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『聖母の復讐 』
イアル・ミラール7523)&エヴァ・ペルマネント(NPCA017)


 かつて世界には、様々な神が存在していた。
 その神々はキリスト教によって邪教の魔物と決めつけられ、おぞましいガーゴイルとして、人々の目に醜悪な姿をさらす事となった。
 だが今ガーゴイルは、神としての本来の力を取り戻したのである。
「こっ、この化け物が!」
 兵士たちが、怯え喚きながら小銃を乱射する。
 銃弾の嵐が、女神の石像を滅多打ちにしながら、ことごとく跳ね返った。
 この石像の材質は、もはや単なる石ではない。
 大勢の人間の、暗く燃え盛る負の感情を大いに吸収した、この世で最も禍々しく強靭な物質なのだ。
 そんなもので組成された女神の全身が、荒れ狂う銃撃を弾き返しながら戦場をゆったりと歩み進む。
 某国。武装勢力の台頭が特に著しい地域に、石造りの女神が降臨したところである。
 武装勢力と政府軍が銃撃・砲撃をぶつけ合う中、翼と細腕をゆらりと広げ、滑らかに歩行する女神の石像。
 その顔面で、爆発が飛び散った。ロケット弾の直撃だった。
 石製の美貌が、無傷のまま微笑む。爆炎の中で、にっこりと。
『無駄な争いはやめろ、人間たち』
 美しく造形された石の唇が、言葉を紡ぐ。
『お前たちが相争うのは、互いに相手を恐れるがゆえの事……そう、お前たちは知らねばならない。恐れる事など、何もないと。敵を恐れる必要など、ないのだよ』
 美しい女神の石像。だが一カ所だけ、おぞましい生身の部分がある。
 女体にはあり得ない、その部分を猛々しく隆起させながら、女神は片腕を掲げた。
『私の前にあって、お前たちは等しく無力なのだから……』
 暗黒の波動が迸って戦場を駆け抜け、両軍の兵士・兵器を差別なく粉砕していった。


 暗黒教団の信者が、世界規模で増加しつつある。
 本尊たる暗黒の女神が、世界各国の紛争地域で自ら力を示し続けているからだ。
 やはり、と聖母は思う。人々を救うのは、女神でなければならない。男の神では駄目なのだ。
 虚無の境界も、盟主があの女神官であったからこそ、今日の勢力を持つに至った。
 この暗黒教団とて、男の幹部たちに権限を持たせていた頃は酷いものであった。
 教団は、単なる性犯罪組織に成り下がっていた。
 だから聖母は、教団の中枢から男たちを追放した。
 その男たちが武装し、聖母への反抗勢力を結成したので叩き潰さなければならなかったのだが、それを代わりにやってくれた者がいる。
「貴女には感謝しているのよ? エヴァ・ペルマネント」
「ぐるっ……がぁああうぅ……」
 牝獣と化した霊鬼兵が、鎖で壁際に繋がれたまま牙を剥く。
 あれから身体も洗っていない。出すものも、出しっぱなしである。
 常人ならば吐き気を催すであろう悪臭が、しかし聖母には心地良かった。
「御覧になって盟主様? 御自慢の霊鬼兵も、私の新たなる神の前では……この、有り様よ……ふふっ、まるで野良犬……」
 聖母は笑った。
 虚無の境界そのものを、無様な犬として這いつくばらせている。そんな気分であった。
 暗黒教団、本部の地下。
 聖母たち教団幹部が、あまり信者には見せられない事をするための大広間である。
 昼間は地上の講堂に安置されている女神像が、夜にはこうして、ここへ運び込まれる。
『世は、怯え迷える子羊たちに満ちている』
 女神像の、石造りの唇から発せられるのは、紛れもなくイアル・ミラールの声である。
 だが今、この石の肢体の中にイアルの魂はない。
 聖母が、それに今は女性しかいない教団幹部たちが、搾り取った。女神像の、ただ一カ所だけの生身部分からだ。
 夜毎、聖母と女幹部たちは、女神のこの部分に様々な奉仕を行う。口で、手で、胸で。
 様々な快楽を、暗黒の女神に捧げているのだ。
『我が聖母よ。そなたの慈愛を、この世にあまねく伝え広めるために……私は、これからも戦い続けるであろう。この力をもって』
「その御言葉だけで、私は1億回でも死ねます……1億回の人生を全て、貴女様への御奉仕に費やして御覧に入れますわ」
 聖母は跪き、石像の生身部分に唇を触れた。
 暗黒の女神が、快楽の呻きを漏らす。
 傍目には、聖母による女神への奉仕である。
 実質的にはしかし聖母の方が、女神を快楽で操っているのだ。
(今や『虚無』をも凌ぐ強大な神を、私は意のままに操る事が出来るのですよ? 盟主様……)
「がぁう、ぐぁるるるる! がふっ、がぅああああああああッ!」
 エヴァが、鎖を鳴らしながら吠えている。
 そちらへ、女神が歩み寄り、微笑みかける。
『浅ましい牝犬が……何やら、ねだっていると見えるな』
「ぐうぅっ、くふぅううん……がうっ」
 吠える牝獣の口に、石の女神の生身部分が突き込まれる。
『浅ましく、哀れな獣よ。そなたに神の情けをくれてやろう。ふふっ、さあもっと舌を遣ってみせよ。牙を突き立てても構わぬぞ?』
 エヴァ・ペルマネントは今もまだ、暗黒の女神への供物であった。
 その様を眺めながら、聖母は勝ち誇った。この場にいない相手に対してだ。
(これが……これこそが、貴女がた虚無の境界と私ども暗黒教団の関係ですのよ盟主様! 今に貴女も、このように……私に跪いて、私のモノを……私を捨てた、盟主様……ッッ!)
PCシチュエーションノベル(シングル) -
小湊拓也 クリエイターズルームへ
東京怪談
2017年04月24日

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