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『甘くてほろ苦いコーヒーの味 』
ダシュク バッツバウンドaa0044)&アータル ディリングスターaa0044hero001

「うぇ〜っぷ……。アータル、悪ィが朝飯とコーヒー、頼むわ……」
 リビングルームに顔色悪く現れたダシュク バッツバウンドを見て、アータル ディリングスターの金色の眼がつり上がる。
 ダシュクはフラフラしながら歩いて来たかと思うと、ソファーに倒れ込んだ。自分が吐き出す酒臭い息にも、参っている様子。
 それでもアータルはダシュクの朝食を作る為にエプロンを身に付けて、冷蔵庫を開けた。
「日付が変わった後に帰って来たかと思えば、玄関先で寝落ちするほど飲んできやがって……。おまえを寝室まで運ぶのに、どれだけ俺が苦労したことかっ……!」
「……アータル、黒いオーラを出しながら料理されっと怖いんだが……」
「誰のせいだっ!」
 口では文句を言いながらもアータルは粥を作り、テーブルに置く。
「おお、薬膳粥か。二日酔いの身体にはありがてぇ……」
 レンゲですくった粥をゆっくりと息をかけて冷ましながら、ダシュクは食べ始める。
「あ〜、美味い。アータルはもうすっかりこっちの世界の料理を、上手に作れるようになったんだな」
 粥に感激しているダシュクの姿を見て、アータルは深いため息を吐いた。
「しかしそんなになるまで飲んで……。昨夜は何をしてきたんだ?」
「言ってなかったか? 孤児院で俺の弟分だったヤツが会社に就職できたから、その祝いをしてきたんだ。元々頭の良いヤツでさ、特待生として高校と大学まで行けたんだぜ。兄貴分の俺としちゃあ祝わねーとな」
「なるほど。彼はもう兄貴分であるダシュクを、立派な大人の男として追い抜いたんだな。確かに祝うべきことだ」
「ぶっ!?」
 ダシュクは痛恨の一撃を受けて、粥をふき出す。
 アータルは優しげな表情を浮かべながらも、その眼には哀れみの感情を浮かべながらダシュクを生暖かく見つめている。
「前日に俺から借金してまで金を何に使うのかと心配していたが、そういうことなら返さなくてもいいぞ」
「げほげほっ! かっ借りた金は返すぜ!」
 ダシュクは二日酔いで痛む頭とは別に、胃までチクチクと痛んできた。
 フリーター兼能力者として働いているダシュクは今の生活が合っているのだが、時々孤児院の家族達が就職していることを羨ましく思わないでもないのだ。
 その後、気まずくなったダシュクは黙々と粥を食べていく。
 食後になると、アータルは湯気が立つ二つのマグカップを持ってきた。
「ほら、食後のコーヒー」
「サンキュ。砂糖とミルクは?」
 テーブルをはさんでダシュクの向かいのソファーに座ろうとしたアータルは、ピタッと動きを止める。その顔には、眉間にシワが寄っていた。
「……あまり味は濃くしない方が良いと思うがな」
 軽くため息を吐きながらも、アータルは自分の分のマグカップをテーブルに置くと戻る。
 そして砂糖とミルクを持って戻ってくると、ダシュクの前に置いた。
「んなこと言ったって、ブラックなんて苦くて飲めねーよ」
「お子ちゃま舌のクセに、酒好きとは片腹痛い」
「……俺はてめぇの毒舌で、胸が痛い」
 ソファーに座り、平然とブラックコーヒーを飲むアータル。
 ダシュクは自分の分のコーヒーに、砂糖とミルクを薄茶色になるまで入れる。そしてソレを、ダシュクは美味そうに飲む。
 その光景を見たアータルは顔をしかめながら、自分の胸元を手でさすった。
「……ダシュクのそのコーヒーの飲み方を見ているだけで、俺は甘い物への興味が薄れていく」
「ほっとけ! ずずぅ〜……あー、甘くて美味い。俺が淹れると、何か違うんだよなぁ。同じコーヒーを使っているのに、淹れ方次第でこうも味が変わんのかね?」
「コーヒーを淹れる人によるんだろう?」
「やかましい! あいたたっ……、騒ぐと頭が……!」
「コーヒータイムぐらい静かにしてろ」
 (誰のせいだ!)と涙目で訴えながらも、ダシュクはしばし無言でコーヒーを味わうことにした。
