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『プレゼント大作戦! 』
アルaa1730)&烏兎姫aa0123hero002)&八咫aa3184)&aa4884

●いってきます!
「この後、シャンゴリラに行かない?」
 とある依頼の帰り道、たったいま思いついたという様子でアル(aa1730)が言った。以前より日程がわかっていたボランティア活動であったため、肉体的にも精神的にも疲労は少なめだ。保護者達はすんなりとわがままを聞き入れてくれた。
「疲れたよね? 皆はそこのカフェで休んでていいよ!」
 大きすぎるくらいの声音で八咫(aa3184)が言った。言葉も台本でもあるかのような棒読みだ。心配する保護者達に鴨(aa4884)が言い返す。
「も、もう子供じゃないカモよ! たまには自分たちだけで遊びたいカモー!」
 着ぐるみ越しでもわかるほど、そわそわと挙動不審だ。
「あそこのカフェのパンケーキ、今すっごく人気なんだよ! 一度くらい食べても損はないんじゃないかな! コーヒーとか飲み物系もおいしいって評判だし」
 そう勧めるのは烏兎姫(aa0123hero002)だ。いつもなら流行モノ大好きな彼女が、真っ先にパンケーキに飛びついていたはずだ。
 不自然な点は多々。しかし保護者達は4人の熱意に押され、主張を受け入れた。彼らに理由を訊けば、揃ってこう答えただろう。だってうちの子は悪いことをたくらむ子じゃないから、と。
「あ、危なかったカモ……」
 鴨が短い着ぐるみの手で、胸の辺りをなでおろす。
「とにかくこれで一安心! 八咫たちの『計画』、実行のときなんだよ!」
「八咫君、まだ大きな声出しちゃ駄目なんだよっ!」
 気合が入った様子で宣言する八咫の口を烏兎姫が抑えた。鴨も焦った様子でバタバタ羽ばたいている。幸い、カフェのガラス越しに見えた保護者たちはこちらを見ていないようだ。
「とりあえず移動しよっか。この近くはファッション系のお店が多いみたいだけど、どこかいきたい店はある?」
 アルが問うと、3人は首を横に振る。
「じゃ、最初はボクに付き合って」
 彼らの計画。それは相棒へ感謝の気持ちを伝えるため、プレゼントを贈るというものだった。

●悩んで迷って右往左往
 初めにやってきたのはアクセサリーショップ。
「ネックレスに指輪、ヘアアクセもあるよ! なんだか自分のまで欲しくなっちゃうんだよ!」
 烏兎姫が目を輝かせる。
「今年は大ぶりでインパクトのあるデザインがトレンドなんだよ!」
「なるほどー!」
 八咫がぽんと手を打つが、トレンドというものをわかっているかは微妙である。
「わぁ、きらきら〜! 綺麗なんだよ〜!」
 カラスのワイルドブラッドであるせいか、むしろ光り物のアクセサリーに視線を奪われているようだ。
「あっコレうときちゃんに似合いそう……!」
 ウサギモチーフのペンダントトップにアルが目を止めた。
「ありがとー! アルくんにはこれが似合うと思うよ!」
 烏兎姫が指さしたのは大きめの白いリボンがついたカチューシャだった。
「これなら持ってる服にも合うかな」
「ボクも新しいアクセが欲しいけど……」
 烏兎姫は財布の中身を確認し、唸っている。プレゼントの予算を残すとなるとちょっぴり厳しいようだ。
「アルさんはプレゼント、決まってるカモ?」
「うん、何を探すかは決めてきたんだ。イヤリングなんだけど、どんなのがいいかなぁ?」
 アルは即答した。
「アル君はえらいねー! ヤタも、早くどのお店に行くか決めないとなんだよー!」
 八咫はアルを尊敬のまなざしで見る。褒められるのが何だかくすぐったくてアルは笑った。
「ボクには決めるきっかけがあっただけだよ」
 彼女は色とりどりの飾りがついたピアスたちをゆっくりと見回す。
「おねぇさんが相棒になってすぐの頃。機械化したばかりの耳が何となく嫌で馴染まなかった時に、彼女が耳飾りをつけてくれたんだ。少し嫌な気持ちが減った」
 だから感謝の気持ちを伝えるプレゼントとして、真っ先に思い浮かんだのがイヤリングだったのだ。
「いい話カモー!」
「ぜったい喜んでもらいたいね!」
 鴨が言うと、八咫もうんうんと頷く。
「アル君、ボクたちも協力するよ!」
 烏兎姫はアクセサリーへの未練が飛んで行ってしまったらしい。今は使命感に燃えている。
「わー、鳥の羽みたいな飾り! おしゃれだね!」
「本当カモ! あっ、でも、探してるのは鴨や八咫さんへのプレゼントじゃないから、きっとこれは違うカモ」
「あ、そっかー。相手の好きなものを選ぶって難しいんだねー?」
 八咫と鴨は顔を見合わせて頷き合っている。
「この山吹色の石、アル君の髪の色に似てて綺麗なんだよ!」
 アルは自分の毛先を掬って、ありがとうと微笑む。
「色かぁ……。赤、青、緑……あんまり派手すぎるのも、服を選んじゃうかなぁ? けど、シンプルすぎるのも寂しいし」
 そのとき、アルの目に飛び込んできたのは鮮やかな桃色。いつも優しく彼女を見つめる瞳と同じ色。
「これ……!」
 一瞬で心は決まった。
「お会計してくる! ちょっと待ってて!」
 大きな瞳をきらきらと輝かせ、アルはレジへと向かう。店員が逃げるはずもないのに、もどかしくて足は速まる。
「お待たせ! ラッピングしてもらったよ!」
 リボンをかけた小さな箱がアルの手に乗せられている。仲間たちへの報告を終えると、彼女はそれを大事に袋へと戻した。
「次は誰のを探す?」



