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『Happy Birthday 』
ミィナ・アレグトーリアka0317)&クレール・ディンセルフka0586)&カフカ・ブラックウェルka0794)&ミィリアka2689)&セアリナ・アレグトーリアka2845)&柏木 千春ka3061)&エミリオ・ブラックウェルka3840)&七夜・真夕ka3977)&央崎 遥華ka5644)&大伴 鈴太郎ka6016

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               ――あの日、恋する少女たちは夢を見た――

                     華やかなステージ
                   キラキラ輝く眩しい世界
               可愛い8人のアイドル達の魅力に乙女達は憧れた


               そしてドキドキしながらずっと待っているのだ
                       “またね”
                 彼女達がくれた言葉を、勇気を、胸に
                  恋しょこと再会できるその日を

                      ずっと

   
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●みんなでパーティーの準備
 場所は自由都市同盟にある北欧風のカフェ。白塗りの壁が美しく、明るい木のハリが天井を渡る店内の奥にあるドアをひらくと――様々な種類のハーブを植えている中庭へと繋がる。
 その中庭では今、少女達と少年達がなにかの準備をしている様子が窺えるだろう。

「よ、よしっ! こんなもンだろっ。……たぶん。たぶん!」
 大伴 鈴太郎が自信満々に――いや、段々ちょっと心配になってきていた。その為、これでいいよなぁ? と、周りに問い掛ける。
 小さなテーブルを動かして、11人で囲む大きなテーブルをつくった鈴太郎。するとその出来を見た彼女の親友――央崎 遥華がうんうんと頷いた。
「完璧! ばっちりよ!」
「そ、そうか?」
 遥華の花丸サムズアップを見て、鈴太郎のほっとした。
 遥華はにこっと微笑む。
 そして皆にも振り返って言った。
「さてさて……ロゼさんが来るまでに、準備を終わらせなくっちゃね♪」
「そうですね!! 急いで準備しないとっ」
 クレールも、ぐっと拳を握りながら笑顔を咲かせて。
 早速、銀食器をテーブルに並べていく。
 その頃。
 パーティーの飾り付けを担当していたミィリアと千春は、作業を終えたところだった。
「飾り付け、できました」
 可愛くて綺麗な飾りになるように……。
 一生懸命頑張った飾りつけ。
 思わず皆が感嘆を漏らす中、クレールも感激しながら興奮を伝えた。
「すごいよちーちゃん、みーちゃん! すっごく可愛いよぉ!!」
「えへへ」
 皆に褒められて、照れ笑いする二人。
 千春は微笑みながら控えめにVサインし、ミィリアもどやぁな笑顔でVサインをした。
 更にその頃。
 真夕は自分の担当のお手伝いが終え、他のお手伝いを探していたところだった。
「他にやることはない?」
 彼女が厨房を覗く。
 するとそこには別の手伝いの担当を任されていたカフカ・ブラックウェルとエミリオ・ブラックウェルが居た。
「ん? 真夕ちゃんも自分の分は終わったところか?」
 エミリオが首を傾げた。
 どうやら彼らも、真夕と同じく自分の分担のものをやり終えて此処を尋ねたらしい。
「僕らは、ミィナの料理が完成するみたいだから、テーブルに運ぶのを手伝おうと思ってるんだけど……一緒に運ぶ?」
「そうなの? じゃあそうしようかしら」
 カフカの提案に、真夕が頷いた。
「三人ともありがとうなのん! もうちょっと待ってくれたら、できるんよ〜」
 ミィナ・アレグトーリアは、空豆のポタージュを焦がさないようにゆっくりと混ぜていた。そして鼻歌を歌いながら、今日が誕生日な“おねえちゃん”に想いを馳せる。
 彼女にとって年に一度の特別な日だから・・・
 みんなで一緒にお祝いしたい。
 この誕生日パーティーは、そんな彼女の想いを切っ掛けに、口頭で、伝達で、手紙で、“大切なあの人”に縁のある人に届いて――生まれた。
 だからミィナは料理に、ありったけの想いを込める。
 ――そんな娘を見ていて、セアリナ・アレグトーリアは穏やかな眼差しで目を細めていた。
(ミィナちゃんったら本当、楽しそうね)
 それは愛しさと安堵の気持ち。
 そしてミィナの友達である皆が楽しい1日となれるように、心の中で密かに願っていた。

