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『その隣にいるのは―― 』
ダシュク バッツバウンドaa0044)&アータル ディリングスターaa0044hero001

BL

「じゃ、行ってくるぜ」
「ああ」
 孤児院の兄弟と飲みの約束があると先日から話していたダシュク バッツバウンドは嬉々として出かけていった。前日から飲みに行く兄弟はこういうやつでと延々と楽しそうに話していたダシュク。それを聞き続けたアータル ディリングスターはやれ、さっさと行けと追い出し、いつもの通り過ごす。賑やかな人間がいなくなったおかげか、もう一人の同居人との読書は有意義なものとなった。
 そして、深夜も間近という時刻。静寂に包まれた室内には、ぺらと紙を捲る音が響く。ふと、休憩がてらに時計を見つめたアータルはその時刻までに帰ってきていないダシュクに呆れともとれる溜息を吐いた。もう一人の同居人はとうの昔に床に就いていた。そのため、アータルの溜息について尋ねるものなどいやしない。
 それにしても同居人でもあり、恋人でもあるあの男は今もどこかを飲み歩いているのだろうか。そう思案するも頭を振り、考えるのをやめた。
「……もう少し読んでからにするか」
 そもそも帰りを待ってやる義理などないと再び本に目を落とし、読書を再開した。

「うーい、あーたる、ただいま!!」
 がちゃと音を立てて開けた扉からダシュクが声を上げて、帰宅した。きちんと発音ができないあたり、よほど飲んだのだろう。しかし、足取りはしっかりとしており、ソファで読書にいそしんでいたアータルに真っ直ぐ辿り着くとその背に抱き着いた。
 ぐっぐと容赦なくかかるダシュクの体重。そもそも、アータルよりも体格も体重も後ろから抱き着いているダシュクの方が上回っていた。だが、「うるさい、もう一人が起きるだろう」と注意を口にしながら、容赦なく投げ飛ばした。どたんと大きな音がたってしまうのも当然なのだが、それには仕方がないこととばかりに目を瞑った。
「いってぇ」
「まったく、酔っ払いすぎだ」
 投げ飛ばされた衝撃でどこかを打ったようで、打ったところをさするダシュク。そんな彼をアータルは腰に手を当て、見下ろした。これで少しは酔いも醒めるだろうと思ったのだが、どうやら変なスイッチを押してしまったらしい。
 ぐすりと鼻を鳴らすダシュク。それだけでは止まらなかったようで黒い目からはぼろぼろと涙がこぼれ始める。
「……俺の初恋の義姉ちゃんがさぁ、今度結婚するんだってよ」
 急に語り始めたダシュクにそれがなんだとアータルは冷ややかな目で見下ろす。そんなアータルが何のその、ダシュクの言葉は止まらない。今回の飲み会は近況報告会でもあったらしく、あいつはこうで、と語り合ったらしいのだが、その中に初恋の人の話もあった。結婚して幸せになるのは大変喜ばしいことなのだが……。
「大きくなったら、結婚しようって、約束……」
 そこまで言えば、十分だった。幼い約束を思い出してぐすりとまた鼻を鳴らしたダシュクに、なんと大人げないと呆れる。しかし、目元を隠して泣くダシュクはそんなアータルの様子に気づくはずもなかった。アータルは小さく溜息を吐いた後、仕方ないと彼の隣に腰を落とした。
「大切な人だったんだな」
 その言葉に無言で頷いたダシュク。それにここは触れてもいいのだろうかと迷いながらも彼に手を伸ばし、ぐしゃぐしゃと白い髪を撫でまわした。
「……大好きなんだ」
 たった一言。それだけなのにその言葉には全て込められていて、ダシュクを撫でていた手が止まる。その言葉になんと声をかければいいのか。唇を噛み悩んだ。
「俺がいる」
 人によっては嫉妬にもとれる言葉に涙に潤んだ目を開き、まじまじとアータルを見つめる。それに恥ずかしがることなく、真っ直ぐに見つめてはっきりと言葉にする。
「俺がいるだろ」
「ああ……」
 目から涙を零しながら、不格好な笑顔を浮かべるダシュク。それで気が晴れたのだろう涙を拭うとニカッといつも通りの笑顔に早変わり。
「そうだよな、お前がいるもんな!」
「お前はそうやってバカみたいに笑ってる方が似合ってる」
 嬉しそうなダシュクにさっきのような泣き顔を似合わないと遠回しにいうアータル。しかし、それは相手に伝わらなかったようで……。
「うるせー、バカってなんだよ」
 異議ありとばかりにガバッと抱き着いてくるダシュク。ただし、先程まで酒を飲んでいた人間である。近くに座った時からわかっていたことだが、更に近くなることでそれは強くなる。
「近づくな、酒臭い」
 ぐぐぐっとダシュクの顎を押し上げ、自身の体から離そうとするアータル。ダシュクとしたらそれは面白くない。
「なんだよ、さっきまで隣に座ってただろ」
「さっきまでは我慢していたに決まってるだろ」
 なにを当たり前のことをとばかりにいうアータルにムスッとなったダシュクはぐっと力を籠める。
「第一にお前は酒の飲みすぎなんだ。こんな時間まで飲み歩くとは」
 アータルの小言が始まり、こっちにだって言い分はあると声を上げ、次第にヒートアップしていった。
 それの終了を告げたのはもう一人の同居人がうるさいと乱入して来たがためだったとか。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【aa0044 / ダシュク バッツバウンド / 男性 / 27歳 / 人間】
【aa0044hero001 / アータル ディリングスター / 男性 / 23歳 / ドレッドノート】
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東川 善通 クリエイターズルームへ
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2017年05月10日

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