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『第二回暁模擬選合宿、ポロリもあるよ(命的な意味で) 』
煤原 燃衣aa2271)&大門寺 杏奈aa4314)&世良 杏奈aa3447)&一ノ瀬 春翔aa3715)&藤咲 仁菜aa3237)&阪須賀 槇aa4862)&宮ヶ匁 蛍丸aa2951)&エミル・ハイドレンジアaa0425)&アイリスaa0124hero001)&楪 アルトaa4349

プロローグ

 蛍丸は病室で目を覚ました。
 知らない天井。聞こえてくるのは時計の針の音。
 自分はどうしたんだっけ。
 確か自分は。
 おぞましいほどの鮮血と肉に包まれて。
 一人立ち尽くす燃衣の後ろ姿を見て。
「燃衣兄さん……」
「呼びましたか?」
 蛍丸が燃衣の名前を呼ぶと、突如カーテンが開いた。
 自分は病室のような場所に寝かせられて、カーテンの向こうには、燃衣が立っていて。
 彼もズタボロだった。
 ただ一つ驚いたのは、その周囲に暁のメンバーが集まっていることだった。
「一之瀬さん、大門寺さん……」
 二人は覗き込むように蛍丸のベットに腰を下ろす。
「どうしてここに?」
「それはこっちのセリフですよ」
 大門寺が告げる。少し苛立ったように。
「なんでもっと早く話してくれなかったんですか」
 その手は震えていた。
 きけばあの戦い。『玄武公(NPC)』との戦いの後。三人は昏睡状態に陥ったとのことだった。
 三人とは当然。鎖繰、燃衣。蛍丸のこと。
 かなり消耗してしまい、ピクリとも動かなかったらしかった。
 そこに偶々暁関連で用事のあった。一之瀬らが所在を確認しに来て現在に至る。らしい。
「いや、蛍丸さんも無事でよかった」
 包帯でぐるぐる巻きにされた燃衣。
 その姿を見るのが蛍丸にとってなにより、何よりつらかった。
 守れなかった。
「私達復讐者は……後が無い。何故なら、二度は立ち上がれないから」
 そしてその奥のベッドには『月奏 鎖繰(NPC)』が横たえられている。その瞳は虚空を見つめていて、燃衣たちに注がれることはない。
 彼女も同じだ、絶望に打ちひしがれている。
 蛍丸と同じように、あれだけ守ると誓っておきながら……。
 沢山の死者を出してしまった。
「全部、話してもらうぜ」
 春翔がそう静かに告げると。蛍丸はうつむいた。
「もちろん。暁面子全員に。お前たちが抱えてるものと。今後何をしたいのか。全部」
 その言葉に燃衣は頷いた。そして。立ち上がると額を巻いた包帯を引く。
「意思を継ぎます。僕らが。落陽の。月奏さんの」
 解けた包帯が風になびき、ところどころ血に濡れたそれから血の香りが芳醇に香った。
「ちょうど僕らだけでは手に負えないと思っていたところです。全部話したうえで皆さんに協力を仰ぎたい」
 その目は最初に出会った時のようにぎらついていて。
「僕らはもう、手段は選んでいられないんだ」

