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『●グループトークにて 』
グワルウェンaa4591hero001)&ベネトナシュaa4612hero001)&ガレシュテインaa4663hero001)&アクレヴィアaa4696hero001)&ガエリスaa4879hero001
『どっか行こうぜ!』
 新緑がまぶしい5月のある日。グワルウェン(aa4591hero001)は、弟や妹たちへ向けてそんなメッセージを送信した。
『兄上、いきなり「どっか」なんて言われても困りますよ』
 一番上の弟、ガエリス(aa4879hero001)からはごもっともなツッコミが返って来た。それでもグワルウェンの誘いを断りたい者はいないようで、まずは『お出かけ』の決行日が決まった。
『みんな集まれるようで嬉しいです。あとは行き先を決めるだけですね』
 そんな返事をくれた妹の顔が頭に浮かぶ。アクレヴィア(aa4696hero001)――前の世界での騎士姿も記憶に残っているが、今の彼女は幼い少女の姿をしている。ガエリスの双子の妹と聞けば誰もが驚くことだろう。
『飯とか食いに行くのもいいけど、やっぱ外がよくねぇか? 5月だし』
『賛成ですぞ! 青空の下でお弁当を広げるのもまた良いものですからな!』
 ベネトナシュ(aa4612hero001)のはしゃいだ様子が文面からも伝わって来た。
『となると、公園や遊園地とかでしょうか? しばらく晴れの予報が続いているみたいです。少し暑いくらいの気候になるようですよ』
 ガレシュテイン(aa4663hero001)はコーヒーショップでの仕事の合間に返信をくれた。そのメッセージを呼んだ瞬間、グワルウェンは閃いた。
『海行こうぜ、海!』

●フライング海開き
「本当に海に決まってしまうとは……。いえ、私も賛成しましたから、責めているわけではありませんが」
 助手席に乗り込んだガエリスはカーナビの画面に目を落とし、眼鏡を押し上げた。後部座席に着席したのはアクレヴィアだ。
「確かに泳ぐには早いけれど、水遊びくらいなら楽しめるでしょう。にいさまのサポートをよろしくお願いしますね、エリにいさま」 
 強気そうな印象の顔に穏やかな笑みを浮かべて、妹は言う。
「積み込み完了ですぞー! 姉上、お隣失礼します!」
 ベネトナシュに続いて、ガレシュテインも後部座席に乗り込む。
「ベネト、もし車に酔ったら言うんだよ。窓際、代わるからね」
「はい、ガレス兄様!」
 ガレシュテインの腕には彼お手製の弁当が大事そうに抱かれていた。そして、最後の一人。
「忘れ物ねぇか? トイレ済ませたか? なんもなければ出発するぜ!」
 馬鹿でかい声で話しながら、どっかと運転席に乗り込んだのはグワルウェンである。すかさず鳴り出すエンジン音。ガエリスは車内の気温が一気に上がったような気がして、少し窓を開けた。まだ初夏だというのにタンクトップ姿なのも意味がわからない。
「出発進行ですぞー!」
「おー! ……って、痛ってぇ!」
 グワルウェンが振り上げた右手が天井に強打される。下のきょうだいたちは心配げに彼を見たが、グワルウェンは「何ともねぇよ」と笑った。
 予定時刻を3分ばかり過ぎて、車は出発する。
(前途多難だ……)
 ガエリスは小さく息を吐いた。



「あれはっ……!」
 滑らかに動いていたベネトナシュの舌が動きを止めた。彼の学校生活やガレシュテインのアルバイトを話の種に談笑していたところだ。
「もしかして……」
 ガレシュテインとアクレヴィアも、ベネトナシュ側に体を傾け、前方を覗き込む。木造建築が多く残る海沿いの街並、その隙間から青い輝きが漏れ出ていた。
「間も無く到着ですね」
 ガエリスがカーナビを覗くと、画面の端にはもう海岸線が表示されている。
「兄上、最後まで気を抜かないでくださいよ」
「わかってるって」
 どの口が言うのだろうか。なんとなく嫌な予感はしていたが、この兄は道路交通法への理解がかなり怪しい。ウィンカーの出し忘れは基本性能。ガエリスが標識を頼りに指示を出せば「え、そうなのか?」と聞き返す。高速道路は危険だろうかと懸念していたが、直線の決まったコースである分、普通の道より安全そうだ。
「あまり人はいないようですね。海の中に数名いるくらいでしょうか」
 アクレヴィアが言う。ウェットスーツを着た若者たちが長い板の上に立って波の上に立っている。ガレシュテインは彼らと似たような人々をテレビで見たことがあった。
「サーフィン、というものでしたっけ? 熱心な様子ですね」
 初心者らしい一人がバランスを崩し、白い水柱を設立した。
「なんだか乗馬の訓練を思い出しますぞ!」
「下が海だから、落ちてもあまり痛くないかな? いつか挑戦してみたいね」
 ガレシュテインは頷いて、視線を前方に向ける。
「兄上。駐車場は、道を挟んだ向かい側に……」
 ガエリスの言葉を遮って、グワルウェンが叫ぶ。
「よーし、到着だー!」
 後部座席から歓声が上がる。がたん、がたん、と皆の体が跳ねる。いくつかの段差を豪快に乗り越え、車は砂浜へと突撃した。