「わーっ、美味しそう!」
「すげぇ……! ミィナって料理上手なんだなっ」
 遥華と鈴太郎がテーブルに並べられた料理を見て、目を輝かせていた。
 空豆のポタージュの他にも、旬の魚のマリネ<トマトのカップ入り>、アボカドとゆで海老のタラモサラダ、トマトとモッツァレラチーズのサラダ、お塩で食べるローストビーフ、桃のレアチーズタルト。
 お土産の薔薇砂糖を使った琥珀糖。
 どれもミィナが心を込めた手作りの料理だ。
「プロデューサーさん。きっと、喜んでくれるでしょうね」
 千春が双眸を細めて微笑みを浮かべると、ミィナは少しだけ頬を染めながら笑顔を返した。
「……やと、ええんやけどねぇ」
「絶対喜んでくれるよ!! だって! すっごく! 美味しそうだもん!!」
 ミィリアが自信を持って言うと、クレールも頷いた。
「うんうん! みーちゃんの言う通り! おいしそうだし、何よりミィナさんが作ってくれた料理ですし! ロザリーナさんきっと喜んでくれる筈ですよっ」
 そんなふうに仲良く話している彼女達を見つめて、微笑む真夕。
「あっ! そろそろロゼが来る時間じゃない?」
 そしてカフカも、彼女が来る時間が気になり始める。
「本当だ。そろそろ来てもいい時間だね……。案内の為に、僕は店の前で待っていようかな」
「紳士だな。カフカちゃんは」
「……エミリオ」
 カフカはエミリオに軽く肘鉄砲をした。
「冗談だって。しっかりエスコートしてあげてくれ」
 カフカはじと、と微かに目を伏せながら、『言われなくても……』と視線で返していた。

 それから暫くして・・・
 ロザリーナは此処に到着した。

 ドキドキが止まらない薔薇嬢。
 そして扉をあけた瞬間。
 暖かな祝福が、彼女を優しく包む。



●クレール・ディンセルフのプレゼント
「ロゼさん! お誕生日、おめでとうございますっ!!」
 元気いっぱいに祝福するクレールの蒼い瞳が、きらきらと輝いた。
 ――今日は、ロザリーナの誕生日だと聞いて。
 それは是非お祝いしないと! と、ずっと張り切っていたクレール。
 だからこそ。
 今日の為に想いを全力で込めて……。
 鍛冶師の彼女が創ってきたものは、丹精込めて創った銀食器だった。

「えぇ!? クレールちゃんが全部……!?」
 テーブルに並んでいる――みんな合わせて11人分。
 そんなにたくさん作るなんて・・・きっと大変だった筈。
 ……と、ロザリーナが思わず驚いていた。
 すると、
「これくらい当然ですっ」
 クレールは目を細めて微笑みながら言った。
「なんたって私の人生に、こんなに素敵な仲間をくれたロゼさんの誕生日会ですから!」
 鍛冶師であり、恋しょこのメンバーとして。
 素敵な仲間と美味しい料理を食べる為に。
 感謝を、想いの全てを、作品に込めた。
 自分と、皆の想いを、クレールは継ぎ繋いだのだ。

 恋しょこは、バレンタインの為に集まったアイドルグループ。
 その後解散してしまったけれど、その絆は何よりも強く、ずっと心に優しく残り続けている――。
 クレールにとって、宝物のような思い出だった。

 そして、千春と、ミィリア。
 二人と目が合うと、微笑みを浮かべあった。
 彼女達とは恋しょこ結成以前からの大切な友人で――アイドルとなって、また新たな絆が生まれた――その名も、約束のリムニルド。

 口にするのはやっぱり照れるけれど、千春とミィリアから勇気をもらって……。
 クレールは微かに照れつつ、けれどまっすぐ目を見つめて、ロザリーナに紡ぐ。

「本当にありがとうございます。私達を、恋しょこと出会わせてくれて」
「クレールちゃん……」

 すると、ロザリーナの頬は赤く染まった。
 嬉しいのだ。
 嬉しくて、怖いくらい。

「こちらこそありがとう……。貴女達に出会えて、本当に幸せよ?」

 真心を沢山込めて作ってくれた彼女が、とても愛おしい。
 そして、クレールに小声でぽつりと零す。
「もしもクレールちゃんが恋をしたら……その時は、応援させてね?」
「えぇっ!?」
 突然の告白にクレールは思わず大声を出して、真っ赤になった。
 ――いつか恋がしてみたい。
 確かに、そう思ってはいたけれど。
「か、からかわないでくださいぃっ!!」
「うふふv」
 恥ずかしくて、顔を覆い隠しているクレールを見つめながら、ロザリーナの頬が緩んでいた。