第一章 今後どうするか

「え? 何で私が呼ばれたの?」
「まぁ、それを言うならあたしもだけどさ」
 そこは暁が貸し切っているラウンジである。
 アルトと『三船 春香(NPC)』はそこに招かれていた。
 アルトとしては別件で個人的な事情もあるための参加だったが。春香に関してはなぜ呼ばれたのかよくわかってない。
 彼女はたまたまこのラウンジに遊びに来ていたのだが、いつの間にかこのシリアスな雰囲気に巻き込まれていた。
「でだ、話は聞かせてもらったわけだが」
 そう口火を切ったのは春翔。
 燃衣は洗いざらい全ての経緯を話した。
 自分が故郷に行き、手がかりを得て。あの日の真実に再会したこと。
 出会った組織、落陽、彼女らを利用して暁を滅ぼそうとしていたこと。それができないと知ったとき、彼らは落陽すら葬ろうとしたこと。
 その組織の名はラグ・ストーカー。
 それは嘲笑う者。
 それは災厄の使者。
 それは這い寄る者。
 それは悪意。 
 それがラグストーカー。
「彼らは人の心を踏みにじり、最大限傷付け壊すコトを至上としています」
 その結果鎖繰はまだ心を閉ざしたままだ。
「次はきっと。僕達がいたとしても殺し切れるほどの戦力を送ってきます」
「だったら、何で最初から殺し切れるだけの戦力送らなかったの?」
 『世良 杏奈(aa3447)』は燃衣にそう問いかけた。
「それが手口なんです。わざと生き残りを出して、その人間の中に怒りや憎悪や絶望を植え付けて。それが育った頃に回収する」
 燃衣は胸に手を当てた。
「それがラグ・ストーカーなんです」
「それは……」
「ん〜、反応に困りますね」
 その言葉に苦笑いを浮かべたのは仁菜と槇だった。
 端的に言うと狂気を感じた。
 異常ではないか、何故そこまで人の心を踏みにじろうとするのか。できるのか。
 同時に燃衣が遠い存在に思えた。
 槇も同じだ。そんな狂人たち、画面の向こう側の世界にしか見れなかった。狂気が目の前に広がっている。
 だがそんな狂気をものともせずに、大門寺は手をあげて告げた。
「隊長が追っていたのは……そんな奴らだったんですね」
 ただ真っ直ぐに、燃衣の瞳を見つめて大門寺は告げる。
「私は【暁】の盾として隊長についていきます」
 なぜ、槇も仁菜もそう思った。
 なぜ彼女は、恐れを感じさせずに二つ返事で戦場に飛び込むことができるのだろう。
「人の心を傷付ける人間を、私は絶対に許しません!」 
 そんな大門寺に背後からエミルが抱き着いた。
「さすがあーちゃん」
 行動は柔らか、表情も無表情けれどエミルも視線は笑っていなかった。
「二人が行くなら私も行く」
「ありがとうございます。心強いです」
「……ん、その為のワタシ達……。任せて」
 その言葉に槇は笑い声をあげる。臆病な自分がおかしくなってしまったのだ。
「もまえたちを見てたら、怖がってる自分がばからしくなってきたぜ、JK」
「大丈夫なんですか、皆さん、ここからの戦いにきっと、名誉とかそんなものは何もない。ただただ、嫌な気持ちになるだけです」
「そんな極悪非道な手合いに自分が睨まれたら……でも、暁の隊員として、人間として、そんな存在を見て見ぬフリするのはカコワルイ、だろ?」
 そう告げて、燃衣の肩に手をかける槇。
「私もそう思うよ!」
 春香も拳を突き上げた。
「私も協力するよ。そんな人達放っておけないよね」
「ラグ・ストーカー……ねぇ、聞く分には気に食わねーやろーどもだな。まぁそいつらのつら見たらもっときにくわなくなんだろーな……」
 春香の背後でそうアルトは一人ごちる。少し気になることがあった。口元に手を当てて考え込んでいる。
(……それに、どーもそいつらから嫌な予感っつーか……良くねぇ気がすんだ)
「私も、一人そんな男を知ってる」
 世良は一人静かに男を思い描いた。
 あまりに幼くてあの時は、自分が対峙できなかった許せない人。大切な人から光を奪ったあの男。 
 そんな三者三様の反応を見せるメンバーたちに対してアイリスはいつもの方に微笑を向ける。
 頑張る人は好きだから、協力は惜しまない覚悟である。
 同時にラグ・ストーカーという集団が気になった。
「あの子が知ったら、絶対に絶滅させに行くだろうしね。これは困ったな」
 そうまったく困った表情も見せず笑うアイリスである。
「では、これからのラグ・ストーカーと戦うという意思が固まったところで、具体的にどうするか決めて見てはいかがかな」
 アイリスが告げると燃衣が手を叩いた。
「そうですね、それはいい。では模擬戦なんていかがでしょう」
 その言葉に全員が燃衣の顔を見た。


