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『 辿るは記憶と想い 』
シルヴィア・エインズワースja4157)&天谷悠里ja0115

 そこまで強く無い日差しが薔薇と2人の姫を照らしている。
 天谷 悠里(ja0115)の纏うプリンセスドレスは、見上げた雲一つない空にも似た水色。
 その隣に寄り添うシルヴィア・エインズワース(ja4157)のは対照的にスレンダーラインのドレス。群青から黒へのグラデーションの中で控えめに光るラメが宵闇の中で輝く星を連想させる。

 初めてこの店を見つけたあの冬の夜。
 その夜に少女たちに勧められるままに袖を通したドレスでガゼボから薔薇園を眺めていた。

「あの夜のこと覚えている?」

 独り言のようにシルヴィアが口を開く。
 あの夜、水色のドレスを着たプリンセスがおぼつかない足取りで現れた時、シルヴィアはその姫に一目で心を奪われた。
 あの時のことを思い出しながら、そう語りかけるシルヴィアに悠里が微笑みかけ口を開いた。

「私も」

 あの時、ドレス姿の愛しい人を見た時、改めて心を奪われた。その想いは心臓すら鷲掴み、こうして言葉を交わし視線を合わせるだけで苦しくなるほど早鐘を打たせるのだ。

 それ以上続く言葉はない。
 そよ風がふく音だけが聞こえる中視線だけが絡む。

その愛しい姫の隣に自分は今いる。
 それはとても幸せなこと。
 

 口を動かさなくても互いが考えていることは分かった。
 心を何度も重ねた2人は互いのことを伝えるのに多くの言葉を必要とはしない。
 いつのころからかその視線、その動きで完璧にとはいかずとも、どんなことを考え言いたいのかは察することが自然と出来るようになっていたのだ。

 ***

 こつり。
 ガゼボから薔薇園を一周できる煉瓦でできた通路にあの夜と同じように一人分の足音が響く。

「あの時シルヴィアがお姫様抱っこしてくれていたよね」

 悠里の声が、耳をくすぐる。
 彼女の腕の中、お姫様のように抱きかかえられながら笑う悠里にそうね。シルヴィアは懐かしそうに呟いた。

「ユウリから散歩がしたいと言われた時、私もそう思っていたの。ふらついた貴女の足だと難しいとは思ったのだけれど、どうしても一緒に薔薇園を見たくて」

『今思えば、ただの我儘だった気もするけれど』

 その言葉を飲み込み、シルヴィアは悠里に微笑む。

「あの時、嫌がらずに一緒に回ってくれてありがとう」

「ううん。私こそありがとう。すごく嬉しかった。愛する人にお姫様抱っこされるのは女の子の憧れだもの」

 少女漫画の中でよく見るお姫様抱っこ。
 憧れる女性は多いが実際に経験する機会に恵まれる女性は少ない。

 足音が止まり、悠里が地面へと降り立つ。
 あの夜の思い出の中でも一際鮮明に残る風景。

「愛しています。ユウリ」

 宵闇のドレスが空色のドレスを引き寄せる。
 シルヴィアからの言葉も相まって、それはあの時の再現のようにも感じられた。

「シルヴィア、私も愛してる」

 あの時顔を赤くしながら愛しい人の名前を言い淀んでいた少女はここにはいない。
 それが当然であるかのように、自然であるかのように悠里の腕がシルヴィアの首に回され、2人の距離は零に限りなく近くなる。

 互いの存在を確認するように触れ合った唇の温度に、初めて肌を重ねた夜が脳裏を駆け抜ける。
 その記憶が魂に情欲の炎を灯す。

 触れ合った唇が熱を失うよりも早く2人の口元から水音が聞こえ始める。口中に侵入する舌が歯や舌を愛し音を立てるのだ。

「あっ……」

 互いの水を交換しそっと唇を離せば、おもちゃを取り上げられたような切ないな声がシルヴィアから上がる。

 上がった息。
 紅潮した頬。
 ねだるような視線。

「……」

『もっと?』

 悠里の目がそう言う。
 その目は先ほどまでの純粋な少女のそれではなく、女王の視線。

 その視線だけで、シルヴィアは昂っていく。
 こくりと頷くシルヴィアに満足そうに微笑むと先ほどよりも長く濃厚な口付け。
 空気を求めるように時折離される唇からは喘ぎと互いを求める声だけが漏れる。
 最初の口づけの時、腰と首に回されていた腕は互いの快いところへと伸ばされ互いを刺激する。

 何度も重ねた身体は、思考を巡らせなくとも相手の快い場所も、愛し方も、反応も全て記憶している。
 時に激しく愛し、時に焦らし、相手とより長くより深く悦びを分かち合うため、甘い愛を注ぎあう2人の姿が砂の少ない砂時計の下部に映し出されていた。

 まだ、初夜が明けない。


 ━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ja4157 / シルヴィア・エインズワース / 女性 / 23歳 / 闇星の姫 】

【 ja0115 / 天谷 悠里 / 女性 / 18歳 / 昼空の姫 】


ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 こんにちは。
 シルヴィア様はお久しぶりです。
 今回もご依頼頂き本当にありがとうございます。

 思い出を辿りながら心を重ねていく。ということで数ある思い出の中から、初めてお2人とご縁を頂いた時の物語をご指定頂きとても嬉しく思っております。

 今回もお気に召されましたら幸いですが、もしお気に召さない部分がありましたら何なりとお申し付けください。

 今回はご縁を頂き本当にありがとうございました。
 またお会いできる事を心からお待ちしております。
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龍川 那月 クリエイターズルームへ
エリュシオン
2017年04月11日

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