●央崎 遥華のプレゼント
「ロゼさーん! お誕生日おめでとうございますっ♪」
 遥華は、ふわもこなトイプードルのぬいぐるみをロザリーナにプレゼントした。
「きゃーっかわいいっっ! 私、犬が大好きなの!」
 ロザリーナは、可愛いふわもこトイプーに頬擦りをする。なんでも家でもゴンという大きい犬を飼っているのだというロザリーナ。
 けれど、小さい子も大好きっ♪ ――と、とても気に入ったようである。
 そんな反応を見て、良かったと安堵する遥華。
 そして、予定していた段取り通り、
「それじゃあバースデーソングを……」
 誕生日の歌を歌おうとした時だった。
「ちょっと待った!」
「!」
 待ったを掛けたのは、鈴太郎。
 そしてその間にロザリーナがどこからともなく取り出したのは――綺麗な薔薇色のイヤリングだ。
「ハッピーバースデー! 遥華ちゃんっ」
「ええっ!?」
 突然の事に驚きを隠せない遥華。
 今日は自分も誕生日である事を、一切何も言っていなかったのに。
 すると、
「親友の誕生日を忘れる訳ないだろ?」
「私は遥華ちゃんのプロデューサーで、遥華ちゃんは私の大切なアイドルなんだもの! ばっちり覚えているわ」
 鈴太郎とロザリーナの言葉を聴いて、遥華は目を丸くする。
 そして、
「ありがとう」
 ちょっと照れくさいような。
 けれど、にこっと笑った。

 恋しょこは――超満員のライブで緊張しっぱなしの時間を一緒に乗り越えた、ひとりひとりが大切な大切な仲間達――。
 皆からの祝福を受けながら、遥華は幸せを感じる。
 恋しょこのメンバーとは、これからももっともっと、仲良くしていきたい。
 恋しょこは最高の思い出で、遥華にとって、かけがえのない特別な存在なのだから。

「ロゼさん、最高の思い出をくれてありがとう」
 遥華はぽつりと零した。
 すると、ロザリーナも、心の中に秘めていた想いを吐露する。
「私こそ、ありがとう♪ 私にとっても恋しょこは、何よりの思い出なのよ」
 遥華はロザリーナを、仲の良い友人であり、年の近い姉の様に慕っていた。
 そして恋しょこ9人目のメンバーだと――。
 一方のロザリーナにとっても遥華は仲の良い友人で。
 弟がいるお姉さん仲間だけれど、とても甘えて欲しくなる妹の様な存在だった。
「これからも仲良くしましょうね♪」
「うん!」
 二人は仲良く、握手をした。
 きっと思い出はこれからも沢山増えていくだろう。
 けれど恋しょこの思い出はいつまでも色褪せず、輝きを失わない思い出で在り続けていく。