第二章 お互いの強さを知るために。
 グロリア社。実験室。模擬戦のためにVBS技術を用いて戦場をある程度デザインできる
 そんな戦場を春香が借りてきたのだ。
「さぁ、始まります第二回……でいいんだよね? 暁模擬戦。解説という名の記録係は私、三船春香と」
「月奏鎖繰です」
 鎖繰はテンション底辺なしわがれ声でそう言った。
 今から行われるのは五対五に別れた模擬戦。フロアはそこまで広くない。百メートル四方の面と言ったところ。
 そこに僅かばかりの障害物が展開されている、岩や、バーチャルで作られた木。
 そんな簡素なフィールド、その端から両者は向き合う。

【朝日】チーム
世良
エミル
アルト
黒金
大門寺

【夜明】チーム
煤原
阪須賀
一ノ瀬
アイリス
藤咲

 以上がチーム分けとなっている。
 互いのチームの準備が整い、そして春香が開始の号令を告げた。
 開幕一斉に動いたのは朝日。あちらには長距離射程を担えるリンカーがいない。ある程度近づかなくては。
 だが、夜明チームには槇がいる。さらに臨時でもう一人。
「俺個人としてはどうでもいい。復讐も、相手の理念も。ただな」
 『一ノ瀬 春翔(aa3715)』は笑っていた。慣れないスコープを覗き込みながら蛍丸をその視界にとらえる。「強いやつと戦えるってのは、心が躍るな」
 くわえたたばこに赤く火が灯る。
 次の瞬間雨のように放たれた弾丸を。蛍丸と大門寺が叩き落としながら接近する。 
「くっ……やはりそう来ましたか」
 蛍丸は歯噛みした。
 遠距離からダメージを稼ぐと共に、近づかせない。
 兵法としては定石。完全にあちらのペース。
 こちらはそれに対して、防御が得意な面子で攻撃を引き受けつつ、近づいていくしかない。
 ともすれば、読むべきは次の相手の手。
 遠距離攻撃に対して有利な盾役を潰すことだろう。
 次の瞬間。大門寺に襲いかかったのは『藤咲 仁菜(aa3237)』。
 ウサギのような跳躍力で上空から、その手の盾を振り下ろすと。ガキィっと硬質な音が周囲に響き渡った。
 これで大門寺は仲間を守れなくなった。
「みなさん僕の影に隠れてください」
 だがそれもいつまで持つか分からない。であれば敵の戦列を切り裂くしかない。蛍丸は雷上動を構えた、しかし。忘れていたのだ。
 あちらには最強のパワーカードが存在している。
「おや、させると思っているのかな?」
 金糸の輝きが暴力的に蛍丸の目に映る。
 妖精の羽がぎらついて。その小柄なシルエットを禍々しく灯す。
 敵として相対するだけでこんなにも印象が変わるものなのか。
 蛍丸はアイリスを真っ向から見据えた。
 次の瞬間、空を裂きえぐるように前進。アイリスは蛍丸の間合いへと。
 蛍丸は歯噛みした。殺気が肌を焼く。『阪須賀 槇(aa4862)』も春翔も蛍丸を狙っている。しかし。
 ここで引くわけにはいかない。
 蛍丸の視線が冷えた。次の瞬間地面を蹴り跳躍。アイリスと交差する瞬間に左右にステップ。
 右。いや左。 
 死角に回り込んで回し蹴り。反動で少し後退槍に持ち替えた上で切りかかる。
 横なぎ踏み込んで刺突。振り下ろして斬撃、円を描くように回り柄を叩きつけ。
 手の内で槍を回して石突による強打。
 だが、それらすべてアイリスの盾によってはじかれる。
 蛍丸は歯噛みした。
 大きくバックステップ。槍を投げ。うち放たれた弾丸は全て手甲ではじいた。
 着地、する瞬間。
 アイリスが近付いていた。瞬歩の要領で音もなく間合いを詰め。チャージ。
 蛍丸は吹き飛ばされた。