「みんなと一緒なら、海だって怖くないのですぞ!」
 ベネトナシュは車から飛び出すと、麦わら帽子をかぶり、サングラスも取り出す。
「いざ、出陣で……」
「甘いなベネト。俺が一番乗りだー!」
 カーゴパンツの裾を雑にめくり上げて、グワルウェンは勢いよく浅瀬に飛び込む。案の定、裾の色が変わってしまっている。
「お説教から逃げるため……というよりは、単に早く遊びたかったんでしょうね」
 ナビ役として何とか命の危機を回避したガエリスが言う。緊張のせいで凝り固まった体を伸ばすと、下のきょうだいたちに声をかけた。
「一応、水分補給を忘れないこと。それとこの日焼け止めを塗りなさい」
「お気遣い感謝します、エリ兄さま」
 アクレヴィアはTシャツと短パンから伸びた白い手足にクリームを塗りこむ。
「兄上は色黒だから必要ありませんね」
 ガエリスは建物の影へ入り、持参した本を開くことにした。今は封鎖されているが、夏場は海の家として営業しているらしい。
「良い風だ。――空も青い」
 快調にめくられていくページ。背景には、早足で流れる雲。BGMはランダムに聞こえてくる兄弟たちの会話。ガエリスは飲み物を片手に、良い気分で文字を追い始めた。
「隙ありだぜ、ガレス!」
 グワルウェンは追いついてきたガレシュテインを手荒く歓迎する。足元の水を手ですくい、ぱしゃりとかけるお馴染みの遊びだ。ガレシュテインはくすくす笑いながら、顔を拭った。
「まだまた修業が足りませんね、僕は。でも、冷たくて気持ちが良いですよ」
「だろ? ほら、反撃してこいよ!」
「では、失礼して!」
 大げさな悲鳴の後に、気持ちの良い笑い声。ガレシュテインもつられて笑う。
「こういうのって、定番っつー感じだよな!」
「そうですね。あとは追いかけっことかでしょうか」
「ん、それは恋人とやるもんじゃね?」
「えっ? そうなのでしょうか……?」
 首をかしげるガレシュテイン。
「ま、いっか。――待ちやがれ、ガレス〜!」
 激しい水しぶきを上げて、グワルウェンが迫る。険しい表情はわざとなのか、おどけているのか。ガレシュテインは笑い転げそうになりながら、逃亡を始めた。
「海で遊ぶなんて、何年ぶりでしょう」
 アクレヴィアは波打ち際を歩きながら言う。サンダル履きの足元が、寄せては返す波に洗われる。そんな様子を眺めているだけでも、時が過ごせそうだ。
「何年、ですか? そういえば、随分遠い昔のように思われますなぁ」
 隣を歩いていたベネトナシュは、何かを踏んだ感触に目を落とす。どこかセレブめいた印象のサングラスをずらすと、水面が放つ無数の輝きがダイレクトに飛び込んできた。
「これは……?」
 揺れる水。その奥へと目を凝らすと、砂に埋まった貝殻を見つけた。掘ってみると予想よりも大きい。ベネトナシュの目が輝いた。
「ベネト、動かないで!」
 ガレシュテインの声に顔を上げる。すぐに目と鼻の先を彼が走り抜けていき、2秒と経たないうちにグワルウェンが後を追って行った。シャツは水を吸って薄いまだら模様に変わり、麦わら帽子が風で後ろへと飛んだ。
「兄上! 私も追いかけっこしたいですぞー!」
 ベネトナシュは立ち上がると、グワルウェンの背に叫んだ。
「じゃあ、鬼チームな! ガレスを捕まえろー!」
「了解ですぞ!」
 弟の帽子を拾ったアクレヴィアはそれを頭に載せると、懐かしさに目を細めて彼らの姿を見遣った。
「……ここにも」
 そしておもむろに身を屈めると、桃色がかった貝殻を拾い上げた。

