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『相棒との出会い 』
ネフィリア・レインフォードka0444

 天気の良い昼下がり。元気な子猫然としたネフィリア・レインフォード(ka0444)は、夕食用の魚を捕りに、近所の川辺へやって来ていた。林立する木々の葉っぱは、みずみずしく鮮やかな緑。
 林が開けたところには、小石が転がる平坦な川のほとりがある。川の水は透き通るほど澄んでいる。水面はキラキラと太陽光を反射して、緩やかに流れている。
 川の中では、小さな魚や食べ応えのありそうな魚がすばしっこく泳いでいた。
 清々しい日だ。そして、今日もたくさんの魚が獲れそうだと、ネフィリアは思う。

「一杯お魚獲って帰るのだー♪」
 見た目によらずよく食べるネフィリアである。それに、姉妹の分も賄うので、魚はたくさんあるに越したことはない。うきうきと機嫌よく靴を脱いで川に入る。水は程よく冷たくて気持ちが良い。

「お魚お魚、おいでなのだ♪」
 ネフィリアは川の中で、狙いを定めてひとつところに留まる。すると、魚たちは無防備にもネフィリアの足元をすれ違って行こうとする。うまく気配を消せているようだ。魚の感触が少しくすぐったいが、彼女はピタリと静止する。

「にゃにゃっ! にゃにゃっ!」
 そして、彼女の黄金の瞳がチャンスを捉えたときキラリと光ると同時に、身体は電光石火で動きだす。
 近くに来た魚を、得意の俊敏さで素早く掴んで川辺へ弾いていく。馴れたもので、間髪いれずに次々とそれを繰り返す。打ち上げられた魚は、ビチビチと跳ねて、いかにも生きが良さそうだ。

「にゃにゃっ!」
 ぬるりと滑る魚を器用に掴む。力は入れすぎないのがコツだ。そして手から滑り出される前に、川辺にふっ飛ばす。川辺には、きらめく山が少しづつできていく。もくもくと魚をちぎっては投げ、ちぎっては投げ、していく。川辺を振り返ることもないのに、コントロールは正確だ。

「そろそろ一杯捕れたかなっ♪」
 大漁の肉厚の魚の山を想像して、お腹が鳴りそうだ。生きが良くてプリプリで、脂がのった新鮮な魚。今日の夕飯はどうしようか。さまざまな調理方法が頭の中を駆け巡る。

「うや?」
 そのように夕飯に思いを馳せながら、ネフィリアは川辺を振り返った。思っていたのと違う光景が目に入る。生き物がいる。大きめのまるっこい猫が魚の山に取り付いていた。猫は魚をくわえて持ち出そうとしているところである。

「…あ、それは僕のお魚なのだ!取ったらダメなのだ!」
 はじかれたようにネフィリアが声をあげると、猫はビクッとして一瞬硬直した後、すかさず走り出した。新鮮な魚をくわえたまま。

「待つのだー!」
 猫は転がるように一目散に木々の間を駆けて行く。背の高い草や木々にぶつかりながら。木の枝が揺らされて、葉っぱがガサガサと不平を漏らした。これは猫からの挑戦だとネフィリアは受け取る。本気で相手をしてあげないと失礼だ。

「ふふんっ♪ 追いかけっこなら負けないよー!」
 らんらんと光る金色の瞳で猫を捉えながら、ネフィリアもまた走る。身軽に、転がるように、木々の間を器用に避けてアクロバット。猫は葉っぱの音を際限なく立ててしまうけれど、ネフィリアは枝や植物を軽やかにやわらかに回避する。自然との調和を崩さない。
 そして、この猫との追いかけっこを、じゃっかん楽しんでいる節のあるネフィリアである。

「ニャッ! ニャッ!」
 泡を食って逃げる猫。みつかってしまうなんてうっかりしたなあと思いながらも懸命に逃げる。運動はあまり得意ではないのだ。自分より手足の長い人間は、いとも簡単に付いて来る。小さな身体を利用して、人間が通れない隙間を見つけては通り、距離をかせいだ。

「むーう、なかなかやるのだっ」
 狭い木々の間を避け、遠回りをしながら一進一退を繰り返す。しかし、息も切らさないネフィリアである。猫の方が疲弊して、あっと言う間に林の端まで追い詰めることができた。