 お次は鴨の番だ。
「鴨にいつも美味しいご飯を作ってくれてありがとうカモ! っていいたいカモ!」
 エプロンを探したいという彼の要望に応え、一同はキッチン売り場へ。大型の店舗だけあって種類はかなり充実しているようだ。
「わぁ、迷っちゃうカモ!」
 きょろきょろする鴨の肩を、烏兎姫が叩く。
「まずは種類を絞ったらどうかな? 割烹着はさすがに違うだろうから、定番のタイプか、腰に巻くタイプかな?」
 烏兎姫はたたんであったギャルソンエプロンを広げると、腰に巻いてポーズをとる。
「烏兎姫さん、クールな感じで素敵カモ!」
「えへ、褒められちゃった。鴨君的にはどっちが良いのかな?」
 鴨は一生懸命料理をしてくれる相棒の姿を思い描く。
「迷うけど……前掛けがある方が服を汚さなくて良いと思うカモ!」
「それなら一番たくさん種類があるはずだよ! 好きなデザインを選びほーだいなんだよ!」
「頑張るカモ!」
 鴨は気になるものを手にとっては見比べている。
「ねーねー! アル君は何見てるの?」
 アルの背中に八咫が飛びつく。
「歩きながらお掃除の出来るスリッパ! デザインも可愛い熊さんだから、ちょっと誘惑されてたんだ」
 見ればずらっと動物の顔が並んでいる。キッチン用品売り場は、イメージよりもずいぶんと華やかだった。
「ヤタ、お料理の写真がたくさん飾ってあるから、おなかすいてきちゃったんだよー」
 八咫は別の誘惑に耐えているらしい。
「プレゼントの方はどう?」
「まだ考え中なんだよー。たくさん喜んでもらって、たくさん褒めてほしいのになー」
 眉を下げる八咫にアルは助け舟を出す。
「英雄さんはどういう人なの?」
「とにかくすっごいんだよ!」
 説明は要領を得なかったが、彼女が英雄を大好きであることは十分すぎるくらい伝わった。
「それじゃあ……相手の好きなものを考えてみるといいかも!」
「好きなもの? えーと、いけめんとー、おさかなとー、かつおぶしとー……」
 八咫が指折り数える。ついに、ぐぅとお腹が鳴った。
「おいしいものをプレゼントしたら褒めてもらえるかなー? でも食べたらすぐなくなっちゃって寂しいかもなんだよー!」
 いつものようにかしましく、しかしいつになく真剣な表情で、八咫は悩み入るのだった。
「みんなー、ゴージャスなエプロンを見つけたカモ!」
 鴨が持っていたのは、フリルたっぷりの純白エプロン。新婚さんでもなかなかハードルが高い代物だ。見せられた3人は思わず噴き出してしまった。
「あれれ? 駄目カモ?」
 鴨は首を――というか体ごと――傾げる。烏兎姫は無地のエプロンを何点か手に取った。
「男の人なら、こういう感じの方がオススメなんだよ」
 アルは、鴨のプレゼントの相手を思い浮かべて苦笑する。
「フリルいっぱいで可愛いし、うちのおねぇさんだったら喜んでくれたかもね。いや、むしろボクが着せられちゃうかな?」
「だったら〜……」
 何か思いついたらしい烏兎姫は、手慣れた様子でハンガーをかき分ける。
「うちのパパはこんな感じが似合いそうなんだよー!」
 アジアン風の柄が入った明るい色のエプロンを見つけ、烏兎姫が微笑んだ。
「八咫はコレがいいと思うんだよ!」
 八咫は猫柄のエプロンを手に取る。
「うんうん、どれも良い感じカモね〜。……って、肝心の鴨の分が決まってないカモ! クワアアアッ!」
 ばさばさと羽ばたく鴨。エプロンは自分の相棒向きではないと気づいた八咫は、猫柄エプロンとお別れし、そばにあったエプロンを手にとる。
「わぁ! 鴨君見て!このエプロンの鳥さん、鴨君にそっくりなんだよ!」
 黒いエプロンに刺繍されたのは羽ばたく鴨。まるっこくデフォルメされているせいで、より彼に似ている。
「これは……運命を感じたカモ! 鴨はこれに決めたカモ!」
 鴨がもふもふの体で跳ねる。
「えへへー、ヤタすごいでしょ? えらいでしょ?」
「すごいしえらいカモ! ありがとうカモ!」
 両手を取り合い、跳ねる二人。きっとここまでそっくりならデザインならば、相棒も喜んでくれることだろう。

