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『おるすばんっていいな! 』
シセベルaa0340hero002)&アトリアaa0032hero002)&クロエaa0034hero002)&麦秋aa0213hero002)&ゼム ロバートaa0342hero002)&カスカaa0657hero002

●はじまり
 H.O.P.E東京海上支部のとある場所。誰の目にもつかないほど辺鄙でもなく、しかして職員に見つかることもない絶妙な死角に、ある日こんな張り紙が貼られたんだとか。

【一緒にお留守番しませんか?】
能力者と第一英雄がお仕事に行っている間、第二英雄同士で一晩過ごしませんか?
場所:H.O.P.E.東京海上支部。畳張りの休憩室。お布団完備。
パーティーゲームや映画等この世界の「文化」に触れて、この世界によりよく馴染みましょう。
連絡先:シセベル(xxx〜

 休憩室とは言っても本来であれば、任務の合間の休憩や仮眠に使われる部屋なのだろう。そこが首謀者、こと主催者の腕の見せ所だった。シセベル(aa0340hero002)は、本人曰く「適当に良さげな事」を並べ立て、休憩室の使用許可をもぎとった。

 さて、当日。愛用の枕を抱えて麦秋(aa0213hero002)がやってきた。集合時間よりは早めだったが、部屋の鍵は開いていた。
「こんばんわぁ〜」
 ふわふわとした笑みを浮かべて挨拶をすると、丸い背中がぴくりと動いた。おそるおそるといった様子で振り返ったのはカスカ(aa0657hero002)だ。
「……こ、こんばんは。……麦秋さんも、その……あの張り紙を見て、来たんだったり……?」
「そうよぉ。カスカちゃんも来てたのねぇ」
 麦秋は荷物を置き、さっそくこたつに入る。シセベルは何やら準備するものがあるらしく、「すぐに戻ってくる」との伝言を託して出て行ったらしい。
「え〜い」
 カスカの体が後ろから拘束される。犯人はもちろん麦秋。彼女渾身の突進は、擬音にするなら「ぽふん」あたりが似合いそうだ。
「あ、あの……」
「カスカちゃんはおひるね嫌かしらぁ?」
 お昼という時刻じゃないことはいったん置いておくとして。
「い、い、いやじゃなかったり、だけど……ちょっぴりだけ、恥ずかしい、気も、したり、なんだりして……」
「うふふぅ〜、良い抱き心地ぃ」
「うぅ……」
 頼りない抵抗をしているうち、カスカもいつの間にか眠りに落ちていた。待機中の身とはいえ、心労や家事などで疲れがたまっていたのかもしれない。
 こうしてお留守番会は、至極マイペースな幕開けを迎えたのである。

