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『ようこそ☆おか魔界へ! 』
日浦・知々田・雄拝ka2796

 君は『おか魔界』をご存じだろうか。
 オカマのオカマによるオカマの為のお茶会が開かれる場所、それがおか魔界である。
 オカマだからこそ言えること。オカマだからこそ思うこと。そう、オカマにも色々あるのだ!
 さあ、共に語り合おうではないか!!
 恥じらうことはない。だって周りもみんなオカマなんだもん!!!

   ***

 さわやかな風が吹く丘。
 緑のじゅうたんが敷き詰められたその場所に、白いクロスが掛けられた丸いテーブルがある。
 温かな湯気が登るティーカップに、色とりどりのお菓子が置かれたテーブルを囲うように椅子は4脚。席にはそれぞれネームプレートが置かれており、その1つを前に日浦・知々田・雄拝(ka2796)は困ったように隣を見た。
「本当に来れちゃったわ……大丈夫かしら、ここ……」
 見た目イケメンな知々田は口調からもわかる通りオカマだ。そんな彼が見つめる先に居るのは麗しの美人と化したNon=Bee(ka1604)である。
 彼は困惑する知々田とは別に楽し気に目を細めると自分の席に腰を下ろした。その上で知々田の椅子を引いて微笑む。
「折角来たんだものぉ。楽しまない手はないわぁ」
 確かに彼の言うことも一理あるが、そもそも不可思議すぎるこの状況下で落ち着けるわけもない。
 せめてここが何処かだけでも分かれば話は別なのだが……。
「あら、あたしたち以外の招待客も来たみたいよ」
 え。そう視線を向けると、知々田たちとは逆方向から歩いてくる2人組が見えた。
 かなり長身の男と美女が見えるが、このお茶会――もとい世界の名前が『おか魔界』ということはつまり彼らも――。
「あらやだ、あたしの名前が書いてあるわ☆」
 シナを作って声を上げたのは長身の男の方。
 もふもふの尻尾にもふもふの狐耳。それを見た瞬間Nonが「もふもふしたーい!」と声を上げたが今だけは華麗にスルーだ。
「あたしの名前もあるのね。ねえ、もしかしてあなた達も『コレ』に呼ばれてきた感じかしら?」
 灰茶色の髪を揺らす美女は、そう言って口角を上げると1枚のカードを差し出した。
 そこに記されている文字はこうだ。

――美しさに磨きをかける素敵なオカマ・レディへ。
 今宵、薔薇の香りに誘われてオカマによるオカマのためのお茶会へご招待いたします。
 つきましては枕元に1本の薔薇を添えてご就寝いただければと思います。
 Let’s おか魔界へ――

 実に胡散臭い内容だが、少なくとも知々田とNonはこの方法を試してやって来た。そして後から来た2人もこの方法を試したと見て間違いないだろう。
 つまりここにいる全員が薔薇の香りに誘われて召喚された異世界人であり、おか魔界の来訪者と言うことだ。
「ま、とりあえず座りましょぉ☆」
 椅子を引いてひょいっと腰を下ろした大男は、自身の尻尾を膝の上に置くと「?」と言った表情を浮かべて鼻をヒク付かせた。
「匂いがあたしたちと違うわ……まさかこんな所で別世界の人に会えるだなんて、なんだか感動ね☆」
「元々そうした環境に抵抗はないけど、実世界の人に会うと変な感じがするわ」
 声を上げながら次々と腰を下ろす彼ら。
 そして全員が席についたところで、美女の方が何かを探すように辺りを見回し始めた。
「これで4席全部が埋まったようだけど……いないわね」
 そう、椅子は全て埋まった。では招待した側の人間はどこにいるのだろう?
 そう思って辺りを見回していたのだが、不意に聞こえたNonの声で視線を引き戻された。
「このネームプレートの裏に何か書いてあるわよぉ?」
 プレートをひっくり返して目を瞬く彼に次いで他の面々も視線を落とす。

