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『Boys, be ambitious 』
弓月・小太ka4679

 街からそう離れていない緩やかに水が流れる川辺。依頼のない平和な日の、良い天気の昼頃。
 程よく木々の生えた林に包まれた川辺は日あたりも良い。風も凪ぎ、環境は申し分ない。
 そんな訓練日和に、弓と射撃を練習しに来ていたのは猟撃士である弓月・小太(ka4679)だ。
「少しでも訓練して足手まといにならないようにしないとですぅ」

 まずは弓矢の訓練を。
 小太は、鷹が翼を広げたような形状のロングボウを構える。
 弓の胴に鷹の鋭い眼と嘴のような形状の装飾が施された見た目にも美しい得物だ。
 小太の身長をゆうに超える全長を持つ弓だが、それを操る彼は馴れたもの。

「弓は基本が大事ですぅ」
 白く細い両足を縦に真っ直ぐに開き、赤く輝く瞳で的を見据えながら左足を半歩踏み出す。
 目線を下へ移すと右足を後ろに引く。
 両足はしっかりと地面を踏みしめ、膝を軽く締める。
 その足踏みの動作から、胴造り、弓構え、打起し、引分け、会、と心静かに弓を引く動作に優美に進める。

 一瞬、そよ風さえが止まる。
 小太の赤い瞳は細められ、的を静かに見つめた。
 細腕からは考えられないような力で弦を最大限まで引き、力が高まった瞬間に、そっと手を離す。
 矢は周囲に風をアフターファイアーのように巻き起こしながら、標的へと飛んでいく。
 小太の銀糸の髪が風になびき、袴と袖を束ねる帯もひるがえる。

 矢の飛翔姿はまるで獲物を狙う鷹のよう。
 小太は矢が手を離れた後も残心の姿勢を保つ。風で持ち上がった髪の毛がぱさりと顔に落ちた。
 矢は狙っていた遠くそびえる高木に実る小さな実の中心を射抜く。
 実はたまらず砕け散った。

「……ふう……命中できましたぁ……」
 小太は緊張を解いて息を吐いた。
「もう一度、今度はもっと遠くを狙いますぅ!」
 小太は更にハードルを上げて、身の丈以上もある鷹を自在に操った。

 木の実の屑が木の下におびただしく散乱する頃。
「はぁ……集中力を大分使いましたぁ……でも今度は射撃の訓練ですぅ」
 これくらいではまだ休まない。小太は自分に厳しく訓練を課す。
 弓を、小太の雰囲気によく似た純白の銃身を持つリボルバーに持ち替える。

 川によってまるく削られた小石の敷き詰められた川辺を走る。石は踏まれると滑って沈む。足を取られ小太は転んでしまう。
「くっ……まだまだですぅ!」
 しかし、すぐに立ち上がり走りながら木の実を射撃していく。
 乾いた音が連続で鳴ると同時に、同じ数の木の実が落ちる。
 転びながらも走るので、一瞬彼は四つ足になる。その姿は速さもあいまって純白の獣のようだ。
 まとめられた銀髪が美しい尾に見える。

 体力づくりもかねているので、足は止めずにひたすら駆ける。また小石に足を取られ転倒しそうになるも、その勢いで前転しながら回る視界の中標的に発砲する。
 無事に着地しつつ、なおも駆けながら、横目で命中を確認。
「良い感じですぅ!」
 小太が通り過ぎた後には木の実の残骸が、獣に食い散らかされたように残る。

 満足するだけの訓練ができたと感じ、小太は我に返る。
「大分土がついてしまいましたねぇ……汗びっしょりで気持ちが悪いですし」
 思い切り訓練をしたら、擦り傷と土汚れと汗ですっかり汚れてしまった。
 だが、成果は上々といったところだ。

「そろそろ休憩にしましょぅー!」
 休憩ついでに川で汗や土も流しておきたい。小太はまわりを確認する。
 静かな林だ。鳥と木々の葉のこすれる音、川のせせらぎしか聞こえない。
「此処ならまず人も来ないですし……だ、大丈夫ですよねぇ?」
 と、おもむろに汗で濡れた服を脱ぎだす。

