▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『欲望の噴水 』
イアル・ミラール7523)&エヴァ・ペルマネント(NPCA017)


 噴水を造ってみた。
 小さな石造りのプールの中央に、石像を設置したのだ。
 石の女人像。ただし、石ではない部分が一箇所ある。
 その部分から、とめどなく水が噴出している。
 否、水ではない。
 水ではないものを、私の後輩の魔女たちが、せっせと採取しているところである。口で、手で、胸で、あるいは魔獣用の搾乳機を改造した道具を使って。
 私の店の商品である少女たちが、それを手伝っている。
「うにゃあぁあああん……ごろごろ」
「くぅん、くふぅううん……」
 獣と化した美少女たちが、女人像に胸をすり寄せ、唇を触れ、指を這わせる。
 水ではないものの噴出が、ドッピュドッピュと激しさを増す。
 それを浴びた魔女たち少女たちが、ことごとく固まっていった。
「せ、先輩! 助けて下さい!」
 私の後輩の1人が、悲鳴を上げた。身体の左半分が、石に変わっている。
「やれやれ、大したものだよイアル・ミラール。お前の力を、私は完全に見誤っていた」
 後輩の左肩に手を触れて、私は石化を解いてやった。
「全ての力を搾り取って、お前を真珠の屍に変えてやった……つもりだったけど。まだまだ、こんな力を残していたなんてね」
 アルケミスト・ギルドが、イアル・ミラールの肉体にこんなものを植え付けた理由。
 それはイアルの力……主に鏡幻龍の力であるが、その他にもイアル・ミラールという人間の持つ生命力、気力、魔力、とにかく力と名の付くもの全てを、この部分から搾り取るためだ。賢者の石やエリクシルの材料にでも、するつもりだったのだろう。
 何かを体内から噴出させる。その機能が最も強い人体器官は、これだ。
 女性にはない。だから、ホムンクルス技術を応用して植え付けるしかなかったのだ。
 植え付けられたものが、イアルの体内に秘められた、あらゆる力をドピュドピュと噴射している。
 かつて魔女結社によって施された各種の呪いも、それら力の1つだ。
「あの呪いが、こんなに元気に際限なく噴き出して来る。それは、お前がまだ生きているからだよ裸足の王女。真珠の形をした屍に変わったはずの、お前がね」
 イアル・ミラールが生きていた。あるいは、生き返った。
 自力で、ではないのかも知れない。生命のない真珠玉に変わったイアルを元に戻すため、尽力した何者かが、いるのかも知れない。
 例えば、あのIO2エージェントの少女。
 例えば今、噴水の近くで氷漬けになっているエヴァ・ペルマネント。
 そういった協力者を、どういうわけか引き寄せてしまう。それも1つの力だ。
 結果、イアルは殺しても死なない。生き返ってしまう。
 魔力でも戦闘能力でもない、気力や生命力とも違う。悪運、と一言で済ませてしまえるものでもない。
 それらを超えた何かが、イアル・ミラールにはある。
 鏡幻龍の力は、私が使いきった。そのつもりだったが、実は残っていて、それを搾り取るためにアルケミスト・ギルドはイアルの肉体にこんな仕掛けを施した。
 搾り尽くされた、のであろうか。今のイアルからは、鏡幻龍の力も感じられない。
 鏡幻龍とも無関係な、得体の知れない力をしかし、このイアル・ミラールという1人の人間は持っている。
「先輩……これ、どうしましょう」
 獣の美少女たちが、イアルの噴射したものを全身に浴びて石像、あるいは水晶の像と化していた。
「生身に戻してあげます? これはこれで、って感じもしますけど」
「……そうだね、このまま商品にしてしまおう」
 生身の女では駄目、という客が多い。
 このイアル・ミラールという娘は、そういう男どもを満足させるためだけに生を受けたのだ、としか私には思えなかった。


 おぞましい快楽の余韻が、全身をじんわりと痺れさせている。
 石化を解かれ、生身に戻った己の身体を、イアルはぐったりと脱力させていた。壁にもたれて座り込み、半ば寝転んだ姿勢のまま、何も出来ずにいる。
 そんなイアルに、魔女が語りかける。
「御苦労だったね、裸足の王女。お前の身体から搾り取ったもの、じっくり時間をかけて調べさせてもらったよ……簡単ではないけれど、呪いを解く方法は見えた」
「ひたすら玩具にされていただけ、という気はするけれど……」
 イアルは、辛うじて声を発した。
「私、お世話になっている立場なのよね……よろしく、お願いするわ」
「私が、やりたくてしている事だよ」
 魔女は微笑んだ。
「何しろお前は、私が真珠の屍に変えてやったと言うのに生還してきた……私はお前を、徹底的に調べなければならない。そうしなければ魔女として、ここから1歩も進めないのさ」
「そう……それなら私、貴女たちに感謝したり負い目を感じたりする必要……ない、という事ね?」
「もちろんだよ。ふふっ……虚無の境界の生体兵器を引き連れ、あんなふうに脅しに来たお前が今更、何を言っているんだい」
「……そう、だったわね。それなら遠慮なく、行かせてもらうわ」
 脱力しきっていた身体を、イアルはいきなり躍動させた。魔女に向かってだ。
「何を……!」
 魔女が、声と息を詰まらせる。
 その細い首に、イアルは腕を巻き付けていた。強靭な細腕が、魔女の頸部を圧迫する。
「私の……その、汚いものを浴びて、石や水晶になっちゃった女の子たちがいたわよね。全員、元に戻しなさい。あと出来れば、そこにいるエヴァ・ペルマネントも」
 魔女の耳元で、イアルは囁いた。
「女の子をね、獣に変えたり石や水晶として売り飛ばしたり……そんな事は絶対に許さないわよ。人をね、物としてしか見られない。貴女たちの、そういうところには私本当にうんざりしているの。今すぐ叩き直してあげましょうか?」
PCシチュエーションノベル(シングル) -
小湊拓也 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年04月03日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.