄してはいただろうから禁断症状の心配はない……か?」

 顎に思案を添えていると、



 てぃ……ん



 ――三味線の弦の音が龍斗の意識を弾いた。





 一人は、青白磁の玉の緒“母”狐。

 短く揃えた髪は清潔感があり、癖のない銀白色。知的な眼鏡から覗くのは、墨擦りの底を汲んだかのような瞳の色の持ち主――浪風 悠人(ja3452)

 若人ながらに組紐屋を営む彼の技術は目を見張るものがあると評判で、刀剣の飾りに、女性の帯締めにと、仕事の依頼が引っ切り無しなようだ。本日も彼専用スキル“不憫”を薬味に仕事にかかる。因みにこの方も妻帯者ということで、眼鏡男子を好む女性はお気の毒様です。

 扱い慣れた指先に豊かな色彩と美しい絹の艶を添えて、丸台を使い組み上げる。

「次に控えている武士の飾りには遠州柄かな……青と紺――いや、黒と白で洗練な印象を……」

 独白ぽつり。
 紐しゅるり。

 するする、
 するり、

 しゅる、
 しゅるり。

 ――ふぅ、と、一息緊張解いて、

「お、ありがとう」

 嫁の煎れてくれた茶で一服。

「――ああ、そうだ。呉服問屋の女将さんに髪飾りも頼まれてたんだったわ。造形も色もお任せって……悩むんだよなー」

 思考を巡らしている間も、悠人の指は自然に紐と戯れる。懐から取り出した紐は“厭と言うほど”指先に馴染んで、弧や流線を描くように空間を泳いでいた。

 そして、ふと。

 浮かしていた悠人の視線が何気ない瞬きの流れで桐箪笥へと移り、留まる。
 桐箪笥の天辺に藪犬の夫婦の置物が飾られていたのだが、悠人の意思を“代弁”したのかそうでないのか――二匹がぴったり、紐でぐるぐる巻きになっていた。

「……このままでもいいかねぇ?」

 仲睦まじく映る(悠人には)置物を仰ぎながら、悠人は眼鏡のブリッジを二本指で上げた。そして、一息終えた悠人の意識が再び仕事へと向かう時、



 べべん、べん――



 耳に親しんだその奏は、夜の帳への誘い。





 一人は、薄桜の射干玉鬼。

「――ムコ殿。藤宮家の現当主がお勤めにも向かわず、また桜餅ですか? いけませんよ。甘味を召し上がる時は緑茶も用意しなければ。煎れてきましょうか?」
「いえ、結構です。貴重な桜餅をお茶で濁したくはないので。というか、俺は誰の婿になったんですか? 婚姻した憶えはありませんよ、蒐さん」
「あらあら、そうよねぇ。私ったらどうしたのかしら? ふふふ」

 代々、江戸町奉行所の同心を勤めてきた家柄――藤宮家。現当主である藤宮 流架(jz0111)は、八丁堀の役宅の縁側で呑気に寝転がり、好物の桜餅に舌鼓を打っていた。そんな彼を穏やかな眼差しで見守るのは、流架の母――蒐である。

 月は東に日は西に。

 蒐の気性同じく、ゆったりと時が過ぎる中――床面からどすどすと不快を含めた振動が伝わってきた。流架の妹、桜香だ。

「ちょっと兄さん。いくら非番だからって、怠惰すぎるんじゃないの?」
「は?」
「町に出れば“揃い”の不満が溢れてるじゃない。解決の糸口くらい見つけてきてよ。兄さんが買い置きしておいた桜餅も、そろそろ底をつくんじゃないの? それに……もうかなり硬いでしょ、餅の部分」
「…………炙ればまだいける」
「その根性を少しでも仕事に注げないわけ?」
「注いでも応えてくれないしねぇ。魅力もないし」
「……昼行灯な兄を持って、妹は恥ずかしいわ。不憫。最悪」
「うるさい」
「あらあら、二人とも喧嘩しないの」

 相変わらず母の声音は穏やかで。
 二人の兄妹は平素通りの“慣れた”吐息を揃って零した。

 西の空。
 夕暮れ――。町の灯がぼんやりと浮かび始める。その灯りに微かに乗るのは――旋律。



「――兄さん? え、なに、何処か行くの?」
「んー。ちょっとそこまで」
「流架さん、夕餉の準備はしておきましょうか?」
「吉原行くので結構です」
「最低」



 東の空。
 三日月――。沈む町声に草履を奏で、塵で募り積もった路は彼の影を攫った。




 ――町外れにあるその神社の名は、鬼首。
 何十年も前に廃れた域ではあるが、今も尚、拝殿には鬼の像が安置されている。

 その鬼の眼下に一人、月白の陽炎“仔”狐。

 華やかな柄を染め上げた紺の縦縞生地に、朧に揺れる辻が花と水面に流れる桜がたおやかな乙女らしさを魅せる彼女――Rehni Nam(ja5283)。手ぇ出すんじゃねぇぞ野郎共。いい女にはいい男がついてるもんだ。

