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『笑顔の妙薬? 』
ノワka3572)&雪都ka6604

 ノワの好きなもの、それは犬と鉱石。
 とくに鉱物についての興味はひと一倍で、それというのも彼女が鉱物研究者たる由縁は、彼女の研究分野ゆえなのである。
 〈クリスタルヒーリング〉――様々な鉱物の力を利用して、様々な病やケガを完治させるという医療手段。まだ未発達なこの分野を専門に研究しているノワにとって、鉱物というのは身近な存在であり、そして研究の対象である。ポケットや鞄の底などそこかしこに自作の薬品や鉱物の破片をこっそりしのばせ、実験として使用したい――そう思っていたりする。
 研究者というか、どこかフリークめいたところを感じさせる行動も多いが、これでも一応(?)れっきとしたハンターであり、有事には彼女も戦場に赴く。
 それでもふだんはリゼリオの彼女の住居兼研究所でなにかしら調べ物をしていたり、怪しい実験をしていたりしているが、最近そんな彼女のもとに訪れる青年がいるのであった。
 と言ってもとくに色っぽい関係というわけでもなく、過去にハンターとして参加した依頼での知人関係、という青年だ。見た目は十人並み以上、いや美形と言われるタイプで、やや色素の薄そうな茶色い髪に茶色い瞳をしたその青年は名前を雪都という。リアルブルーからの転移者だ。
 もっとも、彼の場合はその容貌で、深刻な悩みを抱えているのであるが。
 というのも、彼はリアルブルーのとある人気アーティストにうり二つ――だったのだ。そのため、彼は内面を見られるよりも先に外見で判断されることが多く、それゆえに嫌な思いをすることも度々あった。
 雪都自身は感情を表に出すのが苦手で、勘違いされやすいタイプなので尚更だ。
 もっとも、最近は少しずつその考え方も変わってきているが。どこぞの大幻獣の影響も大きいらしいが――その真相は定かではない。
 そんな彼が何故ノワの家に出入りを繰り返しているかというと、彼が居候しているのが老夫婦の経営する雑貨屋であり、ノワはそこのおなじみさんだからである。もともと知り合った切っ掛けも、荷物を届けてくれる人だから――という理由が大きい。依頼で何度か顔を合わせるようになって、親交が深まった、と言えば良いだろうか。
 ノワが雪都の容姿をまったく気にしないことも、彼にとって安堵の材料だった。基本的に好物にしか見えていないノワは、自分の姿形に惑わされず、雪都をそのままの彼自身として受け取り、扱ってくれる。
 そしてこれは、そんなある日の出来事――
 
