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『呪いと快楽のアカデミー 』
イアル・ミラール7523)&エヴァ・ペルマネント(NPCA017)


 魔女結社は力を失った。
 それによって、闇の世界の勢力図が一変したようである。
 入れ代わるようにして台頭を開始したのは、アルケミスト・ギルドだけではない。
「魔女結社の残党ども、随分となめた真似をしてくれたものよな」
 黒装束の男たちが、そんな事を言いながら小銃をぶっ放す。
 暴風のごとき斉射が、若い魔女たちを薙ぎ倒した。
 全員、魔法の防護膜を常時、発生させているようではある。が、銃撃に耐えられるほどのものではない。
 不可視の防護膜が、銃弾の嵐に引き裂かれて飛散する。
 そんな頼りない防御でも、無いよりは遥かにましであった。倒れた魔女たちは、死んではおらず、苦しげに呻きながら血を吐いている。全員、肋骨を折る程度の負傷はしているようだ。
 都心近郊の海岸。あのマリンスポーツ専門店の近くである。
 砂浜に魔女たちは倒れ、そこへ黒装束の男たちが歩み迫り、小銃を突きつける。
「もはや貴様たちの時代ではないのだよ。それもわきまえず、我ら暗黒教団に刃向かうとは」
「ふっ……刃向かったというほどの事ではない。この小娘どもはな、こそ泥を働いただけよ」
「そう、我々から盗み取った。我らが神への、生贄をな」
「あの少女たちを……貴様ら、どこへ隠した?」
 1人が、倒れた魔女の髪を掴んだ。
 掴み起こされた魔女が、弱々しく呻く。
「あの女の子たちは……私らが、可愛い獣に変えたり綺麗な人魚姫に変えたりして、可愛がってあげるの。お前たちになんか、渡さない……神への生贄と称して、あの子たちを……」
「あんな事、こんな事した挙句……殺すだけの、お前らにはね……」
 魔女たちが、倒れたまま口々に罵声を漏らす。
「私たちは、お前らとは違う……何が暗黒教団よ! 下級の魔物を、崇めて祭り上げて……」
「自分らのやってる事は、単なる性犯罪と猟奇殺人……私たちはね、人殺しだけは絶対にやらない……!」
「小娘どもが……!」
 暗黒教団の男たちが、魔女全員を捕えにかかった。
「ならば貴様らに、あの少女たちの代わりをさせるまで……」
「どっちもどっち、という気はするけれど」
 エヴァ・ペルマネントは、ようやく割って入った。
「まあ、そこまでにしておきなさい。私の目の前で、ゴキブリの蠢きたかり這いずり以下の汚らしい行為を晒すのはね」
「何だ貴様……!」
 男たちが一斉に小銃を構える。いくつもの銃口が、エヴァに向けられる。
「虚無の境界……よもや、我らを敵に回すつもりではあるまいな」
「落ちぶれ魔女どもを庇い守って何とする。ふん、あの若作り女神官めが、虚無などという紛い物の神を拝んでいるうちに耄碌し果てたか」
 エヴァは、立ち上がれぬ魔女たちに一瞥を投げた。
「別にこんな連中、庇うつもりも守るつもりもないけれど……ユー今、盟主様の悪口言ったわよね? よって死刑」
「ほざけ!」
 男たちが、小銃をぶっ放す。
 エヴァの眼前に、人面が浮かんだ。憎悪の形相。人面模様の、楯であった。
 怨霊で組成された楯。それが、銃弾の嵐を跳ね返す。
 防御と同時にエヴァは、返礼の銃撃を放っていた。
 同じく怨霊を寄せ集めて作成した携帯式6連装ガトリング砲を、男たちに向かって思いきり咆哮させていた。
 雷鳴にも似た銃声が、砂浜に轟き渡る。
 暗黒教団の男たちは、砕け散って跡形も無くなった。
 魔女たちが、息を飲む。
「あ……ありがとう、エヴァ・ペルマネント……」
「私がこうやって害虫駆除に出回っている間」
 言いつつエヴァは、ちらりと魔女たちを睨んだ。
「ユーたち、私のイアルお姉様に……また何か、おかしなイタズラしてたりしないでしょうね?」
「い、イタズラなんて……してませんよぉ、エヴァさん」
 魔女の1人が、よろよろと立ち上がりながら、何かを軽く掲げて見せる。
 小さな、ペンダントであった。六花、すなわち雪の結晶の形をしている。
 それが、キラリと光った。
 綺麗、などとエヴァが不覚にも思っている間に、異変は生じていた。
 寒さすら感じない、一瞬にして感覚そのものが凍りつくほどの超低温が、エヴァの全身を押し包む。
 身体が動かない。魔女たちの、声は聞こえる。
「やれやれ……あたしらが弱っちいから、エヴァさんも油断してくれたわ」
「先輩の氷結魔法が注入されたペンダント……一回こっきりの使い捨てじゃなければ、暗黒教団なんか目じゃないんだけど」
「ごめんなさいエヴァさん。あたしたちイアル・ミラールに……イタズラはしてないけど、研究調査は思いっきりさせてもらってます。ひどい事はしてません、気持ち良くなってもらってるだけですからぁ」
 世迷言を吐く魔女たちに、6連銃口を向ける事も出来ない。
 エヴァは、棺のような氷塊の中に閉じ込められていた。