●たいせん!
 もしもし? おふたりとも? もしもし?
「はぁい……セールスは間に合ってますぅって……家主が申しておりますぅ」
 もぞもぞと麦秋が起き上がる。目はまだ閉じられたままだ。
「何を寝ぼけているのですか。しゃんとしてください、麦秋」
 アトリア(aa0032hero002)は少し声のトーンを上げる。
「もしもし、カスカ? こたつで寝てしまっては風邪をひきますよ。どうしても眠いなら布団を敷きますか?」
「……あ、アトリさん……! お、起きたり、なんだりする、から……」
「ならば良いのですが」
 気持ちよさそうに伸びをする麦秋。がばりとこたつ布団を跳ね上げるカスカ。時計を見れば、さほど時間は立っていない。アトリアはほぼ時間通りにやってきたようだ。彼女の後ろにはシセベルとクロエ の姿も見えた。
「わたしぃ、今日は早く来たでしょう?」
「うん、いい心がけだね。なんたって今日は大切な日だもの」
 シセベルが同意すると、麦秋は嬉しそうに笑う。遅刻せずに来た事を褒めて欲しかったらしい。クロエは家庭用ゲーム機のソフトを手にしていた。
「今、シセベルさんが持ってきてくださったゲームのことを聞いていたんです」
 簡単に言えばギミックたっぷりのすごろく、だろうか。大勢で遊べるパーティゲームだ。
「このゲームは一体何を目的としているのです……?」
 アトリアは怪訝そうに言う。
「目的なんて大層なものはいらないよ。アトリちゃんが楽しければねっ」
 アトリアはますます難しい顔をする。『戦う以外に自分に存在意義は無い』と思い込んでいる彼女は、留守番も大嫌いだ。
「どうした赤毛女。負けたくないから、勝負を避けているのか?」
 口を開いたのは、ゼム ロバート(aa0342hero002)。アトリアとは犬猿の仲だ。――と思っているのは彼女くらいで、はたから見れば喧嘩するほど仲がいい兄妹のような関係である。
「……やります。このぴちぴちタイツ男に後れを取るなんてことはあり得ませんし」
「俺は何をやってもうまい……手加減はしねぇぞ」
 そう言ってゼムは手元の説明書に視線を落とした。アトリアはコントローラーを手に取り、操作に慣れておく作戦らしい。
「楽しいゲームというより、真剣勝負の雰囲気ですね」
 くすくすとクロエは笑う。隣にいたシセベルも好戦的な眼をして答える。
「それはそれでいいんじゃないかなーたぶん? 私も手は抜かないよー」
 カスカは少し迷ったが、好奇心に負けてアトリア派についたらしい。立ち耳がぴこぴこと動いていて楽しそうだ。彼女と麦秋は穏健派だろう。
「お手柔らかにお願いします」
 クロエはシセベルに視線を戻し、朗らかに言った。彼もまた、勝敗は二の次というタイプらしかった。
 ゲームが始まってしばらく。案の定、アトリアとゼムが競り合う展開になった。
「くっ、また2ですか? このサイコロの目、偏りすぎでは?」
「フン、見苦しいぞ。確率は6分の1。単に運がなかったと……なっ」
「アナタは1ですか。単に運がなかったのでしょう」
 ゼムはなんでもない風を装って、フンと鼻を鳴らす。乱数に踊らされるものたちを尻目に、魔女は軽やかに飛び去っていく。
「ここでお邪魔カード発動。皆には眠ってもらうよ」
「一位に躍り出ましたか。シセベルさんは安定してますね」
 そう言うクロエも被害は最小限、資産方面は冒険せずに堅実に増やしている。
「うう……もうすぐマップ終わっちゃったり?」
 カスカは涙目で言う。シセベルとは逆に、彼女は絶不調。最下位争いから抜け出せないのだ。
「あらぁ? 4マス戻る?カスカちゃんより後ろになっちゃったわぁ」
「ば、麦秋さん! 今、ぼくとすれ違ったらまずかったり、したり、するかも……!」
 最下位スパイラルのバトンは麦秋へと手渡された。そして――。
「よし、1位だね」
 結果、抜け目無く容赦も無く立ち回ったシセベルは1位。
「優勝は逃しましたが、アナタを下すことには成功しました」
「手加減した事に決まっているだろう……」
「もっとはっきりと話してはどうです、3番手男?」
 2位のアトリアと3位のゼムが僅差のまま終了した。
「まぁ、そこそこでしょうか」
「ご、ごめんなさい……麦秋さんのせいじゃなかったり、だったり、だから……」
 順調に思えたクロエは4位に収まったがなぜか満足げ。カスカはどうにか5位を獲得した。そして後半に怒涛の大転落を演じた麦秋は、誰かと対立する行動を選ばないせいもあって、6位という結果に終わった。数時間にも及ぶ対戦。負ければ当然悔しいものなのだが。
「みんなすごいわぁ♪」
 彼女は例外らしい。全く気にしていない様子でそう宣うのだった。少し冷静になったアトリアは心の内で「何だか負けた気がします」と呟いていた。