●大伴 鈴太郎のプレゼント
「ロゼP、誕生日おめでとー!!」
 大伴 鈴太郎はロザリーナへ祝福した。
 しかし段々頬が熱くなってきて――
 恥ずかしくて視線を逸らした後、ロザリーナを改めて見つめなおした。
「……えっと、ロゼPに恋しょこ誘って貰えて憧れのアイドルやれたしさ。お、お陰で仲間もダチも出来たし……その……すっげー感謝してンだ。ありがとう!!」
 そして照れくさそうに、微笑みを浮かべた。
 想いを伝えるのは、鈴太郎にとって、とても勇気が居ることだった。
 けれど、この機にちゃんと伝えたい――。
 大きな恩義と、まだ照れはあるけれど内心では姉に向ける様な親しみを抱いている事を。
 そうして「ん!」と渡したプレゼントは、クマのぬいぐるみだ。
「これ……オレからの誕生日プレゼント、なっ」
「まあ! かわいいー!! ありがとう♪ 大事にするっ!」
 ロザリーナはクマのぬいぐるみをぎゅーっと抱きしめる。
「それから……」
 鈴太郎は更に同じクマのぬいぐるみを、遥華にも……。
「えっ。私にもプレゼント?」
 遥華が首を傾げながら訊ねると、鈴太郎はこくこくと頷いた。
「ん。遥華の誕生日プレゼントだ……。本当はさっき、歌の前に待った掛けて止めた時に渡したかったんだけど……」
「だけど?」
「…………待った! っていうのに、力みすぎて、うっかり渡しそびれちまった」
「「……」」
 鈴太郎の告白に、遥華とロザリーナは心の中でシンクロした。
((――かわいい!))
 男勝りなように見えて、実はすごくかわいい。
 そんな鈴太郎のギャップを遥華とロザリーナは知っている。
 すると鈴太郎は、気付いた時には遥華とロザリーナの間に挟まれていて・・・
「私、鈴ちゃんみたいな妹が居たら絶対毎日可愛がっちゃうわ……」
「親友がかわいすぎてつらい」
「!?」
 いつのまにかとても愛でられている鈴太郎。
「なんでだ!?」
 鈴太郎が混乱して問いかけた質問の答えはただひとつ。
 可愛いは正義だからである。
 ちなみに、遥華とロザリーナにプレゼントしたクマのぬいぐるみ――恥ずかしくて口には出せなかったようだが――実は鈴太郎の中では自身が所持する「くまごろー」と3兄弟だという設定。
 ゆえに、今。
 クマのぬいぐるみを抱きかかえた二人に挟まれているおかげで、仲良く3兄弟が並んでいる事に、鈴太郎は気付いた。
 ――それがなんだか、嬉しくて。
 ちょっぴり笑顔を浮かべていたのだった。



●七夜・真夕のプレゼント
 今日は、ロザリーナの誕生日だと聴いて。
 そして、大好きな恋しょこのみんなとのパーティーだと聴いて。
 真夕は街中を探し回っている内に、ふと見つけた。
 彼女に贈るプレゼントを――。

「誕生日おめでとう! ロゼ♪」
「ありがとう真夕ちゃんっ!」
 仲良しな二人は、きゃっきゃっと戯れあった。
「私もプレゼントを持ってきたわ! ロゼは薔薇が好きでしょう? だから、これを見た時、絶対気に入ってくれると思ったの」
 真夕は明るく、そして満面の笑顔で贈る。
 それはロザリーナの趣味にぴったり合った金色の黄薔薇をモチーフに真珠をあしらったアクセサリーだった。 
 けれどただロザリーナが好きそうなデザインだったから――という理由だけで選んだ訳ではなく。
 贈り物に、
 誕生石と希望を意味する花言葉に重ねて――
 とあるメッセージ<贈る言葉>を秘めていたのだ。
「やっぱり恋しょことしては、ね♪ あの言葉をロゼにも贈りたいわ♪」
「?」
 ロザリーナは首を傾げる。
 どうやらそのメッセージは浮かんできていない様子の彼女に・・・
 真夕は笑顔で伝えた。
「素敵な恋に会えますよう、ってね♪」
「え、えぇ!?」
 すると、ロザリーナの顔は真っ赤になった。
「ま、真夕ちゃん……」
 自分の恋愛については弱く、初心(うぶ)であるロザリーナの様子を見て、真夕はふふっと微笑んだ。
「……好きな人がいることって本当に幸せなのよ? 世界が今迄と変わってみえるもの」
 真夕は恋人を想い、愛しげに語る。
 ――その様子を見つめ、ロザリーナも、照れながら考え事をした。
 幸せそうな真夕と、真夕の恋人を見た時。
 本当に幸せそうだなぁと感じていた。
 だから彼女が言っていたように……。
 心から思うのだ。
 恋はきっと、世界を彩るものなのだろうと。

 仕事が楽しくて。
 友達と遊ぶことが大好きで。
 傍にいてくれる人、
 支えてくれる人、
 出会えたみんなが、大好き。
 その気持ちしか、今は分からないけれど。
「私にも、・・・恋をする日がくるのかしら」
 ロザリーナはアクセサリーを身に着けながら首を傾げる。
 それは心なしか、どきどきしているようにも見えて。
「ええ、くると思う。いつか、きっとね?」
 真夕が微笑むと、ロザリーナも微笑んだ。
 そして恋しょことして。
 友達として。
 ロザリーナに素敵な恋が見つかるようにと願うのだった。