 Rehniは雪解け色の長い髪をさらりと肩へ流し、黒檀な目線を手許に落とす。

 てぃ、ん……てぃん――べべん。

 双蝶が飛ぶ黒い撥で弦を弾くと、彼女の三味線は美しく啼いた。

「――皆さん、集まりましたね」

 微かな月明かりに寄せ来る闇。その黒波から音もなく姿を現したのは、三人の“仕事人”。
 飾り職人の秀斗、組紐屋の竜人、そして――定町廻り同心の藤宮もん、――、……んん? はい、仕切り直し。――龍斗、悠人、流架が、Rehわ……二代目にして“元締め”のRehniの視野へ、裏の面を集わせた。

「仕事の依頼です。既にご存知かとは思いますが……町人を苦しめている悪行、悪代官について――もぐもぐ」

 もちもちの咀嚼音。
 漂う桜葉漬けの香り。
 Rehniの手には――桜餅。何故。三人の目の前で、流架の好物が次から次へと元締めの口に吸い込まれていく。流架へのお茶目な当てつけだろうか。――何故!?

 やがて、最後の一個が「あーん」……ぱくり。
 流架の眼差しがぎりぎり恨めしくなかったのは、Rehniの食べていた桜餅の中身が粒餡であることを気配で感じていたからであった。どんだけ。

 漉し餡派である流架が対抗して、懐から桜餅を取り出す。
 もぐもぐ。
 ……硬い。

「……愚かな。藤宮主水」
「誰」
「あなた、自分の好物の適切な保存方法すらも知らないのですか? それでよくのうのうと桜餅を食べていられますね。桜餅が泣きますよ!」

 酷い言われようだ。

「仕方がないのです。代々引き継がれてきたNam家の秘伝(保存方法)、教えて差し上げてもいいのですよ?」
「……お前ら。眼鏡からビーム出してやろうか? 後にしろ、後に」
「お義母様の激おこスティックファイナリアリティぷんぷんドリームが見れるのです? 正座待機なのです」
「しなくていーよ!」
「と言いますか、お義母様も主夫を目指すなら、Nam家の秘伝……聞いておいて損はないと思うのですよ」
「目指してねーし!? ……で、参考までにどんな秘伝?」
「……そこまでにしておけ。話が進まん」

 龍斗の仰るとおり。

 ――ということで。
 三人の男と一人の女。“表”に一時、睫毛を伏せる。

 襟元引き締め、晴らせぬ恨みは金貰い、袂に沈めて晴らしましょうぞ。





「標的は悪代官――ダイナマ 伊藤なのです」




 柳に風。
 夜に――口笛。

 宵の空気が旋を舞い、微睡み払いて澱みを呑むならば――咲かせましょう悪の華。





 朧な月夜に影が飛ぶ。
 見るからに、“此処オレの屋敷です何時でもバッチ来いかもーん”、なダイナマの屋敷が四人を待ち受けていた。流石、悪代官。時代劇の流れをよく理解して(ry

 さて。
 腕が――ではなく、指の鳴る時間だ。
 初手は、見張りの始末から。暗がりに潜む音無き跡が、一人の用心棒の背――首を捉える。

「寝てろ」

 蛇の如く闇を這うのは、悠人が放った組紐。
 用心棒が意識の違和感に衝き上げられた時には、抵抗の所作も既に遅し。首に食い込む組紐に為す術なく、腕はがくりと力を落とす。膝の折れた身体には、まだ鼓動が残っていた。その音の行方は悠人の手に委ねられるが、悠人はしゅるり――組紐を解くと、用心棒の身体を地面に伏せる。

 ――殺生はしない。それが彼等の掟だ。

 悠人は侵入の歩を進める。
 ひと呼吸の瞬――眼精疲労、眼病、目の乾燥対策に保湿機能を搭載した保護眼鏡から覗く悠人の瞳がキラリと光った。長い屋敷廊下に呑まれた暗の中で、気配が動く。警戒させる間も与えない。悠人の組紐が唸る。しかしその時、