「いや、大人しい男性だと思っていたが、なかなかどうして」
 アイリスは飛ぶ。蛍丸を追撃するために。
 だが蛍丸は無作為に吹き飛ばされたわけではない。戦場はちゃんと見えている。
 敵の行動も読めている木々をへし折りながら吹き飛ばされるその体。
 しかし蛍丸は空中で体を回転。木の幹を足場として着地。次いで。眼前を走る燃衣と視線が合った。
 その燃衣の駆ける先にはアルトと世良が見えた。
 アルト&世良VS燃衣&春翔の勝負となる予定だったのだろう。
 そうなれば、速攻戦術を得意とする燃衣と春翔に防御面で不安を抱える二人が押し切られてしまう可能性は高い。
 世良とアルトの適性距離は中距離だが、春翔が遠距離から戦場を管理している関係上、二人が自分の適性距離を保てるわけもない。
 であれば。燃衣の独壇場である。
 だから蛍丸は燃衣の前に躍り出た。
 ここで蛍丸が現れるのは燃衣にとっても予想外のはず。
「まさか、蛍丸さんやる気ですか」
「世良さん! アルトさん! 行ってください、ここは僕が」
「抑えると?」
 アイリスが木の上から蛍丸を見下ろしている。
 燃衣&アイリスVS蛍丸
 先ず肉薄したのはアイリス。先ほどのお返しと言わんばかりに。舞うような連撃を。
「はははは」
 アイリスの笑い声が響く。
 突き上げるような盾攻撃を蛍丸は槍で受け。距離を話そうとバックステップするがぴったりとアイリスは張り付いて離れない。
 盾による連撃。巻き込むような右へ左へ。揺らめくように身をそらすと、そこを槍が通過した。
(戦いにくい……けれどここで槍を手放すのは悪手です)
 リーチという優位を手放した瞬間一気につめられる。
 わざわざ『二人』の得意な間合いに入る必要はない。
「いや、それだと僕の見せ場が無いんですが」
 そう燃衣が二人に追いついて脇からいつもの笑顔でそう告げた。
「ああ、そうかい、では代わろうか」
 燃衣が拳を突き出した。
「く!」
 蛍丸はその拳を柄ではじいて見せる。
 少し間合いが開いた。
 斜めから切り下す。燃衣は身をかがめて回避。伸び上がって右ストレート、それを槍でそらして、蛍丸は掌底を叩き込む。
 燃衣はその腕を弾いて、からめ捕りにかかるが、石突で足場を崩してその拘束を逃れる。
 その隙をめがけてアイリスが蹴りを放った。
「がっ」
 そのサマーソルトは蛍丸の胸に突き刺さる、叩きだされる空気。血の味が口に広がった。
 だが蛍丸はすぐに体制を立て直し。燃衣の拳を捌いて見せる。
 蛍丸は槍を伸ばして構えて円を描くような足払い。
 空に逃れたアイリスに刺突。
 しまった。槍を封じられた。
 アイリスは小脇に柄を抱え込むようにその動きを封じ。背後に回った燃衣のひじ打ちが。蛍丸の背骨を撃った。
 地面を跳ねる蛍丸。
 無茶苦茶に転がった小柄な体だが、跳ね上がる動作を利用して槍を地面につき刺し。体制を立て直す。
 それを挟み込むように燃衣とアイリスの回し蹴り。
 たまらず蛍丸は槍を離して腕でそれをガードした。
 骨が軋む音が聞こえた。
「よくここまで持ったなだが」
 アイリスは地面に足をつけたとたんに半身をずらし密着。
 そのままその盾で、えぐるように蛍丸を突き上げた。
「これで終りだ」
 煌翼刃・螺旋槍。
 蛍丸の体が地面に力なく転がった。
「頼みましたよ、皆さん」
 そう呻きながら、蛍丸は二人の足音を霞んだ意識で聞いていた。
「……ん、ダメ。させないよ」
 蛍丸を庇うようにエミルが立ちふさがる。
 直後アイリスと燃衣は立ち上る爆炎に振り返る。