●エミリオ・ブラックウェルのプレゼント
 金糸雀色の美しい長髪と紫水晶色の双眸を持つ美少女――が、普段のエミリオの姿であるが、今日の彼はカフカと揃いのスーツを着こなす美少年だった。
「ハッピーバースデー、ロゼちゃん♪」
 エミリオはハイバリトンヴォイスで、祝福を囁く。
「エミリオくん……!」
 ゆえにミーハーなロザリーナはときめきを覚えずにはいられず、目を輝かせながらキュンキュンしている。
 美少女な姿も美少年な姿も、とても魅力的で。
 惚れ惚れとしているのだ。
「普段のエミリオくんも麗しいけれど、スーツ姿なエミリオくんも素敵だわっ!」
 そんな彼女に、エミリオは思わず微笑みが漏れた。
 首を傾げて、尋ねるように。
「ふふ。じゃあ早速だけど、私の用意した贈り物を見てくれるかな?」
「! もちろん!!」
 エミリオが軌道修正すると、頷くロザリーナ。
 そしてそわそわしながら待っていると……。
「私からはこれだ」
 彼が贈るのは、桃薔薇の刺繍を施した白リネンのヴェール。
「まぁ・・・!」
 その繊細で美しいデザインに、ロザリーナはひとめぼれする。
 早速身につけてみると、なんだか特別な気分が味わえた。
 そしてエミリオは、今度は遥華へと振り向いて。
「それから、遥華ちゃんにもプレゼントを。ハッピーバースデー」
「!! ありがとうっ」
 エミリオが遥華に贈ったのは、黒革のゴシック風ブックカバー。
 受け取った遥華も、嬉しそうに微笑みを浮かべていた。
 遥華とロザリーナがきゃっきゃと喜びをわかちあう。
 そしてふと。
 エミリオはロザリーナに、ささやかなお願いを紡ぐ。
「そうそう、ロゼちゃん。カフカちゃんの事、宜しくね」
 ロザリーナはにこにこしながら頷く。
「勿論! 大船に乗った気持ちでまかせてっ」
 なんだか自信満々である。
 その後、振り返り、カフカを見つめて。
「私のことも宜しくねっ。ずっと仲良くしてほしいのっ」
 ――と、笑顔を零した。
「ん。こちらこそだよ」
 カフカは眉尻を下げながら微笑みを浮かべる。
 一方エミリオは心の中で想いを秘めていた。
(どんな形でもいい。2人が幸せになって欲しい……)
 ――と。
 穏やかに。そして微笑ましい気持ちになりながら、次にプレゼントを渡す番である従兄弟を、温かい眼差しで見守っていた。