●休憩タイム
 ふたり分の買い物を終えたところで、彼らの足は止まってしまった。
「パパに贈るんだけど、いざってなると困るよね……何がいいかな……」
 烏兎姫が言うと、八咫が同意を示す。
「うーん、ヤタも何にしようか迷うんだよ……む! 何だか良い匂いがするんだよ!?」
 かぐわしいソースの香り。店員がピックを動かしながら、呼び込みを行っている。
「たこやきはいかがっすか〜! トッピングはチーズに明太子、どっさりおネギもおすすめだよ〜!」
「美味しそうカモ!!」
 ぷきゅぷきゅ、てちてち。鴨はお店へとまっしぐら。和風のねぎたこやきを注文する。
「ずるいんだよー! ヤタもヤタもー! おじさん、いちばん美味しいのをちょーだい!」
 八咫は店主おすすめのシンプルなたこやきを買ったようだ。
「ちょっと休憩しても良い頃かな、アル君?」
「だね! 頭脳労働には甘いものだよ」
「だったら『39アイス』のスプリングミントが食べたいんだよ!」
 烏兎姫が雑誌で見たという新発売のアイスを片手にベンチへと向かう。
「アツアツで美味しいカモー! アルさんもおひとついかがカモ?」
 しょっぱいものも欲しくなったところで差し出された、ねぎたこやき。
「これが……かもネギ……」
 二重の意味で。
「クァ?」
「なんでもないよ。鴨さんもアイス一口どうぞ」
「アルくーん、ヤタもー!」
 しばし使命を忘れて、おやつタイムを楽しむ。英気を養った彼らは再びプレゼント探しへと繰り出した。

●決断のとき!
「ねぇねぇ、あれ見に行こうなんだよー!」
 烏兎姫の手を引いたのは、数秒前まで隣で悩んでいた八咫だった。彼女が見つけたのは楽器店で試し弾きをする人々。
「烏兎姫君、みんなとっても楽しそうだね! ヤタもやってみたいんだよ!」
「うん! 寄り道しちゃおっか」
 思考に集中しすぎて、烏兎姫は聞き流してしまっていた。音楽コーナーに流れるたくさんの音。わくわくするようなメロディ。
「アルさん、ギターが弾けるカモ? 格好良いカモ!」
「ありがとう! 今も新しい曲を練習中なんだ〜」
 アルがアコースティックギターをぽろりと鳴らすと、鴨がぱふぱふ手を叩く。
「烏兎姫君、はやくはやくー! ヤタはこっちのおっきい楽器がいいんだよ!」
 八咫はキーボードに興味を示している。待ちきれず何かのボタンを押すと、自動演奏が始まり「誰が弾いてるの?!」と驚く。
「……うん。ボクらしいプレゼントかも」
 烏兎姫がプレゼントの候補として選んだのはオルゴールだった。ディスプレイされている箱を開けてみると、繊細なメロディが流れ出す。
「キレイな音だなー。あ、隣のはデザイン一緒だけど違う曲なんだ」
 一口にオルゴールといっても、種類は様々。ラインストーンで彩られた小ぶりな箱もあれば、木造りの大きな箱もある。
「パパが喜んでくれるものがわからないな……」
 アルは烏兎姫とは逆回りに店内を回ってみる。
「これは?」
 宝石箱のようなオルゴールを開けると、小指ほどの小さなカップルが社交ダンスを始めた。
「なにこれたのしいカモ!!」
「あはは、可愛いんだよ!」
 その笑顔を見ながら、烏兎姫は考える。
(おかしいなぁ。想像の中のパパにどれを渡してみても、嬉しそうに笑って頭を撫でてくれるんだよ)
 本当はおかしくなんてない。彼女が頭を悩ませて選んだ贈り物を、彼が愛しく思わないはずがないのだ。烏兎姫は決心を固めるように深呼吸した。
「よーし、決めた!」
 悩んだ末に選んだのは、一番好きな音を奏でたオルゴール。
「決まったの? ヤタも聴きたい!」
「ボクも!」
 烏兎姫が小さなオルゴールのねじを回すと、愛嬌のある音色がコミカルで明るい曲を奏でた。