●ほのぼのたいむ
 散々騒いだ後は、休憩がてら映画を見ることにした。選んだのは、少し不思議な生き物が出てくるアニメ映画だ。
「はい、ポップコーン。映画には欠かせないものなんだって」
 シセベルは袋を広げる。麦秋とクロエは夜食作りのため給湯室へ。
「メニューはどうしましょうか?」
「うふふぅ、パーティといえばあれよねぇ」
 満面の笑みを浮かべた彼女が取り出したのはピザ生地の種だった。家から持参し、冷蔵庫で寝かせていたのだ。
「家庭で作れるとは意外でした。伸ばすのは力仕事でしょう? よかったら僕が代わりますよ」
「助かるわぁ。じゃあ私は材料を切るわねぇ」
 ピーマンとウインナーを平たく切って、ピザソースを塗った生地の上に並べる。チーズをふりかけてオーブンに入れれば、あとは待つだけ。
「それからこれぇ」
 卵と牛乳と砂糖を混ぜて、食パンを浸す。
「フレンチトースト、ですね」
 香ばしい匂いと共に、二人は給湯室から戻ってくるのだった。
「ただいま戻りました」
 クロエが言うと、アトリアが振り返る。
「お疲れ様です。今、ちょうど盛り上がってきたところなのですよ」
 テレビの中では熊とも猫とも風船とも言えない謎生物と、幼い少女が邂逅していた。ゼムは大人しく座布団に胡坐をかき、腕組みをしてじっと鑑賞している。
「ゼムちゃん、静かに見ててえらいわねぇ」
 子供と同列の扱いと「ちゃん」付けに面喰らったゼムだが、すぐに立て直す。麦秋に悪気はないのだ。
「俺は芸術全般に理解がある。それに、これは人の手で書いた絵を動かしているんだろう? なかなか見上げた技術じゃねぇか」
 一口サイズに切られたフレンチトーストを各自がつまむ。不思議の森から来た謎生物は、たどたどしいが人語も介せるようだ。
「ちょっとだけ、ぼくらに似てたり、したり……するかもですね?」
「この生き物が?」
 シセベルは興味深そうに尋ねる。クロエはピンと来るところがあったらしい。
「僕らもその生き物も、どこかよくわからないところからやってきた存在でしょう? そして正体不明の自分を受け入れてくれる『誰か』に出会った点も……。考えてみると、確かに少しだけ似ているかもしれません」
 彼はカスカの説を補強するようにして、同意を示した。
「ワタシたちはこんな珍妙な容姿ではありませんがね」
 アトリアは可笑しそうに言うと、ほのかに微笑んだ。優しい甘さに舌鼓を打ちながら、少しずつ距離を縮める両者を見守る。
「そろそろ時間ですね。僕が行ってきます」
 物語はクライマックス。と、同時にピザが焼ける時刻になった。
「ならば一旦止めるか」
 言うが早いかゼムが一時停止ボタンを押す。
「えっ、僕のことは構わず……」
 ゼムは首を振る。彼の行動を咎める者もいない。
「一緒に見た方が楽しいと思うわぁ」
 麦秋は自分も手伝うと言って立ち上がる。
「……ありがとうございます」
 クロエは見開いていた目を細める。
「では私は取り皿などを。留守を頼みます」
 言ったのはアトリアだ。残る3人が頷く。鑑賞は一休み。しばしとろーりチーズと格闘してから、また再生しよう。
 本人は隠しているが、ゼムの表情にはひそかな安堵が浮かんでいた。このような集まりには似つかわしくないと自覚しながらも、ついやってきてしまったのは彼らが心配だったからだ。一番の不安要素――打ち解けられるかどうか――は問題なくクリアだろう。あとはせいぜい羽目を外しすぎないよう目を光らせるくらいで良いはずだ。
「さ、結末を見届けようか?」
 シセベルが音頭をとる。
「フレンチトースト、まだ余っていますね。頂いて良いでしょうか?」
 ピザは6等分して即時完売。たくさんあったフレンチトーストもアトリアの働きでもれなく完食となった。
 森に生きる謎生物は人間と適度な距離を保ち、少女とは友達のまま、これからも共存していくようだ。ほっと一息つく一同の耳に、妙にテンションの高いシセベルの号令が鳴り響くのだった。