 そうしてカフカは深呼吸をし、ロザリーナを見つめる。



●カフカ・ブラックウェルのプレゼント
「お誕生日おめでとう、ロゼ」
 カフカは、翡翠色の双眸を細めて微笑みを浮かべた。
 その眼差しは穏やかで優しく、ゆえになんとなく。ミィナも気付いている程の……。ロザリーナへの淡い憧れが滲んでいる。
(――どんな形でも良い。2人が幸せになって欲しい)
 カフカの従兄弟であるエミリオも、密かにそう願いながら、見守っていた中で。
 カフカはロザリーナへと、用意していたアクセサリーを贈った。
「僕の贈り物は、これ。手作りなんだ」
 贈るのは、薔薇が3つ連なる木彫りのバレッタ。
 其々の薔薇の中心には紅水晶が煌いている。
「まぁ! ありがとう!! かわいい……♪」
 カフカからプレゼントを受け取ったロザリーナは心から喜び、にこにこと笑った。
 きっと気持ちを込めて作ってくれた――そんな彼からの祝福が、とても嬉しい。
「早速身に着けてもいいかしら?」
「あぁ、もちろん」
 ロザリーナは許可を貰うと、わくわくしながらバレッタを、甘い蜂蜜色のブロンドに飾った。
「ん。よく似合ってる」
「本当?」
 カフカに褒められて、わぁい、と笑顔が緩むロザリーナ。
 その様子を見て、カフカは眉尻を下げながら微笑んでいた。
(ロゼへの想いは日増しに募る……けど良き友人が今のロゼが僕に望む姿なら……僕は)
 彼女が薔薇の花なら、優しく照らす月光のように。
 空を飛び続ける鳥なら、羽を休める大樹のように。
 そんな存在になりたいと、彼は思う。
 彼女の背負う事情――彼女の生き方を――心の何処かで察しながら、彼は横笛を手に取った。
「それからもうひとつ。音楽をプレゼントしたいと思うよ。君の好きな曲のリスエクトに応えたいな」
 ロザリーナは目を丸くした。
 そして次の瞬間、笑顔でリクエストをする。
「なら、恋しょこの曲を聴かせてくれるかしら?」
「了解」
 以前、メロマーヌの魔女・ドローレに襲われていた時も奏でたことがある恋しょこのメロディ。
 カフカがこうして改めて、愛する恋しょこの曲を演奏してくれると、ロザリーナはきゃっきゃと嬉しがった。
 ライブでのバンド演奏とはまた雰囲気が異なる癒しの音色に、ロザリーナは聴き惚れる。
 音が沁みて心に響き、心地が良い。
「カフカくんのフルートの音色、好きよ。優しくて、温かいもの」
「そうかな? 気に入ってくれているなら、僕も嬉しいけれどね?」
 カフカは首を捻りつつ微笑んだ。
 ――喜んでくれているなら、良かった。
 安堵するように、心の中で呟いていたのだった。



●ミィリアのプレゼント
 買い出し中にパーティーの企画を聴いて、ミィリアはプレゼント探しに東征奔走した。
 贈り物は何がいいだろうと――
 ミィリアが一生懸命探しながら最終的に選んだ贈りものは・・・
 愛らしいデザインの、ホワイトな板チョコに薔薇やリボンを飾ったブローチだった。

「お誕生日おめでとうっ! ロゼ! ミィリアからのプレゼントでござる!」
「きゃーっ可愛いっ!!」
 ロザリーナは思わず胸きゅんしていた。
 実は彼女、乙女的な甘可愛いアイテムが大好きなのである。
 趣味にぴったりだったのだ。
 ロザリーナは早速身に着けながら、心満たされたのか、えへへ、と笑みが漏れていた。
 するとミィリアも、笑顔を零して。
「お返しと言えばホワイトチョコ! 恋しょことしてお世話になった感謝の気持ちを籠めたくて、選んだでござるよっ」
 瞳をきらきらさせて、天真爛漫に。
 そしてにこっと笑顔を咲かせて、心から祝福した。
 言葉を受けて、
「ふふ。嬉しいわ! 感謝するのは、私の方なのに・・・」
 ロザリーナがそう言うと、ミィリアは双眸を細めた。
 今、ここにいて。
 皆といて。
 ――思い出すのは、あの日のライブ。
 キラキラしたステージで、ミィリアはみんなと心をひとつにした。
 仲間の恋する気持ち。恋したい気持ち。
 ファンの皆からの気持ち。
 そしてファンの皆へ贈った応援が、たくさん届く瞬間。
 今振り返っても、
 ドキドキがとまらない。
 全部、全部、ミィリアにとってかけがえのないキラキラした思い出。
「ミィリア、恋しょこをやれて本当によかった。こうして皆と仲良くなって、生まれて来た大切な日までお祝いできて……ほんとに嬉しい! ロゼさんのこれからの一年でも、よろしくしてくれたら嬉しいなっ」
「・・!」
 ロザリーナは目を見張っていた。
 ミィリアのまっすぐな言葉が嬉しくて、きゅんっとしているのだ。
 そして思う。
 沢山の女の子たちに、勇気を贈ってくれた。
 そんなミィリアだからこそ、
 眩しく、
 強く、
 可愛いのだ。
 彼女の輝き――そして彼女達の輝きこそが、ロザリーナの憧れ。
 愛おしく、かけがえなく思う煌きだった。
「もう……! なんて可愛いのっ。ミィリアちゃん! こちらこそ……これからも宜しくしてね? 仲良くしてちょうだいっ♪」
「任せるでござるよー!」
 眩しく笑うミィリアに、密かな憧憬を抱く。