 
 今日も今日とて夕方にノワの家に向かう雪都。
 彼女の家に配達に向かうのは、大抵において夕方と相場が決まっている。配達物の中身は、実験や研究の為に使う薬草や鉱物の類だ。少々重たいものも多いのと、ノワが雪都を話し相手にすることも多いので、あえて遅い時間に訪れるようにしているのだ。
 ノワは友だちであると同時に、店の大切なお得意様だ。
 こんこん、とノックをしてノワに声をかける。
「ノワ、お届け物にきたんだけど――」
 雪都がそう声をかけると、ガチャ、とドアが開く。果たして中から現れたのは、なぜか馬面マスクを被って出迎える少女の姿だった。背格好からノワ本人なのはあきらかなのだが、それにしても何故。
 多少驚きはするものの、雪都は派手なリアクションをしたりすることはない。そんな雪都を見て、マスクを外しぷうと頬を膨らませてみせるノワ。それから矢継ぎ早に質問を繰り出した。
「もうっ。雪都さん、驚きませんか? これ、面白くなかったですか??」
 すると、雪都は僅かに考えてから、言葉を淡淡と紡ぐ。
「……え? あー……、それ驚かしてたのか。いや、そのマスク、同じようなモノがリアルブルーでも売ってるんだよ。ここにもあるんだと思って、少し感慨深く」
 言いつつも、感情の揺れ動きをなかなか見せない雪都。
 そう。
 なにかというと雪都と行動を共にすることが多いのだが、ずっと気にかかっていることがあった。それは、雪都の表情である。
 ノワは、雪都が心から楽しそうに笑っているところを見たことがない。
 いや、厳密に雪都に問えば否定するだろう。彼自身は笑っているつもりだし、実際微笑を浮かべることはある。ただ、雪都の心にはいまだに容姿などに対する過去の瑕のようなものがあって、そのせいだろう、感情の起伏が小さくなってしまっているのだ。
 そう、苦手と言うよりも、「できない」と言うべきだろう。
 しかし、それは人としてあるべき姿かというと――ノワは否、と考える。曲がりなりにも医療にかかわる立場にある彼女だからこそ、感情の起伏が余りにも小さいことは気にかかってしまう。たとえ、その原因を口に出そうとしなくても、だ。
 笑顔には様々な効果がある。
 ストレスの解消はもちろんだし、笑顔であることが元気の秘訣という人も少なくない。それに、病も記からと言う言葉がある。笑うことで体質の改善に繋がることだってあるのだと、ノワは以前何かで読んだことがある。
 それに何より、ノワ自身が雪都に笑っていて欲しいなとなんとなく思うからだ。
 二人の関係はまだ友人で、色っぽい話は欠片もない。
 それでも、友だちであるからには、元気であって欲しいと思うのがノワという少女なのだ。
 医療従事者としても、ほうっておけないけれど、何より雪都は彼女にとって友だちだから――だから、ノワは雪都に声をかける。
「……ねえ雪都さん」
「……なに?」
 雪都が相槌を打つ。
「その。雪都さん、私をただの鉱石好きな女の子だと勘違いしていませんか? 私、これでも医療従事者の端くれですよ? 正直に言わせてもらうと、雪都さんの現状は決して良くありません!」
 そこまで一息で言うと、雪都はこくりと頷いた。
「ノワがそう思うのは判るけど、……なかなか染みついちゃったのはとれなくてね」
 小首を傾げてみせる雪都に、ポン、と手を打ったノワ。
「それなら、私、雪都さんが楽しく笑えるようにして見せます! 雪都さんがにこにこ笑えるようになったら、きっといいこともあります! 笑う門には福来たるって言葉だって、あるじゃないですか!」
 いかにも嬉しそうに、きらきらと眼を輝かせてそう提案するノワに、雪都はほんのりと目を細めた。まるで少女の情熱を眩しいと思っているかのように。
「……無論それは、俺や他人に迷惑をかけない範囲でなら、構わないけど。でも、強制的に薬で笑わせたり、とかはナシで」
 雪都がそう言うと、ノワは不思議そうに首をかしげた。
「えー? 薬では駄目ですか?」
「駄目。だって、そんなのずるじゃないか」
「……なるほど、一理です」
 適度に言いくるめられるノワに、雪都は頷いてみせる。
 ――ノワの提案を受け入れられたのは、雪都にとってノワがほんの少し特別に思える存在だからだ。それが恋愛感情かどうか、というのはわからない。けれど、ノワがいるから今の自分もいるような気がして、だからその提案を受け入れたのだ。
「雪都さん、待ってて下さいね。最高の笑顔、楽しく作らせてあげますから!」
 ノワはそう声を弾ませる。
 
 ――きっと明日からの二人の日課は、笑顔作りのための時間だ。




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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka3572 / ノワ / 女 / 十六歳 / 鉱石研究家】
【ka6604 / 雪都 / 男 / 十九歳 / 悩める青年】



ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お届けするのが遅くなってしまい申し訳ありません!
それでも、依頼で何度かご縁戴いているお二人をかけてとても嬉しかったです。
まだお友達関係、と言うことでしたが、これからのお二人は一体どうなるのでしょうか?
ライターとして、MSとして、お二人の関係の変化を楽しみにしております。
それでは、またご縁ありましたらよろしくお願い致します!
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四月朔日さくら クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年02月23日

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