「あ」

 もいすちゃーな眼鏡がずるり。
 視野と手許が狂った結果、敵をがっちがちのぐるぐるに縛り上げてしまった。ご丁寧に猿轡まで。それは最早、組紐の意思なのか。それとも、偶然という都合のいい言葉に罪をなすりつけた悠人の趣味――、

「んなワケねぇだろッ!!!」

 ツッコミお疲れ様です。
 だが、彼のその“手練れ”さに「俺も!」「拙者も!」「我輩も!」と、アレな嗜好の用心棒達がわらわらと悠人に(ry ――冗談です。

 しかし、敵が駆けつけたのは冗談ではない。

「天誅、天誅、天誅ぅ!!!」

 組紐が見せた悪夢を振り払うかのように、悠人の得物が空間を舞う。その奏でに乗って――ゴキッ。意志の強い腕力が敵の意識を落とした。龍斗だ。敵の一人が彼の涼やかな視線に捕まる。

「お前の悪夢となってやろう」

 龍斗の指先が敵の額を、とん、と、ひと突き。そして、彼は口許を艶然と微笑ませた。重なる面は――修羅。相手の“秘孔”に気を送るこの技は人体の内部に様々な影響を与えなんちゃらほんちゃら、「ひで――」(ry

 コメディぱぁんっ! した敵を余所に、龍斗は此方へ斬りかかってきた刀身を流水の如き流れで避けた。そして、二撃、三撃と、冷徹に推移を見通し、反攻。敵の秘孔を突く。

 ――が、

 両手わきわきごっつぁんです。

 正にそんな感じだ。突如、敵の瞳が爛々と熱を帯び、対象(龍斗)ろっくおん。おいどんの愛を受け取れ龍斗はーーーんっ!!! ということで、

 しょうりゅう○んっしょうりゅう○んっはどう○えぇぇぇんっっっ!!!!!

 ――拳で黙らせました。
 どうやらオカマになる秘孔を突いてしまったようだ。人体のツボって凄いね。ぶっちゃけ、龍斗が被害に遭ったところも見てみたかっ(ry

 そんなこんなで。





 趣味やらオカマやらで一時騒然となった屋敷であったが、“大将戦”はお約束。
 行燈の灯が柔らかく伝わる座敷で、名ばかりの密会が堂々と行われていた。一人は勿論、悪代官であるダイナマ。そして、彼の悪行に一枚噛んでいた越前屋の若女将――御子神 凛月(jz0373)の姿があった。

「越前屋、お前さんも悪よのう……ってお前、どんだけたい焼き食ってんだよ。他のモンも食えっつってんだろーが」
「うるさいわね。私はたい焼きが食べられればそれで充分なのよ。図体だけは大きいんだから貴方が消費すればいいでしょ」
「町中の菓子なんか平らげたら糖の尿の病になるわッ!」
「だったら何時までも意地張ってないで町人達に返せばいいじゃない」
「腐りかけてる菓子を返せるワケねぇだろ!」
「Σむぐっ、ちょっ、私に傷んでるたい焼き食べさせたわけ!? この無礼者!」
「今更グルメぶってんじゃねーよ。所詮お前の舌はそんなもんだろーが」

 ……。
 …………。
 ………………最近の悪党達はこんなにも騒がしいのだろうか。

 Rehniと流架は、そんな一幕が行われている座敷の天井裏に潜入していた。
 天井板の隙間から、二人は黙と、名状しがたい眼差しでダイナマと凛月を見下ろす。その沈黙に触れたのは、Aカップの胸元に三味線を寄せるRehniだ。

「……私の胸の情報、今、必要あったのです?」

 いえべつにただなんとなく? みたいな、アーーーッ!!!(撥で“天の声”の悲鳴が奏でられました)

「コホン……。その、藤宮主水」
「あのさ、先程から誰かと間違えていないかい?」
「まあ、そこは色々な事情があるので。ともかくです。ええと。それで、藤宮主水。――頭、だいじょーぶです?」

 捉え方を間違えると戦が起こる一言だと思う。良い子は気をつけよう。

「あー……先程、君が敵に投擲した撥が俺の頭に直撃した件だね」
「直撃と言いますか、刺さっていましたよね。抜く時、ぴゅーっと水芸の如く血が噴き出していましたし。ぷぷぷ」
「……笑える立場だと思ってんのか? あ?」
「全くご無事で何よりなのです」

 しれっとRehni、なんのその。
 相変わらずの元締めに、流架は慣れた呆れで息をつく。そして、翡翠な双眸を漏れる光の筋に戻した瞬間――彼の瞼が俄に膨らんだ。

 ――、

「藤宮主水? どうかし、」



 ――ドゴォンッ!!!=天井裏をぶち破った音。



 Σましたかーーー!?