――お好きなお飲み物を仰ってください。

「好きな?」
 普通に考えて飲み物を注文して持って来た時に招待者が来るという感じか。
 ならばお言葉に甘えて何か頼むべきだが……種類が多くないか?
「えっと……ハーブティーだけで結構な種類があるわね」
 ヒクッと口元を引きつらせた知々田に次いでNonも困ったようにリストを見ている。
 まあ、彼の場合はお酒を飲むかどうかに迷っているだけなのだが、これはまだ伏せておくべきだろう。
 ちなみに飲み物の種類はお茶から珈琲、お酒まで多種多様だ。
「美容に興味があるようならローズヒップティーはいかが? ビタミンCたっぷり、お肌にいいのよ」
 狐耳の大男はそう言いながらカードの一角を示す。確かにそこにはローズヒップティーの文字がある。
「良いわね! じゃあ、私はローズヒップティーにするわ……Nonちゃんはどうする?」
「あたしもそれが良いわぁ」
「ではみんなでローズヒップティーでいきましょう!」
 決定! そう声を上げた時。空のカップに良い香りが漂い始めた。
 目を向けるとさっきまで空だったカップにお茶が注がれているのが見える。その様子はまるで湧き水のようで全員の目が見開かれた。
「どういう仕組みなのかしたねぇ」
 Nonは興味津々にカップの底を覗き込むがトリックは見当たらない。
 まあ、この様子から察するに招待した人物は姿を見せないと見て良いだろう。となるとここでやることの選択肢は狭まる訳だが――
「……お茶会を楽しむしかないかしらね」
「害はなさそうだし良いんじゃないかしらぁ?」
 オカマを呼びつけて話をしている姿を見るだけ、と言うのは何とも変態趣味だがまあいいだろう。
 4人は顔を見合わせると「異論はない」と頷き返してお茶の注がれたカップを手に取った。
「では、奇妙なオカマの出会いを祝して」
「「「「乾杯☆」」」」

 こうしてオカマの奇妙なお茶会は開始されたのだが、まずはやるべきことがある。
「まずは自己紹介をしなくちゃね」
 そう。実はここまでの流れの中で各人の自己紹介が済まされていない。つまりメタな話をすると、書き手が名前を書けずに誰が誰だかわからなくなる現象が続くのだ。
 そしてそれだけは避けなければならない! さあ、自己紹介をしておくれ!!
「……何かよからぬ電波を感じたけど、まあいいわぁ」
 若干苦笑して席を立ったのはNonだ。
 彼は柔らかな動作で着物の袖を口元に添えると、艶やかな笑みを乗せて頭を下げた。
「あたしはNon=Beeよ。興味があるのは最新のお化粧品かしら。みたところ見慣れない化粧品を使ってるみたいだしぃ、その辺のお話が聞けたら嬉しいわぁ」
 流石は見た目が完璧女性なNonである。
 同じく女性な見た目の招待客と視線を合わせると、意味ありげに笑って小首を傾げた。
 これに美女風の人物が立ち上がる。
「あたしは雅・マルシア・丹菊よ。今の職業はプロのカメラマンだし、プロのメイク方法も伝授できるわ!」
「プロのメイク……それは興味深いわね」
 小さく零して視線を集めた知々田は、やや咳払いを零して立ち上がる。
「私は日浦・知々田・雄拝よ。知らないことを知るのは楽しいと思うわ……よろしくお願いするわね」
 ぎこちなく微笑んで腰を据え直す知々田は人見知りの感がある。そのせいか若干緊張気味の挨拶だったが掴みは悪くない。何せ顔はイケメンなのだから!
「良いわ〜あなたすっごく良い〜☆ あたしはベルベット・ボア・ジィよ♪ ちなみにこの耳と尻尾はほ・ん・も・の☆」
 ベルベッドは尻尾を大きく揺らして笑うと、知々田にウインクした。が、このウインクはアピールではなくただの挨拶。
 だって彼らは顔を合わせた瞬間に気付いたのだ。
 ここでアピールしても意味はない、と。
 何故ならここに集まった者達がすべて同類であり、仲間だからーー。

