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『姫乃とひかり 』
彩咲 姫乃aa0941

「はじける笑顔は情熱の炎。ブルーム・フレイム」
「お〜」
「吹き荒れる豊穣の春風、ブルーム・ウィンディ」
「お〜!」
 室内にこだまする高らかな名乗り。音の発信源は部屋の真ん中にあるPCからのようで、その前には二人の少女が肩を寄せ合って座っている。
『彩咲 姫乃(aa0941)』は『三浦 ひかり(NPC)』のあまりの食いつきに嫌な予感を感じながら感想を問いかけた。
「これ、前の任務の映像なんだけど……」
「すごい! 間近でリンカーさんたち見たことないから、すごいすごい」
 戦いを間近で、見たことがないという意味だろう、リンカーなら隣にいる、姫乃がそうだ。
「どうだ? アイドル活動の参考になるかと思って持ってきたんだけど……」
「こんなフリフリな格好で恥ずかしくないの!?」
 画面から視線を離さずひかりは興奮ぎみに言った。
「ひかり……」
 姫乃は思った、ひかりの言葉遣いを矯正した方がいいと。
 彼女からすれば純粋な問いかけなんだろうが、聞きようによっては皮肉めいて聞こえる。
「私だったらちょっとつらいな。スカートの中とか見えそう、はずかしい」
「俺だって恥ずかしかったよ」
「でも、のりのりだね」
「仕事だからな」
「ねぇ! 変身して見せてよ」
「お断りだ!」
 姫乃が強く答えるとひかりはくすくすとお腹を抱えて笑う、目に涙をためて床を転がった。それを見て姫乃も微笑む。
「それにしてもいいなぁアイドルさん達と一緒だったんでしょ?」
「でも命のやり取りしてるからなぁ、楽しんでる暇はないと思うぞ?」
「でも、それでも生のアイドルさん達をこんなに近くで見られるのは、いいなぁ」
「ひかりはミーハーだな」
「みーはーって?」
 固まる二人。厳密な意味を二人は知らない。
 なので姫乃は動画のウィンドウを小さくして検索画面をPCに表示する。
 その隣でわくわくと言った感情を隠さず笑っているひかり。
 そんなひかりをみて姫乃は思う。
 最近ひかりはとても明るい。しかも日陰で謳うことも無くなったと聞く。
「あ、でた。『世の中の流行や芸能人の動静に今まで無知の人が熱中したり、影響を受け知ったかぶりの行為をする者(主に若年の女性)に対しての呼称』らしいな」
 そんなひかりに影響を与えているのは姫乃だと、職員にいわれた。
 ありがとうと。お礼も言われた。
 だが姫乃にとってそれはぴんとこない感謝だ。
 だって自分は、ひかりとただ遊んでいたいだけなのだから、お礼を言われるようなことはしていない。
 そんなひかりでも、時折かつてのような影を見せることがある。
「知ったかぶりじゃないもん。昔からおいかけてるもん」
「ああ、そうだな、ひかりは違うよな〜」
「あ、ぜったい、信じてくれてない、ひどい〜」
 そう二人でひとしきりからかい合ったあと、ひかりは、自分の足を自分の腕でずらして完全に横になる、そして電灯が眩しいのか腕で目を覆った。
「共鳴ってどんなかんじなんだろう。」
 彼女の足は感覚が全くないらしい形や機能は全くもって人と変わらないものがそろっているらしいが、神経だけがダメなんだそうだ。
 それを姫乃は職員から聞いた。
「私もリンカーなりたいなぁ、そしたら歩けるようになるんでしょ?」
 リンカーになりたいなんて軽々しく言わない方がいい。
 普段の姫乃ならちょっときつく言うところだっただろう。だが足の事を引き合いに出されては、怒るに怒れない。
「ああ、でもなぁ、危ないしなぁ」
 姫乃はそうあいまいな言葉を口にすることしかできなかった。
「ナイアちゃんも契約して戦うんだよね?」
『ナイア・レイドレクス(NPC)』はかつて姫乃が助けた少女の名前。
 そんな少女が今はひかりと仲がいいというのは、運命とは皮肉だと姫乃は思ったものだ。
「こんど、ナイアちゃんが姫乃と遊びたいって言ってたよ」
「望むところだな」
 そう言って姫乃もひかりの隣で横になる。
「ナイアちゃんはね、私の日陰に最初いたんだ」
「ああ、あの孤児院裏の?」
 姫乃とひかりが最初に出会った場所でもある、あそこはひかりの特等席だ。
「うん。だから私は言ったの、一人でいても楽しくないでしょって。姫乃ならそう言うんじゃないかって思って……。そう言ってみたの」
「うん、それで?」
「気が付いたら仲良くなれてた。でもそうやって声をかけてくれる人いてくれて、どれだけ嬉しいか私は知ってるから、だからイケる! とは思ってたんだけどね」
 姫乃が首だけひねって姫乃の方を向いた。姫乃は肘をついて足をパタパタと遊ばせている。
「それにしてもブルームプリマ、カッコよかったね」