●うしみつどき
「これが特殊メイクってやつなのかな? どう見ても本物の死人の顔色だよね!」
 そう、次にやってきたのは恐怖の時間。ホラー映画タイムだ。ジャンルは所謂ジャパニーズホラー。静かで陰湿な恐怖をお届けしてくれる。もちろん電灯は消され、背後に何者が迫っているかもわからぬ状態での上映会である。
 ぽたり。ぽたり。薄暗い台所で、水滴が落ちる。ぽたり、ぽたっ……。その瞬間、透明な水は真っ赤な血へと変わる。
「おおっ、今のすごい!」
 悲鳴ではなく、歓声をあげるシセベル。ハロウィン限定のハイテンションモードに近い状態のようだ。瞳は輝き、頬は紅潮し、声にはおそろしく張りがある。つまりはものすごく楽しそうなのである。画面内で黒髪の美しい少女が非業の死を遂げても、呪いの連鎖によって家族がひとりずつおかしくなっていっても、彼女にとっては祭りの余興そのものである。
「……ひゃっ」
 耳をぺしょっと折り畳み、悲鳴を上げるカスカ。尻尾もべたりと地に伏して、元気がない。
「大丈夫ですよ、カスカ。ワタシがついています」
 そう言ったアトリアだが、手はカスカの二の腕をぎゅうぎゅうと掴んでいる。ぎゅうぎゅうというより、ぎりぎりだろうか。それはもう痛いくらい。実は声も震えそうだったのだが、からくもごまかすことに成功したのである。
(……アトリさん……ひょっとして、お化けとか、こわかったり……かな?)
 しかし健闘空しく、カスカは大事な友人がホラーを苦手とすることに気づいた。彼女も得意な方ではないのだが、誰かがそばに居ればいくらかは平気。それに怖がってる人がいると逆に怖くなくなるタイプだ。
「あの……嫌じゃなかったら、なんだけど……ぼくと、手、つないでほしいな……って思ったりしたり、なんだりして……」
「いいんですか? あ、いえ、協力しますよ、カスカ。誰かと触れ合っていれば安心感が生まれやすいはずです」
「うふふ〜アトリアちゃん優しいぃ〜」
 麦秋に褒められ、アトリは胸を反らした。
「困っている友人を支えるのは、当たり前のことですよ!」
「アトリアちゃぁん、ぎゅうううぅ〜」
 麦秋はカスカとは反対側からアトリアの腕に抱きつく。彼女の場合、きゃーきゃー言いつつもなんだか楽しそうな様子を見せていたので、単にくっつきたいだけなのだろう。
「もうっ、しょうがないですね!」
 そう言いつつも、アトリアは嬉しそうだ。こっそりと微笑むカスカの表情にも気づくことはないのだった。そして。
「あんなモノ、倒せば問題ありません!」
 映画が終わったころにはすっかり強気になっていた。ちなみにホラー耐性があるゼムは、余裕の表情で彼女らの様子を見守っていた。
「じゃあ、倒してみちゃう?」
 未だノリノリのシセベルが取り出したのは、不気味なパッケージのゲームソフト。こちらも彼女の一押し、ジャパニーズホラーものである。
 ごく普通の女子高校生が呪われた日本家屋に迷い込んだところから、ストーリーは始まる。簡単に言えば除霊アイテムと頭脳を駆使して、脱出を目指すというゲームだ。
『やぁ! やぁ! 来ないでぇ! やぁ! やぁ! 霊よ、消え去れぇ!』
 妙にリズミカルにボイスが流れる。解説すると「やぁ!」が軽めの攻撃、「来ないでぇ!」は被ダメージ。「霊よ、消え去れぇ!」が必殺技である。
「その程度の攻撃じゃ私はやれないよ?」
 淡々と繰り出される攻撃のシュールさと、シセベルの手腕によりなす術なく消えていく霊たち。なにより格闘ゲームでも楽しんでいるかのようなシセベル自身。彼女には悪いが、いまいち怖くない。
「うん、ステージクリアだね。次は……麦秋ちゃん、どう?」
 麦秋へとコントローラーが渡る。
「あっ、敵後ろ!」
 開幕早々、シセベルが言う。
「麦秋さん、逃げないと危ないですよ」
「えっとぉ、クロエちゃん。前に進むボタンはどれかしらぁ?」
 素早く指さして教えるクロエだが、時すでに遅し。主人公の少女は生命力を吸われつくしていた。
「これを押して動かすのねぇ? おもしろぉい」
「おい、そいつ死んでるぞ」
 ゼムが突っ込む。
「えぇ? そうなのぉ?」
 何度目かのトライの後、一同は「あきらめる」というコマンドを選択した。アクション要素のあるゲームは性格的に向いていないようである。
「次はカスカちゃんよぉ」
 シセベルの指示のもと、カスカが発進する。
「あ……危なかった……り!」
 霊の抱擁をしゃがんでよける。
「おーうまいうまい」
 慎重な足取りのためシセベルほどの好タイムは出なかったものの、未経験のカスカもステージをクリアすることができた。
「えっと……ぼくでも、クリア、できたりしたし……きっと、みんなも」
 プレイヤーはアトリアへと交代する。
(怖さの面では、先ほどの映画よりはるかに劣る。これならできるかもしれませんね)
 そんなことを思いつつ。
「どこからでもかかって来なさい。全力で殲滅して差し上げます」
 しかし。
「……先ほどまでと雰囲気が違いませんか?」
「あー、『ナントカモード』に入っちゃったからねぇ」
「『呪いモード』だ、ハロウィン女」
 システム的に言うと少し難易度が増すらしい。しかし問題はそこではない。ボロボロだった家は赤い血のりで彩られ、BGMも恐怖度を増しているのだ。
『許サナイ……』
 突如聞こえたか細い声に、声なき悲鳴を上げるアトリア。
「さすがに驚いてしまいました。心臓には良くないですね」
 ひきつった笑みを浮かべる彼女に助け舟を出したのはクロエだった。
「よければ僕も、この難しいモードをやってみたいです。いかがでしょう?」
「ええ、構いませんよ」
 器用なクロエは、すぐにコツをつかんだようだ。
「やるな、青年」
「あ、ロングヘアの女性が出て来ましたよ! 彼女が親玉ですか、シセベル?」
「あぁ、うんそうだったかもしれない」
 ステージのボスである屋敷の娘の霊は、ザコ幽霊とは桁違いに強い。
「もう少しですよ、クロエ!」
「がんばってぇ」
「はい……! あっ、しまった」
 善戦したが、あとほんの少しの所で敵の攻撃を受けてしまった。
「ゼムさん、お願いできますか」
「良いだろう」
 説明書は読破済み。ボスキャラについても、クロエが弱点を突き留めている。顔を攻撃されると怒り狂い、隙が大きくなるのだ。
「そこだ!」
 徹底的に弱点を衝き、無事クロエの仇をとったゼム。これくらいのことはできて当然なのだが、皆が口々に褒めるのには閉口した。眉間にしわを寄せ耐えようとしてみるが、少しくらいは照れが顔に出てしまったかもしれない。
「少しはやるようですね」
 アトリアも素直じゃない称賛を投げてくれる。
「まぁ……味方の仇は捨て置けんからな」
 ゼムは髪をかき上げて、くつくつと笑った。会心の笑いということならば、きっとセーフである。
「ん、まだ何かあるようだが?」
 クリア後のムービーはとても良い出来な上、理解すればするほど後味の悪いもので、ほぼ全員の体感温度が下がったとか。

