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『森の温泉にいた動物って? 』
弓月・小太ka4679

「はふぅ、気持ちいいですぅ。誰もいなくて独り占めですねぇ」
 弓月・小太(ka4679)はすべらかな石の床に座り、ぬる湯に身体を肩までひたしている。白い湯気がやわらかそうにゆったりと上がる。

 小太は木々に囲まれた森の中にある温泉に入っていた。森は温泉の周囲を囲んでいるが、温泉付近は木々が開けていた。
 湯に浸かっていると、上には青い空が見えてすがすがしい。横を見ると青々しい緑が目にやさしい。漂ってくる深い森の香りも、極上のアロマとなって小太をくつろがせた。

「いい温泉があるとうかがってきましたが、これは本当に極楽ですよぉ」
 お湯に溶けていくような感覚と、身体を包むやわらかい水の浮力に、気持ちよさで目を細める。身体の節々がほぐれて、日々の疲れが消えていくようだ。

「こんないい温泉を貸切状態で使えるなんて幸せですぅ……」
 存分に自然と温泉を満喫し、まったりとしている小太。
 そんなリラックススペースと化していた森であったが、雰囲気が一変する。
 突然、人間の悲鳴が響いたと思うと、獣の咆哮が上がった。

「ふわ!? ひ、悲鳴ですぅ!?」
 ビクッとして立ち上がったので、お湯が派手な音を立てて飛沫を上げた。そのまま温泉から飛び出ると、タオルを腰に巻き、湯船の淵に置いておいたリボルバーとサーベルが収められたホルスターを持ち駆け出した。
 獣の咆哮の方向へと小柄な身体を生かして、白銀の軌跡を描いて辿り着く。

「歪虚がこんな所にぃ! た、助けに来ましたからもう大丈夫ですよぉっ」
 獣型歪虚は人の1.5倍ほどの全長があり、茶色い毛に覆われ鋭い牙を剥いていた。二足で立ち、鋭い爪でめちゃくちゃに暴れている。

「た、たすけて……」
 戦いなどしたことのないような女性達が、悲鳴を上げながら歪虚の攻撃から逃れようと、土まみれになりながらも必死に避けている。
 女性達は辛うじて歪虚の攻撃をまぬがれているが、もう少しで追い詰められそうだった。

「白銀の竜よ、敵の悲鳴を奏でるのです!」
 まずは歪虚の意識をこちらへ向けようと、小太は自身の銀髪にも似た白銀の銃身をもつリボルバーで、制圧射撃をする。
 突然の襲撃に歪虚は狼狽する。攻撃に対応できず、急所ではないものの、あちこちに銃弾を受けた。

「あなたたち、こちらへ来てくださいぃ!」
 その間に、女性達を後ろにかばいながらもリボルバーを撃ち続け、歪虚と相対する。

「光の加護にひれ伏すのですぅ!」
 歪虚がこちらに近づけないように、数撃てば当たる弾を飛ばしながらも、隙を見ては命中精度を高めて必殺の射撃を送る。
 歪虚はだんだん消耗していく。命中率を高めた弾は、歪虚の肩を撃ちぬく。
 銃弾の雨を避けることに集中していては、敵に接近できないことに焦れた歪虚が、弾丸を身に受けるのもかまわず突進してきた。

「大分焦っているようですねぇっ!」
 接近されると銃は不利だ。銃の方が得意な小太は接近されたくなかったために、制圧射撃に交えてじわじわと急所を狙っていたのだが、こうなれば仕方がない。

「ほうら! 刃も受けてみますかぁ!?」
 小太は、携えていた身丈と比べるとアンバランスにも見える大きさのサーベルを抜くと、身軽に歪虚の正面を、避ける。斬る。蹴りつける。獣を翻弄するように、ちょこまかと動き回っては、隙を突く。

 先ほどまでの、制圧射撃と急所への射撃によって消耗していた歪虚は、小太の動きについていけない。そのような状態であるから、刃と打撃の傷は大きくはないものの、ダメージは蓄積していく。

「どこを見ているんですかぁ、こっちですよぅ!」
 またも小太の蹴りが歪虚の背中に炸裂する。
 歪虚は吼えた。鋭い爪が伸びている腕をめちゃくちゃに振り回すが、
「ふわっ!」
 既に体中に受けた傷によってスピードが出せなくなっている歪虚の攻撃であれば、小太は避けきれる。

「しつこいですよぅ!」
 めちゃくちゃに動いてバランスを崩した歪虚が前のめりになる。小太は歪虚の片目めがけて至近距離からリボルバーを打ち込んだ。白銀の閃光が部位を吹き飛ばす。
「ふあっ!」
 小太にも反動が来たが、裸足の両足で持ちこたえる。
 歪虚は苦しみの咆哮を上げ、大きな身体を倒したが、そのまま四足歩行でもつれるように敗走していく。
 なんとか撃退できたようだ。

 女性達は大丈夫だろうかと、小太はたずねようとしたのだが。
「あ、あの、怪我とかありまs……」
「きゃあああ!」
 彼女達は「小さい象さん」と黄色い悲鳴を上げた。女性達の視線は下の方を向いている。
 小太も視線の先を見ると。

「ふぇ? 象さん…ぁ、はわわわ!?」
 腰に巻いていたタオルが無くなっている。あれだけ激しい戦いを繰り広げたのだからあたりまえだ。巻いただけのタオルなど、とうに、もしかしたらこちらに辿り着いた時点でなくなっていたのかもしれない。
 この場所に登場した時点での自分の姿を想像するだに恐ろしい。

 そして、タオルがなくなっているということは。
 自分の『小さい象さん』があらわになっている。女性達の目の前で。
 女性達は手で目を覆って、悲鳴とともに何か言っているが、それは混乱している小太の耳には入らない。

「はわわわわわっ!!」
 小太は一瞬で顔が熱くなるのを感じる。どうしても、この恥ずかしい部位を隠したいと周りを見るが、タオルがみつかることもなく。
 小太は赤面し、逃げるように走り去るしかなかった。もちろんこの状態の後姿を見られることも躊躇してしまうのだが、これ以上女性達の視線に晒されるのには耐えられなかったのだ。

 小太が走り去る間も女性達は黄色い声を上げ、両手で顔を覆っていたが、隙間から見えてしまっている。
 彼女達は小太のことを、見た目からして長い銀髪の美しい少女だと思っていたため、目に焼きついた光景はなかなか衝撃的だった。

 小太は恥ずかしさのあまり、駆けながら(小さいって……身長からしたら普通くらいじゃないのですかねぇっ)等、この際どうでもいい考えを頭の中を駆け巡らせていた。

「うわぁぁ! もう、恥ずかしいですうっ」
 慌てて逃げ帰り、思い切り温泉にダイブする。飛び込みの勢いに温泉が水柱を上げる。
 恥ずかしさのあまり、穴があったら入りたい。温泉に頭までもぐり、ぶくぶくと気泡を上げる。
 しかし、息が長くは続かず苦しくなり、ぷはっと顔を出す。

「温泉は素晴らしいですぅ……ですが……」
 しばらくは温泉に入るとさきほどの出来事を思い出し、羞恥に悶えてしまいそうだった。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka467/弓月・小太/男性/10歳/人間(クリムゾンウェスト)/猟撃士(イェーガー)】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太様

はじめまして、今回執筆させていただきました櫻井律夏と申します。
このたびは、大切な日常のエピソードをお預けくださり、たいへんありがとうございました!

小太さまのいろんな魅力を素敵に書けておりましたら、幸いです。

また機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
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ファナティックブラッド
2017年03月21日

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