「最後はヤタだね!」
 ここへきてからずっと相棒の顔を思い浮かべていた。寄り道もしたけれど、思いは真剣そのものだった。
「皆、ヤタについてきて!」
 思い出したのは、入り口付近にあったお店。そこにあった鮮やかな黄色。
「ここは、お花屋さんカモ?」
「そうなんだよ!」
 八咫は「これぞ名案!」と言うように、胸をそらす。
「もしかして、花束?」
「アル君、正解なんだよ!」
 きゃいきゃいとはしゃぐ声を聞きつけ、店員がやってきた。八咫が店員と話している間、他の3人は花屋を探検する。
「お金のなる木カモ? まさか……これを育てたら大金持ちカモ?!」
 不思議な名前の植物を発見したり。
「そういえば最近、お部屋の中でツタを育てるのが流行なんだって」
「へぇ、観葉植物なんだ! なんだか茨姫のお城みたいだね」
「アルくんはロマンチストだね! さすがアイドルって感じ!」
「えへへ。でも実際に育てるならこっちのハーブかな? お料理に使えそうだからね」
 邪魔にならないよう、小さな声で笑い合ってみたり。
「これと、これと……あと、あのお花も可愛いんだよ!」
 八咫は良いと思った花を次々に指さす。チューリップに、百合に、カーネーション。店員の手には見事に黄色の花ばかりが集まる。けれど店員は彼女の意見を否定したりはせず、さりげなく脇役になる花や葉を添えて美しい花束を作ってくれた。
「ヤタ、自分で選べたよ! すごい?」
「ええ、あなたは優しい子ね。花束を貰える人がうらやましいわ」
 店員の言葉に八咫は満面の笑みを浮かべた。

●サプライズ! 届け、この思い!
「すっかり遅くなっちゃったんだよー! 早くカフェに行かなくちゃ!」
 アルと八咫が鴨の手を引き、烏兎姫がふわふわの背を押して、走る、走る。
「待っててくれるかな? 帰っちゃったりしてないよね?」
 八咫がはっとするが、皆笑って否定する。相棒を信じているのだ。
「そうだよね! ヤタたちのプレゼント、ぜったい喜んでくれるはずだよね!」
「そうカモ! びっくりして腰を抜かしちゃうカモ!」
 烏兎姫が無邪気に笑った。
「驚いた顔も喜んだ顔も楽しみなんだよー!」
 アルが微笑んで頷く。笑顔も、依頼のときの真剣な顔も、無茶したときに自分を叱る顔さえも大好き。彼らとならこの思いを共有できそうだ。
「相棒には沢山心配かけさせてると思う。でも信頼してなきゃここまで心配させることはしないよね」
 大好きな人たちが待つカフェまであと少し。伝えたい言葉は少しずつ違うだろうけど、根っこの思いはみんな一緒。
 ――いつもありがとう! これからもよろしくね!
 そんな思いが詰まったプレゼントは、きっと相棒たちの宝物となることだろう。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【アル(aa1730)/女性/13歳/解け合うシンフォニス】
【烏兎姫(aa0123hero002)/女性/15歳/ショッピングモンスター】
【八咫(aa3184)/女性/12歳/木漏れ日落ちる潺のひととき】
【鴨(aa4884)/男性/12歳/エージェント】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました、高庭ぺん銀です。この度はご指名ありがとうございました。
皆さんの三者三様ならぬ四者四様の可愛らしさを表現したく、奮闘した次第です。
キャラクター描写には注意を払っておりますが、イメージの違いなど発生しているかもしれません。何かありましたらご遠慮なくリテイクをお申し付けください。それでは、またお会いできる時を楽しみにしております。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
高庭ぺん銀 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年05月23日

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