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『まだ余所余所しい二人(前編) 』
飯野雄二aa0477)&淡島時雨aa0477hero001


 運び屋兼運転手、兼エージェント、飯野雄二(aa0477)。『国防軍』の一員、兼英雄、淡島時雨(aa0477hero001)。
 今から語られるのはまだ二人がコンビを組んですぐの頃、口数少なく余所余所しく今ほど仲良くなかった頃のお話――


 飯野雄二はその日(も)、オンボロ愛車のハンドルを握りアスファルトの上を走っていた。そのオンボロ具合たるや今にも走りながらバラバラと分解されていきそうな……というのは流石に言い過ぎとして、某県警が耐用年数を超過して酷使していたのは紛う事なき事実である。もっとも、その某県警が方針を変更してくれたおかげで、雄二はこの愛車――「パンダ」という別名も持つとある島国ではお馴染みの、いわゆる「パトカー」をタダ同然で手に入れる事が出来たワケだが。
「今日はとある事務所に所属しているアイドルの護衛と送迎依頼を受けている。なんでもストーカーと化したファンから脅迫を受けているらしく……」
「そう」
 そっけない、取り付く島もない実にそっけない返答に、雄二はサングラスの下で口をへの字に折り曲げた。オンボロパトカーを転がす雄二の隣、やはりオンボロな助手席には、セーラー服姿のおさげ少女がぼんやり外を眺めている。
 この少女……名を淡島時雨と言うのだが……と雄二が出会ったのはわずか半月前の事である。愛車を用いた運び屋兼運転手(逃し屋とも言う)を営む雄二は、時雨に出会ったその日もとある「仕事」を受けていた。
 その最中『従魔』と呼ばれる、有体に言えば異世界のバケモノに襲われ雄二は瀕死の重傷を負った。黒いソフト帽にサングラス、黒いスーツという格好の雄二を「一般人」と呼ぶ者はそれ程多くはないだろうが(「合法なのか非合法なのかよくわからない」知り合いが複数いる、と聞かされれば尚更それは強まるだろう)、バケモノと戦う術を持たない、という意味でなら雄二は『一般人』だった。抗う手段は微塵もなく、流石に死を覚悟したその時、雄二のすぐ目の前に突然「それ」は現れた。激しい戦闘にさらされたがごとく服はボロボロに裂けており、それでも足りぬと言わんばかりに泥で化粧が為されている。赤い液体から覗く肌は辛うじて生気を保っているが、それでもやはり辛うじて、詳しく描写すればなかなかスプラッタな有様のそれは、あえて言葉にするのなら『少しだけ顔色の良いゾンビ』だった。
 呆然とする雄二に、それは振り向いて瞳を向けた。ゾンビに嵌め込まれた二つの目は、苦し気に細められながらも確かな輝きを持っていた。突然の闖入者にバケモノが怯んでいる隙に、突然現れたゾンビは――ゾンビのような少女は瀕死の雄二に問い掛ける。
『……護ればいいの?』
「……は?」
『護れば……いいの?』
 何を、とは聞けなかった。護るも何も、お前の方が死にそうじゃないか……そう思った。だが、迷う暇はなく、思考を巡らす時間はなく、雄二は問いに頷いた。そして『契約』を交わし、バケモノに反撃しつつ撤退する事に成功した。契約の事も、英雄の事も、その他の事も、詳しく知ったのは全てが終わった後だったが。
 かくしてゾンビ、改め英雄、淡島時雨と契約した飯野雄二はリンカーと呼ばれるものとなり、H.O.P.E.という組織に所属、エージェントとしての立場を得た。とは言っても雄二にとっては本業はあくまで運び屋・運転手・逃し屋であり、エージェントはあくまで副業扱い。また、契約してすぐの為、エージェント等詳しいことは未だによくわからない。
 助手席に座る『英雄』とかいう少女についても、ほとんど何も知らないままだ。

 『元の世界では異世界から侵攻してくる怪異と戦う「国防軍」の一員だった』

 彼女が語った唯一さえ、真実という証はない。
「……と、ここだな」
 ガタン、と雄二は愛車を停め、運転席のドアを開いた。雄二の名誉のために言っておくが雄二の運転の腕前は(射撃の腕前の方とは違って)十分上手い部類であり、「ガタン」という音でさえ立ってしまうのは稀である。どうやら本日愛車の機嫌は少々ナナメのようである。
「ほら、降りろ」
 雄二が助手席に声を掛けると時雨は黙してドアを開いた。その時周囲から「ヒソヒソ」という音が微かに手を伸ばし、またかと雄二は辟易する。
 オンボロのパトカー。そこから降りてきたのは黒いソフト帽にサングラス、黒いスーツ姿の男。これだけでも十分「怪しい」というレベルなのに、その上助手席から降りてきたのがセーラー服に身を包んだおさげ姿の少女だったら……。
 雄二はソフト帽のつばを下げ、出来るだけ不審者に見られないよう心がけつつ歩き出した。とは言え格好・愛車・同行人も合わせれば紛れもなく「不審者」だが、(悲しい事に、その点に関しては未だ口数の少ない時雨にさえも言われている)、とりあえず事務所に入ってしまえば通報される事はないだろう。


「では、あの、よろしくお願いいたします……」
 「曾々木花梨」と名乗った少女は眼前の二人を見比べた。一人はおさげ姿の少女。一人は黒いソフト帽、サングラス、黒いスーツ姿の男。「一体どういう関係だろう」「この人達に頼って本当に大丈夫なんだろうか……」、そんな眼差しを向ける花梨に雄二は軽く頭を下げる。
「こんにちは、お嬢さん。俺は飯野雄二。こっちは淡島時雨。色々大変らしいが、まあ安心してくれ。報酬貰った分の仕事はしっかりするさ」
「は、はい……」
 思いの外丁寧かつハードボイルドな対応に、花梨の警戒心と眉間の皺はちょっとだけ和らいだ。やっぱりちょっとだけ怪しいけれど、ストーカーから守るために不審者を呼ぶ訳ないだろうし……
 社長への信頼感を織り交ぜ納得したらしい花梨に、「それじゃあ行こうか」と雄二はスーツに覆われた背中を向けた。180cmの大きな背中とクールな態度はスパイ映画のエージェントのよう。うん、きっと大丈夫……花梨はその時そう思った。
 だが、事務所の外に出た彼女の前に現れたのは、ぱっと見てそれと分かる程オンボロなパトカー一台。何故パトカー? 何処に乗るの? まさか護送犯よろしく後ろの座席? アイドルはオンボロパトカー・無口なセーラー服少女・黒づくめの不審者を困惑した目で見比べる。
「あの……よろしく、お願いします……?」

 次回に続く。
 

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【飯野雄二(aa0477)/ 男 / 22 / 能力者】
【淡島時雨(aa0477hero001)/ 女 / 18 / ドレッドノート】 
【曾々木花梨(NPC)/ 女 / 16 / アイドル】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは、雪虫です。この度はご指名下さり誠にありがとうございました。
 雄二さんをフシンシャ扱いし過ぎだろうか……と戦々恐々しているのですが、『黒づくめの不審者(※時雨談)』とございましたし、パトカーに乗っている黒づくめの方、を頭に思い浮かべながら書かせて頂いた次第です。
 お二人が出会った時の事などアドリブを入れさせて頂いておりますので、口調その他イメージと違う点などありましたら、お手数ですがリテイクお願い致します。
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2017年02月21日

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