▼作品詳細検索▼  →クリエイター検索


『リトル・ブーケマジック 』
弓月・小太ka4679

「とっても美味しかったね」
 くるっと回ってフラ・キャンディ(kz0121)、ご満悦。
「評判だって聞いたから、フラさんを誘ってよかったですぅ」
 後ろを歩いていた弓月・小太(ka4679)はフラの様子を嬉しそうに見ている。
 するとフラ、ミニスカートに生足の軽快な格好でひらっと歩道の段差に乗って歩いたり。
「あれ? ……うー、これでも小太さんの背に届かないんだね」
「僕も背は高くないですよぉ。それに今日は風も強いですし……あれぇ?」
 小太、周りの様子に気付いた。
「あそこに人集りがありますねぇ。な、何でしょうかぁ?」
「え? あ、ホントだ」
「ちょっと行ってみましょうかぁ」
「うんっ、行こう!」
 あうんの呼吸でそちらに走り出す二人。
「あ……ここって教会だったんだ」
「ちょうど結婚式をしてるみたいですねぇ」
 礼服やドレスに身を包んでいる人たちが教会前に集まっている。それぞれ雑談していたが、りんごーん、と鐘が鳴ると一斉に両開きの扉前に注目した。
「ね、ね。行ってみよ?」
 フラ、小太の手を取っておねだり。
「ええと……」
 フラは、白いテニスエア風衣装。自分は白い巫女衣装。袴も水色のミニスカート風なので場にそぐわないことはない。
「きっと大丈夫だよね?」
「そうですねぇ。近寄ってみましょうかぁ」
 周りを歩いていたカップルや女性グループも近寄っている。問題ないだろうとフラに頷く。 
 が、あらためて後悔した。
「み、見えないね」
 教会の入り口は少し高くなっているとはいえ、フラと小太の低い身長では群がる大人の背後からではまったく視線が通らないのだ。むしろ遠くから見ていた方がよかったのかもしれない。
 そうこうするうち扉が開き新郎新婦が出て来た。
 人々の間からその姿が少し見える。
「わあっ。きれいだなぁ……」
「幸せそうですよねぇ」
 小太はつま先立ちすることで何とか二人の衣装なども見えた。白く清らかで、とてもつつましい。
 隣ではフラがつま先立ちしつつも苦戦しているようだった。何度も飛び跳ねたりもする。
「あ、あの、僕が肩車しますよぉ。そうすればフラさんは見えますしぃっ」
「え、いいの? ……わっ」
 思い切って身をかがめフラの両膝の間に頭を入れると、ぐいっと持ち上げた。
 瞬間、目の前が暗くなった。
(あ、あれぇ?)
「あ、見えた。すごいきれいだなぁ……二人とも幸せそう……」
(こ、これってもしかしてフラさんのスカートが……)
 肩車したところ、フラのスカートの中に頭を突っ込んだようで。
(これでなんとかなればぁ)
 小太、首を振ってぴーんと張ったスカートから顔を出そうとする。
 が、少々頭を振ったところで効果はなく。
 逆にフラの太腿がむにむにと首筋に当たる。湿気の多い六月で、少し汗ばむような時期。フラの太腿の素肌はしっとりしていて肌に吸い付くようだった。
 その時。
「よいしょ、っと。……男の人も決まってて、女の人も……お化粧、きれい」
 フラ、んしょと小太の肩に乗ったまま思いっきり背を伸ばしてではないか。
(はわわっ)
 首筋の真後ろにむにっとフラの身体が当たる。とても柔らかく、それでいて先ほどのようなしっとり感はない。素肌ではなく肌触りの良い布に包まれている感触だ。
(目をつぶってるのと一緒ですから、その……)
 いろいろ想像してしまいますぅ、と真っ赤になる小太。少し硬いのはフロントの小さなリボンか。
「あ、そうだ。小太さんも見える?」
 間の悪いことにフラが小太の様子に気付いた。
「わっ、ごめん。まさかスカートが……」
 フラ、赤くなりながら自分のスカートをめくる。ぷはー、と顔を出した小太、それまでのいろんな感触とか恥ずかしい目隠しに真っ赤になっている。
「あ。悪かったね、どうぞ」
 ここで周りの人も小太とフラに気付き、親切で前に行かせてくれる。
 同時に、花嫁は手にした花束を放り投げようとしていた。
「ブーケトスだ」
「こっちに投げて!」
 たちまち次の結婚運を手にしたい人たちが目の色を変えて手を上げ前に、前に。
「は、はわわっ!」
「え?」
 人波に押されてよろけた小太とバランスを崩したフラの声が重なった。
 が、落ちそうになった声ではない。
「フラさん、どうしましたぁ?」
 男らしく踏みとどまった小太、上目遣いでフラに聞いてみる。
「ブーケ、取れちゃった」
 どうしよう、とフラ。
「い、いいんですかねぇ」
 小太もフラを下ろしながら戸惑う。まくれ上がったスカートから少し見えた白い下着にドキッ。慌てて乱れを直してやる。
「これは可愛い女の子が取ったね」
「あの二人にはこんな子供に恵まれるといいね」
「大人が取るより良かったかも?」
 ブーケを欲しがっていた人も新郎新婦にとって幸先がいいと好意的に受け入れた様子。温かい拍手に包まれた。