●柏木 千春のプレゼント
 あの日。
 彼女にスカウトされなければ、恋しょこと出会えなかった。

 ……きらきらした思い出の宝物を胸に。
 アイドルの世界へと誘ってくれた恩人に、心を籠めて――。

 千春は丁寧に包装した箱をロザリーナに手渡した。
「お誕生日おめでとうございます。プロデューサーさん」
「ありがとう千春ちゃん! 嬉しいわ♪」
「ふふ。良かったら開けてみてください」
 ロザリーナはどきどきしながら綺麗に包装を解いた。
 箱の中に入っていたもの。
 それは、白いオルゴールだった。
「……!」
 ロザリーナは思わず息を飲む。
 装飾にはプリティピンクの薔薇が施されていて、奏でるのは恋しょこのバラード曲――チョコレートローズの恋。
 美しく、どこか切なく。
 けれどいつだって思い出に寄り添ってくれるように、優しく。
 愛しいメロディが流れ出す。
「これって……」
「手作りでは、ないですけど。でも……私の想いは沢山、込めました。これからの一年が、素敵なものになりますように」
 職人さんに頼んで作って貰った、世界に一つだけの特注品。
 沢山のおめでとうを、籠めたくて。
 千春はオルゴールに恋しょこの想い出をぎゅっと詰め込んだのだ。
 
 すると、
「プロデューサーさん……?」
 千春はロザリーナの反応を見て、驚くだろう。
 ロザリーナの眸は潤み、光が揺れていたのだ。
「泣かないって決めたのにね……。なんだか、……ダメみたい」
 指で軽く、目元を拭う。
 ――ロザリーナにとって、恋しょこはかけがえのない存在だった。
 本当はずっと……。
 解散なんてしなければいいのにと思っていた。
 夢も、憧れも。
 全てが詰まっていた恋しょこ。
 奇跡のような日と、最高の思い出をくれた。
 ロザリーナにとって、恋しょこは大切なアイドル達。
 そして同時に、
 最愛でもあるアイドル達・・・
「ありがとう。私の思い出を、形にしてくれたのね?」
 ロザリーナは千春の眸を見据えながら、微笑みを浮かべた。
「ずっと大事にするわ。プレゼントも。千春ちゃん達の想いも。それから……恋しょこの思い出も、ね」
 千春は笑顔を返した。
 喜んでくれている。
 そう安堵する気持ちと共に、
 アイドルとして愛されていた想いを受け止めながら・・・

 そして思い出は思い出として大事にしながら、ロザリーナは千春達に告げた。
「ずっと、心に在り続ける。私達の……恋しょこの絆はきっと、これからも続きます」
 優しい笑顔が、眩しく輝く。



●ミィナ・アレグトーリアへの想い
 ロザリーナは沢山の気持ちと、沢山のプレゼントに包まれて――。
「皆……今日は本当にありがとう」
 幸せそうな笑顔で、頬がゆるむ。
 そして改めて、『おめでとう』と祝福を貰い、頬を赤くしていた。
「それから……ミィナちゃん、ありがとう」
「えっ? うち?」
「ん♪ このパーティー……ミィナちゃんが皆に声を掛けてくれたのでしょう?」
「う、うん、そうやけど・・・」
「本当に時間があっという間で、楽しくて。幸せな誕生日だったわ♪ ありがとね……」
 ロザリーナはミィナを抱き寄せて、仲良しな姉妹のように優しくぎゅっとした。
「えへへ……喜んでくれたなら、よかったんよ〜」
 すると、
「そうよね。街でミィナに声を掛けて貰えなかったら、こうして皆で集まれたんだもの。企画してくれた事に感謝しなくちゃ」
「えぇ!?」
 真夕の言葉にミィナは目を丸くする。
「そうですね! ミィナさん! ありがとうございますっ!!」
「ちょ、ちょっとっっ」
 クレールが満開の笑顔で言うと、益々ミィナが慌てていた。
「ミィナ、誘ってくれてありがとう。感謝してる」
 カフカが、お礼を言った。
 そして、
「ありがとでござる!」
「ありがとうございます」
 ミィリアと千春が同時に言って、
「ありがとう。とても素敵なパーティーだった」
 エミリオも微笑みながら言って、
「ありがとう、ミィナちゃん♪」
「ありがとなっ!」
 遥華と鈴太郎が言って――、
「そ、そんなに言われたら照れるんよ……!」
 ミィナは真っ赤になって目を回していた。
 そして、
「うぅ……」
 と、恥ずかしそうに零してから、
「こちらこそ……みんな、ありがとうなんよ」
 ――もじもじしながら、ぽつりと紡いだ。