●陽光が照らす城
「皆さん、そろそろ正午ですよ。一旦、休憩してはいかがですか?」
 ガエリスの提案に、アクレヴィアがぱちりと目を瞬く。
「もうそんな時間ですか? すっかり夢中になっていたのですね」
 グワルウェンの腹の虫がぐうぅと長く鳴いた。
「お弁当持ってきました! 兄様はいっぱい食べるでしょう?」
 ガレシュテインが言うと、アクレヴィアも頷く。
「わたしからはサンドイッチを。暖かいお茶もありますよ」
 濡れた体は風のせいで少しだけ冷たい。暖かな紅茶が染み入った。
「美味しいです」
 卵焼きを一口食べて、アクレヴィアが微笑む。ベネトナシュは小さなカップに分けて入れたナポリタンを美味しそうに食べているし、グワルウェンは唐揚げを2個3個とあっと言う間に平らげてしまう。ガレシュテインは、ほっと胸をなでおろした。
「ありがとうございます。実は人に手伝ってもらったんです」
 彼の料理の腕は、実はあまり上等とは言えない。よくやってしまうのは火の通し過ぎや、食べられない程ではないが雑な味付け。なぜか料理に限っては不器用を発揮してしまうらしい。今日は能力者のフォローもあって、それなりに納得のいくものを作れたのだ。
「この料理はガレスの努力の結晶という訳ですか。能力者の方にも感謝しなくては」        
「ええ、本当に」
 兄と姉に褒められて、ガレシュテインは嬉しそうに笑う。
「姉さまのサンドイッチもとても美味しいです! 僕が作るといつも水っぽくなってしまって……」
 彼らはサンドイッチの調理法や味付けについて語り始める。グワルウェンはその会話に耳を傾けつつ、ふと思った。
(もうちっと食えそうだな。近くにコンビニとかあったっけ?)
 弁当は5人にしては大きなものだったが、彼の大食漢ぶりは海での運動のせいでますますパワーアップしていたのだ。ちらりと車を見やると末の弟がトランクを閉めるところだった。
「兄上〜! デザートにリンゴをお持ちしましたぞ!」
 小さな袋と引きずりそうに大きな袋を持って、ベネトナシュが駆けてくる。
「はい、こちらは兄上の分ですぞ」
 彼は笑顔で大きな袋を兄に差し出した。
「おおっ! サンキューな、ベネト。さっそく頂くぜ」
 がしがしと頭を掻きまわされ、ベネトナシュはくすぐったそうに笑った。



 食事の後は再び波打ち際へ。ベネトナシュと何事か話していたガレシュテインは言った。
「兄上、姉様、一緒に砂のお城を作りませんか?」
「まぁ、楽しそうですね!」
 アクレヴィアは一も二もなく賛成した。すでに海中に足を浸していたグワルウェンが、ばしゃばしゃと戻ってくる。
「貝殻でお城を飾りましょう!」
「そりゃ名案だぜ、ベネト!」
「午前に拾ったものだけでは足りませんから、これから私が拾って参りますぞ!」
「おう! 位置は……まぁ、この辺りでいいよな」
 アクレヴィアが振り返ると、ガエリスが読書を中断してこちらを見ていた。何をしているのか訝しんでいるのだろう。手を振ってみると、小さく振り返してくれた。
「さぁ、どんなお城にしましょうか?」
「かっこいいお城がいいです、姉様」
 アクレヴィアは微笑み、ガレシュテインの隣に膝をつく。水分を含んで色の変わった砂をかき集め、小山を作ってみる。途端に波がやってきて、山の4分の1ほどを削り取っていく。
「もう少し後ろですね」
 改めて土台を作り始める二人。
「童心に返ったような気がしますね」
 ペタペタと砂を固めながら、アクレヴィアは大人びた微笑みを浮かべた。心だけではなく、今は体も童となってしまっていることに気づき、彼女はくすりと息を漏らす。
「入り口はこのあたりですね。こうやって砂を削って階段を作れば……」
「ふふ。わたしたちが小人になれたなら、ここを登って入城できますね」
 ガレシュテインの器用さに、アクレヴィアは感心している。
「わたしは側面を作りますね」
「では、僕は正面から。二階にはバルコニーもつけたいですね」
「高い塔とかもあったら良くねぇか?」
「尖塔を作ってみましょうか。難しそうですが、きっと格好良いです!」
 切り立った崖のような土台の上で、縦に横に広がっていく城。全員が同じ城をモデルにしているかのように、作業はスムーズに進んだ。
「貝殻を取ってきましたぞー!」
 ベネトナシュが両の手の平に貝を乗せて戻ってきた。立ち上がったグワルウェンは精悍な顔つきで、海原を眺めまわす。
「潮が満ちて来たな」
 日本の郊外にある小さな海岸の水は、彼の瞳のように鮮やかな青色ではなかった。思惑を隠すような青灰色は『敵役』として似つかわしく思われた。
「城壁の防御を固めろ! 堀もちゃんと深くしたな!」
 グワルウェンの勇ましい声に、下のきょうだいたちが凛々しく返事を返す。
「来るぞ!!」
 騎士達はその瞬間を固唾を飲んで見守った。穏やかな波は、小さな砂の城にとってはこの世の終わりかと思われるほどの大波となる。
「……やりました!」
 ガレシュテインが鬨の声を上げる。大挙して押し寄せた不定形の軍隊は、城を犯すことなく撤退を余儀なくされたのだ。
「全く何をしているんですか、兄上まで……」
 呆れた声でいうのはガエリスだ。いつの間にか近くまで来ていたらしい。言葉とは裏腹に手早くカメラを起動すると、撮影を開始する。
「ガレス、もう少しレヴィア側に寄りなさい。ベネトはそのまま動かないように」     
「了解ですぞ! 次はエリ兄様も入ってほしいですぞ」
 親切なサーファーに集合写真を撮ってもらうこともできた。背景は燃えるように赤い空だ。帰って仲間たちに見せるのを楽しみにするとしよう。