   ***

 オカマとは美容にうるさいものである――

「やっぱりぬるま湯での半身浴が一番良いわねぇ」
 そう声を弾ませるのは、ややこの場の雰囲気に打ち解け始めている知々田だ。
 彼はベルベットが選んでくれたローズヒップティーを口に運ぶと「ほうっ」と息を吐いて目を細めた。
「顔を洗うのも水よりぬるま湯の方が良いし……小さい頃に水で洗ってた自分が嘆かわしいわぁ」
「わかるわぁ……ぬるま湯で洗わないと顔がカピカピになっちゃうのぉ……でもあれって、どうしてなのかしらぁ?」
 Nonは雅の顔に手を伸ばすと、張りと弾力のある頬をツンッと突いた。
「お肌綺麗ねー! 昔からこんなに綺麗だったのぉ?」
「昔――は、どうなのかしら。英雄として現れた時点でこの身体だったから。でも理由ならわかるわよ。お肌には必要な皮脂って言うものがあるの。それが熱いお湯だと落ちちゃって顔がカサカサするのよ。顔は一番デリケートな部分だもの。そんな感じでちぃちゃんの言うようにぬるま湯が一番ってわけ!」
 流石は元人工知能、現プロカメラマンである。
 お肌について語る言葉は的確にNonの疑問を解消してくれた。しかも石鹸の泡立て方の講座付きである。そんな彼らを見ながら、ベルベットは頬杖を着いて和菓子の1つを引き寄せる。
「保湿にはオイルも良いわよ。こっちだと栄養成分豊富なオイルを使ってマッサージをするの☆ アンチエイジングにもおすすめなのよ☆ あ、ほら! あたしが寝る前に用意したお菓子よ☆ この和菓子美味しい上に綺麗でおすすめなのぉ」
 はむっと頬張った和菓子はアジサイの形を模した生菓子だ。
 異世界同士故に見た事もない菓子を差し出された知々田とNonは困ったようにそれを見詰めている。
「食べても大丈夫よ。和菓子は美容効果が高い――との噂があったりなかったりね!」
「どっちなのよ☆」
 バシッと雅にツッコミを入れ、別のお菓子に手を伸ばすベルベッド。
 そんな2人を交互に見て、知々田とNonは和菓子に手を伸ばした。
「あら、美味しい!」
「繊細な味ねぇ〜」
 どうやらひと口食べて気に入ったらしい。
 特にNonは元々の趣向にもあっていらしく、最後の最後まで美味しそうに食べ勧めていた。
 そして口の中の甘みを柔和するために新たに注がれたのが抹茶だ。
「これは何かしら?」
「抹茶よ。抹茶にはさっき話したアンチエイジング効果があるの」
「アンチエイジング?」
 思わず問い返した知々田に雅が人差し指を立てて答える。
「簡単に言うと老化した肌を少し戻してこれからの進行速度を落とす。とか、そんな感じのものよ!」
「あらやだ! そんなすごい効果があるの!?」
 くい付いたオカマ2名。
 2人は我先にと抹茶を口にするとその苦さに顔を顰めた。
「抹茶は和菓子と一緒に飲むとちょうど良いのよ。はい、追加のお菓子よ☆」
 ベルベットが次に差し出したのは海をイメージして造った羊羹で、皿の上には楊枝も添えられている。
「抹茶の苦みをお菓子の甘みが良い感じに合わさるのよ。これが本当に美味しくて☆」
「本当、美味しいわぁ」
「これなら向こうでも作れないかしら」
 まあ、作ろうと思えば作れなくもないだろうがかなりの労力は必要になることは間違いない。
 それよりもそれに見合ったものを探しに行く方が楽な気もする。
 こうしてオカマたちは互いの美容知識を吸収すべく話に夢中になるのだが、時間とは無限ではない。
 それに気付いたベルベットが空のグラスを注文してそこにお酒を注ぎ始めた。これに喜々として目を輝かせたのはNonだ。
 彼はベルベットに便乗してグラスを受け取ると、彼と同じ酒をもらってグラスを重ね合わせた。
「ぷはーっ! 美味しいーん♪」
「本当。このお酒美味しいわぁ☆」
 お米から丹念に作り上げた生酒なので美味しいことは間違いない。
 だが注意すべきはその度数だ。
「え、これ……」
「ちょっと、Nonちゃん……」
 ぐびぐび飲むベルベットとNon。その顔色は一気に朱に染まり、雅と知々田の頬を汗が伝う。
 そして――
「どこかにイケメンいないかしらねー彼氏ほしいわーわー……」
 空のグラスをテーブルの上に転がしてくだを巻くベルベットを見詰める、正しいお酒の飲み方をした知々田と雅。
 彼らはあっという間に出来上がってしまったベルベットとNonを見ている。