第三章 入り乱れつつ
「阪須賀さん!」
 あわててインカム越しに生存を確認する燃衣。
「あの人妻無茶苦茶ですよっと」
 その爆炎の中心から躍り出た槇はあわてて索敵を……
 だがそれも許さず世良は地面から次の一手を忍ばせる。
『冒涜的な誘い』
 溶けだした地面は触手のように槇に絡みつき、締め付け逃走を不可能とする。
「く、接近戦ですか、それなら漏れも……」
 次の瞬間煙を吹き飛ばして迫る世良。
「接近戦ができないと思ったら……」
 その拳は強く握られていた。その拳は人を殴るための形をしていた。
「大間違いよ」
 左腕は引き、肩を回す勢いで右の拳を突き出して。触れた瞬間のインパクトは貫くように槇の体へ突き刺さる。腰を回す勢いと、地面を蹴るような前のめりのベクトルを肝臓、腎臓あたりに叩き込むと。槇はゴパッと口からいろいろな液体を吹きだした。
「うごごごごご、おつよい、ですね……」
「お父さんが警官だった、それだけよ」
「な、何やってんだあいつ」
 あわてて春翔はスコープを世良に向ける。
 だがそれはさせまいと。春翔の眼前を爆風のカーテンで覆った。
 敵が迫ってる、すぐ近くに。こちらに向かってくる。
 春翔はにやりと笑った。
「おい、エディス。あんまり喜ぶなよ」
 次の瞬間放たれるフリーガーによる爆撃。春翔はそのミサイルを撃ち落としながら走った。ひとところにいれば直撃してしまう。
「久しぶりにつまらないこと何も考えないでぶつかれる相手に出会ったよ」
 アルトは歌うように告げた。硝煙と爆炎を化粧として纏い、その表情には春翔と同質なものが滲んでいる。
 二人は直感した。普段表に掲げているものは別物だろう。だが本質は同じだ。
 春翔は銃口を向ける、もはやスコープを覗くことはしない。
 銃口の先に敵がいればあたる、それだけだ。それだけの簡単なことだと気が付いた。
 アルトは全武装を展開。真っ向から歩み寄る。
「自分が壊れる前に」
「アンタを破壊し尽くす!」
 二人の言葉が交錯してそれは始まった
 暴虐と破壊の嵐。
 ミサイルが空中で花火と散って地面が爆ぜれば上昇気流に乗って春翔が高く舞い上がった。
 熱で髪の毛を焦がしながら銃弾を雨のように降り注がせ。
 それをアルトは爆炎で溶かし尽くす。
 弾丸がとけるほどの熱風を受け。喉を枯らしながら、眼球を乾かせながら。
 アルトの進撃は止まらない。豪炎、爆炎。そのさなかに合って。肌焦がす熱量のただなかに合って、なおも闘争本能は燃え上がるのか。
「まだだ」
 二人は声を合わせる。
 まだ、ギアは上がる。
 セカンド、サード。まだまだ加速できる。
 まだまだ壊せる。
 破壊の嵐が吹き荒れる。
 その熱波が狭い室内に吹き荒れて仁菜の髪の毛を揺らした。
 目の前の大門氏を抜きさろうとステップを刻んでも『大門寺 杏奈(aa4314)』はそれを予想しているかのようにぴったりと張り付いてくる。
「そこを通して!」
「通さない」
 大門寺は冷静な視線を仁菜に向ける。大門寺の盾を鞭で取り去ろうとするが、そううまくは行かなかった。相手も一歩も引かない。
 仁菜はにじむ涙を払いながら告げる。
「私が行かないと。阪須賀さんが! 一之瀬さんが!」
「だったら私を越えていって!」
 大門寺はさらに行く手をふさぐ砦のように仁菜を逃がさない。
「杏奈は怖くないの!? 何でそんなに冷静でいられるの?」
 仁菜は告げる、自分の恐怖。最悪の結末。
「いつも杏奈は私達を守ってくれる、それは、私達より怖い場所に立ってるってことだよね。だったらなんで」
 その時大門寺が盾を下ろした。そして大門寺は仁菜に告げる。
「優しい仁菜に、ひどい戦場なんて出てほしくない」
 その姿が遠ざかる気がして仁菜は歩みを止めた。
 いつも遠くにある背中。大門寺がもっと、もっと遠くに行ってしまう気がして。
「みんなが私を守ってくれるみたいに、私だってみんなが傷つくの、嫌なんだよ!」
 仁菜は叫んでいた。震える拳を自分で握りしめて訴える。
「みんなが、あんな怖い人達と戦ってるなんて知らなかった。だけど、私は。仲間を失いたくないから 仲間を守るために強くなる!」
「だったら、私たちがやるべきこと。わかるよね」
 仁菜は頷いた。
 鞭を引く、地面を転がっていた破片を大門寺に投擲。それを盾ではじいている間に肉薄する。
 盾の前に鞭の攻撃力など無意味。さらに武装をからめとるという戦法も取りにくい。
 だから。
「えーーーーい」
 木の枝に鞭を巻きつけて飛んだ。ターザンロープにつかまる要領で大門寺へと接近してその蹴ると見せかけその盾を足場にさらに飛ぶ。