 そんな娘の様子を。
 セアリナは母親として嬉しくて、
 幸せな気持ちで見守っていた。

 そして、
『もう友達なんて作らん!』
 ――そう言っていた時期が娘にあった事を、ふと思い出す。
 泣きながら訴えていた娘を見て。
 心配していた時期を。
『いつかミィナを泣かせない友達だってできるわ』
 あの時、
 どんな言葉も、
 ミィナの胸の奥に残る苦しみを、癒してあげることはできなかった。

(そんな事もあったけれど……。もう心配しなくても大丈夫みたいね)

 セアリナは微笑む。
 ――そういえば、ミィナが友達を連れてくるなんて10年ぶりくらいじゃないかしら?
(ハンターになった時はどうなるかと思ったけれど、いい方向に働いてるみたいね♪)

 安堵していたセアリナに、ロザリーナは声を掛ける。
「今日は私の為に素敵なパーティーをミィナちゃん達と企画してくださって、ありがとうございました♪」
「ううん、こちらこそありがとう。いつもミィナと仲良くしてくれてるのよね」
「はい! とても仲良くして頂いております♪」
 そしてロザリーナは、セアリナに話した。
 ミィナを妹のように可愛いと思っている事。
 大事にしたい友達だという事。
 話し出せば尽きない程、ロザリーナはミィナへの愛が溢れていた。
 遂に恥ずかしくなったミィナが、
「もうロゼさんっ! うちが恥ずかしいんよ〜…!」
「えぇ!? あら、そうなの?」
 ――と、止めるまで。
 ロザリーナは無自覚に延々と話していたが。
 セアリナにとっては、嬉しいことだった。

「これからも娘と仲良くしてあげてくださいね」
「……! はいっ♪」
 セアリナにロザリーナは、にっこりと笑ったのだった。









 いつも傍に居て癒してくれるミィナちゃんも、
 素直で眩しさが溢れるクレールちゃんも、
 愛情深くて家族想いなカフカくんも、
 元気をくれる笑顔が可愛いミィリアちゃんも、
 ミィナちゃんのお母さんだなぁって感じたセアリナさんも、
 惹かれる優しさがある千春ちゃんも、
 本心はイケメンなエミリオくんも、
 明るくて親しみやすい真夕ちゃんも、
 お茶目で一緒に居ると楽しい遥華ちゃんも、
 ずっと見ていたくなる胸きゅんぶりな鈴ちゃんも、
 みんな、
 みんな、
 大好き……。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0317/ミィナ・アレグトーリア】
【ka0586/クレール・ディンセルフ】
【ka0794/カフカ・ブラックウェル】
【ka2689/ミィリア】
【ka2845/セアリナ・アレグトーリア】
【ka3061/柏木 千春】
【ka3840/エミリオ・ブラックウェル】
【ka3977/七夜・真夕】
【ka5644/央崎 遥華】
【ka6016/大伴 鈴太郎】
【kz0138/ロザリーナ・アナスタージ】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 大変長らくお待たせ致しました。
 大幅な遅延を発生させてしまい、深くお詫び申し上げます……。
 みなさま完成までお待ちくださり、本当にありがとうございました。

 大好きな恋しょこをノベルで書けて、幸せです。
 恋しょこと出会えたことが幸せで、本当に奇跡だったと思っております。
 そしてみんなの『恋』を密かに、応援したり、見守ったり。
 好きな人を見つけたら、どんな恋をするだろうなぁと楽しみにしていたり。
 愛おしくてたまらないのです。
 うまく、言葉にできなくてごめんなさい・・・!

 それからロザリーナの誕生日をお祝いしてくださり、ありがとうございます!
 ロザリーナは幸せ者だなぁ。
 皆さんにとっても、少しでも楽しんでいただけていたら、とても嬉しいです。


白銀のパーティノベル -
瑞木雫 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年02月17日

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