 破壊音と共に座敷へ突き抜けていった流架。Rehniは「あうあうあう……」と、顔面蒼白の視線で彼の成行きを追った。彼女の視界いっぱいに広がるのは、ばっきばきにされた天井板の破片。そして、ダイナマが独占していた和菓子が所狭しと畳に散乱していた。

 しかし、それよりも無残なのは、

「桜餅……! 俺の桜餅……!」

 数年ぶりに再会した恋人を見つめるような情で桜餅を手に取る流架――の、下。
 辛うじて原形をとどめている天井板の下敷き(又の名をサンドイッチ、もう又の名をプレス)になっていたのは、哀れなり悪代官。恐らく、畳には彼の顔の型が取れていることだろう。

「穏やかな時と火がついた時の落差が激しすぎるのですよ……藤宮主水。……目の前で桜餅もちもちしていたの、根に持たれていたら厄介ですね。依頼を完遂したのち、桜餅の食べ放題をさせてあげますか。店は一件、その日の閉店までということで。私ってば優しいのです。……その前に、依頼を……もう二度と悪さをしないようお仕置きしないとなのです。でも、あの悪代官……もしかして打ち所悪くてぽっくり――」

 ぶわぁぼぉんっっっ!!!(訳:天井板の下からこんばんは)

「ワレなにしてくれんじゃコラァッ!!!」

 黒い虫と同じくらい生命力の強いダイナマ、復活。
 吹き飛んだ流架は空中で、そっ、と、桜餅を懐へしまうと、着地と同時に一の太刀の構えをした。見据える両者。

「現世の地獄で這いつくばれ」

 冷然な口上が流架の唇から零れた。
 その瞬間――、

「……レ、たわ」
「あ?」

 じりじり。
 ダイナマの足袋が、流架の方へ不自然ににじり寄っていた。そして――、

 びよーーーん!!!



「これからもずっと尻に敷いて(物理的に)つかーさーーーーいっ!!!」



 ……。
 …………。
 ………………浮世漂う幾つもの“世界”。どうやっても、この運命からは逃れられないのかもしれない。





「……残念だが峰打ちだ死んで寝てろ」
「藤宮主水……本音がだだ漏れなのですよ」

 何時の間にか開け放たれた障子から一陣の風が二人の間を分け入り、舞った枯れ葉が物言わぬ“彼”の背中を優しく撫でたのであった。










「Σ……はっ」
「逃げられると思ったか、越前屋」
「風呂敷にどんだけたい焼き詰め込んでんだよ……。まあ、悪足掻きせずに観念して下さいね。女性に手荒なことはしたくないですし」
「ふん、小松菜と大根がよく吠えるじゃない。いい度胸だわ」
「「……」」

 かちーん。

 ぴっ。
 しゅるしゅる。

「Σきゃあぁっ!?」





 ――何はともあれ。

 町の心模様に晴天が戻ってきた。
 人々は、彼岸で啼く“唏鬼”のおかげだと口を揃えて言う。けれど、その四人の鬼達の素顔を知る者は誰もいない。只、地獄を彷徨う悪党だけが彼等の悪夢を見る――それだけだ。















 さあ、月は東に日は西に。
 是に由りて仕置き帖――、一件落着。


━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ja7594 / 翡翠 龍斗 / 男 / 20 / 飾り職人の龍斗】
【ja3452 / 浪風 悠人 / 男 / 21 / 組紐屋の悠人】
【ja5283 / Rehni Nam / 女 / 19 / 三味線のRehわ】
【jz0111 / 藤宮 流架 / 男 / 26 / ムコ殿】
【jz0126 / ダイナマ 伊藤 / 男 / 30 / マカロン悪代官】
【jz0373 / 御子神 凛月 / 女 / 19 / たい焼き越前屋】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
愁水です。
此度は、ちゃららーちゃっちゃっちゃ(ry ――時代劇風なご依頼ありがとうございました。

冒頭のシリアスと後半のコメディの差が激しすぎて大変申し訳ありません……。そして色々とスミマセン(平服
時代劇という世界観を崩すことなく、ご発注されたイメージ通りに執筆出来ていたらよいのですが。

天の声も楽しく書かせて頂きました(
貴重なご縁をありがとうございました!
八福パーティノベル -
愁水 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2017年02月14日

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