「なるほど、そう来ましたか」
 大門寺はにやりと笑うと、遠くにかけていく仁菜の姿を見送って気持ちを入れ替える。
 大門寺としても、仁菜と戦っている場合ではなかったのだ。
 『エミル・ハイドレンジア (aa0425)』が一人で燃衣と『アイリス(aa0124hero001)』を抑えているのだから。
「ミーちゃん!」
「あーちゃん!」
 燃衣の正拳を盾で受け流し、大門寺はエミルの手を取った。
 追撃に迫るアイリスをエミルは手斧で叩き落として体制を立て直す。
「ん、ゴールデンコンビ。絶対負けない」
 エミルが走った。その手の斧を振り上げて切り落とす。石畳に突き刺さるが燃衣はそれを回避して低姿勢からの回し蹴り、だがその足にエミルは愛用の人形を向ける。仕込み銃だ。火を噴いた銃口に燃衣の足は弾かれる。
 体勢を崩されたところに大門寺のショルダータックル。
 はじいた大柄な影の裏に隠れていた小柄な少女。両手の盾をアイリスは世良に叩きつける。
「憧れの先輩ですけど超えていきます」
「何ともむず痒いね、やってみせてくれ」
 金色の光が衝突する。
「私は隊長の事何も知らなかった、私たちに見せるのは陽気な笑顔ばかりだったから、だからこそそんな隊長を苦しめる人たちを許せない」
 二人は弾かれて逆方向に飛ぶ、大門寺の手をエミルがとって、自分を軸に回してアイリスへと投げた。
「だから。並び立つ」
 アイリスは地面を滑りながら勢いを殺している、これまでの戦いで唯一できた隙。そこを突こう大門寺が盾を突きつける。
「私は、私ができることを全力でやる。それだけ!」
「嬉しいですよ、そう言ってくれる仲間に出会えて」
 燃衣が大門寺の前に立つ。その拳に高密度の霊力を纏わせる。
「だからこそ、全力で迎え撃ちます」
 貫通連拳、放たれる拳を大門寺は回避できない。
 そう思った。燃衣は少なくともそう思った。
 大門寺という盾を奪えば勝負は決する。これで勝ちだ。
 そう思った。だが違った。
 燃衣は見落としていた。
 自分を慕ってくれる最強の仲間の存在を。
「七花……八裂」
 鮮血の花が咲いた。
 燃衣の腕と、蛍丸の腕から。
 血まみれで立ち上がる蛍丸。しかしその踏込は力強く、拳は正確に燃衣の拳を撃ち砕く。
 真っ向からぶつけられた暴力は行き場をなくし、お互いの腕を破壊して。身を竦めたくなるような音を響かせた。
「蛍丸さん」
「燃衣……兄さん。これが」
 僕の本気です。
 そう蛍丸の視線が語っていた。
 なぜ。アイリスは思う。
 蛍丸は……言ってはなんだが再起不能なほどのダメージを与えていたはずだ。
 だがその考えを煮詰めている暇はない、エミルが迫る。隠し銃から弾丸をばらまきながら、その斧で盾を切りつける。
 返す刃で銃を押し付けてトリガーを引く。跳弾した弾丸がエミルの頬を切り裂くが、アイリスを少し押し込むことに成功した。
 背後に回る世良。
 二人のギアがかみ合っていく。アイリスを逃がさないようにドリブル、攻撃を絶え間なく加え、徐々に徐々にその冷静さを刈り取っていく。
「なるほど、それが狙いか」
 そうアイリスは告げると、大回転。黄金の風に二人は視界を覆う。
 そのまま上に飛び上がると、アイリスはそのまま、地をえぐるようなキックを大門寺に放つ。
 大門寺だけではその蹴りを受け止めることはできなかっただろう。
 だが大門寺はキックを止める盾にエミルが手を添えた。
 アイリスキックを二人がかりでうけとめる。
「驚いた。止まるのか」
 エミルが躍り出る、手斧の柄の部分で足を引っ掛けて落とし、銃を突きつける。
「だが、まだ甘い」
 そう告げるとアイリスは地面をついた。その怪力は大地を揺らし二人の足を払ってアイリスは距離を取る。
「では第二ラウンドといこうか」
 対して燃衣と蛍丸は、片手を失ったまま素手で殴りあっている。
「そう言うことですか。蛍丸さんはわずかでも体力が残っているなら、回復できると」
 燃衣は問いかける。その言葉に蛍丸は頷いた。
「僕の強さってなんだろうとずっと考えていました。燃衣さんのように殺し切る覚悟も無ければ、アイリスさんのように護りきる意思もありません。けど。僕あきらめが悪いんですよ」
 蛍丸は燃衣と拳を突き合わせて笑う。
「一度膝をついてもすぐに立ち上がれる。誰かのためなら何もかも諦めずにいられる。それがボクの強さです」
 燃衣は笑った。
「今純粋な気持ちで蛍丸さんと手合せできること、嬉しく思います」
 ごうっと炎が広がった燃衣の切り札。命燃やして敵を討つ『火綯体』である。
 ここで勝負を決めるつもりだ。
 そしてそれは意思と意思の勝負でもある。