「ニャニャっ!」
 猫はこちらを伺いながらあわてて駆け出すが、足がもつれて転びそうになる。それでもうまく跳躍で乗り切るが、落下先を定める余裕はなく。

「ニャーーーー!?」
 ボチャン、と音がして、林の横に迫る小さな川に落ちてしまった。

「あ!」
 魚も口から離し、ニャーニャーと鳴きながら、バシャバシャと川の水を跳ねさせる猫。流されたら大変! ネフィリア反射的に川に飛び込む。弧を描いて綺麗なフォームで着水する。いつも泳いでいるから水は得意だ。すぐに猫の元へ辿り着き、その体をしっかり抱きとめる。

「ん?」
 よく見るとそれは猫ではなかった。猫にとても似ているけれど、猫よりもずっと大きい猫型の幻獣、ユグディラだった。

「君、ユグディラだったのかー!」
 まだパニックになって暴れる猫を抱っこしたまま、ほとりにあがる。

「ふうー、もう大丈夫だよっ!」
 地面を踏みしめホッと一息。

「もう、川に落ちたら危ないのだ。めっ、だよー?」
 自分の目の高さにまでユグディラを抱き上げ、しょんぼりしているユグディラをやさしくたしなめる。

「ニャア」ユグディラは反省しました、とうなずくように鳴いた。そして、安堵したように、ネフィリアにはっしとしがみついた。

「うーに、お魚がほしかったんだねー。そうだ! 僕のお手伝いしてくれたら、お魚、分けてあげるのだ!」
 気軽な感じで少し思案した後、にこにこしながらネフィリアが提案する。その提案に、ユグディラはうれしそうに目を輝かせてうなずいた。

「濡れちゃったし服はいらないかな?かな?一緒にお魚獲るのだ♪」
 先ほど魚を獲っていた川辺に戻ると、ネフィリアは肌にまとわり付く衣服を脱いだ。全裸である。均整の取れた肉体と控えめなふくらみ、スベスベの素肌があらわになるが、ネフィリアはさして気に留めていない。彼女にとっては自然なこと。

「うーん、スッキリなのだ♪」
 風が気持ちいい。川辺に近い木を物色して、ちょうどよさそうな木の枝に干しておいた。

「じゃあ、やるのだ!」
 ユグディラといっしょに川に入ると、ネフィリアはユグディラに魚の追い込み方を教えた。

「君が追い込んできた魚を僕が捕るからねー!」
 ユグディラは、バシャバシャと水飛沫を起こしながら、魚を追い込む。浅瀬だから大丈夫だけれど、少しおぼれているように見えるぐらいたどたどしい。慣れないながら一生懸命なユグディラに、ネフィリアは温かい気持ちになる。



 空の色が、薄紫になった頃。魚の山は申し分ないほど高くなった。

「これだけ獲れれば十分だねっ♪ 君のおかげですっごくはかどったのだー!」
 ユグディラの頭を撫でると、それは照れたように喉を鳴らした。

「もう日が暮れるから、帰ろうねー」
 すっかりネフィリアに懐いたユグディラは、彼女の足にぎゅっと抱きついた。少し湿ったふわふわの毛と生き物の温かさが心地よい。

「うんうん♪ いっしょに帰ろっ♪」
 魚の詰まった袋を背負い、ユグディラに手を差し伸べる。ユグディラはすべすべしたその手に、自らの小さな手をそっとのせた。

 二人は暖かい色に染まり行く景色を背に、焚き火の優しさで灯る落日に向かう。住処で待っている姉妹の元へと川辺を後にする。夕日に照らされて、長い影とまるいちいさな影は、溶け合うように一緒だった。



 ――後のネフィリアの相棒、それがこのユグディラである。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka0444/ネフィリア・レインフォード/女性/14歳/エルフ・霊闘士(ベルセルク)】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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ネフィリア・レインフォード様

はじめまして、今回執筆させていただきました櫻井律夏と申します。
このたびは、たいせつな思い出のお話をお預けくださり、たいへんありがとうございました!

ぬすっと猫にもやさしいネフィさんのお話、素敵な出会いのエピソードだなあと思って執筆しておりました。
相棒ココさんとの良い出会いになっておりましたら、幸いです。

また機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
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櫻井律夏 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年03月01日

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