「うふふっ。そういう時は自分がイケメンに成っちゃえばいいのよぉ〜。ほ〜らぁ、鏡を見たらそこにイ・ケ・メーン!!!」
 ガシッと首を掴んでホールドして来たNonにベルベッドの表情が固まった。
 それもそのはず。お酒に酔うとこの人、身も心も男になるんですっ!
 つまりこのホールドパワーは全力にして逃れる事の出来ない絶対パワー! 逃げるためには自身も超パワーを発揮しないといけない訳だ!!
「ぐっ、……ぅ……息、が……!」
 徐々に閉まる腕にベルベットの顔が徐々に青くなってきた。
 これ完全に脳への酸素供給が止まってる状態ですが……大丈夫?
「た、大変! このままだと死んじゃうわ!! ちぃちゃんそっちもって!」
 流石に泡を吹き始めた段階で危険を察知したのだろう。
 慌てて立ち上がった雅に次いで知々田が立ち上がる。
「わ、わかったわ!」
「それじゃ、せーので引っ張ってね!」
 せーの! 雅がベルベットで知々田がNonを引っ張った訳だが、
「なんでビクともしないの!?」
「こうなったらっ」
 力でダメなら他の策を講じるほかない。
 知々田はテーブルの上で何やらごそごそ作業を始めると、空になったグラスに白い液体を注いで差し出した。
「Nonちゃん、こっちに美味しい美容液があるわよ!」
「なんっだと!?」
 ピクッと顔を上げたNonの目が液体の注がれたグラスに釘付けになる。
「この美容液を飲んだら明日はお肌がもちもちよ!」
「お肌がもちもち? 若返るの? やだぁ、あたしその美容液欲しいー!」
「来た!」
 戦闘態勢確保。これより迎撃に入ります。
 地面を蹴り上げ一気に距離を詰めて来たNonを間合いに入れ、知々田は我が手を差し出す。
 そうして持っていたグラスを彼の手に押し付けると、すぐさま距離を取った。
「いっただきまぁーす!」
 勝ち取ったグラスを勢いよく煽るNon。その姿はまるで早飲み選手権のようだ!
「というか……美容液を……」
「飲んだわ……」
 男らしく一気飲みするNonの恍惚とした表情も印象的だが、この光景を呆然と眺めていた雅とベルベットの表情も印象的だったと思う。
 2人は固唾を呑んでその後を見守り、そして――
「倒れた?!」
「ふぁー!? な、なに飲ませたの!?」
「これよ!」
 得意げに掲げられたのは今まで見た事もない度数のお酒だ。
 てか、そんなお酒どこから入手したんですか!?
「メニューにないから注文して作ってみたの。要はカクテルみたいなものね」
「ウインクしてる場合じゃないわよ!」
 今度はNonに駆け寄る雅が若干不憫な気もする。
 こうしてオカマたちの夢の世界はまだまだ続く訳だが、1つ気になる事がある。それは――
「目が覚めたら、ここの記憶ってなくなるのかしら?」
 そう、ここまでいろいろな美容に関する情報交換をしたが、覚えているのか……それが『おか魔界』での最後の疑問である。

―――END...


登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【 ka2796 / 日浦・知々田・雄拝 / 男 / 20 / ドワーフ / 疾影士 】
【 ka1604 / Non=Bee / 男 / 25 / ドワーフ / 機導師 】
【 aa0936hero001 / ベルベット・ボア・ジィ / ? / 26 / ブレイブナイト 】
【 aa1730hero001 / 雅・マルシア・丹菊 / ? / 28 / シャドウルーカー 】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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こんにちは、朝臣あむです。
このたびはご発注、有難うございました。
かなり自由に書かせて頂きましたが如何でしたでしょうか。
もし何か不備等ありましたら、遠慮なく仰ってください。

この度は、ご発注ありがとうございました!
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2017年06月14日

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