●月光と海風
 白い砂より生まれた城は、月の光を素直に受け取って神秘的に輝いていた。――が、一瞬にしてその様子が様変わりする。白い壁を照らし出したのは太陽の名残のような光。
「さぁ、兄様たち! 姉様もお早く!」
 反逆の騎士が手にしたのは剣ではなく、花火。彼が今日のためにと用意したものだ。きょうだいたちは順にろうそくの前に立つと、手元から飛び出す光の奔流に目を奪われる。
「まるで魔法のようですね」                               
 オレンジから緑へと色を変えた花火に、ガエリスは眼鏡の奥の瞳を見開いた。すっかり明るくなった夜の海辺。顔を上げれば誰かと目が合い、自然と笑みが浮かんだ。
「よし、準備できたぜ!」
 グワルウェンは少し離れた位置で地面に座っていた。打ち上げ花火に火をつけるためだ。
 大砲にも似た、しかしまるで性質の違う音が鳴り響き、空に大輪の花が咲いた。



「我々は他の騎士よりいち早く夏を先取りしましたぞ、一番駆けですぞっ」
 帰りの車の中、ベネトナシュが満足げに言った。
「連れてきてくださってありがとう、にいさま」
 アクレヴィアがいうと、ガレシュテインも礼を言う。
「次は泳ぎに来ましょう」
 はしゃぎ疲れたらしい彼はその言葉を言ったきり、眠り込んでしまった。少しばかりトーンを落とし、4人で行われる会話。やがてベネトナシュの離脱により、さらにペースは落ちる。滑るような走行音だけが優しく夜を撫でていく。
「エリーとレヴィアも眠っていいぜ?」
「お断りします。永遠の眠りになってしまいかねませんから」
「エリにいさまったら。けれど、わたしも気分が高揚しているようです。まだ眠れそうにありませんわ」
 囁き声で交わされる会話には、ときどきかすかな笑い声が混じる。二筋の明かりを頼りに進む車は、まるで深海を行く潜水艦のようだ。
「冷えてきやがったな」
 窓を閉めると、かすかに海の残り香が感じられた。白い城郭はまだ、海風を受けて月明かりに映えていることだろう。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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【グワルウェン(aa4591hero001)/男性/22歳/剣の兄弟】
【ベネトナシュ(aa4612hero001)/男性/17歳/剣の兄弟】
【ガレシュテイン(aa4663hero001)/男性/16歳/しゃかりきちょこれーたー】
【アクレヴィア(aa4696hero001)/女性/12歳/エージェント】
【ガエリス(aa4879hero001)/男性/20歳/エージェント】

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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お待たせいたしました、高庭ぺん銀です。この度はご発注ありがとうございました!
すっかり暑くなり、そろそろ本物の海開きも始まりつつあるようです。爽やかな5月の気候の中、海を満喫する仲良しきょうだいのお話も楽しんで頂ければ幸いです。
作品内に不備などありましたら、どうぞリテイクをお申し付けください。それでは、また皆様にお会いできる時を楽しみにしております。
■WTアナザーストーリーノベル(特別編)■ -
高庭ぺん銀 クリエイターズルームへ
リンクブレイブ
2017年07月05日

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