「さっきは恥ずかしくないのかとか言ってたくせに」
「恥ずかしくないなら私もやりたいなぁと思って、でも恥ずかしいんならどうしようかな」
「こんなことで恥ずかしがってたらステージには立てないぞ?」
 なにせステージに立つたびに魔法少女をやらされる友人を姫乃は知っている。
 たぶんあれくらいの度胸がないとアイドル業は務まらないのだろう。
「じゃあ、考えてみるね」
「じゃあさ、名前何にする?」
「姫乃ちゃんが決めてよ」
「ブルーム・サンシャイン」
「ひかりだから? 安直だなぁ」
「いや、みんなそんな簡単な感じで決めたよ」
 名前はわかりやすく、印象強くが鉄則だ。
「サンシャインが嫌なら、そうだなぁ」
「嫌じゃないよ、けど、太陽なら姫乃ちゃんの方が似合ってる気がして……あ! そうだ」
 ひかりは意外と落ち着きがない。話題がコロコロ変わるのはしょっちゅうだ。だが仕方ないだろう、大好きな友達といる時は誰しも気分が明るくなるものだ。
 そんな気分の浮き沈みが激しいひかりを姫乃は微笑ましく見ている。
「ねぇ、渡したいものがあるんだ」
「奇遇だな、俺もなんだ」
 姫乃は起き上がって、自分のカバンを引き寄せた。
 一泊のお泊りにしては大きなカバン。
 対してひかりは小さな紙の袋を取り出す。
 その行動に二人は一瞬きょとんとした表情を向け合うが、それも今から手渡す思いの照れくささに隠れ、少し顔を赤らめる少女二人。
「「誕生日おめでとう」」
 言葉が重なった。
 ひかりは思わず笑い出す。
「私の誕生日、弐か月も前だよ?」
「任務で忙しくて祝えなかったし、手渡す機会も無くてさ。買ってはいたんだけど」
「それより、姫乃ちゃんは六月六日が誕生日だよね」
 姫乃は自分が両腕で抱きかかえられるほどの大きな包みをひかりへ。
 ひかりは、可愛らしくシールで飾られた包みを姫乃へ差し出す。
 さっそく姫乃はひかりの包みをあけた。
 中には首飾りが入っていた、小さな太陽を模したガラス球のネックレス。
 光を受けて煌いて、綺麗に輝いている。
 対して姫乃の贈り物は大きなライオンのぬいぐるみ、ひかりが少女趣味なのを
覚えていて、買ってきたのだ
「うわ、可愛いぬいぐるみ、ありがとう!」
「ひかりも、ありがとな」
「それ、神社に行って買ってきたの。お守りだから」
 光は微笑んで告げる、危ないことはしないでとは言わないが、絶対に無事に帰ってきて。
 その言葉に姫乃は笑顔で頷いた。
「無事でいるってことは、とっても幸せなことなんだよ」
 そう告げるひかりの言葉を姫乃は噛みしめる。ひかりが姫乃の手を意味も無くとった。
「約束だよ?」
 ここには確かに友情があった。 
 今後この関係が変わることはあるだろうか。
 たとえば姫乃が任務で危険な目にあった時、姫乃の秘密が彼女に知られた時。
 ひかりがステージに立つとき、もしくは『そちら』側に足を踏み入れた時。
 分からない。だが今はこのつないだ手のぬくもりだけで十分な気が……姫乃はしていた。
「あ、お風呂空いたって先生が言ってる!」
 そう、職員の声に反応して車いすまで這っていこうとするひかり。
 そんな彼女を制して姫乃は少女を抱きかかえた。
「ありがとう」
 そう姫乃の腕の中で小さく丸くなる少女、そんな二人への試練は案外間近に訪れるのかもしれない。
 たとえば、ひかりが上げた一緒にお風呂に入ろうという提案。
「まぁ、でもひかりだしなぁ」
 姫乃は余裕ぶって姫乃の言葉に頷いた。
 だがその余裕をうかべた自分を、殴り飛ばしてやりたいと、数分後の姫乃は思うのだろう。
 足が動かせないひかりを手取り足取りお風呂に入れるというのが、どれだけの事か、まだ姫乃は知らないのだから。

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登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『彩咲 姫乃(aa0941)』
『三浦 ひかり(NPC)』
『ナイア・レイドレクス(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。
 鳴海でございます、OMCご注文ありがとうございました。
 今回はひかりとの何気ない日常を描いてみました。気に入っていただければ幸いです。
 またひかりから送られたお守りに関しても気に入っていただければ嬉しいです。
 それではまた、リンクブレイブ本編でお会いしましょう。
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リンクブレイブ
2017年06月05日

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