 悪臭を放つ野獣と化した事は、何度もある。
 それとも比べ物にならないほど臭いものが、自分の身体からドピュドピュと噴出する。
 イアル・ミラールは、それを止められなかった。
 おぞましいほどの快感が、イアルの最も汚らしく敏感な部分で、激しく蠢いているのだ。
「ふうむ、これは……ホムンクルス技術の、応用だね」
 美しい手指、だけでなく形良い唇や豊麗な胸まで遣いながら、魔女は言った。
 悪意を全く感じさせない、研究者の口調である。
「私たちもホムンクルスの研究はしていたけれど、これだけは……あの錬金術師どもに、一日の長があったようだね。悔しいけれど認めるしかない」
「先輩……ただ今、戻りました……」
「お帰り……おや、どうした? みんな怪我しているじゃないか。あの秘薬が戸棚に入っているから、お使いよ」
「ありがとうございます……あの、暗黒教団の連中がいまして。ちょっと危なかったんですけど、エヴァさんが助けてくれました」
 その恩人であるはずのエヴァ・ペルマネントが、若い魔女たちによって運び込まれて来る。
 氷漬けだった。
「あのペンダント、効いたみたいだね。ああ、そこに置いて。イアル・ミラールが気持ち良くなっているところ、見せつけてあげようじゃないか」
「どうですか先輩。大元の呪い、解いてあげられそうですか?」
「難しいねえ。ほら見てごらん、こうやってドピュドピュ出て来るものの中に、呪いの成分が混ざり込んでいる。どうしてこうなるのかを、まず調べないと」
 魔女の言葉と指遣いに合わせ、イアルの中で快感が荒れ狂う。
「快感と一緒に、呪いの成分がいろんな流れ方をしている。しっかり観測しておくんだよ」
「はい、先輩」
「やめて……もう、やめてぇ……」
 息も絶え絶えに、イアルは悲鳴を発していた。
「くさぁい……くさくて、はずかしい……」
「研究材料としては最高の臭いじゃないか。恥ずかしがる事はない、私たちに任せておいで」
 魔女の言葉と共にイアルの全身が、悶えながら硬直した。
「お前に本気で暴れられたら、私たちもちょっと手がつけられないからね……少し、大人しくしていてもらうよ」
 イアルは、石像と化していた。
 いや、一部分だけが生身のままだ。
 その部分を繊手で弄びながら、魔女は言った。
「ふむ、ここ一ヶ所に呪いの成分が凝集してゆく……快楽の流れに乗って、か。いいよ、わかりかけてきた。もう少し、もう少しだからねイアル・ミラール」
 そんな言葉も理解出来ずイアルは、石化した全身をガタゴトと快感に震わせていた。
PCシチュエーションノベル(シングル) -
小湊拓也 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年03月29日

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