●おやすみなさい?
「そろそろお布団を敷いた方が良いでしょうか?」
 丑三つ時も過ぎ、クロエが提案する。ジャージにパーカーというラフなスタイルの彼はすぐにでも横になれそうだ。アトリアとゼムが布団敷きを手伝い、麦秋、カスカは食器類の片づけ、シセベルは次のDVDの吟味とソフトの片づけをしている。
「皆、適当なとこで寝ちゃっていいからね。私はまだまだ起きてるつもりだけど」
 ここで寝ると答えたものは誰一人いなかった。しかし、動物ドキュメンタリーの魔力はなかなか侮れなかった。雄大で穏やかなBGMに、のんびりと草を食む草食動物たち。そして極め付きは赤ちゃんたちの寝顔。BGMはオルゴールの音色へと切り替わる。
「かわいいわねぇ……」
「そ、だったり……」
 麦秋、カスカ、陥落。
「アナタは寝ないのですか?」
「英雄なんだから強いて寝る必要はない。知っているだろう?」
 ゼムはアトリアの問いに答える。と、同時に。
「ちょっとはしゃぎすぎたかなぁ……」
 お祭りモードを終了したシセベルが倒れこむ。
「では僕も少しだけ。おやすみなさい」
 クロエは礼儀正しく挨拶して、布団に入る。
「……ずいぶん静かですね。寝ていないのでしたら、こういったものに興味があるとか?」
 素直に「はい」とは言わないのがこの男。
「お前はどうなんだ」
「質問に質問で返しましたね? 怪しいです」
「ネジ外すぞ」
 物騒なようでいて、間の抜けた会話にシセベルが噴き出した。完全に眠っては居なかったらしい。同じくまだ起きていたクロエは、笑いをこらえることに成功していた。
「ハロウィン女、何がおかしいんだ? そこに座って説明してみろよ」
「え、いいの? ゼム君ってば素直じゃないんだねって」
「よし、寝ろ。難しいなら俺が気絶させてやっても良い」
 やはり物騒な会話は、無論実現するわけはない。
「なんかさ、楽しかったね」
 仰向けに布団に身を投げながら、独り言のように呟くシセベル。アトリアは頷いた。
「ええ。集まりを開いてくださってありがとうございます、シセベル」
「まぁ、その点はご苦労だったな」
 なんともいえないゆるい空気の中、会はとりあえずの終了を告げたのであった。
 ――撤収の時間が来るまで、もう少しだけ、おやすみなさい。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【シセベル(aa0340hero002)/女性/20歳/エージェント】
【アトリア(aa0032hero002)/女性/18歳/ケーキの謎を求めて】
【クロエ(aa0034hero002)/男性/13歳/エージェント】
【麦秋(aa0213hero002)/女性/14歳/クラッシュバーグ】
【ゼム ロバート(aa0342hero002)/男性/26歳/純粋な男】
【カスカ(aa0657hero002)/女性/20歳/エージェント】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました、高庭ぺん銀です。この度はご指名ありがとうございました!
ゲームと映画については、実在のものをモデルに少々アレンジを加えております。
個性豊かで、まだ未完成の距離感が微笑ましい皆さん。このお留守番会で「前よりも打ち解けられた」と思っていただけたら幸いです。
作品内に不備などありましたら、どうぞリテイクをお申し付けください。また皆様にお会いできる時を楽しみにしております。
SBパーティノベル -
高庭ぺん銀 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年04月24日

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