 ふぁさあっと袴や袍すべて脱いだら、白い木の枝に掛けていく。
 白く細い手足があらわになる。
「乾かしておきましょぅ」
 リボルバーだけは手放さずに川近くへ持っていく。
 つま先から川にそっと浸かると、水の流れが肌をやさしくなでた。
 水をぱしゃぱしゃと身体にかけ、汗を流す。
 汗でほてった身体が水流で冷やされてとても気持ちが良い。

「ふう……すっきりしますぅ」
 ほっと息をついた時、背後に気配を感じる。
「…………!?」
「なんだあ? こんなところで水浴びかい、お嬢ちゃん」
「ここはお風呂じゃねえぞお」
「ぎゃははは!」
 粗野で粗暴なダミ声の男達が背後にいた。

「なっなんなんですぅ!?」
 慌てて小太は股間を隠した。
「貧乳だがべっぴんじゃねえか、こりゃ良い物みれたなあ!」
 男達は小太のいる川まで近づいてくる。

「み、見ないでくださいぃ! 近づくと撃ちますよぅ!」
 小太は川に浸かったまま、そばに置いておいたリボルバーを手に取り、男達に向ける。
「そんなもんお嬢ちゃんには似合わないぜ! うばっちまえ!」
 男達は小太の牽制も無視して近づこうとしたので。

「ふわっ、残念っ、僕は男の子ですよぉっ!」
 小太は仕方なく川から立ち上がって、発砲した。
 それは容赦なく男のわき腹の肉を少しえぐった。もちろん致命傷は狙わず、脅し程度の一撃だ。

「ぐあっ」
 しかし、わき腹の焼け付く痛みに男はひるみ、他の男も立ち止まる。
「何しやがる!」
 なおも近づこうとするので。
 もう一発。
 白銀の獣は肩の肉をえぐる。
「ぐああっ」
 そろそろ男達は自分達の圧倒的不利に気が付いたようだ。

「いいかげんにしてくださいよぉ!」
 銃口は男達からはずさずに言う。
 それにしても、川から立ち上がると気化熱でスースーする。やけに下半身が心許ないと思っていたら。

 彼らはようやく気が付いたようだ。小太の下半身に。
「……男かよ!」
「なんだよ! 期待させやがって!」
 勝手に期待して勝手に失望している男達。

「なっ!? どっか行っちゃってくださいぃ!」
 どこを見ているんだ、この男達は。
 小太は恥ずかしいやら、悔しいやらで、震えながらも必死で男達に銃口を向ける。

「ちっ……まぎらわしい見た目しやがって!」
「小さいくせに!」
「ちっちゃいくせに!」
 男達は捨て台詞を吐きながら退散して行く。彼らの視線は小太の下半身に釘付けであった。

「ど、何処を見て今言いましたかぁ!?」
 銃口を上げたまま、涙目で小太は叫んだ。
 こちらへ目線を送られないように、男達に当たらない程度に発砲をする。
 さらされている部分を隠すために、早く腕を下ろしたい。

 男達が去った後、力が抜けて再度川にへたり込む小太。
 自分を抱きしめるように体育座りをする。
『小さいくせに!』『小さいくせに!』『小さいくせに!』
 男が言った言葉が頭の中をリフレインする。

「いったい……僕が何をしたって言うんですかぁ……」
 何よりも男達の逃げ際の捨て台詞にダメージを受け、しょぼくれるのだった。
 それでも川は静かに小太の肌の上をさらさらと流れていく。
 林はさわさわと葉を揺らし、小太を見守るのみ。
 夕日が小太の背を慰めるように照らしていた。



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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【ka4679/弓月・小太/男性/10歳/人間(クリムゾンウェスト)/猟撃士】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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弓月・小太様

お世話になっております。今回執筆させていただきました櫻井律夏です。
このたびは、再度のご発注、たいへんありがとうございました!

小太さまの格好良さや可愛らしさなどの魅力を素敵に書けておりましたら幸いです。

また機会がありましたら、よろしくお願いいたします。
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ファナティックブラッド
2017年03月30日

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