「見て、小太さん。黄色に紫に赤。とっても綺麗だよね♪」
「いいことあるかもしれませんねぇ」
 ブーケを手にしたフラは可愛く清楚な花にご機嫌で、そんなブーケを持つフラの姿に小太も心が弾んでいた。
 街を歩く足取りもとっても軽くてリズミカル。
「あ」
 いや、不意にフラが止まった。何かを見つけたようだ。
「ふ、ふわあ……」
 小太も足を止め視線を追い、見惚れた。
「きれいなドレスだね」
「そうですねぇ。きっとフラさんにも……」
 ウエディングドレスが通り掛かる店先に展示してあったのだ。先程の花嫁の格好を思い出しドレスを見上げ、フラにも似合うのではないかと想像する小太。
 そこに女性店員がやってきた。
「いらっしゃいませ。いま試着キャンペーンをしてるんですが、もしよければ着てみませんか?」
「ふぇ!? ぼ、僕たちには流石に早いような…って、ご、強引ですぅ!?」
「遠慮なさらず。着用のなかったものをクリーニングに出す前にサービスしてるんです。お客さんの身長に合うのがちょうどあるんですよ」
 ぐいぐい引き込む店員に慌てる小太だが、この理由を聞くと観念した。

 そして試着室。
「わ、白い……」
 水色の袴を脱いで掲げたタキシードのスラックスは薄手で白い。慌てて自らの腰のあたりを見る小太。すぐにほっとする。
「今日は白い褌で良かったですぅ」
 赤だと色が透けていたかも、などと思いつつ足を上げてスラックスに通す。
「丈とかよろしいですか?」
「あ、はい。大丈夫の、はずですが……どうでしょうかぁ」
 外から聞かれて慌てて返事。女性店員が入って来るとワイシャツやスラックスの細部を確認する。
「やっぱりお声掛けしてよかったです。ぴったりでお似合いですよ」
 後はメイクもしましょう、と髪をまとめて前髪が額に掛からないように。黒の蝶ネクタイのバランスを整え、上着の前ボタンを留めて……。
「ふわぁ」
 姿見に映る自分の姿にため息をついた。普段、雅楽など舞う時に着る豪華な衣装などとは印象が違う。くるりと背中の方も見る。ロングタキシードの上着がひらめく。
「丈が長いので直線的で主役にふさわしい印象になります。ボタンをすべて止めると引き締まった感じにもなります。上着を脱いでチョッキスタイルになった時に印象が変わるのもポイントですね」
「そ、そうなんですかぁ」
 実際に脱いでみて軽やかなシルエットで姿見に映ったりも。
「細身の男性ですとシャープさが魅力になります。お客様は笑顔がとっても素敵なのでエレガントな印象になってますよ」
「こ、こういうの、リラ・レーゼで着て以来な気がしますねぇ……」
 店員に笑顔でほめられ真っ赤になる。再び上着を着こんみ恥ずかしさで小さくなったり。
 ここでフラが向こうの更衣室から出てきた。
「あ……」
 フラ、小太の方を少し見てうつむいた。素肌を晒した肩を小さくすぼめる動き。白い肌を引き立てるようなミルク色のウエディングドレスが波打ち繊細な色彩を放つ。
「あ、ふ、フラさん……」
 声を掛けようとしたが、それ以上何も言えなかった。
 フラの方は店員に促されてこちらに歩いてくる。ロングのドレスなのでいつもの動きではない。勝手の違う服にもじもじしつつも歩を進めるフラ。手には先にトスで手にした、ブーケ。
「その……どう? おかしくない?」
 上目遣いで恥ずかしそうに聞いて来た。大人の化粧もしていて、ルージュの唇がおずおずと動く。
「……ふぁっ! あ、えと、すごくその…き、綺麗ですよぉっ」
「ほ、ホント? 良かった」
 小太の一言でほっとしたフラ。そっと横に立つ。先に見た新婦のように。
「小太さんもとってもカッコいいよ」
「ぼ、僕なんかよりフラさんのほうが……」
「せっかくだから店の前に。皆さんにも見てもらいましょう」
 頃や良しと見た店員が外への扉に案内する。
「い、行きましょう」
 恥ずかしさばかりが先立っていた小太だが、この時しっかりとフラの手を握った。きゅっ、と握り返してくる小さなフラの手。無言でうなずく小太。
 そっと一歩を踏み出す。
 二人で、一緒に――。




━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━・・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
ka4679/弓月・小太/男/10/猟撃士
kz0121/フラ・キャンディ/女/11/疾影士

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
━┛━┛━┛━┛━┛━┛
弓月・小太 様

 いつもお世話様になっております。
 六月の小さなハプニング。今回は珍しく二人ともひどい目にまったく遭いませんでした。
 ……。
 …………。
 それはそれで少し寂しいなぁ、ということでちょっとしたいたずら心をくわえてみました。物語のスパイスにもなりますし。

 それはそれとして、スマートなカッコいい小太さんなのです。着せ替え全身図にいい感じのがありましたので、それをイメージしつつ。フラちゃんも見惚れてましたよ。

 それでは、ご発注ありがとうございました♪
シングルノベル この商品を注文する
瀬川潮 クリエイターズルームへ
ファナティックブラッド
2017年07月07日

投票はログイン後にできます。

ログインはこちら












©Frontier Works Inc. All Rights Reserved.