 殺し切る意思と、決して折れぬ意思。
 ここからは単純な話だ。
 殺し切れれば燃衣の勝ち。立っていれば蛍丸の勝ち。ただそれだけ。
 二人の表情は軽い。
 二人はぶつかり合う、霊力の風が周囲に吹きあれた。
 戦場の一端では勝負が決まりつつある、もう片方の戦場でも動きがあった。
 一条の雷撃が空を切り裂く。世良のサンダーランスが槇を直撃したのだ。
「阪須賀さん!」
 戦場にたどり着いた仁菜からケアレインが飛ぶ。槇の傷が癒えていく。
 世良を目の前にして中距離線を繰り広げていた槇だが、火力の違いで押し切られそうになっていた。
 ただ、仁菜の助力でこれで形勢は逆転したはずだった。
 だがここで一つのイレギュラーが巻き起こる。
 『楪 アルト (aa4349)』そして春翔の無差別攻撃がそこにいた一同全員を襲う。
「無差別すぎるでしょ!
 世良が反撃とばかりに春翔へサンダーランスを放った。
 立ち上る煙、砂粒自体が帯電しているのか、バチバチと大気中の埃を焼く。
 その中心に立っていたのは春翔。黒焦げの裾を翻し、斧を肩に担ぐ。 
 煙草の煙はとっくに消えていた。
 それを吐き捨てると春翔は軋む体に鞭打ってその斧を握る。
 笑った。いつも余裕を絶やさない春翔が。獰猛に、そして心の底から楽しもうとする少年のように。
 彼を良く知る者ほどポカーンと彼を見つめ。そして。世良の追撃の魔術を、その斧で切り裂いた。
 爆炎、怒号。駆ける春翔。
 そんな春翔をサポートするために槇はスコープを覗いたが。
 巻き起こる戦闘音の最中に歌声が聞えて思わず振り返る。
「なんだ。気付いちまったのか」
「OK、弟者。聞いてみよう。あ〜。蝶さん何が起きてるんですか? 今北産業?」
「あたしの歌が、今からあんたのレクイエムを奏でるってだけだ!」
「話が通じてない!」
アルトは小さくThe fate of death play Fugueそうつぶやいた。次の瞬間
肩に〈担ぎ型射出式対戦車刺突爆雷〉正面に〈LpC PSRM-01〉両手に複製した〈ガトリング銃〉背中から腰に伸ばした〈カチューシャMRL〉それと〈外骨格式パワードユニット「阿修羅」〉が小さく蒸気を放つと、その銃口全てを槇に向けた。
 そしてすべてのトリガーを一斉に引いた。
「うおおおおおおお!」
 放たれるミサイル。弾丸。それに槇はAKのみで対応する。
「おおおおおお!」
 空中で紅色の花が開き、それが重なっていく。槇の頬を銃弾がかすめた、だがいまだに致命傷はない。
「最近の銃にはコンピューターが内蔵されているんですよっと」
 そしてそのプログラムを書いたのは槇である。
 阪須賀の瞳が小刻みに動く。面全体の状況を逐一理解し、優先順位を割り振ってそれらすべてを驚異的な集中力で打ち落とす。
「弾幕ゲーは得意ですよっと」
 眼球が乾いて切れたのだろうか、血の涙を流しながらすべてを撃墜すると。
 最後に打ち出されてきたのは。アルトだった。
 それを回避すると。槇は風で髪をなびかせながら一言告げる。
「GJ」 
 そのまま槇はうつぶせに倒れ。そして動かなくなった。
「くっそ、あたしもまだ……」
 アルトは、大量の武装を同時に運用したつけだろうか。阿修羅自体が動作不良を起こし動かなくなってしまう。
「何やってんだ、あいつら」
 そう春翔は冷静に突っ込みを入れると仁菜、そして世良に向き直る。
 春翔も全力で行くようだ、いや、余力を残すことを考えていないと言うべきか、空中に六本のラッキーストライカーを生成。
 一本を右手で地面に叩きつけ仁菜の足元を崩し、左手に握ったそれを叩きつける。切り上げ、斬り落とし。盾ではなく腕にダメージを与えるように。
射出された三本目は盾を打ち上げるように。両手に二本ずつ握られたラッキーストライカーを、もはや質量だけにまかせて同時に叩きつけると仁菜の体が地面に沈んだ。
 そして上空から処刑するように六本すべてを叩き込み。
 巻き上がる爆炎の向こうから接近して盾を蹴り上げた。盾はついに弾かれ床を転がる。
 仁菜の両手は震えていた。もう体が限界なのだ。
 驚きに見開かれる仁菜の瞳。
「こえぇか?」
 春翔は荒く息を月ながら仁菜に問いかける。
「本気の人間ってのは、こええもんだ」
 そのまま春翔は力尽きたように仁菜の上に倒れ込む。その体を抱き留めて仁菜は告げた。
 春翔は全身に傷を負っている、やけど、切り傷。筋肉も著しく傷ついているのだろう。
「お疲れ様です、一之瀬さん」
 そんな仁菜に世良も告げる。
「私にも頼めるかしら」
「はい!」
 そう仁菜は元気に答えた。
 