 そして二人はコーヒーを飲み終えると、アータルは洗う為に空のマグカップを二つ両手に持って立ち上がる。
 ダシュクは二日酔いが楽になったようで、笑顔を浮かべながら伸びをした――その瞬間。
「美味かったな。やっぱり俺は、アータルが淹れるコーヒーが一番好きだ」
「えっ?」
「へっ?」
 無邪気な笑顔と共に思わず自然に言葉に出してしまったダシュクの本音は、近くにいたアータルの耳にちゃんと入ってしまった。
 二人の間に、微妙な空気が流れる――。
 しかしそれを打ち破ったのは、アータルがふき出した音だった。
「ぶはっ!」
 途端にダシュクの顔にカーッと血が上る。
「ちっちがっ……! いっ今のは違うんだ!」
「何が違うんだ? ダシュクは俺の淹れたコーヒーが、一番好きなんだろう?」
「だから無ぁーしっ! 忘れろ!」
 両手をブンブンと振り回すダシュクを見て、アータルはニヤニヤ笑う。
「今まで気付いてやれなくて、悪かったな。おまえがいつの間にか、俺の淹れたコーヒーなしではいられない体になっているとは思わなかったんでな」
「……その言い方、変なふうに聞こえるぞ?」
「そうか? だが事実だろう。おまえの人生には、俺が必要不可欠なんだから。まあそれは、俺自身にも言えることだが」
「んなっ!? だっだから言い方を考えてだな……」
「考えた上で言っている。おまえが深読みし過ぎなだけだろう? 何せおまえは能力者、俺は契約した英雄という関係なんだからな」
「うぐっ!?」
「俺はおまえがいなければ、消滅するしかない存在だ。ダシュクとて英雄と契約して能力者にならなければ、人智を越えた能力を発揮することはできない――。お互い、持ちつ持たれつの関係だろう?」
「〜〜っ!」
 アータルがケロッと平静に戻ったのを見て、ダシュクは遊ばれたことに気付く。
 顔どころか耳や首まで真っ赤になったダシュクは、無言でソファーの上に置いてあったクッションに顔を埋めて、バシバシッとソファーを叩いた。
 行き場のない複雑な心境になっているダシュクを見て、アータルは声無くため息を吐く。
 そして二つのマグカップを片手で持ち直すと、そっとダシュクに近付いた。
「――ダシュク、そう拗ねるな」
「だっ誰が拗ねて……」
 涙目で顔を上げたダシュクの言葉は、そこで途切れる。
 言葉を吐き出す唇が、アータルの唇によって塞がれたからだ。
 朝日に照らされた二人の影が一つとなり、再び二つに戻るまでにはそう時間はかからなかった。
「……これでも俺はおまえのことを認めているんだ。からかうのも、親しい仲だからだ。だからそう落ち込むなよ」
 硬直したダシュクの頭を手でポンポンと叩いた後、今度こそアータルはキッチンへ行く。
 すると後ろから、『ドッターン!』という何かが倒れた音が聞こえてきた。
「ヤレヤレ。ダシュクの人生経験の少なさが、よく分かるリアクションの仕方だ」
 肩を竦めたアータルだが、しゃべった途端に口の中に広がる甘さに顔をしかめる。
「……やはりコーヒーはブラックに限るな」
 気絶したダシュクを放置して、アータルは食器を洗い始めた。


<終わり> 


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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0044/ダシュク バッツバウンド/男性/27歳/人間】
【aa0044hero001/アータル ディリングスター/男性/23歳/ドレッドノート】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 このたびはご依頼をしていただき、ありがとうございました。
 ほのぼの&ラブラブな二人の日常生活の一部を、楽しんで読んでいただければ幸いです。
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2017年02月20日

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