▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『 本邸 伏見家にて 』
杏子aa4344)&世良 杏奈aa3447

プロローグ

 遠くに響くリズミカルで硬質な音。
 カタンカタンカタンカタン。
 それは水の中で聞くように不明瞭にきいていた。
 『世良 杏奈(aa3447) 』 はまどろみの中。普段の疲れを抱きかかえて、重たく夢へと沈んでいく。
 そこは暗い闇、あたり一面、声も反響しない何もない空間でぽつりと一人。
 けれど杏奈は不安を感じない、この闇は温かい、春の日差しに照らされているような安心感、そして気だるさ。
 そんな彼女の肩を誰かが揺らした。
 杏奈はゆっくりと瞼を上げる。
 次の瞬間。目の前に広がったのは、花畑。白い花が咲き乱れる丘で。
 背を向けて佇む少女。
 銀色の髪は風になびき、花はその花弁を散らした。
 杏奈は突如不安になる。
 その花弁と共に少女もどこかに消えてしまうのではないかと、けれど違う。

「あんな」 

 少女は力強く踵を返し。

「杏奈おきな」

 そして。杏奈に何事かを伝えようと、手を伸ばし。
 そして。
「杏奈!」
 杏奈は目が覚めた。眼前には少女と同じような銀糸の髪。しかし目の前で肩をゆするのが夢の中の少女でないことはわかった。
 実の母『杏子(aa4344)』である。
「お母さん、如何したの?」
「終着点だよ。それにしてもよく寝てたね、疲れてるんじゃないかい?」
「ううん、大丈夫、春だから気持ちよくなってつい」
 そう告げて杏奈は立ち上がる。直後後ろ髪をひかれたような気がして再度
振り返っても、そこには誰もいなかった。

本編

 都心から電車を乗り継ぎ野と山を越えること、数時間。母の実家は山奥の村にあるそうだ。
 一応勢力拡大の意味合いで都心にも伏見家の拠点はあるのだが。地域や伝承、しきたりなどと結びついて本拠地はこちらへ移せないらしい。
 その伏見家は代々歴史深く。重たい家柄だったのだが。
 そんな家柄の娘である杏子が、なぜ家を出ることができたのかについて。杏奈は全く知らなかった。
 だから杏奈は伏見家について知っている情報は少なく、その限られた情報から察するに、自分は伏見家にかかわらない方が良いと思って、その話題に触れることを避けてきたのだ。
 だから今回母が自分を呼んだことが意外だった。
 単純に人手が足りなかったのか。それとも自分を伏見家の人間に逢わせたかったのか。
 母は考え深い人間だ。きっとこの事件に関わっているうちに自分の知りたいことの答えは得られるはず。
 そう思って、夫を置いてここまでやってきた。
 杏奈は重たい荷物を担ぎ直して、その門を見あげる。
 呼び鈴を母が鳴らすと短いやり取りの後、その扉が開いた。
 杏奈と杏子はその大型の門扉を潜ると使用人を控えさせた『伏見 菊男(NPC)』に迎えられた。
「ここに来るのも何年振りかねぇ」
「私、初めてかも?」
 そうあたりを見渡す杏奈、昔ながらの日本家屋は都会で暮らしている身からするとそうとう珍しい。これが母の実家だと思うと感慨深いものがある。
「それにしてもお前たち」
 菊男は使用人に二人の荷物を運びこませると、呆れたようにつぶやいた。
「どっちが娘で、どっちが母か分からぬな」
「威厳とかで丸わかりだろうに」 
 そう杏子がため息をつくと、菊男はまずは早速蔵へと二人を通した。
「それにしても、物々しいね」
 そう杏子は廊下の端々に視線を投げながら菊男に告げる。
「ああ、リンカー用のトラップを仕掛けておいたからな」
 トラップ、その言葉に杏奈は眉をひそめる。
「ああ、今回の事の原因は、家宝を祭る蔵。そこにリンカー用の警報装置の類を設置していなかったせいだ。そのせいで侵入を許し、まんまと薙刀を奪われた」
「薙刀ですか?」
 杏奈は問いかける。本来叔父と呼ぶべき存在の背へ、しかしそう呼ぶのはためらわれた、あからさままに菊男の背から拒絶のオーラを感じていたからだ。
「ついたぞ、ここが蔵だ」
 そう重たい鉄扉を菊男が開け放つと冷えた風が肌をなぜる。その蔵は他にも甲冑やら、矢やら何やらが仕舞い込まれていたが、一番奥の社のような部分が開け放たれ、そこには何も祭られていなかった。
「なるほど、ここまで綺麗にやられると逆にすがすがしいねぇ」
 そう杏子は台座や周辺の壁など触りながら告げる。
 彼女にはこの蔵がどれほど強固なのか分かっているのだ。
「それにしても」
 杏奈はそんな母を眺めながら告げる。
「盗まれた薙刀が家宝だという事は聞いているけど、どういう物なの?」
 その言葉には菊男が答える。
「それは、我が一族にまつわる伝承から話をする必要がある」
「おお、話しちまっていいのかい?」
 そう杏子は驚いたように告げた。
「伏見の血を引く娘だからな」
 そう菊男は一つ目を閉じると、重々しく口を開いた。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
『世良 杏奈(aa3447) 』
『杏子(aa4344)』
『夢の少女(NPC)』
『伏見 菊男(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
WTツインノベル この商品を注文する
鳴海 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年05月02日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.