エピローグ
 
『黒金 蛍丸(aa2951)』と『煤原 燃衣(aa2271)』はお互いの地面に転がっていた。
 その表情を春香が覗き込む。
「どうだった?」
 燃衣はその言葉に微笑みを返した。
「なんとかなりそうです」
「ええ。みんな本気で取り組んでくれて」
 燃衣と蛍丸はお互いの表情を見て笑った。
 二人だけだった戦場にこれほどの戦力がそろった。もしかしたらいけるかもしれない。
 そう燃衣は安堵のため息を漏らす、すると、自然と眠気がやってきて。
 燃衣の意識は途切れることになる。

━ORDERMADECOM・EVENT・DATA━━━━━━━━━━━━━━━━━…・・

登┃場┃人┃物┃一┃覧┃
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『煤原 燃衣(aa2271)』
『世良 杏奈(aa3447)』
『一ノ瀬 春翔(aa3715)』
『藤咲 仁菜(aa3237)』
『阪須賀 槇(aa4862)』
『大門寺 杏奈(aa4314)』
『エミル・ハイドレンジア (aa0425)』
『アイリス(aa0124hero001)』
『楪 アルト (aa4349)』
『黒金 蛍丸(aa2951)』
『月奏 鎖繰(つきかなで さくり)(NPC)』
『玄武公(NPC)』
『三船 春香(NPC)』

ラ┃イ┃タ┃ー┃通┃信┃
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 いつもお世話になっております。鳴海でございます。
 今回はパーティーノベル発注ありがとうございました。
 今回はくどいほどに戦闘のオンパレードでございます。
 なるべく入れ替わり立ち代わり戦闘できるように配慮してみたんですがいかがでしょうか。
 また本編でもよろしくお願いします。 
 それでは鳴海でした。ありがとうございました。
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2017年07月28日

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